時間は流れ昼休み、和樹はと言うと、
「えっと?校舎裏ってここでいいんだよね?」
校舎裏に居た。身体測定の時エヴァに呼び出されたからだ。
(エヴァンジェリンさん居ないな)
キョロキョロと周りを見回してみるが誰一人いない。
「なんだ、先に来ていたのか」
その時後ろから声がした。エヴァと茶々丸だ。
「さて、さっそく本題に入ろうか・・・何故貴様があのクラスの生徒になどなっている?」
両腕を胸の前で組み仁王立ちしほんの少し首を傾け怪訝な目で聞いてくる。
茶々丸は彼女の後ろでじっと立ち和樹を見つめている。表情は解らないが、
「なんでって・・・今朝学園長がそうしろって」
「じじいが?・・・なるほど私や桜咲達にドサクサ紛れに護衛をさせようって腹だな」
あのくそじじいめともの凄~く不機嫌になりながら横を向いて言い放つエヴァ
「まあ解った。それなら仕方がないな・・・まったくあのじじいは・・・」
なにやらブツブツと呟いている、恐らく文句でも並べているのだろう。
ひとしきり呟いた後、顔を上げ和樹を睨みつけると、
「桜通りの吸血鬼というのは私だ。これからも何人か襲うと思うが・・・止めようなどと思うなよ?」
そう言い放つ。
「とりあえず貴様は襲わないでいてやるが・・・貴様から首を突っ込んできた場合はその限りでは無いからな?命が惜しかったら大人しくしていろ」
続けてそこまで話すとクルリと後ろ歩いてきた方向を向き、
「話はそれだけだ。茶々丸帰るぞ」
「はい。マスター」
茶々丸と共に歩いていった。
「な、なんだったんだろう?・・・まあいいや戻「少し待て」今度は何?」
エヴァ達を見送ると自分も戻ろうと歩き出そうとした所で、また後ろから声をかけられた。
「えっと?桜咲さん?と龍宮さん?でよかったっけ?」
「その通りです。あなたに聞きたい事がある」
振り向いた場所に立っていたのは、
何か布に包まれた物を持った抜き身の刀の様な雰囲気の桜咲刹那と中学生には見えない長身にプロポーションを持つ褐色の肌の生徒龍宮真名だった。
二人とも3-Aの生徒である。何故か二人ともなかなかに物騒な雰囲気を放っているのだが。
「えっと・・・二人共僕に何かようなのかな?」
「ようが有るのは刹那だよ。私は万が一の時のために呼ばれただけだ」
「そうです。単刀直入に聞きますがあなたは何者ですか?」
何か嫌な予感に冷や汗を流しながら聞き返すとそんな答えが返ってきたのだが、
「へ?何者って?」
何者か?と聞かれても和樹には何の事かさっぱり解らない。
「恍けるな!先ほど学園長先生に言われてとエヴァンジェリンさんには言っていたが、私達はそんな話は聞いていない!」
その和樹の態度に激昂する刹那。
「え?聞いてないってなんで君達に話す必要が・・・」
刹那達が実は木乃香の護衛の人間だなどとは一言も聞いていないので、和樹のこの言葉はまったく当然の事なのだが、
「護衛する人間に護衛対象の事を話すのは当然だろうが!やはり貴様お嬢様を狙ってきた西のスパイか何かだな!」
それを聞いてますます怒りだす刹那、持っていた物の布を取りさるとそこから出てきた物はなんと真剣、
「ちょっ!待っ!」
「問答無用!」
やばいと感じた和樹の制止の言葉など欠片も聞かず突っ込んできた彼女の一撃を、
「おわぁ!?」
「なっ?!」
紙一重で避けた。最速の抜刀術をかわされ一瞬驚愕に目を見開くが、すぐに飛び退き体制を整えると、
「ちょっちょっと~?!」
「はぁっ!」
切りかかってくる。
まず初めに来た左下からの斬激を後ろに飛び退いてかわす、そのまま持ち替えて上段からのから竹割りを半身にして避ける、髪が数本飛んだ。
そのまま跳ね上げるような突き、それをさらに飛び退いて避ける。
「この!?神鳴流奥義『斬岩剣』!?」
「うわぁぁぁっ!?」
ズガンッ
そんな音と共にほんの一瞬前まで和樹の居た場所に小さなクレーターが出来た。
(ああああんなの喰らったらいくらなんでも死んじゃうって!?)
