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「鬼畜将ランス〜第二十六話 ヘルマン内乱 後編〜(鬼畜王ランス)」

B-クレス (2006-02-14 16:23)
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レリューコフがロレックス軍を撃退した頃、もう片方の戦局も大きく動こうとし始めていた

その戦局とは、スードリ17、パットン軍とネロ軍がぶつかり合っている所である

ローレングラードの方は、完全に膠着状況に陥っていた、何せ両軍共に『護り』に入ってしまっているのだ

アリストレスとしては、ミネバを引きずり出し、そのまま首都『ラング・バウ』を落とし、ステッセルを処断したかったのだが

ミネバが挑発にまるで反応せず、完全に護りに入っている為に、動くに動けないのが現状であった


スードリ17郊外 パットン軍本営

そこには、次々と伝令からの報告が入り続けていた

「報告します!!第三列部隊負傷率が50%を突破しました!!」

「第四列部隊を前に出せ!!其れと同時に第三列部隊を最後尾に回して急ぎ回復させろ!!」

「御報告します!!世色癌、竜角惨、共に半数をきりました!!」

「クソッ、負傷が軽い兵には使わないようにしろ!!」

その報告は全て悪い報告ばかりで、其れを聞くパットンは苛立ちながらも次々と指令を出していた


「予想以上にきついな、こりゃ」

ヒューバートは、次々と入ってくる報告と、後方に移動させた兵達の負傷具合を見て、そう呟いていた

「しかし、数の差を考えれば上等なほうじゃろうて」

「とはいっても厳しい戦況に変わりは無いだろ?

 今日は耐えれたとしても、明日はどうするんだい?」

その言葉に反応するように、フリークとハンティが口を開く

しかし、二人とも疲労の色は隠せないようで、近くにある椅子に腰を下ろして、竜角惨を飲みながら、だったが

「二人とも、かなり辛そうだな」

そんな二人を見て、パットンはそう呟いた、二人はそんなパットンを見た後、苦笑しながら口を開いた

「鉄人形は儂等の魔力を媒介として動くからの、この老骨には流石にこたえるわい」

「300動かすだけでも、結構魔力使うからねぇ、私も24時間フルで動かすのは流石に勘弁してもらいたいよ、あれは」

そんな二人を見て、パットンは何か決意を秘めたような表情を見せた

そして其れとほぼ同時に、負傷している伝達兵が駆け込んできた

「敵本隊が突撃を開始!!このままでは支えきれません!!」

「第四列を後方にひかせて、第五、第六を同時に前線に出せ!!

