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「霊光波動拳継承者『横島』(改訂版)23話(GS+幽遊白書+いろいろ)(GS+幽遊白書+色々)」

柿の種 (2006-02-08 20:31/2006-02-09 11:29)
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*今回からこちらに移動しました。これまでの話はGS・絶チル小ネタ掲示板の方にあります


 先程までアシュタロスを拘束していた神魔は既にふりほどかれ投げ飛ばされていた。そして、横島に突き刺さった腕をアシュタロスは無造作に抜く。当然、横島の体はその場に崩れ落ち、傷口からは大量の血が流れ出した。彼にはまだ息があった。けれど、このまま放置しておけば間違いなく彼は死ぬ。しかし、それがわかっていながら誰も動く事さえできなかった。

「狙いは悪くなかったよ。まさかあのような技があったとはね。もし、後ほんの少し威力があれば、私は力の制御を失い冥界のチャンネルは開いていただろう」

 賞賛とも嘲りともつかない言葉をつむぐ。ただ、その言葉に嘘がないことだけは確かだった。今まで力を抑えていたアシュタロスが今はそのパワーを数倍にまで高まっている。只でさえ圧倒的だった存在が、さらにその数倍になったのだ。あまりの威圧感に誰も動く事ができなかったのだ。

「ふむ、そろそろおさまってきたようだ」

 パワーが落ちていく。ただ、それは弱ったという事ではなく、力の制御が戻っただけである事は、誰の目にも明らかだった。

「君達は健闘した。だが、これまでだ」

 そしてアシュタロスの腕に右腕にパワーが収束されていく。そこで、美神は正気を取り戻し、そして気付いた。このままでは自分達も横島も死ぬ。しかし、それは既に手遅れだった。

「さらばだ。メフィスト、愛していたよ」

 別れの言葉を述べ、そして強大な魔力砲が放とうとした時だった。8本の巨大な尾が彼を襲い狂い、そして残りの一本が横島を助けた。


「一体何が!?」

 突然の変化に流石の美神も瞬時に状況を理解する事ができなかった。その場に生まれた尾の先をたどり、そしてそこに驚くべき姿を確認する。

「あんた!! タマモ!?」

 そこにはタマモと見られる美女の姿があった。曖昧な言い方なのは、その姿が普段の中学生程度の姿でなく、20歳過ぎの妙齢の女性の姿だったからである。しかし、彼女は確かにタマモの面影を残し、放つ霊波も同種。しかし、その力は桁違いで、ナインテールの髪の房、一本一本のその先が巨大な尾に変化していた。

「横島をお願い」

 タマモと思われる女は美神の問いかけに答えず、横島をその場に下ろすと、更にその姿を変化させる。そして、それにあわせ更に力が増大し、その場に強大な九の尾を持つ狐が現れた。


「一体何がどうなってるの!?」

「美神さん、それよりも横島さんを!!」

 巨大な狐の姿となった女はそのままアシュタロスに戦いをしかける。その光景をみて驚愕の声をあげる美神。しかし、おキヌの声で彼女ははっとする。おキヌは既にヒーリングを横島にかけていたが、傷が酷すぎてどんどん血が流れ出してしまう。

「駄目、私の力じゃ・・・・」

「私が見ましょう」

 そこで、一人の女性神族が前にでて、横島に癒しをかけた。下級とはいえ、神の力、横島の傷をどんどん癒し、流れでた血さえ彼の体に戻って行っていた。

「大丈夫です。彼は助かりますよ」

 そして、笑顔で美神達に言った。それを聞いてほっとする二人。しかし、安心すると共に一旦、脇においた事実が思い出されてきた。

「それにしても、あれは一体・・・・」

「あれ、タマモちゃんですよね?」

 おキヌがそう自信投げに尋ねるが、美神もはっきりと頷けない。ところが、答えは意外な所からでてきた。

「ええ、あれはタマモさんですよ」

「ピート!?」

 ピートがそう断言したのだ。何故、彼がそれを知っているのか、疑問に思うと同時に、もう一つ異変に気付いた。目の前であまりに強大な力が二つぶつかり合っている所為でその異常に気付けなかったがピートの力が普段の数倍から数十倍に跳ね上がっているのだ。

