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「ある少年達の選んだ道 第14話(ガンダムSEED)」

霧葉 (2006-02-10 21:57)
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 どことも知れない暗黒の空間。
 その只中にイザークはいた。
 上下の感覚すら無いそこは宇宙空間によく似ていたが、例え宇宙であってもこれほどまでに何の明かりも無いはずがない。
 だが、その無明の空間にあって、なぜか自分自身の体だけははっきりと見えた。

 と、不意に。
 その場所の空気が動いたのを感じる。
 その方向に視線をやると、数メートル離れた場所に誰かがいるのが見え……

 ゾクリ。

 肌が総毛だった。

「……ぅ……ぁ………」

 全身が震えだすのがわかる。
 イザーク・ジュールという人間の全てが、ソイツに恐怖していた。
 呼吸さえもうまくできない。
 視界の中心にソイツがいる、ただそれだけのことが怖くてたまらなかった。
 なのに視線を外すことができない。
 恐ろしいからこそ、目を離すことができない。

「……ッ……!」

 ソイツがイザークを見た。
 息を呑む。
 ソイツは人の形をしてはいるものの、輪郭さえも曖昧で体格も顔立ちもわからない。
 だが、それでも自分に視線が向いたのを、イザークはなぜか理解できた。

 ゆらり。

 ソイツが動く。
 ソイツの輪郭の中で唯一確かな物――ソイツが手にした一振りの剣が、イザークに向けられる。

「……ぁ………うぁ………」

 殺される。
 イザークの脳裏に「死」のイメージが滑り込んでくる。
 それが既に定められた結果であるかのように。
 強く、強く。
 「死」はイザークを浸蝕していく。

 逃げなければならない。
 そんなことはわかっている。
 だが、身動き一つできなかった。
 蛇に睨まれた蛙のように。
 震える体はどれだけ念じても主の意に沿わない。

「…ぁ………ぅぁ…………ああぁ………」

 ソイツが迫る。
 イザークは恐怖に目を見開き、近づいてくるソイツを見ていた。

 ヒュン。
 剣が一閃し、イザークの両足を切り落とす。

 ヒュン。
 剣が一閃し、イザークの右腕を切り落とす。

 ヒュン。
 剣が一閃し、イザークの左腕を切り落とす。

 痛みは無い。
 血も流れない。
 切り落とされた体のパーツはどこへともなく消えた。
 その非現実感が逆にイザークの恐怖を煽る。

「………ああ………あああああ………!」

 見開かれたイザークの目から涙が零れ落ちる。

 そのイザークの四肢を失った体に、ソイツの剣が突きつけられる。
 心臓の真上に突きつけられた刃先の冷たささえ、感じられた気がした。
 そして……

『死ね』
「うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」


「うわああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

 イザークの上体がベッドから跳ね上がる。
 絶叫によって空になった肺を満たそうとするかのように、呼吸器が荒い息を繰り返させる。
 ガタガタと震えている体を自らの両腕で抱きしめ……イザークは自分の身体に両腕があることに気付いた。
 次いでそこが明るく白い空間であることにも。
 自身の体をきつく抱き、体全体で大きく息をしながら周囲の様子に視線を巡らせる。

 基本的に物が無く、自分の寝ているベッドくらいしか無い部屋。
 全体的に白を基調にしていて清潔感が漂っている。
 白いカーテンのかかった窓は大きく、明るい太陽の光を十分に取り込んでいた。

 数秒間考えて、ようやく気付く。
 そこはどこかの病院の病室らしかった。
 嫌な汗でびっしょりと濡れた自分の衣服も、よく見れば着慣れたワインレッドの軍服ではなく、白い入院着だった。

 今度は数十秒ほど考えてイザークはようやく悟り、大きく息を吐き出して体から力を抜く。

「………夢……か……」


   第14話 痛み、悩み、苦しみ


「ジュールさん! どうしました!?」

 慌しいノックの後、返事も待たずにドアが開き、看護婦が急ぎ足で入ってくる。

「……大丈夫だ。どうもしない」

 イザークはチラとそちらに視線を向けると、自分の体に回していた腕をゆっくりと離しながら答える。
 体の震えはようやく止まっていた。

「でも……」
「少し夢見が悪かっただけだ」

 食い下がる看護婦の追及を切り捨て、周囲を見回す。
 ここが病院であるらしいことは部屋の様子や、何より看護婦がいることでわかる。
 だが、どこの病院かはわからない。
 窓の外を見ればここが地上であることはわかるが、地上に下りるのが初めてのイザークには、その景色から場所を特定することなど当然できない。

「ここはどこだ?」
「ジブラルタル基地の軍病院です。基地に降下して来た時ジュールさんは既に意識が無かったので、ここに運び込まれたんです」

 無駄な努力をやめて聞いてみると、すぐに答えは返ってきた。
 ザフトの保有する地上の拠点では、カーペンタリアに次いで二番目に大きな基地だ。
 なるほど、それならばこのしっかりとした医療設備にも納得がいく。
 もう一度周囲を見回し、そこで気付いた。
 何やら視界がおかしい。
 目を擦ろうとして、そこでようやく自分の顔に巻かれた包帯を認識する。

「……これは?」
「コックピットの計器類が破損して、そのカバーの破片が当たって切れたんです。でも大丈夫ですよ。目には当たってませんし、ちゃんと治療すれば傷跡も残りませんから」