「かわしたか。だが次は無い!?神鳴流奥「待ちたまえ刹那君」高畑先生?」
避けた時に衝撃で尻餅をついた和樹に追撃を出そうとした刹那を間一髪、校舎の影から現れた高畑が止めた。
「ふう~危なかった。災難だったね式森君」
「た、助かった・・・ありがとうございます」
和樹の目の前まで来て差し出された手に捕まり起き上がりながら例を言う。
腰が抜けていないだけたいした物だろう。
「あの・・・高畑先生?」
「あ~刹那君彼は敵じゃないよ。学園長に頼まれて君達にその事を伝えようと探していたんだが・・・少し遅かったらしいね」
やれやれと頬を掻きながらそう言う高畑に刹那の顔が青くなる。当然だ、思いっきり言いがかりで殺しかけたのだから。
慌てて和樹に頭を下げる刹那、そりゃもう凄い速さで。
「すいません。すいません。すいません。すいません」
「あ~式森君、できれば許してあげてくれないかな?」
学園の不手際がそもそもの原因な訳で~と一緒になって頭を下げる高畑、
確かに一番の原因は学園長だろう自分で刹那達に伝えに行けばよかったのだから、まあ行き成り排除しようとするとは思わなかったのだろうが。
で、肝心の和樹はというと、
「あ~その」
二人の様子に困っていたりする。
「えっと、怒ってませんからそんなに頭を下げないでください」
そして結局出てきた言葉がこれである。
「すいませんって、へ?怒ってないんですか?」
「そう言わずに許して・・・怒ってないのかい?」
唖然とする二人、当然の反応だろう。というか怒っていない和樹の方がどう考えたって変だ。
「あ~結局は不幸な事故って事みたいですし。あんまり気にしてませんから」(向こうに居た頃は日常茶飯事だし・・・ここに来た時も死に掛けたしな~)
どうやら感覚が麻痺しているらしい。本当に気にした様子は見えない、ただ少し前を思い出して心の中では泣いていたが。
「本当に・・・怒ってませんか?」
「怒ってないよ」
おずおずと聞いてくる刹那に苦笑して答える、そして手を差し出し、
「えっと、これからよろしくね」
そう笑いかける。
「あ、はい。式森さんよろしくお願いします」(よ、良かった。本当に怒ってなさそうだ)
差し出された手をガシッと掴みこちらも笑顔で答える刹那、内心ではホッとため息でも吐いているのだろうが。
「あ~そろそろいいかな?何やら蚊帳の外に置かれているみたいなんだが」
そこに静観していた龍宮が苦笑いを浮かべながら聞いてきた。
「とりあえず静観していたんだが正解だったようだね。私が加わっていたら殺していたかもしれん」
ハハハと笑いながら言ってくるのだが、そこは笑う所ではないのではないだろうか・・・冗談になってないし。
「あはは・・・龍宮さんでいいのかな?これからよろしくね」
「ああ、所でエヴァンジェリンとは何処で知り合ったんだい?」
「あ~・・・ここに来た時にいきなり襲われたんですよ・・・」
刹那にしたように手を差し出し言う和樹(もっとも表情は苦笑いだが)の手を握り返し頷く龍宮、
所でと本人は軽い話題を振ったつもりだったのだろうが、和樹の返事に顔が多少引きつる。
「そ、それは悪い事を聞いた。エヴァンジェリンにまで襲われたのか・・・よく生きてたね?」
「はは・・・」
前半は申し訳無さそうに(半分同情だろうか?)後半は本当に不思議そうに聞いてくる龍宮に笑うしかない和樹だった。
この後三人と別れた和樹が購買に行く途中に鐘が鳴り昼食を取り損ねた事はまったくの余談である。