「どうやら、僕の方も薬が効いてきたみたいですね。ここに来る前に僕もタマモさんも佐藤さんからあるものをもらったんです。タマモさんがもらったのは前世の実、僕がもらったのは先祖返りの実、その薬の力でタマモさんは前世の、それも恐らくは日本で安部泰成に退治された頃ではなく、中国での全盛期の力を取り戻しているんです」

「金毛白面九尾の力を・・・。けど、ならば何故もっと早く使わなかったの?」

 その話で今のタマモの状態には納得が言った。しかし、それならば新たなる疑問が湧く。すると問われたピートは俯いて答えた。

「怖かったんだと思います」

「怖かった・・・ですか?」

 おキヌの言葉に頷く。そして言った。

「タマモさんは体を治す時にもこの薬を使いました。その時はでも、もっと少量で、けど前世の記憶が戻る事で自分が失われそうになったって・・・・」

 その話で美神は合点が行った。前世と現世は基本的に別人だ。それが蘇るのだから自分自身のアイデンティティが失われると感じても当然の話である。美神自身、メフィストの記憶を呼び戻された時は一瞬自分を見失いかけたのである。

「それに、この薬は服用してから効果がでるまで少し時間がかかるんです。ぎりぎりで覚悟を決めたつもりだったのでしょうが、間に合わなかったのでしょう」

 そして、説明を終えると、タマモの方に目をやる。タマモとアシュタロスは互角の戦いを繰り広げられていた。側には倒れたベスパとパピリオの姿もある。恐らくは、流石に静観していられず、参戦したもののタマモにやられたのだろう。

「僕も、タマモさんを援護します。今の僕は吸血鬼と人間の力の両方を100%引き出せる上に二つの力融合する事で増幅する事もできる。少しは力になれるはずです」

 ピートの背中から翼が生える。同時のその翼が聖なるエネルギーを纏っているのが見えた。そして、彼は高速で移動し、アシュタロスの真上に飛ぶ。

「ダンピールキック!!!!」

 ピートの蹴りがアシュタロスに炸裂する。一瞬、動きが止まったところでタマモの尾が跳ね飛ばした。

「いける!?」

「いえ、無理です・・・・」

 その光景に一瞬、勝利を期待する美神達。しかし、そこに否定の言葉が発せられた。

「小竜姫様!!」

 ダメージを受けているらしく、肩を抑えながら近づいてくる小竜姫。彼女は絶望の意味を伝える。

「アシュタロスが冥界のチャンネルを封じておけるぎりぎりまでパワーを解放すれば、二人は一瞬でやられてしまうでしょう。タマモさん達が優勢に戦えるのは、先ほどの横島さんの攻撃によるダメージで霊核が傷ついているからだと思います。その再生が終わるまで下手にパワーをあげるのは奴自身にとっても命取りになりかねませんから」

「それじゃあ、その再生が終わったら・・・・・」

 顔を青くするおキヌ。小竜姫は頷いた。

「それで、終わりです。いえ、その前に薬の効果が切れるかも。先ほどの話は私にも聞こえていましたが、その手の効能はそれほど長く持たない筈です」

「万事休すって訳か・・・・・・」

 核兵器の事があるので逃げることさえできない。流石の美神もほんの僅かに諦めの文字が頭をよぎる。けれど、まだ、策は尽きていなかった。

「いえ、まだ一つだけ手があります。アシュタロスが力を解放する時は、同時にそれが最大のチャンスでもあります。自らのパワーにエネルギーを費やし、外部に回すパワーが落ちればそれだけ冥界のチャンネルは開きやすくなりますから・・・・」

「そうか!! そこで、もう一度横島君が攻撃をしかければ!!」

 今度こそ、アシュタロスを倒せる。しかし、それには一つ問題があった。

「けど、横島さんは・・・・・」

「ええ、それが最大の問題です。薬が切れるか、あるいはアシュタロスの再生が終わり前に、横島さんが回復できなければ全ては・・・・・」

 作戦のキーマンである横島が今だ意識を失ったままであること。そして、人界の命運を賭けた運命の7分間が始まった。

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