 包帯に触れながら問うと、看護婦は安心させるように微笑みながら答えた。

「他に身体に異常は無いんだな」
「はい。モビルスーツ単体で大気圏に突入して何の問題も無いなんて、機体もパイロットもたいしたもんだって、皆さんおっしゃってます。大気圏突入のエスコートをしてくれたエルスマンさんにちゃんとお礼を言ってあげてくださいね」

 その答えにほっと安堵する。
 そして考える。
 「ヤツ」は今どこにいるのか。
 何をしているのか。
 自分が生きているのだから、「ヤツ」が死ぬはずがない。
 無事にこの地球のどこかに下りているだろう。
 看護婦の言葉の後半など、聞いてはいなかった。

 顔の傷が疼く。
 居ても立ってもいられなかった。
 ベッドから降り、傍らに置かれたバッグを開ける。
 予想通り着替えが一式入っていた。

「ちょっと、何をやってるんですか!?」
「身体機能に異常が無いのならば、ここに長居する必要は無い。退院する」

 慌てる看護婦に一方的に告げ、汗を吸って肌に張り付く不快な入院着を脱ぎ捨てる。
 タオルで汗を拭き、手早く色気の欠片も無い下着を着け換える。

「そんな。まだ顔の傷は塞がりきっていないんですよ」
「行動に支障は無い」

 おろおろする看護婦を尻目にシャツを着、ワインレッドのズボンをはく。
 と、そこにノックの音が響いた。
 看護婦は救いを求めるような表情でドアに視線を向ける。
 対してイザークはドアに視線も向けなかった。

「どうぞ」
「イザーク。目が覚めたのか」
「ああ。もう大丈夫だ」

 イザークの声に応じて入ってきたのは、褐色の肌に金髪の同僚だった。
 その声にイザークはようやく視線をそちらに向け、答えながらワインレッドを基調とした上着に袖を通し、ボタンを留めていく。

「もう大丈夫って……その包帯は?」
「エルスマンさん、あなたからも止めてください。まだ怪我が治りきっていないのに退院するって言うんです。ちゃんと治しておかないと傷跡が残ってしまうかもしれないのに……」

 脱ぎ散らかされたままの衣服、特に下着に目を奪われそうになりながら、ディアッカは苦労してソレから視線を逸らし、問いかける。
 答えたのはイザークではなく、ディアッカの視線に気付いて慌てて衣服をかき集める看護婦だった。

「知ったことか。それよりも『足付き』だ。ディアッカ、何か情報は無いか? 降下の状況からしてそう遠くない場所に降りているはずだ」

 看護婦の言葉をバッサリ切り捨て、イザークは軍服のあちこちを引っ張って身なりを整える。

「あ……ああ。リビア砂漠の辺りに着陸したって話だ」
「……となると、最も近い拠点はバナディーアか」
「お、おい、イザーク。何もそんなに急がなくても良いだろ。せめてその怪我が治るまではここで治療しといた方が……」
「バナディーアにも医者くらいいるだろう」

 引き止めるディアッカを振り切るように部屋を出た。
 ディアッカは慌ててそれを追う。

「……だ、だが、機体だって無いんだぞ。特にお前のデュエルは損傷が酷い。今行ったってできることなんて……」
「機体が無くてもできることはある。情報収集も必要だし、向こうの環境に少しでも慣れておく必要があるだろう。砂漠などという過酷な場所ならなおさらだ」

 それは本能的とさえ言える選択だった。
 人はよくわからないもの、すなわち未知の存在に対して最も強く恐怖する。
 彼女の恐怖はストライクにではなく、それを操る「誰か」に向けられている。
 イザーク自身は明確に自覚していないが、それは彼女の悪夢に現れたのが顔も体格も分からない「誰か」であったことがはっきりと示している。

 キラに対して向かっていくイザークの姿勢は、勇気から来るものでもなければ、雪辱の念によるものでも憎しみによるものでもない。
 恐怖の裏返しである。
 知らないから恐い。
 だから躍起になって知ろうとする。

 だが、ディアッカにはそんなことは分からない。
 イザークの事をよく知っているからこそ、「恐怖に震えるイザーク」などというものは想像さえ出来ない。
 いつもの猪突猛進が出たようにしか見えないのだ。

 自分の言葉をぶった切りながらずんずん歩いていくイザークを追い、その横を歩きながら必死に止める。

「だからって、そこまで急がなくたって良いだろ。何を焦ってるんだ?」
「バナディーアにいるのはあの『砂漠の虎』だが、『足付き』相手ではどれだけもつか分かったものではない」

 そこで一度言葉を切り、イザークは足を止めてディアッカに向き直った。

「これは私の独断専行だ。お前はしばらく休め。お前のバスターもまだ動かせまい」

 労わるような口調でそれだけ言うと、イザークは歩みを再開する。

 ディアッカは数瞬の間、呆けたようにその背中を目で追う。
 大きくため息。
 そしてそれを追いかけ、追いつくと肩に手を置いて足を止めさせ、向かい合う。

「……隊長からの命令。しばらく地上に留まって『足付き』を追いかけろってさ。だから、お前の行動は命令違反にはならないぜ。それに……」

 一度言葉を切って深呼吸し、鼓動を落ち着ける。

「もし命令が出てなくたって、俺はついてくさ。お前の行くところなら、どこにだってな」
「そうか」

 緊張に身を硬くし、鼓動を高鳴らせながら言ったディアッカの言葉は、しかし、たった一言で流される。
 と言うよりも、イザークの思考は既に『足付き』の追跡に占められており、彼の言葉の後半は右の耳から左の耳に素通りしただけだった。