 俺も自ら出る!!ヒュー、御前もついて来い!!」

「なっ!!パットン!!あんたが前線に出てどうするんだい!!」

伝達兵の報告を聞いて、即座に出したパットンの指示を聞いたハンティがパットンに向かってそう叫んだ

「まぁ、わかってやれよハンティ、こいつは元々後ろでじっとしてられる性分じゃないんだからな

 まぁ安心しな、この熱血馬鹿は俺がきっちり護ってやるからよ」

そんなハンティに笑いかけながら、軽く肩を鳴らしつつ、ヒューバートがそう言った

そのヒューバートの言葉に、僅かにパットンが苦笑するが、すぐに真剣な顔になると、近くにおいてあったグローブを装備する

「まったく、あんた達は・・・・絶対に死ぬんじゃないよ?」

「当たり前だ、こんなところで死ぬ気は無い!!」

そんな二人を見ながら、苦笑しつつ言ったハンティの言葉に、パットンはそう宣言して、前線へと向かっていった


スードリ17郊外 ネロ軍 中陣


「逆賊にしては、良くやるではないか」

第四軍指揮官のネロは、幾度の突撃にも耐え、陣形を崩していないパットン軍をみながら、そう呟いていた

「しかし所詮は逆賊、栄光ある我等第四軍には決して勝てますまい」

ネロの隣に控えている副将と思わしき男が、薄ら笑いを浮かべながらそう言った

「うむ、栄光あるヘルマンの騎士である我等に勝てるはずなどあるまい

 だが、少しは身の程を教えてやらんとな、控えている部隊全てに突撃命令を出せ!!」


ネロがそう命令を下し、各部隊に伝達兵が走ってまもなく、一人の伝達兵がネロのもとにやってきた

「御報告します!!クリーム副将軍が手勢を率いてどこかに出陣した模様です!!」

その伝達兵の報告を聞いて、最初に口を開いたのはネロの隣に控えていた将軍であった

「どうせ功を焦って動いただけでしょう、逆賊どもを潰した後に厳重に注意してやればよいだけです」

「ふむ、まぁ良かろう、功を立てたいと思う事は良しとしてやるが、独断行動に関しては罰を下さねばならん

 だが、確かに言うとおりにそれは逆賊どもを捻り潰した後でも十分だな

 クリーム副将の事は放置しておけ、後で直々に処罰を下す」

ネロはそう言うと、その伝達兵を下がらせ、指示通りに突撃していく部隊を見続けていた


パットン軍 最前線


「オラオラオラオラ!!どうした、この程度のやつしかいねぇのか!!」

「あんまりですぎるんじゃねぇパットン!!俺の苦労を少しは考えて動け!!」


そこでは、ネロ軍の本隊による突撃が始まったために、軍全体の負傷が大きくなり

士気が落ちかけていた兵を鼓舞するかのように、パットンとヒューバートが、攻め寄ってくる兵を次々と殴り倒し、切り伏せていた

「なぁヒュー、どっちがより多くの敵を倒せるか勝負しないか?」

「いいねぇ、その勝負乗った!!」

二人は、士気をあげるためか、ややわざとらしい位に大声で、そう言いながら敵を倒し続けていた

その言葉に、ネロ軍の兵士はやや逆上して襲い掛かるが、パットンとヒューバートの二人の前に、次々と倒されていた

「んじゃやるか・・・!!オオオオォォォォォオオ!!

  くらえ!!武舞乱舞!!

襲い掛かってくる兵を倒しつつ、雄叫びを上げて『気』を溜め込んだパットンは

周囲にいた敵兵約五十人ほどを、自らの『必殺技』を持って、一気に殴り倒していった

縦横無尽に、まるで舞うように拳が繰り出され続けるその技を前にし

敵兵達は満足に抵抗さえも出来ず、パットンの一撃をくらい次々と倒れていった


「こらパットン!!其れは卑怯だろうが!!」

ヒューバートが、『必殺技』を放ったパットンを見ながらそう叫んだ

「別にいいだろうが!!御前は武器をつかってるんだからよぉ!!」

「うるせぇ!!全身武器の筋肉馬鹿みたいな奴が文句を言うんじゃネェ!!」

パットンも、ヒューバートも、そういいながらも、敵を確実に倒し続けていた

その余りの余裕、そして余りの強さに今度はネロ軍の士気が崩壊しかけたのだが


「何をやっている!!その逆賊二人を早く討ち取るのだ!!

