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「ある英霊?の物語 第1話(Fate+ネタバレにつき未記入)」

柘榴 (2006-03-23 13:40)
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 守りたかった人がいた。

 守れなかった人がいた。

 守ることすら出来なかった人がいた。


 助けたかった人がいた。

 側に居たかった人がいた。

 側にいることも出来なかった人がいた。


 そのせいで、駄目になった人がいた。

 そのせいで、辛くなった人がいた。

 それが、何故か、我慢できなかった。


 

 ある英霊?の物語

 第1話 とりあえず、いらっしゃい。


 「………ここはどこだ?」

 目の前の煉瓦造りの壁を見ながら、そう呟く。

 光量が妙に少ない、まぁ、たいまつが光源なのだから、当然といえばそうなのだが。

 「で、どこだろうな?」

 「私が聞きたいですよぉ………誰なんですか、貴方?」

 先程より幾分落ち着きを取り戻したが、未だ泣きそうな顔をしている、誰か。

 まぁ、会話も出来ない位慌てるわ、泣き喚くわしていたのからしたら何倍もいいのだが。

 気がついたらどことも知れない場所、誰とも知れない相手がいたら普通慌てる。実際俺だって訳が分からなかったし

 「その問いに関しては俺も聞きたい。Who are you?」

 「日本語で通じますぅ、私日本人ですよぉ………」

 その子の顔が余計に歪む。

 いや、日本人、なのか?

 雪のように白い肌と、羨ましい位綺麗な銀髪は腰の辺りまで伸びていて、涙で濡れた瞳は真紅の色。

 背丈からして俺と同年代(多分、俺より上)なんだと思うけど、くしゃくしゃに歪ませた顔を見ていると、むしろ年下に思えてくる。

 慰めるのに必死だったので、気づかなかったけど、どうみても日本人らしくない。

 「ごめん。ぱっと見外国の人に見えたから」

 「………これでも私、友達からは日本人形みたいってよく言われるんですけど…………」

 「その子は日本人形を大いに勘違いしている」

 もしくはお人形みたいに可愛い、とでも言いたかったのだろう。実際、目の前のこの子は服装の突飛さを抜かせば、アイドル並みに可愛いけど。

 ていうか、何でこの子真っ赤な外套―――聖骸布―――なんて身に着けてるんだ?………今何か変な言葉が、頭に

 「沙織ちゃんのことはどうでもいいんです!そういう貴方こそ、そんなアーチャーみたいな格好で日本人云々言わないでください!」

 「いや、俺あいつほど色黒くないから。って、アーチャー?」

 一瞬頭の中にやたらいい笑顔浮かべる赤い人が浮かぶ。いや、あの人は好きだけどね。待受画面にも入れてるし。

 「そうですよ。というか、まんまあの人です。それにしても綺麗ですねその白髪?染めたんですか?もしかして、地毛?」

 いや、なんで貴方があの人を知ってるんですか?やったんですか、あのゲーム?
年齢的には問題ないかもしれないですけど、なんか、ねぇ?

 「って、ちょっとストップ!」

 少し落ち着いたのか、こちらを興味津々で見てくるその人の眼前に手をかざす。

 「地毛も何も、俺は髪なんて染めてな」

 言いかけて。

 かざした自分の手が随分と日に焼けたような色なのに気付く。

 「………あ〜…………つかぬ事聞くけど、俺赤い服に白髪?」

 出来れば違って欲しいなぁ、と思うんだけど。

 その問いに、その子は首を縦に振って返してきた。

 ははは………これって世に言う憑依物って奴なのかな?

 ………………………寝たい、何もかも忘れて。起きたら夢だったってオチにしたい。


 で、十数分後。

 「えっと、つまり俺も君も、生粋の日本人で、何の因果かこの体に入ってる訳なんだが………」

 「はい。」

 俺よりも落ち着いた表情を見せる彼女。いや、凄いね。先刻までの慌て振りは何処に?

 周りが慌ててると逆に自分が落ち着くっていうあれか?