放課後・学園長室
「失礼します」
「おお式森君か、待っておったぞい」
ノックの後入ってきた和樹に学園長が椅子毎振り向きながら話しかける。
「どうじゃな?3-Aは」
「なんというか・・・個性的ですね。皆いい娘達なんですけど」
学園長の問いにポリポリと頬を掻きながら答える和樹。
「まあ旨くはいったようじゃな。さてちゃちゃっと用件を済ませるかのう」
そう言ってゴソゴソと机の中を漁り鍵を取り出し和樹に渡す、
「この鍵が君のこれから住む部屋の鍵じゃ。教師用の寮、君が泊まっておった寮じゃなの高畑先生の部屋の右隣の部屋じゃよ
男子生徒用の寮にしようかとも思ったんじゃが・・・実は男子にはほとんど魔法生徒がおらんくてな~」
先生と女生徒ばかりなんじゃよと笑う学園長、
「はあ・・・解りました。あと僕の制服って」
「ああそれなら、今日の夜にでも届くじゃろう。身体測定は受けてきたんじゃろ?」
「ええ、それじゃあ失礼します」
そして和樹がドアに手を掻けた時、
「式森君」
「?なんですか?」
後ろから唐突に声をかけられた。
「この学校にはかなりの数の部活が有る。よかったら見て周るといい」
「部活・・・ですか?」
何故そんな話をしたのか解らず首を傾げ問い返すと、
「そうじゃ・・・正直に話すと君の帰る方法が1~2年で見つかるとはとても思えん。元の世界の事を思って暗くなる時も有るじゃろうし。
そんな時に部活をしておれば少しは気分が紛れるかもしれんからの」
「ありがとうございます。見て周って見ますね」
「そうしたまえ、今なら練習の真っ最中じゃろうし丁度いいだろうしの」
「はい」
学園長の気遣いにペコリと頭を下げ学園長室を後にする和樹、
「本当に正直に言えば・・・何年経っても見つからんと思うが・・・さすがにこれは言えんのう」
そんな事を学園長が呟いた事は勿論和樹は知らない。
「さ~てと・・・何処から周ろう?」
取りあえず校舎から出てきた和樹、空を見上げて唸っていると、
「お~い」
「式森さ~ん」
遠くから手を振って近づいてくる影が三つ、
「えっと?鳴滝さん?達と長瀬さん?だったかな?」
ちみっちゃい二人が双子の鳴滝風香と鳴滝ふみか(←字が出ませんでした)姉妹、180cmの長身で糸目なのが長瀬楓である。
「そうだよ~で、ボケーっとバカ面で空なんかみてどうしたの?」
「ちょちょちょちょっとお姉ちゃん!いきなりバカ面は幾らなんでも!」
「や~や~式森殿、こんにちはでござるよ」
姉の風香の暴言を妹のふみかが慌てて咎め、楓はのほほんと挨拶する。
「あはは・・・バ、バカ面そんな風に見えたんだ」(殿?ござる?)
三人の挨拶にハハハと力なく笑う和樹、
「あはは~ごめんごめん。」
「お姉ちゃんてば・・・あ、でも本当に何してたんですか?」
全然悪びれた様子も無く風香が謝り、ふみかがそれに呆れた後和樹に聞く、
「部活見て周ろうかと思ったんだけど、何処から行こうかと思って」
正直にそう答える和樹、すると今度は楓が、
「なるほど、この学校の部活は数が多いでござるからな~。ならば拙者らが案内いたそうか?」
ふむふむと納得するとそう聞いてきた。
「え?いいの?」
「どうせ暇でござるから。二人ともいいでござろう?」
いいのか?と問う和樹にそう答え残った二人に是非を問えば、
「いいよ~」
「いいですよ~」
あっさりOK
「じゃあお願いしようかな?」(長瀬さんって時代劇ファン?)