 逆賊パットンの首を討ち取った物をこの戦一番の手柄として副将軍にしてやる、恐れず突き進め!!」

前線近くまで来ていたネロが、そう兵を鼓舞すると、兵達はこぞって『パットン』めがけて突撃を再開しだした

「チッ!!欲に目がくらみやがったか!!」

突如として自分だけを狙いだしたネロ軍の兵達を見て、パットンはいいながら、その兵達を返り討ちにし続けていた

「パットン!!このままじゃあ流石にやばいぞ!!」

パットンの背中を護るように戦っているヒューバートが、段々と勢いづいてきている敵を見てそう叫んだ

パットン軍の兵士達も奮戦しているのだが、やはり多勢に無勢、中々押し返すまでは至っていないのだ

「だが今俺たちがここで引いたら逆に飲まれるぞ!!」

「くそっ、手詰まりかよ!!」

そして、パットンとヒューバートの二人が前線で戦い続けているからこそ、パットン軍が瓦解していないのも事実である為に

パットンとヒューバートは引くに引けず、こうなったら死ぬまで戦い抜いてやろうと覚悟を決めていたのだが


戦況は、余りにも意外なところから動いた


「全軍突撃!!パットン軍に助太刀するぞ!!」

突如としてネロ軍の側部を突くように謎の軍隊が現れ、その軍を率いているらしき人物がそう叫ぶと、ネロ軍に突撃を開始したのだ

その数はおよそ1000程度、ネロはパットンの伏兵だと思ったのだが、パットンにはまったく覚えの無い軍勢であった

その軍の一番の特徴は、ヘルマンではまず見る事の無い不思議な『生物』に乗っており、その全身が鎧で覆われていた事だろう

もちろん、その不思議な『生物』に乗っている人間も皆、フルプレートの鎧であった

そして、その軍はヘルマン軍では到底実現不可能な速度でネロ軍の側部に食らいつき、其の侭ネロ軍の陣形を貫いた

しかも恐ろしい事に、その突撃を終えたその軍隊は、誰一人欠ける者がいなかったのだ

いくら奇襲の形になったとはいえ、その光景は、かなり異常なものであった

「な、なんだありゃ!?」

「早い上に、突破力が並じゃねぇぞ!?」

その、余りにも異常な光景をみたパットンとヒューバートが、やや恐れを含んだ声を上げた

「クゥッ!!ええいひるむな!!あやつらも敵だ、一息にもみ潰せ!!」

そして、突撃を受ける事となった第四軍は、混乱しながらもネロの命令に従い

半数をパットン軍、もう半数をその謎の軍隊にぶつける事にした

「・・・なんだか判らんが今が好機じゃないか?」

謎の軍隊が再びネロ軍と戦闘を開始したことを確認すると、ヒューバートはパットンにそう言った


「あぁ、そうだな

 全軍突撃!!あのネロ軍と戦っている奴らには手を出すな!!