 「まず、俺はどう言う訳かアーチャー、というか、エミヤの体に入ってる。で、君は」

 「容姿の特徴聞いてると、イリヤちゃんっぽいですよね。」

 「そうだな。俺たちが知ってるイリヤよりも年齢は上みたいだけど。」

 あれ?でも、確かイリヤってホムンクルスだから、年取らないんじゃなかったか?

 向こうも同じことを考えてるみたいで、顎に手を当ててむぅ〜、とうなってる。

 「………まぁ、その辺は置いておこう。問題は他にも有る訳だし。」

 「ですね。まず何よりここがどこなのか、ってことです。」

 そう。ここがどこなのか。

 順当にいけばここは、Fate世界(ネットだと型月世界とだったか)だと思われる。

 「ちなみに、タイプムーン作品、どのくらいやったことある?」

 「大体はやってます。月姫は歌月もやりましたし。ホロウはまだやってないですけど。」

 「俺はFateが途中、って所。ネタはネット小説やら何やらで大体わかるけど。」

 つまり二人合わせれば大体の流れは掴めるわけだ。これは結構アドバンテージになる。…………と、いいなぁ。

 「で、そんな君に聞くけど、この風景、見たことある?」

 言って辺りを見渡す。煉瓦造りっぽいこの建物は広さにして、ちょっとした体育館位。向かって右手の方には、壁に沿うように階段が螺旋状に作られてる。

 天井は…………明かりが少ないから、暗くて見えづらいが、相当高いところにある。ぶっちゃけ塔だろう。

 「…………無いですね。造りは欧州っぽい感じがしますけど」

 「だな。……………う〜ん、何か、どっかで見た気もするんだが…………」

 胡坐をかきながら、髪の毛を掻き毟る。あ、意外とエミヤの髪って硬い。てか、ごわごわする。きちんとトリートメントしろよ。

 「………………」

 「ん?」

 同じく横座りになって、足を楽にしているその子がこちらを何か言いたげに見てくる。

 「何?もしかしてお尻痛いとか?」

 俺たちは今、その建物の中心(床によく分からない記号やら円やらが書かれてるから、おそらく召喚陣だと思われる)に腰を下ろしてる訳で。

 まぁ、こんな石畳じゃ痛くもなるだろう。

 「あ、それは大丈夫です!」

 わたわたと両手を前で振るその子。うん、演技でやってるんじゃなきゃ、非常に可愛らしい動作だ。

 「そうじゃなくて、さっきの質問です。」

 「さっき?」

 今までの会話を振り返る……………あ。

 「俺が誰かって事?」

 「はい。まず、何よりそれが先だと思いますけど」

 あ゛〜〜〜、そうだな。うん、分かってたよ、分かってたからそのジト目はやめて欲しい。

 「俺の名前ね。名前は……………」

 「はい。」

 「名前は…………………………」

 「……………はい。」

 「………………………………………」

 「……………………………………………………」

 「…………………………………………………………………エミヤ シロウ?」

 「何で疑問系なんですか?」

 「いや、本当にわかんないんだって!!」

 そう。何故か俺の名前が頭からすっぽりと抜け落ちてる。

 それ以外の事、例えば親がどんな仕事してるとか、どんな学校行ってたとか、趣味やら、性癖(?)やらははっきりと思い出せるのに、名前に関する部分は綺麗さっぱりと抜け落ちてるのだ。