 ガクン、とディアッカの肩が落ちる。
 だが、一つのことに集中すると極端に他の事が目に入らなくなるイザークの性質は今に始まったことではない。
 この程度でいちいち落ち込んでいるようでは、彼女に付き合ってはいられないのだ。
 ……何やら慣れや耐性が生まれてしまっていることに若干の悲哀を感じながらも、意図的にそれを無視し、ディアッカは既に歩き始めているイザークに小走りで追いつくと、肩を並べて歩いていった。


 夜が明けた。
 爽やかというには少し苛烈すぎるが、陽のエネルギーに満ちた砂漠の太陽の光は、アークエンジェルに漂っていた重苦しい空気をだいぶ振り払ってくれたようだった。
 とにもかくにも体を休めることができたため、前向きに考える余裕ができたということもあるだろう。

 夜間に休んでいた者達はそれぞれの活動を開始し、そうでない者達は交代して体を休めた午前中。
 それが過ぎ去る頃には、全員が休息を終えて万全の体調に整えることができた。

 そして昼過ぎの今、艦橋ではちょっとした会議が開かれていた。
 艦橋前方のメインモニターにはアフリカを中心軸としたメルカトル図法の世界地図が、大西洋連邦は青、それ以外の地球連合加盟国は緑、ザフトは赤、中立は白と塗り分けられて表示されている。
 それに向き合う艦長席にはラミアスが座り、傍らにはナタルが立っている。
 その後ろのオペレーター席にはサイが座り、前方の操舵席にはノイマンがいる。

 もっとも、ノイマンは席には座っておらず、隣の副操舵席の傍らに立ち、そこに座る新顔の士官に計器の見方などをあれこれ指導している最中ではあるが。

「ここが目的地のアラスカ、そしてここが現在地となります」
「何とも厄介なところに降りてしまいましたね。見事にザフトの勢力圏だ」

 サイの言葉と共にアラスカが青く、リビアの辺りが赤く点滅する。
 指導の合間に頭上のモニターを見上げながらノイマンが言うと、赤く点滅する現在地の辺りが拡大された。
 アフリカ北部は赤く、ヨーロッパとアラビア半島は緑色に染まっている。
 その間にある地中海は赤と緑が半々と言ったところだろうか。

「仕方ないわ。あのまま、ストライクと離れるわけにはいかなかったのだから……」

 前髪をくるくると自分の指に巻きつけるように弄りながらラミアスは言う。

「ともかく……本艦の目的、目的地に変更はありません」
「……となると、ルートは三本。地中海に出てジブラルタルを突破し大西洋に出るか、紅海に抜けてインド洋を横断し太平洋に出るか、紅海に抜けた後、南下して喜望峰周りで大西洋に出るか、ということになります」

 再びズームアウトされた地図に、ナタルの言った三通りのルートが矢印として表示される。
 同時にその障害となりそうな敵軍についても。
 基地の位置に赤い点が灯り、そこを中心に索敵範囲や行動範囲が同心円として描かれ、さらに光点から出た吹き出しに基地の規模や予想される駐屯兵力が書き込まれる。

「ジブラルタルを抜けるのはいくら何でも無謀ですよね」
「インド洋を横断しても大洋州連合は完全にザフトの勢力圏内ですし、シナ海は激戦地ですからね。やはり最後のルートが一番無難ですか?」
「そうなるな。もっとも、ビクトリアがまだ落ちていなければ、だが」
「……ナタル。不吉なことを言わないでちょうだい」
「あり得ない可能性ではありません」

 ビクトリアはアフリカ大陸中部、インド洋から七百キロほど内陸にある湖の名で、転じてその沿岸にある基地の名でもある。
 宇宙港を有する重要な戦略拠点であり、昨年三月の段階で既にザフトの攻撃目標になっていた。
 その時にはザフト側に地上戦力の支援が無かったこともあり、地球軍が撃退に成功している。
 だが、その頃にはまだニュートロン・ジャマーも散布されておらず、ジブラルタルはおろか、カーペンタリアにすらザフトの基地は無かった。
 当時とは状況が全く違うのだ。

「もしビクトリアが落ちていれば、アフリカ東岸に沿って南下していく最後のルートも非常に危険です」

 ナタルの発言に合わせてデータが変更されていく。

 ビクトリア基地やその周辺が青から赤に変わり、さらにそこを拠点に足を伸ばせば制海権を握れる辺りの海、アフリカ東岸の大部分が赤く変わる。

「……まずはその辺りの情報を集めないといけないわね」
「ええ。これ以上の議論は現時点では無意味です」
「では、ここまでの議論を議事録としてまとめ、艦長のデータフォルダに転送しておきます」

 ラミアスとナタルの言葉を受け、サイが言った。
 言いながらも既にその指はキーボードの上を踊っている。

「ありがとう。それにしても、本当にこういうことが上手なのね」

 ラミアスに賞賛を向けられ、サイは少し照れたように笑う。
 各人の発言に合わせてリアルタイムで変更されていったモニターの表示だが、実のところ操作していたのは全てサイ一人である。
 発言の内容があらかじめ決まっているプレゼンならともかく、誰が何を言うかわからない会議なのだから、当然、表示された資料は前もって準備されていたものではない。
 発言に合わせてその都度必要な情報を呼び出し、見やすく分かりやすい形に加工して表示させていたのである。
 サイが一人で。