それならばと頼む和樹、頭の中では全然関係ない事を考えていたりするが、
「あいあい、あと拙者の事は楓でいいでござるよ。そう呼ばれる方が慣れているので、こちらも和樹殿と呼んでもいいかな?」
「あ、あたしも風香でいいよ~。鳴滝じゃあどっちか解んないしね。んでこっちは和樹って呼ばせてもらうな~」
「あ、私もふみかでいいですよ。和樹さんって呼びますね」
楓の言葉に他の二人も言ってくる。
「あ、解ったよ。よろしくね楓さんに風香ちゃんにふみかちゃん」
同意して三人の事を名前で呼んだ和樹だが、
「「なんで楓(さん)は『さん』であたし(わたし)達はちゃんなんだよ(ですか)?」」
呼ばれ方が不満だったらしく抗議の声を上げる二人、中学になって同い年からちゃん付けはそりゃ抵抗が有るだろう(実際は和樹の方が上なのだが)
「あ、ごめんごめん風香さんにふみかさん。これでいい?」
「OK」
「はい」
「では行くでござるか・・・まずは格闘「格闘技系は無しで!」あいあい。なら体育館からでござるかな」
格闘技系を見に行きたくない理由は書かずとも解るだろうが、古菲に出くわす可能性が有るからである。
朝の騒動を見ていた楓達にも理由は解ったらしい、なんせ昼放課以外すべて勝負を挑まれていたのだから。
そして体育館、
「ここが中等部専用体育館で~す。なんと21の体育系クラブが活動してるよ~」
「で、ござるな」
そう言って紹介する風香、
「あ、やほ~。どしたの~見学~?」
話しかけてきたのは裕奈、部活中らしくバスケのユニフォームを着ている。
「あ、楓も居る~何々とうとうバスケ部に入ってくれるわけ?」
「いやいや、拙者は唯の案内役でござるよ」
一緒に居た楓を勧誘する裕奈、楓は実はかなり運動能力が高いので運動系クラブで引っ張りだこだったりする。
「こら~!ウチの部員を引き抜こうとするな~!」
「まあまあお姉ちゃん」
「ウチの部員?」
それに対して結構本気で怒る風香、ふみかがなんとか抑えている。
和樹は何の部活なのか興味を持ったらしく楓の方を向いて聞いてみる、
「散歩部でござるよ。ぶらぶらと他の部員と喋りながらふらつくのが活動でござる。といってもまあ拙者ら三人しか居ないのでござるが」
「そ、そんな部活あるんだ」
何故部活として認められているのか本当に謎である。麻帆良学園だからの一言で納得できてしまうのも怖いが。
「式森君は何か部活に入るつもりなの?でもここには女子部しか無いよ?」
暴れようとする風香とそれを止めるふみかを横目に裕奈が和樹に聞くと、
「あ、そういえばそうだっけ」
今思い出したように風香が呟いた、
どうやら無駄足だったらしい。
「三人とも式森君が男だって忘れて案内したのか・・・なんなら少しやってく?このまま帰ったら完全に無駄足だし」
「いいの?」
「ちょっと位ならOKでしょ」
持っていたバスケットボールを和樹に渡すとコートの方に歩いていく裕奈、和樹達も慌てて追っていく、
他の部員がコート外に出た所を見るとどうやら1:1をするつもりらしい。
「式森君って経験者だったりする?」
「え?ううん。向こうじゃ部活何もやってなかったから」
「そっか~じゃああたしと1:1やろう。負けないからね~」
そう言ってコートに入っていく、予想通り1:1らしい。
「あ、うん」
和樹もコートに入っていきボールを持って裕奈と向かい合う。ちなみに楓達は外で他の部員と一緒に観戦中。
そして試合開始、バッとディフェンスの格好をする裕奈、流石に部員だけあり様になっている。
対して和樹も空いている左手を前に出し取られにくくする姿勢、基本位は知っているようだ。
(バスケか・・・まともにやったのは1年の夏の授業が最後かな?)
