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「女神新生スクラン(スクラン+メガテン)」

ミアフ (2006-05-10 19:54)
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『プロローグ・日常は脆くも崩れ去る』

一月末日。
放課後、私立矢神高校2−C教室。
「ね、ねえ烏丸君?」
どこかぼうっとして自分の席に座っていた烏丸大路。
詰襟に散切りカットの少年。
常人とは一線を画すセンスとつかみどころの無い性格の持ち主。
何気に現役学生と漫画家という二束わらじな生活を送っている。
烏丸は放課後の気だるい空気の中、ずっと何かを見ているようだ。
その視線は蒼い空へと向けられていた。
実はUFOでも飛んでないかと夢想していたのだ。
夢想から覚めた烏丸は物憂げな表情で振り返った。
「・・・・・・何、塚本さん?」
塚本天満、どこか不思議な雰囲気を持つ、隣の席の生徒だ。
普通そうに見えて普通でない、烏丸にとっては仲のいい友人である。
どこか照れたような表情で両端から飛び出した髪をピコピコ、天満は動かしていた。
天満は烏丸に尋ねた。
「これから、エリちゃん達と『ペルソナ様』するんだけど、一緒にしない?」
烏丸はないも考えずに頷く。
「・・・・・・いいよ」
これが日常の崩壊のはじまりの一端だった。

喫茶メルカド。
そこでバイトをしているとある少女は店の前に止められたリムジンに困っていた。
その少女の名は塚本八雲。
好意を持つ相手の感情が見えるという一風かわった能力を持っている少女である。
(・・・・・・この車がどいてくれないと、お店に入れない)
困ったことに喫茶メルカドは正面にしか入り口がなかった。
このまま、リムジンが動いてくれないと、メルカドには入れない。
バイトの時間に間に合わないのだった。
ワインレッドの瞳に困った光を映して八雲は考える。
(この車が止まっているのはお店の前。この車がどかないと私だけじゃなくてお客さんも入れない。
どうしよう?運転手さんに言えばどいてくれるかな?)
リムジンの運転手に声を掛けようと八雲が思ったその時、リムジンのドアが開いた。
中からブランド物のスーツを着込んだ男だった。
逆三角形に撫で付けた前髪にどこか凍りついたような瞳。
八雲はその瞳を見て怯えた。
絶対零度の視線だった。
ヒトを人間として見ていない、そう思わせるような昏い光を宿している。
男は品定めをするように八雲を眺める。
八雲は居心地悪そうに肩をすくめた。
「塚本、八雲君だね?」
男はニヒルな微笑を浮かべて言った。
「私は通信会社サイバース、専務の氷川という者なんだが」
一枚の名刺を取り出して八雲に手渡す。
サイバース通信。
最近、急に業績を伸ばしてきた新興のIT系企業。
よくTVにCMを流しており、八雲も名前だけは知っていた。
八雲はサイバースの重役の突然の挨拶に驚いた。
(なんでそんな大きな会社の人が、私なんかを知ってるんだろう?)
「実は君のことを多少調べさせてもらったよ。
その結果、うちの会社のモニターになってもらいたくてね。
時間は取らせないからサイバース・矢神支店まで一緒に来てもらえないだろうかな」
問いかけの形を取っているが、有無を言わせない圧力がかかっている。
それに、いつの間にか黒服の男が数人、リムジンから出てきて八雲を取り囲んでいた。