「まあ、ゼミでは『通訳』は俺の仕事でしたからね。俺以外はみんな天才なんで、自分の考えを人にわかるように説明できないんですよ。おかげでこういうことしないと議論にならなかったんです」
「……君のそれも十分に才能だと思うけどな」
「似たようなことを、昨夜トールとカズイにも言われましたよ」

 ノイマンのツッコミにサイは苦笑した。

「でも、あなた達には本当に助けられてばかりね。正直、トール君があんなにスカイグラスパーに適正があるとは思わなかったし、カズイ君があんなに優れた技術者だとは思わなかったわ。サイ君も総務の方まで手伝ってくれているのでしょう?」
「私からも礼を言う。非常に助かっている」
「まあ、俺達も今回の件で色々と思うところがあったんですよ」

 もともとラミアスは技術者であり、図面を引くのは得意でも書類を書くのは得意ではない。
 だというのに、艦長に就いてしまったために大量の書類仕事を抱え込む羽目になってしまったのだ。
 今まではナタルに手伝ってもらっていたのだが、彼女とて暇ではない。
 結果、この非常事態だというのにトップ二人が書類に少なくない労力を支払わされるという問題が起こっていたのだが……サイが総務に回った結果、大幅に改善されたのである。
 その事務処理能力に付けられた親友四人のお墨付きは伊達ではない。

 根回しの一環でもあるため、感謝される筋合いは無いと思っているサイだが、もちろん口には出さなかった。
 タン、とエンターキーを叩いて作業に区切りをつけると、少しの間、思考を別の場所に飛ばす。
 そして、ふと思い出した。
 今の今まですっかり忘れていたが、この艦には一人、少々厄介な人間が乗っているのだ。

「艦長。今のデータの持ち出し許可をいただけますでしょうか」
「え? 良いけど、何に使うの?」
「ジョージさんに状況説明を。大事な時に艦橋に怒鳴り込んで来られても困りますから」

 沈黙。

 ラミアスも、隣で聞いていたナタルも、意表を突かれた表情を浮かべる。
 そして同時に、ポンと手を叩いた。

「……そう言えばあの人がいたわね」

 どうやら彼女達も完全に忘れていたようだ。
 この分では実の娘にさえ忘れられている可能性も低くないが、放置しておいて良い問題ではないだろう。
 この件にも対処せねばなるまい。

「そうね。多分、サイ君が一番適任でしょうから、お願いできるかしら」
「はい。もとからそのつもりでしたし」

 ラミアスの言葉にサイは首肯する。
 状況説明だけでなく、説得もしなければならないだろう。
 キラのためにも、フレイのためにも、ジョージにはこちらの人間になってもらいたい。
 感情をひとまず置くとしても、大西洋連邦の事務次官を味方につけることの意義は大きい。
 どのように活用するかは自分の役目ではないが、キラが策をめぐらせる材料を揃えるのは自分の役目の内である。
 どちらかと言うと政略に属する事柄だから、策を巡らせるのは宇宙(そら)の姫君かも知れないが。

 ともかく、自分の当直が終わったらジョージのところに行こう。
 サイはそう決めて自分のノートパソコンにデータを転送すると、ひとまずそのことを脇に置き、再び自分の仕事に戻っていった。


 カガリの意識はまどろみの中にあった。
 ふわふわと不確かに温かい水の中をたゆたっているような感覚が心地良い。
 身体は妙に気だるくて、こうしていると自分の中に蓄積されていた疲労を実感する。
 最も、さすがにキラほどではあるまいが。

 キラ。その名前を思い浮かべただけで、心がざわめくのが分かる。
 嬉しいような楽しいような暖かい感じがして、そして少しだけ苦しい。
 生まれて初めて抱く感情だが、その名前を彼女は正しく理解していた。

「……キラ……」

 ほとんど無意識のうちに少女の唇が動き、その名を紡ぎ出す。

 と、そこでふと意識が外界に引っ張られた。
 どこかで自分以外の誰かがその名を呼ぶ声が聞こえた気がしたのだ。
 その声自体にも聞き覚えがあり、ここ半月ほどですっかり耳に馴染んでしまった声だ。
 そちらに注意を向けてみる。

「キラ! キラ、大丈夫!?」
「落ち着きなさい、ミリアリア! 不用意に動かしちゃダメ」

 一瞬で意識が覚醒した。
 身体にかかっていた布団を跳ね上げ、飛び起きる。
 状況を把握しようと周りを見回した。
 今カガリがいるのは、医務室の空きベッドの上。
 昨夜からキラに付きっ切りで看病していたカガリとミリアリアを見かねたヤマムラが、交代で仮眠を取るように言ったのだ。
 二人とも渋ったが、「あなた達、今自分がどんな顔してるかわかってる? 眼が覚めたキラに、早速心配をかけるつもり?」というフレイの言葉が決め手となり、結局は従った。
 先にミリアリアが休み、交代してカガリが仮眠を取る番だったのである。