2年でもバスケの授業はあったがあの2-Bでまともな授業になるわけがない。
(仕掛けないと終わらないよね?)
どうやら裕奈はこちらの出方と実力を伺っているらしく、殆ど仕掛けてきていない。
ほんの少しの硬直の後、和樹が右に向かって全力でダッシュをかけた。
ボールを突いているためかあまり速度がでずピッタリ追いついてくる裕奈、
すると突然和樹が急停止、180度反転する、
なかなかの速さになっていたので止まりきれずタタラを踏む裕奈の右、和樹から見て左を抜き去り、
レイアップシュート・・・だが、
「あ!?」
外れた。
「貰い!」
弾かれたボールを裕奈が走って拾うとすかさずジャンプシュート、
そのシュートは弧を描き見事にゴールマウスに吸い込まれようとした所で、
「ウソ?!」
飛び上がった和樹に叩き落とされた、
ただしこれは反則、シュートされたボールがゴールマウスより高い位置にある場合触ってはいけないのだ。
(それだとアリウープも反則なのだが、あれは黙認されているらしい)
「えっと・・・一応反則なんだけど、凄いねジャンプ力」
「そうかな?」
実は本気で飛べばもっと高く飛べたりするのだが、本人は自分が一般的に見て凄いなどとは毛ほども思っていなかったりする。
その後、他の部員達から質問攻めにあったのだが、他を見て周る時間が無くなるからと断って逃げ出した和樹だった。
次はグラウンド、
「ここは男子中等部サッカー部専用のグラウンドで~す」
「ちなみにウチのクラスの亜子殿がマネージャーでござるよ」
「あ、そうなんだ。そういえばまだまともに話してないな~」
グラウンド入り口で見ていると、
「あ、長瀬さんに鳴滝姉妹だ。どないしたん?部活中~ってなななんでししし式森さんが」
気づいた亜子が話しかけてきたが、楓の陰に隠れていた和樹に気づくと物凄く慌てだした。
「どもりすぎ・・・散歩部の部活中にボケーっとしてる所に会ってさ~」
「部活見学をするつもりだったそうなので拙者らが案内役を買って出たんでござるよ」
「そ、そうなんや。式森さん朝はありがとうございました。ウチの事は亜子って呼んでください。サッカー部に入るんですか?」
風香とふみかの言葉に頷くとペコリと和樹に頭を下げてから聞く亜子、
「えっと取りあえず色々見て周ろうと思って」
「じゃ、じゃあキャプテンと顧問の先生に紹介しますね。あっちに居るんで一緒に来てください」
答えにそう答えると、さっきまで居た場所に歩いていく、
「ん?マネージャーその人達は?」
「おや亜子君その子達は誰だい?」
顧問兼監督と何やら話していたキャプテンらしい人物が亜子に聞いてきた。
(マネージャーと呼んだのがキャプテンです)
「あ、ウチのクラスメイトです。それで式森君は転校生で部活見学中らしいので」
「あ~例の、何故か女子部に編入になったってゆう」
「確かウチの亜子君を助けてくれたんだってね。サッカー部顧問として礼を言わせて貰うよありがとう」
どうやら既に噂になっているらしく、話を聞いたキャプテンが興味深そうに和樹を見、顧問の方はナンパから助けてくれた事に礼を言った。
「あ、いえ。たまたま通りかかっただけですから」
「そんなに謙遜しないで、たとえ本当に通りがかかっただけだとしても助けに入るには相当の勇気がいるだろうしね。それだけでも大した者だよ」
「は、はあ」
「ははは、さて私は他に仕事があるからこれで失礼するが、まあゆっくり見て行ってくれたまえ」
バンバンと和樹の背中を叩くと書類らしき物を持って去っていく顧問の先生、