矢神高校2−C教室。
烏丸は『ペルソナ様』遊びの説明を清聴していた。
説明しているのは金髪にツインテールの少女だった。
日本人離れした容貌を持つ沢近愛理。
かなりの資産家の令嬢でハーフ。
だが実家が京都と結構複雑な家庭事情である。
月刊クレーストを片手に説明文を読んでいる。
「まず、4人が部屋の四隅に立つ・・・・・・そして残った人間がその真ん中に立つのね。
それから、四隅にいる誰かが『ペルソナ様、おいでください』といって、時計回りに次ぎの人にタッチ。
そうして、また呪文を唱えながらタッチするのを繰り返して、最後の五人目に何でも願いを叶えてくれる
ペルソナ様が降臨する・・・・・・本当かしら?」
その言葉にフンと鼻を鳴らして、分厚いメガネを掛けた、体格のいい少年が言い切る。
「在り得ない。非常にナンセンスだな」
花井春樹。
少林寺拳法の猛者で学級委員。
非常に真面目だがお節介なところがある、いざって時にイマイチ頼りにならない男だ。
「えぇ〜俺は信じてるよ〜。きっと金色の女神様が現れて、願いを叶えてくれるはずさ」
そう反論したのは軽めのノリでクラスの人気者、今鳥恭介。
ナンパとDカップとドジビロンで脳内を構成された、矯正できないポジティブ思考の持ち主だ。
花井は今鳥のことを心底馬鹿にしたように腕を組んでため息をついた。
「こんな簡単な呪いでなんでも願いが叶うなら、とうの昔に僕と八雲君は付き合っているはずだ!」
泣き出さんばかりの力説だった。
花井は天満の妹である八雲に恋心を抱いている。
しかも傍目から見て暑苦しいくらいに。
ストーキングに限りなく近いアプローチ方法を取っている所為で、それなりにいい男なのだが、周りの女子から敬遠されている。
「アホだな花井」
「ぐぇっ」
握りこぶしで花井の鳩尾を突いたのは周防美琴。
花井の幼馴染であり、自身も花井以上の格闘家。
暴走しっぱなしの花井を制すことのできる、数少ない存在。
美琴は笑いながら言った。
「八雲ちゃんがお前と付き合うなんて世界が終わるより可能性がないぜ。
いいかげん、諦めたらどうだ?」
ぐっさり花井の急所を口撃する美琴。
本人に悪気は無いのだが、花井は部屋の隅でいじけている。
それを呆然と見ていた烏丸に今鳥が声を掛けた。
「しかし、烏丸がこういうことに参加するとは珍しいんじゃね?まいいや。
烏丸は『ペルソナ様』が来ると思うか?」
その言葉に烏丸はしばし考え込む。
(・・・・・・なんでも願いが叶う?叶えて欲しい願いなんてないけど、来たら面白そう・・・・・・)
「・・・・・・来ると思う」
「そっか、んじゃそろそろ始めようぜ」
今鳥がパンと手を鳴らした。

八雲の手を氷川が掴む。
「きゃ!」
「大丈夫、ちょっと話をするだけだから」
その途端、氷川の心が読めた。
『・・・・・・矢神受胎の巫女候補、付いて来てもらおう』
意味の解らない単語に八雲は戸惑った。
その隙に男達が八雲をリムジンへと押し込もうとした。
だが、
「おい、テメェら、妹さんに何しようとしてんだ!?」
救いの手が差し伸べられた。
八雲の手を掴んでいた氷川が振り返った。
立っていたのは長身痩躯の学生が一人。
グラサンにカチューシャ、羽織った学ラン。
この界隈では知らぬものがいない不良の中の不良、播磨拳児。
『矢神の魔王』と渾名が付くほどの喧嘩上手。
まあ、見た目と不良らしい見た目と違い、ありとあらゆる動物と心を通わせ、マンガ執筆に情熱を注いだりする、いろんな意味で意外性のある男。
八雲とは趣味であるマンガを通じての大切な友人だった。
氷川の手を逆さに捻りながら、ドスを効かせた声で恫喝する。
「アンタ、嫌がる妹さんに何しようとしてんだ?天満ちゃ・・・・・じゃなくて塚本の妹さんにそれ以上何かしようとするつもりなら、俺が相手になるんだが?」
「播磨先輩!」
氷川の手が離れた瞬間に八雲は播磨の後ろに回りこんだ。
氷川からはどうも不吉な気配しか感じない。
頼れる人間を見つけて八雲は安堵した。
氷川は顎で部下をしゃくった。
男が一人、播磨に掴みかかる。
「・・・・・・おらッ!」
ヤクザキック一発で地に倒れる。
無数の不良を沈めたキック。
威力だけならコンクリートの壁も砕く。
仲間が倒れた男をリムジンにほうりこんだ。
播磨は氷川に向かって言う。
「俺に喧嘩ふっかけるなんざいい度胸している」
一歩、播磨が詰め寄った。
一歩氷川は後ろに後退する。
しばし、播磨の視線と氷川の視線がぶつかり合った。
「ち、これ以上は人目がつくか?引き上げるぞ」
顔を逸らしたのは氷川。
素早く、リムジンに乗り込んで、メルカドから去っていく。
播磨は自分の学ランの裾を掴んでいる八雲の頭を撫でた。
「大丈夫か?なんか危なそうな連中だったんで、顔を突っ込んだんだが?」
「は、はい。播磨先輩ありがとうございます」
「どうやら顔を突っ込んで正解だったみたいだな。見たとこ怪我はなさそうだが大丈夫か?
顔色が少々悪いみたいだけど・・・・・・?」
八雲は心配する播磨に大丈夫と言おうとして気が付いた。
通りの向こう側に、見知った顔がいたことに。
そして八雲はそのまま気を失った。
「お、おい!妹さん!?」
八雲を抱きかかえた播磨はどうしようかと困惑した。