 「……………(ジト〜〜〜〜)」

 「うん、俺も自分で何言ってるんだと思うし、いきなりそんな事言われても、十中十信じられないけどその擬音付きそうなジト目は勘弁して。」

 血潮は鉄でも、心は硝子だから、今の体。

 「そう思うなら本当の事を言ってください。」

 「別に嘘を言ってるつもりはないんだけどね…………」

 あ、ちょっと涙出てきそう……。

 「つまり私から名乗らないと言うつもりはない、ってことですね。いいです。分かりました。」

 つまり私への信用はその程度なんですね、がっかりです。って顔が言ってます。

 「いや、そういうわけ」

 「私の名前は………………あれ?」

 お願いだから聞いてよ、俺の話。………って

 「荒れ?」

 「名前は……あれれ?」

 うん、何とな〜くオチが見えてきた。

 「………………………いりやすふぃーる・ふぉん・あいんつべるん?」

 「………OK。信じるし、信じてもらえたね?」

 「…………………はひ(涙)」

 うん、俺も泣きたい。


 「とりあえず、名無しはお互い辛いから見た目の名前でしばらく呼び合おう。」

 「…………はい。ただ、そうすると本物に出会ったときまずくないですか?」

 む。それはそうかも。ここが型月世界で更にFateゲーム内だった時、衛宮士郎やイリヤスフィールに出会う確率は阿呆程他界、もとい高い。

 「う〜ん、じゃあサーヴァント名で行く?」

 「ですね。そうすると、私は………」

 「う〜ん…………フェアリー、とか。」

 「じゃあそれで」

 いいの!?いや、半分ネタなんだけど

 「?どうしたんですか?」

 「いや、本当に良いのかなって……」

 「だって、素敵じゃないですか。妖精なんて。可愛らしいって言う代名詞ですよ。」

 言って立ち上がると、くるりとその場で一回転。ま、喜んでくれるならいいけどね。

 「じゃあ改めて、よろしく、イリヤ、もといフェアリー」

 立ち上がり、彼女にすっと手を差し出す。

 「こちらこそ。シロウ、もといアー……もとい、お兄ちゃん♪」

 「な、なにぃ!!?」

 「いいじゃないですか、この体なら問題ないでしょう?私も兄がほしかったですし。」

 差し出した手を両手で掴みながら、子悪魔みたいな顔で笑う。いや、確かにそうだけど、なんというか、自分と同い年位の見た目の人にそう言われるのは非常に違和感が。

 ………ま、いいか。うん。何かそう思うので良しとする。

 「…………全く。まさにフェアリーと言った所か。悪戯好き、と言う意味でもな。」

 「あら。淑女(レディー)のちょっとした冗談くらい、笑って受け止めるのが紳士というものよ。アーチャ−」

 振った自分が思うのもなんだが、ノリノリだな。

 「さ、行きましょう。エスコートも紳士の仕事よ」

 「やれやれ、とんだレディーもいたものだ。まぁ、ご指名とあらば仕方あるまい。」

 端から見たら、笑われそうな演技。

 仕方ないさ。俺も彼女も、まだ頭が現実に追いついてないんだから。演技でもしてないとやってられない。

 イリヤの手を恭しく掴みながら、舞踏会の場にでも行くように台座を二人で降りる。

 向かうは目の前の木製の扉。

 その扉が外側からこちらが歩くのを見定めたように、開く。

 差し込む光。次いで逆光で顔が見えづらい小さな影。

 「…………誰ですか、貴方達は」

 どこかで聞いたような声。

 「開口一番がそれか。やれやれ、とんだマスターもいたものだな。」

 とりあえず、お約束。はてさて、一体誰が出てくるやら………………へ?

 「………残念ですが、私はマスターではありません。」

 そう、小さく答えたのは、長い髪を二つに分けて頭に妙に大き目の丸い飾りをつけた、小さな少女。

 知っている、この子は良く知っている。小さいくせにやたらと食うこの胃袋は宇宙な少女を。

 ぶっちゃけ、俺の目の前にはリコ・リスが怪訝そうにこちらを眺めていた。

 ごめん、これは予想してなかった。


 あとがき
 どうも。知ってる人にはお久しぶり(といっても、旧夜華に2、3話送った程度ですので知らない人が多いでしょうけど)で、知らない人は始めまして。柘榴と申します。

 はてさて、何となく書いてみたくなって送ったこの憑依+DS+Fateなんて訳分からない作品。果たして皆さんに受け入れてもらえるのでしょうか?ちなみに作者は運命もってませんw


 一応この後2、3話位は脳内プロットは出来てるんですけど、それ以降は見切り発車な状況。無茶ですねw

 とりあえず、こんな駄文を読んでいただきありがとうございました。

 

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