 視線を転じれば、ベッドの間の通路でひどく取り乱した様子のミリアリアをフレイが抑えているところだった。
 その傍らではヤマムラがベッドに屈み込んでいる。
 使われている二つのベッドのうち、キラが寝かされている方のベッドだった。
 サッと、カガリの顔から血の気が引く。
 慌てて床に置いてある靴をつっかけ、駆け寄った。

「何があったんだ!?」
「……すまん、カガリ……静かにしてくれると助かる……」
「キラ!?」

 ミリアリアよりも幾分か冷静に見えるフレイを捕まえて聞いたカガリの言葉に帰ってきたのは、ここ二日間ほど、何よりも聞きたかったのに聞けなかった声だった。

「落ち着いて、カガリ。キラはついさっき目を覚ましたんだけど、ものすごく頭が痛いそうなの。今、見ての通りヤマムラ先生が診てるところよ」

 カガリは息を呑む。
 聞かされるまでも無くそれを知っていたのであろうミリアリアは、カガリの隣で、祈るような表情でキラを見つめている。

 キラの瞳孔を見ていたのだろう。
 屈み込んでいたヤマムラが身体を起こす。

「おそらくはただの頭痛の酷いものだとは思いますが、場所が場所です。念のために精密検査をした方が良いでしょうね」
「……お願いします」

 ヤマムラの言葉に答え、仰向けに横たわっていたキラが上体を起こす。
 ただそれだけの動作で、キラの顔が苦痛にきつく顰められた。

「では検査室に行きましょう。カガリさん、起きたばかりで申し訳ありませんが、キラ君を支えてあげてください。フレイさん、ミリアリアさんとそちらの子を見ていてください」
「わかりました。ほら、キラ」
「ああ、頼む」

 カガリが差し出した手に掴まり、キラが緩慢な動作で立ち上がる。
 頭痛以外に異常は無いらしくふらついたりすることはないが、頭痛が酷く気になるようで、足運び一つとっても普段からは考えられないほど鈍重なものだった。
 片手でキラの手を握り、もう一方の手をキラの背に添えて歩く。
 今までになく近い距離。
 だと言うのに、カガリは少しも嬉しくなどなかった。


 ヤマムラ、キラ、カガリが医務室から出て行き、部屋の入り口の自動ドアが閉まった。
 それが合図だったかのように、ミリアリアが床にへたり込む。

「……キラ……キラに何かあったら私……私……!」
「大丈夫よ、ミリアリア。大丈夫。大丈夫……」

 自分の身体を抱きしめて身を震わせるミリアリアを、フレイは優しく抱きしめた。
 その言葉は、どこか自分に言い聞かせているようでもあった。


 夕食時をだいぶ過ぎてガラガラに空いた食堂。
 ジョージ・アルスターはそこにいた。
 一人でポツンと席に座り、すっかり冷めてしまったカルボナーラをフォークでつつき、時折思い出したように口に運んでいる。
 中年の男がいかにも悩み事を抱えていますといった風情で料理をつついているのは見ていて気持ちの良い物ではないが、何やら哀愁を誘う光景ではあった。
 仕事に没頭する余り、家庭に居場所のなくなってしまったワーカホリックのサラリーマンに見えなくもない。

 だが、そう見えてしまっても仕方が無いとも言える。
 十年前に妻を失って以来、ジョージにとって生きがいとは仕事と愛娘だけであった。
 その二つだけに情熱を注ぎ続けた結果、仕事では大西洋連邦の事務次官にまで上り詰め、愛娘は立派なレディに成長しつつある。
 しかし、この艦には当然だが彼の仕事などあるわけがなく、眼の中に入れても痛くないほどに愛しい娘は彼と口を利いてもくれないのである。
 その原因となった事件を思い出すと今でも頬が痛い気がするし、『大嫌い!!』の言葉に胸が抉られるようだった。

 はあ、と大きくため息を吐く。
 どうにかして娘と仲直りする方法は無いのだろうか。
 ジョージが数日前から抱えている悩み事は結局のところその一点に尽きるのであった。

「何やら煮詰まってますね」

 苦笑を含んだ若い声が聞こえてきたのは、ちょうどその時だった。
 ジョージが顔を上げるのと同時に正面の椅子が引かれ、青い軍服を着た少年が腰を下ろす。

「サイ君……」

 そこにいるのは彼の娘の婚約者であるサイ・アーガイルだった。
 ノートパソコンを開いて電源を入れ、何やら操作をしている。
 その少年を見るジョージの視線は、まさに天の助けを見るかのようなものだった。
 その視線に気付いたサイが、思わず身を引いてしまうほどに。

「なあ、サイ君。君はどうしたらフレイと和解できると思う?」

 ジョージはそれにも気付かない様子で、サイに問いかける。
 その表情を見ると本気で弱りきっている様子で、サイは苦笑を零した。

「そんなこと、ジョージさんだってとっくにわかってるんじゃないですか?」
「……やはりその方法しか無いのか……」
「はい。分かってると思いますけど、フレイは思い込みが激しいですからね。放っておくとマイナス評価が固定しちゃいますよ」

 サイは頷きながら断言する。
 この二人は世界中と一番と二番にフレイを深く理解している。
 それだけに、フレイの性格のこともよく分かっていた。
 良くも悪くも単純な精神構造をしているフレイは、不愉快なことがあれば機嫌を損ね、その要因が取り除かれればごく自然に機嫌を直す。
 そして妙に頑固なところがあり、その要因を取り除かないまま別の方法で機嫌を取ろうとすると、さらにへそを曲げるのだ。