 この戦で決着をつけるんだ!!」


パットンは、気を取り直すように一度深呼吸をした後、全軍に響き渡る声でそう叫んだ

その命令を受け、密集陣形を取っていたパットン軍は即座に突撃陣形へと移り、混乱しているネロ軍へと突撃を敢行した

謎の軍隊の襲撃に混乱していたネロ軍に其れを防ぐ事は出来ず、パットン軍の突撃により、少しずつ押し返されていった


「やれやれ、一体何事だい?」

戦況の急激な変化に対応し切れていないといった感じのハンティが、前線で指示を出しているパットンの横まで移動して、そう言った

「俺にもわからん、だが今が好機なのは間違いないはずだ」

パットンも、ハンティに向かって、やや困ったような顔でそう言うと、再び前線を見ながら指示を出していった


そんな時に、謎の軍隊の方面から一人、パットン達の方に走りよってきている人間がいた

「誰だ!!」

それにいち早く反応したのはヒューバートで、剣の柄に手をかけながらそう叫ぶが、その人物はヘルムを脱ぎ、両手を挙げた

「敵じゃありません、ボクの名前はメナド・シセイ、あの傭兵部隊の副指揮官です!!」

そう言いながらその人物、『リーザス緑の軍副将軍』であるはずのメナドは、敵意は無いことを示す為に腰につけてあった武器を地面に置いた


「メナド・シセイ?確かリーザスの将軍じゃなかったか?」

その名前に聞き覚えのあったヒューバートが、メナドに向かってそう言った

「はい、正確には『元リーザス緑の軍副将軍』です」

「元?どういうことかの?」

メナドの返答に、いつの間にか来ていたフリークがさらに質問を重ねる

「ボク達はランス将軍が『強制退役』させられたことに不満を持って

 『最新鋭の装備訓練の時にその装備を奪って、新しく陥落したばかりのシャングリラ』に立て篭もったんです

 もっとも、ボクと今指揮を執っているハウレーンさんは『その時に人質にされた』んですけど

 その後、シャングリラで皆と話している時に『利害が一致』したから指揮官になったんです

 でも之だけの数ですから、食料とかを得るのも大変なので『傭兵』をしようということになって

 そして、この近くで『傭兵を雇ってくれそうな』軍があることがわかったから、ここまで来たんです

 まぁ、今回は押し売りみたいな形になりましたけどね」

メナドはそう言うと、僅かに苦笑していた

「ふむ、その『傭兵を雇ってくれそう』と言う情報はどこで得たのかのぉ?」

「あぁ、それは『偶々』シャングリラからでて、町に向かっていたときに

 これまた偶々『ランスロット将軍』とお会いしたので、その時に聞いたんです」

メナドのその言葉を聴くと、フリークは声を上げて笑い始めた

「クククククク、さすがリーザス女王とでもいうべきかのぉ?」

「何の事ですか?ボク達は『リーザスの脱走兵』になるんですけど?」

「クククククク、そういう事にしておこうかの」

フリークは、笑顔のままそう言い返すメナドの顔を見て、もう一度笑うとパットンの近くまで歩いていった

「なぁ爺さん、どういうことなんだ?」

状況がまったくわからないといった状態のパットンが、フリークに尋ねる

「なに、リーザス軍と儂等はお互い不干渉で同盟を結んだのじゃガ

 『偶々リーザスを脱走した兵達が、これまた偶々将軍を人質にして逃げて

  さらに偶々脱走兵とその将軍の意見が合致して、そして偶々儂等が兵をほしがっていた』というだけじゃ」

「あぁ、なるほどな」

「なんというか、あくどいと言うか」

「女狐、でいいんじゃねぇのか?」

そのフリークの説明を聞いて、納得言ったと言う表情のパットンだったが

ある程度は納得していたハンティとヒューバートは、やや顔を顰めながらそう言った

「んで、だ、ランスの奴はどこにいるんだ?」

「随分と『疲れていた』ようでしたから、先に町で休息を取ってもらっています

 御本人は前線に出ようとしてたみたいですけど、『疲れている』体では危険なので町に戻ってもらいました」

「そ、そうか」

パットンが、メナドに尋ねると、メナドはにこやかに、だけどどこか威圧感を持つ表情でそう言った

パットンは、そんなメナドの表情を見て、それ以上追求できずに返事をするのが精一杯だった

「じゃあ、ボクはこの辺で、この戦いが終わったら正式に会いにきますので」

メナドはそう言うと、おいていた剣とヘルムをつけて、再び前線の方へと戻っていった

「なんっつ〜か、重武装に見える割には案外身軽だよなぁ」

その光景を見ていたヒューバートが、誰に言うでもなくそう呟いた

「もしかしたら魔法付加を行う事で、重さを軽減しているのかもしれんのぉ」

その言葉に、フリークが応えたが、ハンティは一人考え込んでいた

「ん?どうしたんだハンティ?」

パットンがそんなハンティに気付き、声をかける、ハンティはその声を聞いて僅かに苦笑すると、声を開いた

「あぁ、あんまり大した事じゃないんだけど、ちょっと『疲れ』の原因に思い当たっちゃってね」

「疲れ?あぁ、ランスのか?」

「うん、多分、私の想像であってると思うよ」

「ふむ、そんなにカラーとの同盟交渉が難しかったのか?」

ハンティの言葉に、パットンは自分が思い当たった『疲労の原因』を語るが、ハンティは其れに対して首を横に振った

「まぁ、交渉と言うよりも、条件、かな?」

「条件?なんだそりゃ?」

「ま〜、カラー族は『人間族の男』相手じゃないと子供が出来ないからねぇ

 例外もあるんだろうけど、多分『カラー族の種族維持』のために付き合わされたんじゃないのかね?」

「・・・・つまり、それは」

「ほぼ一晩寝て無いんだとおもうよ、私はね」

ハンティは、なんでもないようにそう言ったが、パットンはその場で頭を抱えた

「あ〜、なんと言えばいいんだか」

「まぁ、責めるのは御門違いだと私は思うよ?

 同盟の使者として向かわせたのは私達の方だからね」

パットンが、その事に怒るべきか同情するべきか、気にしないべきか悩んでいると

ハンティはこれまたなんでもないようにそう言い切っていた

「まぁいい、取りあえず先にこの戦いの決着をつけないとな」

パットンは、頭を軽く振ったあと、前線を見ながらそう言った

もっとも、既にネロ軍の陣形は崩れきっていた為に、もはや勝利は確実といった光景であった

「別働隊は無いみたいだな、一気に終わらせるぞ!!