「そういえばキャプテン何を話してたん?」
「ああ、部室のロッカーの中にがたが来ている物があったからな。
まあ部が出来た時からずっと使っている物だしそろそろ寿命なんだろうさ。
で、先生はそれの新調のタメの書類を備品部へ持って行った所」
そこまで話してキャプテンは和樹の方を向くと、
「よろしく式森和樹君。僕は雪広真、男子中等部サッカー部のキャプテンをやらして貰ってるよ」
そう言って手を差し出した。
「あ、よろしく。あれ雪広って」
その手を握り返しながら答える和樹、彼の苗字が気になり聞くと、
「ああ、君のクラスの雪広あやかとは従兄妹同士なんだ」
「あ、やっぱり親戚なんだ」
思った通りの答えが帰ってきた。
「さてと、見てるだけだと暇だろうし君も参加してみる?」
「え?でも」
真の申し出に対して楓達の方を振り返ると、
「ああ、拙者らの事は気にしなくていいでござるよ」
「そうそう、見てるだけでもそこそこ楽しいし」
「やっぱり参加してみるのが一番ですから」
「ありがとう。じゃあ少し参加してみようかな」
それを聞いた真は、
「お~い皆集まれ~。30分のミニゲームやるぞ~」
全員に横に置いてあったメガホンで指示を出す。
「式森君って経験者?それとやりたいポジションある?」
「経験は無いよ部活やってなかったし。それじゃあゴールキーパーで」
「解ったよ。後のメンバーは僕が選ぶね」
そして始まったミニゲーム、
この試合中ゴールキーパーをやった和樹だが、打ってきたシュートを簡単な物からきわどい物までことごとく叩き落とし、
キャプテンに亜子含めて部員全員を驚愕させた事を記しておく。
その後幾つかの部活を回り夕方、
「ありがとうね三人共」
ん~っと伸びをしながら三人にお礼を言う和樹、
「いあいあ、なかなか楽しかったでござるよ」
「そうそう、どうせ暇だったんだし気にしない気にしない」
「そうですよ。それにこっちから言い出した事ですから」
三人も同じように伸びしながら答える。
「文化部は多すぎてちょっと紹介しきれないでござるが」
「そうだね~160個以上あるし」
「大学部とか全学年合同のも入れるともっと増えますね~」
「ど、どんな学校なのさ」
アハハーと笑って喋る三人、和樹は流石に唖然としている。
「それで運動部は人通り見て周った訳でござるが、どの部活に入るかは決まったでござるか?」
「サッカー部と陸上部なんか凄い来て欲しそうだったよな~」
「やっぱりそのどっちかですか?」
どうするんだ?と聞いてくる三人、当の和樹はというと、
「う~ん」
まだ決まってない様子。
(う~ん確かに楽しそうだったんだけど・・・僕って基本的に面倒くさがりだし朝弱いし朝練無理だよな・・・)
自分の事をよく解っているようである。
向こうに居た時はそれこそ目覚まし無しで5時前に起きれたが、それは起きないと凛に叩き起こされそれを夜這いと勘違いした夕奈に毎回焼かれるからである。
二人共居ない以上目覚ましを使っても起きる自信は無い。
(でも今日は面白かったよな~移動中も話ながらだとすぐだったし・・・三人共面白いし)
そこまで考えてハッと気づき、
「あのさ、散歩部って入れるの女子だけかな?」
「へ?別に男子でもオッケーだけど・・・もしかして!」
和樹の質問に答えた風香がそれがどういう意味か気づきハッとすると、
「うん、入れてくれないかな?のんびりする方が性に合ってそうだし、今日凄く楽しかったしさ」
「マジ?!マジ?!うっわ~大歓迎!!新入部員居なくて存続の危機だったんだよ~」
入れて欲しいと言った和樹に風香がおおはしゃぎ、まじでピンチだったらしい。