 だからジョージも「その方法」、つまりキラに謝罪するという選択肢しか無いことは十分に承知しているのである。
 だが、彼は「大人」である。
 長い年月をかけて築き上げてきた価値観をそうそう変えることはできなかった。

「しかしねえ。彼がコーディネーターというのは事実なんだ。だったら彼がスパイであることを疑うのは当然じゃないかい? 私は間違った事を言ってはいないはずなんだが……」
「『コーディネーター』の一言で全てのコーディネーターを一括りにしない方が良いと思いますよ。全てのコーディネーターがナチュラルを敵視しているわけじゃないんですから。それとも、ジョージさんは世界中全てのコーディネーターを個人的に知ってらっしゃるんですか?」
「だが、現にナチュラルとコーディネーターは戦争をしている。敵対関係にある以上、疑ってかかるのは当然だと思うが」
「戦争をしているのはナチュラルとコーディネーターではなく、プラントと地球連合ですよ。この戦争は人類を二分した大戦ではなく、ごく普通の国と国との戦争です。少なくとも中立のオーブでは、ナチュラルとコーディネーターがそれなりに上手く共存してますし。どうもこの辺り、ブルーコスモス辺りのプロパガンダの影響だと思うんですが、そもそもの認識が間違っている人が多いんですよね。そう思うように誘導されていない自信がありますか?」

 言ってサイはジョージの瞳を色眼鏡の奥から見据える。
 カトウ・ゼミの交渉事を一手に引き受けてきたサイにしてみれば、大人の頭が固いことなど、百も承知である。
 普通、人は負けるということ、会話で言えば論破されるということを嫌うものだ。
 ゆえに彼はディベートの時などの特殊な場合を除き、言葉で戦うということをほとんどしない。
 自分が望む方に思考を誘導する方がよほど重要で、勝つことなどたいした利益にはならない。
 最も、今回の場合は日頃思っていることを口にしただけでもあるのだが。

「では、サイ君は私が騙されていると言うのかね?」
「さあ? 俺は普段ジョージさんがどういう情報に触れているのかよくは知りませんから、断言はできません。ですが、ジョージさんが目にしたり耳にしたりする情報は、ブルーコスモスによる選定が行われたものである可能性はあります。そもそも、情報なんて受け取り方一つで無数の『真実』を生み出すものですから」

 その言葉に、ジョージはむぅと黙り込む。
 確かに、ジョージが職務をこなす上で触れる情報は、部下からの報告という形で入ってくるものがほとんどだ。
 事務次官ともあろうものが直接情報収集するわけにもいかないから、それは当然のことである。
 そして、部下達も彼に報告する上で情報の取捨選択をする。
 恣意的に情報が加工されているとまでは言わないが、無意識の選択でさえ、そこには報告者の主観が多少なりと入るものだ。

 と、考え込むジョージにサイが再び声をかける。

「まあ、こんなところでそれを考えていても、答えは出ませんよ。それよりも、せっかく生のコーディネーターがすぐ近くにいるんですから、普段触れることの出来ない生の情報に触れてみたらどうですか? 今まで見えなかった物が見えてくるかもしれませんよ」
「………ああ、そうだな」

 軽く笑って言ったサイに、ジョージも表情を緩めて頷いた。

「さて、と。それじゃあそろそろ本題に入って良いでしょうか?」
「本題?」
「はい。もともと俺がここに来たのは、ジョージさんに現在の状況を説明するためなんです。本来なら艦長や副艦長がすべきなんでしょうが、階級にこだわっていられるほど人手が足りていないので、多分俺が適役だろうという事で任されました」

 言いながらサイは、手元のノートパソコンの画面をジョージの方に向ける。

「そうか。では頼む」
「はい。それでは……」


 ミリアリアにとって、永劫とも思えるだけの時間だった。
 ベッドの脇に置いた丸椅子に腰掛け、祈るように手を組んでただ待つだけの時間。
 隣に座ったフレイがずっと肩を抱いていてくれなかったら、耐えられたかどうかわからない。

 そんな時間を経て、再び医務室のドアが開く。
 はっと顔を上げる。
 そこには予想通り、ヤマムラとカガリと、キラがいた。

「キラ……」

 視線が吸い寄せられる。
 少年の姿をじっと見つめ、その容態を推し量ろうとする。
 キラの顔色は、出て行くときよりもほんの少し良さそうに見えた。
 視線を少し動かす。
 ヤマムラもカガリも、どこかほっとしたような表情を浮かべていた。

「心配かけたな、ミリアリア。どうやら重大な異常は無いみたいだ」

 痛みをこらえるような表情で、それでも微かに笑みを浮かべ、キラは言った。
 出て行く前はそれさえもできなかったことを考えれば、確実に良い方に向かっていると、確信できた。
 ミリアリアの目に涙が滲む。

 カガリに手を貸されて歩んできたキラが、再びベッドに横になり、大きく息を吐いた。
 横になるとだいぶ楽になったようである。

「……キラ……良かった」
「ああ。まあ、まだ動くとかなり痛いんだがな。こうやって横になってじっとしてる分にはわりと大丈夫そうだ」

 ミリアリアの隣、フレイとは反対側にカガリが座る。

「それにしても、何でいきなり頭痛なんて。キラって、別に頭痛持ちじゃなかったわよね?」
「ああ。まあ、それに関しては思い当たる節があるんだが……たぶん『種割れ』のせいなんだと思う」