「「「オ〜〜〜〜!!」」」

パットンの檄に応えるように、兵士達は声を上げ、さらに突撃していった


しかし、この時のパットンの予測は正確には異なる物であった

ネロ軍の別働隊は存在していたのだ、もっとも、既に壊滅させられてしまっているのだが

その別働隊壊滅は、少し時間がさかのぼり、パットン達が前線に出始めた頃になる・・・


スードリ17郊外 ネロ軍 クリーム隊

「いい、出来るだけ迅速に、そして気付かれないように背後に回るのよ」

主将軍であるネロに最後尾に配されたクリームだったが、情勢を見て自ら動き出していた

独断行動での処罰は覚悟の上だったが、それでも功績を立てて、黙らせるつもりだった

クリーム子飼いの兵たちは、全員、軍律違反を自覚しながらも、クリームの指示に従っていた

いや、むしろクリームに別働隊としての行動を進言したのは、その兵達だったのだ

彼等は、ネロから『不要』としてクリームの部隊に回された者たちだったのだが、その練度は決して低くは無い

いわゆる『身分』が低い出身であったために、ネロから敬遠されていた兵達だったのだ

クリームはそんな事はまるで気にせずに、彼等を『兵』として扱った

クリーム指揮下で鍛錬し続けた彼等の練度は、第四軍でも最高峰と言えるものであったのだが

彼等の『上司』であるクリームの作戦は悉くネロによって握り潰され、彼等の活躍の舞台も無かったのだ

だからこそ、彼等はクリームに必死に嘆願したのだ

『自分達は如何なっても良い、将軍の思うように動いて欲しい』と

クリームは、パットン軍の陣形が『ファランクス』である事を理解すると、何としても迂回し、後方に部隊を展開したかったのだが

自分一人だけならともかく、兵達も巻き込んでしまう為に、『命令違反』をしてまで動く事が出来なかったのだ

そんなクリームを後押しするような兵の声を聞いて、クリームも決断を下した

即座に兵を纏め、ネロ、パットンの両軍を大きく迂回する形で、パットン軍の後方に回り込んでいたのだ


「ここまで離れればいいわね、全軍停止、陣を敷いた後、パットン軍の後方を突きます」

クリームの指示に、兵たちは即座に停止し、迅速に、しかし正確に布陣を整えていた

クリーム子飼いの兵の数は僅か300、確りと布陣した上で攻撃しなければ一息に潰されてしまう数であったのだが

その兵たちに怯えの色は無く、むしろこれからの『戦い』への高揚感だけを見せていた

そんな兵達を見て、僅かに苦笑したクリームだが、即座に全軍突撃命令を出そうとして


「させるかぁ!!」

突如としてウシ車ごと切り込んできた男、『ランス』によって、其れを中断する事になった

「皆落ち着いて!!、相手は一人よ、確実に包囲、迎撃しなさい」

クリームは、一瞬その突撃に動揺するが、即座に冷静に戻り、兵達に指示を出した

「チッ!!(かなり鍛えられてる、ジルを街に戻したのは間違いだったか!)」

ランスは、一瞬で動揺を抑えた将軍と、確実に包囲してくる兵達を見て、剣を握る手に力を込めた

ここにジルがいない原因はただ一つ、街での情報収集を任せていたからだ

スードリ17に戻ったランスは、パットンの軍がいない事に気付いて即座に行動に移った

自分は当初の予定であった『郊外での会戦予定地』へ、ジルは詳しい情報を集める為に『街』へと向かった

そうして急いでいたときに、布陣を追えていたクリームの軍団に気付いたのだ

最初はパットンが言っていたアリストレス将軍からの援軍かと思ったのだが

旗に『四』の字が書いてあることに気付き、即座に突撃をしたのだ

ランスはウシ車ごとぶつかる事で相手を動揺させて、その隙にパットン達と合流を狙っていたのだが

即座に動揺が抑えられ、さらに包囲陣を敷かれてしまった為に、行動できない状態になってしまったのだ


「見た感じ将軍かしら?捕らえなさい、手柄になるわ」

クリームは、ランスを軽く品定めするように見た後、兵達にそう指示を出した

兵達も其れに従い、捕縛用の道具を構えていたのだが


「全軍突撃!!ランスを助ける!!」


突如、そんな声が聞こえ、クリームがそちらの方を向いたとき

全速で突撃してくる、リーザス軍の最新鋭の装備部隊、『鉄騎兵』部隊が其処に存在していたのだ

「なっ!?」

クリームは、始めて見たその異様な軍団と、その速度の速さに驚愕してしまった

そして、その一瞬の隙が、鉄騎兵達にとっては十分な『時間』となった


ドガガガガッ「うぉっ!?」ガガガガガガッ!! 