こうして散歩部に所属が決定した訳だが、これで終われば良い気分で終われたのだろうが、
「あ、テメエやっと見つけたぞ!」
そうは問屋が卸してくれないらしい。
「あ!貴方達は!」
「知り合いでござるか?」
「朝、亜子さん達をナンパしてた二人だよ」
「ほほう」(見るからに小物でござるな)
そう朝のナンパ男二人組みである。
やっとという事は散々探し回ったのだろう、ごくろうな事だ。
「朝はよくもやってくれたな・・・覚悟しやがれ」
そう言ってポケットから取り出した物はメリケンサック、禿げ頭の方は小ぶりのナイフである。(折りたたみ式のではない)
「む」
それを見て一歩前に出ようとする楓を押し止め、
「風香さんとふみかさんを連れて離れててくれないかな?楓さんは大丈夫そうだけど、二人とも震えてるから」
頼む和樹、確かに風香とふみかは多少震えている。さすがにナイフまで持ち出したケンカには慣れていないらしい。
「それは構わないでござるが・・・大丈夫でござるか?」
「うん、大丈夫。僕が狙いみたいだしなんとかするよ」
「あいあい、では二人を連れて離れているでござるよ」
すっと二人を抱き上げると5メートルほど離れる楓、
「なにいちゃついてやがんだ!自分の立場解ってんのか!え!オイ!」
二人の様子に激昂し怒鳴ってくるロンゲ、何故話している間に殴りかからなかったのだろう?(その場合楓に一瞬で沈黙させられただろうが)
「知りませんよまったく。逆恨みでメリケンサックにナイフまで持ち出してくるなんて・・・」
怒声をしれっと受け流す和樹、なんとかすると言った以上なんとかしない訳にはいかないし引き下がる訳にもいかない。
「いい度胸じゃねえか・・・病院のベット中で後悔させてやる!」
そう言って殴りかかってきたロンゲ、後悔するのが自分自身になるとはこの時は毛ほどにも思っていないのだろう。
だがはっきり言ってこいつバカである。何も無い状況で和樹にすべてかわされたのを覚えていないのか、
凶器をちらつかせれば一般人なら多少は動きが鈍るかもしれないが、和樹はそんなたまではない。
凶器に頼り大振りになった一撃が当たる訳も無く。
「ふげっぷ」
呆気なくカウンターを顔面に思いっきり貰い吹き飛び一撃で白目をむいて気絶した。
勿論手加減なんぞ一切無い
最後にもう一度だけ言おうこいつはただのバカである。
「このやろう!」
その様子にもう一人、ナイフを持った禿げの方が今回初セリフと共に突っ込んできたが、
「痛っ!」
振り上げ下ろそうとしたナイフを、和樹に正確に蹴り上げられすっぽ抜けて後方に飛んでいってしまった。
そして飛んでいったナイフに注意を向けてしまったのが最大の失敗、
一瞬顔がそちらを向き和樹の方に振り向いた所にちょうど、
「ぶげらっ!?」
二発目の一歩踏み込んでの上段後ろ回し蹴りが顔面にものの見事に決まった。
こっちも2~3メートル吹っ飛び白目をむいて気絶した。
鼻骨が潰れひどい鼻血であるが、自業自得、誰も同情しないだろう。
「ふう・・・」
起き上がってこない二人を見て安堵の息を吐き出す。そこへ、
「いや~お見事でござるな。古菲が手合わせしたがるのも解るでござるよ」
「凄い凄い!和樹ってこんなに強かったんだ!」
「朝倉さんもかなり強いはずって言ってたけど本当だったんですね!」
パチパチと手を叩きながら歩いてきたのは楓だ、やはり慣れているのか落ち着いている。
逆にかなり興奮しているようすの鳴滝姉妹、特に姉。
「ありがとう?でいいのかな?でもこの人達どうしよう?
