ここはある世界のある一軒家の一部屋、
その部屋の中で日曜日の夜中に一人机に向かい勉強している少年が一人居る。
彼の名前は式森和樹、魔法使用回数と言う物があるこの世界でただ一人『魔法使用回数不明』という極めて特殊な人物であり、この話の主人公でもある。
机に向かい教科書を広げノートに単語を書いている。どうやら人物名のようだが・・・おや?なにやらぶつぶつ呟いているようだ。
「あ〜なんで昔の人の名前ってこんなに長いんだ・・・全然覚えられないし明日のテストやばいなこりゃ〜・・・」
はぁ〜と盛大なため息を吐き出す。どうやら今日はテスト前日だったようだ。
「赤点ギリギリかも・・・はぁ悩んだってしょうがないか・・・下で何か飲んでこようっと」
立ち上がり台所に行き冷蔵庫から麦茶を取り出し飲む、そして飲み終わりコップを洗っている最中にすでに日常と化しているある出来事が起こった。
「げっ!マズ!魔力が!」
それは魔力の暴走だ。彼は実は一度死んでいるのだ。
もともとは魔法使用回数8回の落ちこぼれだったのだが(今でも落ちこぼれだが)その魔法使用回数を使い切り一度灰になったあとなんだかんだで生き返ったのだ。
その時彼の魔法使用回数は『不明』になったのだがそれと同時にある現象がたびたび起こるようになってしまったのだ。
それが魔力の暴走である。
普段は舞穂というなの少女の能力で押さえ込まれているのだが、それはその少女の近くに居ないと発揮されない。
そして今現在、彼女から離れている時に起ころうとしているのだ。
「早く舞穂ちゃんの所へ!ってあ〜間に合わない!?」
彼の体から漏れ出した魔力が彼の周りに漂い光を発しだした。
「うわうっ!」
慌てふためきそれを口に出した瞬間光がはじけ、彼は意識を失った。
「う〜ん・・・ここは?」
意識を失い放り出されていた彼、式森和樹が目を覚ますと其処はとてつもなく大きな木の根元だった。
「大きい木だな・・・また何処かに飛ばされたのかな〜?」
またと言う事は前にもこんな事があったのだろうか?
「前は寝てる時に起きちゃって目が覚めたらエジプトだったんだよな・・・あの時はたまたま夕菜のお父さんに会えたからなんとかなったけど・・・」
あったらしい、
「はあ・・・とりあえず周りを見て周ろうっと・・・」
はぁ・・・と盛大にため息を吐くと歩きだす彼だった。
それから30分後
「これって・・・体育館・・・だよね?」
彼は体育館らしき建物の前に立っていた。
「てことはここ学校?でも喫茶店?もあったよな?なんで?」
ん〜と首を傾げ考えだす・・・そこへ、
「おい!貴様!」
誰かが声を掛けてきた。
「へ?」
声の聞こえた方に顔を向ければ其処には、
真っ黒なローブを羽織った可愛い10歳位の女の子と、その隣に女子制服らしき物を着たロボット少女が立っていた。
「え、えっと?僕?」
「そうだ貴様だ、貴様この学園の生徒では無いな?何故ここに居る?」
自分を呼んだのかと聞き返すとそう何とも偉そうな口調で聞き返してきた。
「え〜となんでって言われても・・・事故?かな?」
どう答えればいいのか迷いながらも一応そう答える和樹、
「事故だと?何を言って・・・ほう・・・貴様、魔法使いか。」
「へ?」
その答えに対して再度聞き返そうとした少女が急に目を細めそう言ってくるが、和樹には何の事だかさっぱり解らない。
まあ当然だ彼の常識では人は多い少ないは有るにせよ皆魔法使いなのだから。
(とぼけている?いや自分で気づいて居ないのか?これほどの魔力を宿しながら・・・)
何か考えている少女だったかがすぐにニヤリと笑うと、
「まあいい・・・悪いが貴様の血・・・吸わせて貰うぞ」
なんて事をのたまった。
「え?ええ?!」
その言葉に「この娘吸血鬼!」と驚く和樹、
「それほどの魔力、あの小僧の血を飲まずともこれで呪いも解けって!こら逃げるな!」
続けようとした言葉の最中、ダッ!と行き成り背中を向け全速力で走り出す和樹、とんでも無い速さで一目散に逃げていく。
「ま!待て!え〜い茶々丸追うぞ!」
「あ、はい。」
横のロボットの少女(茶々丸と言うらしい)にそう言い飛び立ち追いかける吸血鬼?少女、
「うわ〜!追って来た〜!」
後ろを振り返りそう叫ぶとさらに加速する和樹、
「くそ!なんて足の速さだ!」