 おそらくヤマムラを気にしてのことだろう。
 キラの視線が一瞬を周囲を見回した後、声を少し潜めて言った。

「……『種割れ』? それって例の『原作』のだよな? でも、そんな副作用があるなんて聞いてないぞ?」
「まあ、『前のキラ』と『今のキラ』の差なんだろうな」

 やはり声を潜めて聞いたカガリの言葉にキラは答える。

「これは推測っていうより憶測のレベルだが……『種割れ』ってのは人間の脳に眠ってる力を解放するもんなんじゃないかな。それによって思考速度や反応速度が劇的に上がる反面……本能に当たる部分……とりわけ攻撃衝動やら破壊衝動やらも解放しちまうんだろう。さらに……一時的にリミッターを外すわけだから……反動もあると」

 やはり長い台詞は頭痛に響くのだろう。
 時折苦痛に顔を顰めながら言い、一度言葉を切って息を整える。

「で……この『原作』との差だが……おそらく情報量の差だろうな。素の状態でも確実に『彼ら』よりも俺の方が感覚は鋭いだろうし……周りが見えている。その分……処理しなければならない情報の量が膨大になって……それで脳に過大な負荷がかかったんだろう」
「なるほど。人間の脳には未だにブラックボックスが多いですから、そういうことができても不思議ではないかもしれません」

 言い終わったキラの言葉に、そんな相槌が続いた。
 会話をしていた四人の動作が、固まる。
 そしてゆっくりと、四人の視線がベッド脇に立つ『彼』に向かった。
 三人の少女の意識は完全に少年に向いており、少年の本来なら異様に鋭い感覚のセンサーは身体の不調により極端に性能が低下していたようだ。
 『彼』の接近に、誰も気付かなかったのである。

「ですが、本来使用しないはずの機能まで活用したわけですから、脳にとっては過負荷だったのでしょうね。それがこの頭痛というわけですか」
「……ヤ……ヤマムラ先生?」
「はい。どうしました?」

 恐る恐るといった口調でキラがその声の主の名を口にした。
 ヤマムラはいつもの穏やかな微笑を浮かべながら、疑問調に語尾を上げたキラの言葉に応える。

「えっと、その……どの辺りから聞いてました?」
「『推測っていうより憶測のレベルだが』辺りからですね」

 続けたキラの問いに、事も無げにヤマムラは答えた。
 それはつまり、『原作』だの『種割れ』だのという言葉を聞かれてしまったことを意味していた。
 だが……

「心配なさらないでも、患者のプライバシーは守りますよ。この話は秘密にしておけば良いのでしょう?」

 ヤマムラはそう言って、優しく、そして少し悪戯っぽく笑った。

「はい。そうしていただけるととても助かります」

 キラはほっと安堵の息と共に言葉を吐き出す。
 その反応にヤマムラはクスリと小さく声を立てて笑った。
 だが、その表情はすぐに改められる。

「ですが、その『種割れ』という現象、危険極まりないですね。今回の場合はごく短時間だったからこの程度で済んだのでしょうけど、次にそうなったら何かの障害が残るか、最悪の場合命を落とすかもしれませんよ」

 真剣な表情でヤマムラは言う。
 彼の、医師としての言葉であることが、真摯に伝わってきた。
 そして、その事はキラも感覚的に分かっていたことだ。
 この頭痛はおそらく、限界に達した脳細胞が上げる悲鳴。
 無意識のうちにギリギリまで酷使していたのだろう。
 もし、『種割れ』している時間がもう少し長いか、あるいは戦闘がもう少し難しかったら……おそらく、もう帰っては来られない。

「肝に命じておきます」

 その事実を噛み締め、キラは神妙に頷いた。


 アークエンジェルから数キロ離れた砂丘の上。
 高倍率の双眼鏡を使い、その戦艦にしては優美な船体をじっと見る視線があった。

「実物を見たことは無いが、間違いないだろう。あれがヘリオポリスで建造された地球軍の新型強襲機動特装艦、『アークエンジェル』だ」

 双眼鏡から目を離した長身の男が、隣に立つ豊かな髭をたくわえた男に言う。
 二人とも、砂漠の民が使う防塵マントに身を包んでいた。
 周囲には同様の姿をした十数人の人影がある。

 と、二人の男の後方に待機するジープで電子音が鳴った。
 通信の着信音だ。ジープの脇にいた、まだ少年としか言えないほどの若い男が無線機を取る。

「どうした?」
『虎がレセップスを出た。バクゥ五機を連れて、その船へ向かっているぞ!』

 無線機から漏れ聞こえてきた声。
 その意味する内容に、一同の間に緊張が走った。


 それとは別の砂丘の上。
 別の角度からやはり双眼鏡でアークエンジェルを見る視線があった。
 その後ろからコーヒーカップ片手に一人の男が近づいていく。
 まだ少壮と呼ばれる域にも達していない、若い男だ。
 その訓練の行き届いた挙動からは、ネコ科の猛獣のごとき俊敏さが伺える。