「ここに転がしておけばいいのではござらんか?何人かが警備員を呼びに行ったようでござるし」
礼?を言った後この二人どうすると聞いた和樹にあっさり答える楓、まあ妥当な判断だろう。
「そうだね。誰か来る前にさっさと移動しようか」
「「「賛成(でござる)」」」
この後、職員室に入部届けを取りに行き正式に散歩部に入った所で和樹のこの日は終わる。
後は普通に帰って食事作って食べてシャワーを浴びて寝ただけなので特に書く事もないだろう。
おまけ
ちなみに明日奈に相談されたネギが念のために桜通りを見回り
原作通りエヴァと戦う事になったのだが・・・和樹はその時間はすでに疲れで寝ていたりする。
おまけ2
放置されたナンパ男二人組みだが、
他の生徒が連れてきた警備員に発見された後、病院に直行。
鼻を潰された方は全治1ヶ月の怪我を負い。
目撃者の証言により二人共停学3ヶ月を言い渡されたのだった。
(ちなみに朝のナンパ騒ぎですでに寮の部屋での謹慎を言い渡されていたらしい)
ちなみに未遂ですんだので少年院へはなんとか行かずにすんだらしい。
和樹は当然正当防衛でお咎め無しである。
後書き
第五話をお送りします。
前回は短めでしたが今回はそこそこ長くできたと思います。
次回は外伝・自習体育『和樹VS古菲』お送りします。
見てみたいという方が2名もいてくださったので書いてみようかと思います。
書けなかった場合は普通に本編が進みます。書けても超短編になりそうなのですが・・・
流れ的には質問タイム後の数合の勝負→自習の体育の時間での『武術室』(床がマット敷きでバネが入っていて怪我しにくい部屋)勝負といった感じになるかと。
『武術室』はうちの高校はありましたね名前覚えてないですが柔道の授業で使う部屋でした。
レス返し
双月様
修正させていただきました。ありがとうございます。
ゆる様
こちらも修正させていただきました。ネギ『君』になるのはもう少し先でした^^;私のミスです^^;
クロノ様
ありがとうございます。がんばりますね。
誤字脱字なるべく気をつけます^^;
HEY2様
>キシャらない夕菜は壊れ指定かな?
そ、それは^^;確かに違和感バリバリですが^^;
なんかまともだと壊れ指定って物凄く矛盾してますよね^^;
木乃香はそのおっしゃる通りでした^^;
前の話の物は時間を見て直して行きますね。
もったいないですか~言われてみればそうかもしれません^^;
まあ外伝で一話書くネタになったからOKと言う事で^^;
ルビス?様
指摘ありがとうございました~。直しておきました。
B組は多分一年の時の問題児を全員集めたクラスなのでしょう、和樹君はスキル:不幸のせいで入ってしまったのでしょう。人数合わせに。
普通の性格の子が転校生か何かで入ったとしてもすぐに真っ赤にそまりそうですが・・・
ロマンスは無かったですね~ネギま世界ではまだ解りませんがw
>B組に所属してる時点で彼女を作る=B組裁判で死刑確定=自殺志願者の方程式が彼を縛ってますからね。
>松田たちのおかげで女性に対する幻想が打ち砕かれていったと思いますし。
はいその通りだと思います^^;
T2O様
はい助かりました^^
>ネギクラスの面々が多少おとなしい感じがしますね。和樹が年上なのでネコを被っているのかもしれませんが……
いえ誰も知りませんよ彼が年上だとは、この世界での彼の戸籍だとちゃんと14歳になってますから(あ
落ち着いてるのはその通りでしょう。あれだけ危険な目にあえば嫌でも落ち着くでしょう。
外伝書くつもりです。あまり長くはできそうに無いですが^^;
ミーハー様
外伝書きますよ~。
どうなんだろう・・・教室では防御か回避しかしないだろうけど、
いざまともな試合になればちゃんと攻撃もしてくれるかと、通じるかどうかは知りませんがw
あくまで防御と回避が最高レベルなだけですんでw