そういって彼女達の方も速度を上げ深夜の鬼ごっこが開始された。
〜だいたい一時間後〜
「ゼーゼー・・・やっと巻いたかな?」
後ろを振り返れば先ほどの二人は居ない。
「ふ〜何だったんだろうっ!」
安堵しそう呟きながら前に向き直れば、
「鬼ごっこはおしまいだ・・・手間を掛けさせよって・・・」
額に青筋を浮かべた吸血鬼?少女が居た。
「もう逃がさんぞ!身動きできん程度に痛めつけてやる!リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!闇の精霊3柱、魔法の射手、連弾・闇の3矢!!」
そう叫び怒りのままに呪文を唱え和樹に魔法を放つが、
「うわっと!」
「な!避けた?!」
避けた、三発とはいえ至近距離で放った魔法を完璧に、
「あ、危ないじゃないか!」
「煩い!お前が逃げるのが悪いんだ!大人しく血を吸わせろ!」
危ないじゃないか!と叫ぶ和樹にそう叫び返す吸血鬼?少女。
だが当然和樹の答えは、
「嫌だよ!」
NOだ。
「ならもう一発喰らえ!次は外さん!」
そう言ってさらに詠唱を始めようとする少女に和樹は、
「ええ!そんな理不尽な!」
「煩い!逃がさん!リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!闇の精霊11柱、魔法の射手、連弾・闇の11矢!!」
そう叫び逃げ出すがその後ろから数が増えた魔法が迫る・・・が、
「うわ!と!この!なんの!」
「な!これまで避けるか!」
そのすべてを完全に避けきる和樹。
「くそ〜!え〜い茶々丸捕まえろ!」
「了解です。マスター。」
地団駄踏み悔しがり隣の茶々丸に捕まえろと命じる吸血鬼?少女、
「申し訳有りませんが捕まってください。」
「嫌だってば〜!」
叫びながら掴みかかってくる手を、あるいは払い、あるいは身体を捻り、あるいは飛びのきかわし続ける和樹。
「え〜い茶々丸でも捕まえれんのか!こうなったら・・・茶々丸どけ!」
その声に反応し茶々丸が空えと飛び離れると、
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック、来たれ氷精、闇の精、闇を従え吹けよ常夜の氷雪、闇の吹雪!!」
呪文の後、その両手から吹雪が氷嵐が和樹に向かって放たれた。
それは和樹へと直進しさすがに避けきれないだろうと思われた次の瞬間
「うわぁぁ〜!?くっくるな〜!?」
突き出された和樹の両手が発光し目の前に光の壁が現れ、
「な!」
その壁は吹雪をそのまま少女へと跳ね返した。
「マスター!」
「くっ!?」
なんとかギリギリで左方向に飛びかわす少女だが右手と右足が凍り付いた。
一方一向に襲い掛かってこない吹雪に和樹が反射的に閉じていた目を開く、
「あ、あれ?」
何が起こったのかわからずキョロキョロと周りを見回すと、右手と右足を氷つかせた少女がうずくまり自分に掴み掛かって来たほうの少女がその少女に駆け寄るのが見えた。
(まさか魔法使って弾き返しちゃった?!)
自分のした事がなんとなく解り焦り出す和樹、なぜかと言えば、
(僕が魔法を使うと世界が滅びるって・・・あれ?別になんともないよね?)
そう『自分が魔法を使えば世界が滅びる』そう言われていたのだが・・・周りはなんともなっていない。
(いったい・・・どうなってるの?)
今までは火山が噴火したり株が大暴落したりと色々あったはずなのにと首を捻っている所に、
「いやはや・・・大丈夫かい?エヴァンジェリン?」
そう言いながら白いスーツの男が現れた。
「ふん・・・この程度すぐに治癒できる。」
「そうかい・・・所で君は誰だい?」
そっぽを向きながら答える吸血鬼?少女改めエヴァンジェリン(長いのでエヴァにしよう)
その答えに苦笑しながら和樹の方を向き直り尋ねてくる男性、30代前半から30台中半と言った感じだろうか?
「さっきの戦闘を見る限りでは魔法使いのようだけど?」
「えっと・・・それに答える前に此方からも一つ聞いてもいいですか?」
「ああ・・・いいけれど。」
「ここは何処なんでしょう?」
「え?」
そうして場が沈黙した。
後書き
初めましてHARUです。
これが初作品になります。
感想・指摘など頂けると嬉しいです。
がんばって続けて行きたいと思っていますのでよろしくお願いします。