「どうかな? 噂の大天使の様子は」
「はっ! 依然なんの動きもありません」

 背後からかけられた声に、双眼鏡を除いていた男はそれから目を離し、顔だけを後ろに向けて答える。
 声をかけた男よりもさらに若く、まだ二十代の前半だろう。

「地上はNジャマーの影響で、電波状況が滅茶苦茶だからなぁ。『彼女』は未だスヤスヤとおやすみか」

 コーヒーを一口。不意にその目が細まる。

「……ん!?」

 真剣になったその表情に、砂の上に伏せたままの男は慌てて双眼鏡を覗き込む。

「何か?」
「いや、今回はモカマタリを五パーセント減らしてみたんだがね……こりゃあいいな」

 踵を返し、コーヒーを飲んでいた男は砂丘を降りていく。

「………はぁ……」

 あまりにも場違いな発言に思わず呆気に取られていた男も立ち上がり、その後を追った。
 二人の行く先には、五機のバクゥと呼ばれる犬のような姿をした砂漠専用モビルスーツが待機し、戦闘の開始を待っている。


 大天使の束の間の休息が、終わりを告げようとしていた。


 (続く)


あとがき
 お久しぶりです、霧葉です。
 またもや大変長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。

 さて、今回はキラ君が目覚めたわけですが、何やらえらいことになっています。
 まあ、我が家のキラ君に『種割れ』は何と言いますか鬼に金棒なので。
 私は「主人公最強」の話は好きですが、「主人公至上」の話は嫌いです。
 ゆえに例え主人公だろうと、否、主人公だからこそ、強い力には相応のリスクを背負ってもらうことにしています。
 主人公に限らず、無制限に強い味方キャラは話をつまらなくすると思いますので。

 それではレス返しです。

>黄色の13
 お褒めに預かり光栄の至りでございます。
 私自身、この話を書くために色々調べて初めてFCSの存在を知りましたからねえ。

>紅さん
 私もナタルさんは好きなんで、期待に沿えるように頑張ります。
 最も、物事がうまく行っている時に落とし穴があるのが人の世なわけですが(ニヤリ)

>柳野雫さん
 前話のタイトルは我ながら完璧なネーミングだと思ってました(笑)
 ジョージさんはこんな風に思ってたんです。
 彼の今後にもご注目を!

>緋皇さん
 残念ながら今回はまだ戦いの前です。
 次回は今度こそ虎との初戦闘となります。
 ご期待ください。

>06Jさん
 なるほど、参考になりました。
 そのうち改訂すると思いますので、その辺りはその時に直します。

>シュンさん
 ご指摘の通り、「ある少年達の選んだ道」の”達”はこのストーリー全体の鍵になっています。
 まあ、一目瞭然でしょうが(笑)
 これからも頑張りますので、楽しみにお待ちください。

>TNZKさん
 フフフ。
 実はニコルの後継機にも腹案があったりします(ニヤリ)
 サイに関しては、色々と気が回る分、一番悩みを抱え込みそうな気がしませんか?(笑)

>神曲さん
 どうでも良いことですが、霧葉的分類ではナタルさんは微妙にツンデレとはズレた属性に分類されてます(笑)
 そうですね。イザークは原作でもなかなか義理に篤いところがあったと記憶しています。
 我が家のイザークさんは、それをもう少し顕著にしてみました。

>じろ〜さん
 はい。何気に中尉です(笑)
 ギャグを交えた作品を書くのは実は始めてだったりしますので、そこを褒めてもらえると結構嬉しいです(笑)

>アークさん
 アークエンジェルの変化は、絶対に原作通りには進ませるまいと頑張ってる彼らの努力の表れです。
 今後とも応援よろしくお願いします。

>なまけものさん
 まあ、ナタルさんは原作でもこの辺りで中尉に出世してましたから。
 キラに甘えるナタル……創造しただけで頬がニヤけてしまいます(笑)

>雷帝さん
 一気読みですか!
 そんなに頑張って読んでいただけると作者冥利に尽きるというものです。
 種運命は全く見ていないし、今のところ見る気も無いので参考にはしない予定です。
 キラ君の後継機は……フフフフフ、どうぞお楽しみあれ(笑)

>カシス・ユウ・シンクレアさん
 確かにニコルを連れてアラスカまでいったら、いきなり殺されることは無いにしろ、ただでは済まないでしょうね。
 さて、キラ君はどうするつもりなのやら(ニヤリ)

>HIKOさん
 キラを女性化する作品が多かったので、それならキラ以外を女性化してみようか、って思ったのがこの作品の発端だった気がします(笑)
 そしてキラ君の絵ですが……

 是非とも描いてください! お願いします!

 いやもう、土下座せんばかりの勢いで頼み込んじゃいますよ。

>リーヴァルさん
 私の作品をそんなにも好いていただいて、どうもありがとうございます。
 これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。
 頑張った割りに報われないディアッカもよろしくお願いします(笑)

>Cさん
 三馬鹿トリオですか。
 実のところ、まが扱いが確定していなかったり。
 三話か四話の段階で性別が未定だった某ザフトレッド(銀)さんや、五話くらいまでヒロイン候補にすら入っていなかった某戦乙女さんの例がありますので、まだまだ予断を許さない状況です(笑)


 次回は今度こそ虎との初戦闘。
 おそらくはアークエンジェル最大のピンチではないでしょうか。
 さてはて、どうなることやら。
 それでは皆様、また次回〜

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