僅かな時間で、丁度中央付近で包囲されていたランスを掴み、其の侭反対側までクリームの陣を貫ききったのだ

「な、なんて火力!?」

その凄まじいまでの火力に、クリームは畏怖を覚えていた、そして、その軍団はゆっくりとクリーム軍を包囲するように布陣をしていった

「ここまで戦力差があれば降るのは恥ではあるまい、悪いようにはしない、おとなしく降伏しろ」

布陣を終えた後、ランスを掴んでいた、桃色の髪の女性、ハウレーンが、クリームに向かってそう言った

「ね、姉さん!?」

ランスが、自分を掴んでいる人物がハウレーンだと気付き、そう声を上げた

ハウレーンはそんなランスに、どこか『凄み』のある笑顔を見せた後、クリームに向かってもう一度降伏勧告をした

「・・・・判ったわ、兵たちの安全を保障してくれれば降ります」

二度目の降伏勧告に、クリームは兵たちの安全保障を条件として、其れを受け入れた

「わかっている、兵の安全は保障しよう」

ハウレーンはそう言うと、手勢のうち200程度の兵をクリームの見張りとして、スードリ17へと向かうように指示を出した


「ね、姉さん、どうしてここに」

ハウレーンにようやく放してもらえたランスは、軽く鎧を調えた後、ハウレーンにそう尋ねた

「まぁ色々あってここに来ただけよ、其れよりもランス、『御楽しみ』だったらしいわね?」

そんなランスに、ハウレーンはもう一度『凄み』のある笑みを見せながらそう言った

「あ、いや、その」

「ジルさんに聞いてるわ、カラー族と同盟した時の『条件』について、しっかりとねぇ」

うろたえているランスを尻目に、ハウレーンは凄みのある笑みのままランスに語りかける


もっとも、その周囲の兵は『見慣れた光景』といった感じに、苦笑している者が多かったのだが

「いや、だから其れは」

「言い訳は後でいいわ、今は『戦争中』だからね

 まぁ、終わった後に『たっぷりと』話を聞かせてもらうから、街で休んでなさい

 『疲れている』でしょうからね」

棘たっぷりのハウレーンの言葉に、ランスは項垂れるように頷くしか出来なかった

もっとも、ハウレーンがここまで棘たっぷりなのは、ジルが『ランスからその条件を出した』とわざといったためだったりする


その後、遅れてきたメナドにも同じように『棘たっぷり』の言葉をもらい、ランスは其の侭宿へと戻っていった

無論、戻った後に『自己嫌悪』を延々としていたのは言うまでも無く

スードリ17に向っていたクリームに、心配されてしまうほどに落ち込んでいたのだが・・・・


そんな事もあり、別働隊は既に壊滅していたので、実際にパットン軍を脅かす条件は何一つとして存在していなかった

そして、士気が崩壊し、隊列を崩されたネロ軍が勝利する条件も、一つとして存在してはいなかった

「えぇい怯むな!!逆賊に臆するな!!」

もはや敗戦は免れない状況でも、ネロは必死に兵を鼓舞し、突撃を続けようとしていた

本来なら撤退するべきなのだろうが、『騎士道』を重んじるネロには、『逆賊に背を向ける』と言う選択肢を自ら潰していたのだ

しかし、戦況は刻々と悪くなっていくだけであった

「クッッッ!!せめて、逆賊パットンだけでも、全軍私につづけぇ!!


ほぼ全軍が壊滅してしまった為か、ネロは残る手勢を率いてパットンへと最後の突撃を行った


「パットン!!貴様だけは私の手でッッ!!」

 ギュワァァァァン!!

しかし、その突撃は、ハンティとフリークが支援のために放った魔法の直撃を受け、完全に阻止されてしまい

そして、その魔法の直撃を受けたネロも、一瞬で絶命してしまった

「ネロが、死んだのか?」

その事実は、伝達兵によって即座にパットンへと知らされた、その報告を聞いたパットンは、全軍に戦闘中止命令を出した


「第四軍主将ネロは討ち死にした!!この戦、俺たちの勝ちだ!!」


「「「オォォォ〜〜!!!」」」

パットンの勝利宣言に、パットン軍の兵たちは勝ち鬨の声を上げ、ネロ軍の兵たちは、武器を捨て、降伏していった


こうして、内乱開始一日目に、第四軍、第五軍は壊滅する事となった

残るステッセル陣営の軍は、首都防衛軍である第三軍のみとなり、戦局は圧倒有利となった

しかし、第三軍だけとは言え、首都『ラング・バウ』を焼き払うようにして戦うわけにもいかず

また、第三軍自体も、かなりの精鋭揃いであるために、苦戦は免れないのも、また事実であった

内乱の大火はまだ収まりきらず、その場所を首都へと移動していく

ヘルマンの人々はただ、少しでも早い平和と、自分達の生活の安寧を祈っていた・・・


あとがき

ヘルマン内乱後編、いかがだったでしょうか?
次回辺りに首都ラング・バウの決戦、その後事後処理で、次の戦いへと移行していくことになると思います
ラング・バウ決戦後、事後処理の時辺りに、兼ねてから何度も言っている人気投票を行おうと思います
詳しい詳細などについては、その際に報告いたします
では次回、(多分)ラング・バウの決戦でお会いいたしましょう


そしてレス返し〜


 シマニクさん

私の拙作を面白いといっていただき、真にありがとうございます
騎士道ランス、もうこうなったら最後まで之を貫けるように頑張りたいと思います
私の出来る限界まで頑張らせてもらいますので、これからもよろしくお付き合いください

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