教室の四隅に花井、今鳥、愛理、美琴が立った。
「いよいよだね!烏丸君」
興奮している天満とともに烏丸が中央に立つ。
愛理が手を上げて歩き出した。
「ペルソナ様、ペルソナ様、ペルソナ様・・・・・・」
美琴の肩に手を置く。
美琴が今度は今鳥に向かって歩き出す。
「ペルソナ様、ペルソナ様、ペルソナ様・・・・・・」
今鳥の肩に手が置かれた。
今度は今鳥が花井に向かって、
「ペルソナ様♪ペルソナ様♪ペルソナ様♪」
スキップと鼻歌交じりに近づいていく。
そして最後の花井にたどり着き。
「ペルソナ様、ペルソナ様、ペルソナ様」
花井がゆっくりと誰もいない角へと向かって歩き出す。
「・・・・・・なにも起きそうにないね〜」
天満がそう呟いた。
「やっぱパチもんだったのかしら?」
クレーストを見る愛理。
「まだ終わってないじゃんか」
と美琴がもらす。
「ま、いい暇つぶしになったし」
今鳥が欠伸をしだす。
そこで花井がたどり着いた。
最初に愛理がいた角に。
花井が壁にタッチして言う。
「ほれみろやっぱり・・・・・・」
そこで、烏丸の意識は途絶えた。

そこは途轍もなく天井が高い部屋だった。
黄金の蝶が無数に舞う、ゴシック調の内装。
八畳くらいの部屋の真ん中に、烏丸はいつのまにか立っていた。
「はじめまして、烏丸大路君」
「?」
どこからか、中性的な声が烏丸に届いた。
黄金の蝶が無数に集まって、烏丸の正面で発光する。
「私の名はフィレモン。意識と無意識の狭間に住む者。
君は私の前で名を名乗ることが出来るかい?」
現れた人物は蝶をあしらった仮面をつけた男。
烏丸と同じくらいの背丈で、黒いタートルネックとズボンを身に付けていた。
烏丸は祖母の教えに従って、自分の名前を名乗った。
「・・・・・・はじめまして。烏丸大路です」
フィレモンと名乗った人物はそれに満足したような笑みを浮かべた。
「君は資格を得た・・・・・・」
「資格?」
フィレモンは大きく礼をするような動作をとった。
「君は『ペルソナ』の力を得る・・・・・・人の中には様々な人格が存在している」
またもやフィレモンの身体が無数の蝶へと変わっていく。
「神のような自分、悪魔のような自分、君が求めるのはどういった『仮面』(ペルソナ)だろう。
願わくば、正しき道を君が辿らんことを。
私に出来るのはここまでだから」
ゆっくりと烏丸の意識が途切れていく。
最後の意識が消える間際、烏丸はフィレモンの声を聞いた。
「力に目覚めたら、ベルベットルームへ行きたまえ。
私の従者が君達の手助けをしよう」
それを最後に烏丸の意識は完全に消えた。

あとがき

前々からやってみたかった、スクランとメガテンのクロスです。
まずはペルソナ1と真・女神転生3を。
予定ではデビルサマナーが加わるつもりです。
更新は遅いでしょうが、気長にお付き合いください。

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