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「宵闇に映える〜壱〜(ネギま!、型月,etc)」

Dirtyface (2006-01-27 17:03)
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  Evangeline.A.K.MocDowell

  吸血種。女性体。
 通称『闇の福音』
 現在より五百年ほど前に活動を始めた吸血種。
 本人は吸血鬼の真祖を名乗っているが、彼女に血を吸われたものが死者にならなかったとの情報や、彼女が活動していた地域より彼女の作り出したと思える死者が一体も発見できなかったことより、血液を主食とする超越種・または混血なのではないかと思われる。
 ウェールズ、つまり魔術使いの巣窟たるメルディアナ系列の魔術を行使。
 数ある吸血種の例にもれず強大な魔力量を誇る。
 性格は極めて残忍、彼女と敵対して生き残ったモノはほぼ皆無で、殺害された魔術師・代行者は、現在確認されているだけで、約二千数百人にものぼる。
 そのため、ロンドンの魔術協会および聖堂教会は『生死問わず』で六百万$の賞金を彼女にかけるが、消息不明となる十五年前まで捕縛・ないし殺害することはかなわなかった。
 尚、十五年前に極東の島国・日本に入国を確認したのを最後に『闇の福音』は消息不明となる。


   追記…『闇の福音』が日本に入国する前に、彼の魔術使い『Thousand Master』が入国していたことと、未確認ではあるが日本の関東地区において膨大な魔力のぶつかり合いがあったとの情報より、『闇の福音』は『Thousand Master』に倒されたのではないか推測される。


「ふん、それで彼の『闇の福音』が生きていたとの情報は確かなのか?王冠。」

 今まで読んでいた書類を乱雑に自分の机の上に放り投げると、目の前でソファーに寛ぎながら紅茶を飲んでいる黒髪の少年に鋭い視線を投げかけつつ、ナルバレックは切り出した。

「やだなぁ、ナルバレック。『王冠』なんて他人が決めた呼称じゃなくて、ちゃんとメレムって呼んでくれないかな?もちろん愛情たっぷり込めて。」

 『王冠』と呼ばれた黒髪の少年は突き刺すような視線を受け流しながら、人を小ばかにしたようなおどけた態度で言った。
 陽気な少年とは裏腹に、彼女は不機嫌そうに返答する。 

「メレム、私はそのような戯言を聞きたいのではない。いいか?『王冠』。私が訊きたいのはな。『闇の福音』がだぞ。今まで死んだと思われていた、正確には『消息不明』のはずの『闇の福音』がだ、『今現在、どうしたのか?』と訊いている」

 言って、彼女は自分の机に置かれている紅茶に口をつける。
 かちん、という乾いた音。

「おお、おっかないおっかない。分かっているから、そんなに睨まないでくれよ。君の視線は僕の繊細な硝子細工の心臓なんて簡単に砕いてしまうくらい強力なんだから。」

 言葉通りに怯えたようには見えない黒髪の少年は、肩をすくめて軽口で返す。

「ほう。そんなに簡単に砕けるのならば、その前に貴様を食事に誘ってやるべきだな。何、遠慮することはない、メニューは貴様の大好きな教会秘蔵の概念武装だ。それを腹いっぱい喰わしてやるぞ。」
「冗談。あとで今朝食べたモノを教えるからさ、そんな物騒な食事は勘弁して欲しいな。」
「ふん。それは残念だ。貴様が今朝食べたモノをぶちまけて見てみたかったのだが……。」

 なんだか本当に残念そうな様子のナルバレックに対し、メレムは顔を軽く引き攣らせるがなんとか気をとりなおす。

「先日、極東日本の退魔組織『陰陽寮』において反乱があった。目的は諸外国の勢力の駆逐と関東『魔法』協会と関西呪術協会の和睦の阻止らしい。らしいというのは情報源が時計塔からなんだけど……。」
「その話は聞き及んでいる。もともと最近になってやっと統一された組織らしいからな、身体に爆弾の一つや二つ持っていても不思議ではない。」
「おや?ずいぶんと耳が早いね。君子飼いの犬達、いや猟犬達を草叢にひそましていたのかな?」
「無論だ。情報収集は古今東西変わらず重要なことだ。特に『我々』のようなものはな。」

 何当たり前のことをきく?と云わんばかりの態度のナルバレックに苦笑しつつ話を続けるメレム。

「それなら話が早い。実はねその反乱において首謀者の呪術師はね、神代のころに封印されたと云われる土着の幻想種を解き放って戦力にしたらしいんだ。まあ、そのままなら和睦の使者は志望、それなりの被害を被ったあげく鎮圧され、『魔法』協会と呪術協会の間でかなりの緊張が発生して終わるのが落ちなんだよね?『陰陽寮』は規模こそ小さいけど、かなり優秀な人間がおおいからね。」
「だがそうならなかった。」

 そのナルバレックの言葉にメレムは鷹揚にうなずく。

「そう、和睦の阻止が目的の一つである以上、和睦の使者がまず狙われるのは必然だ。当然狙われた使者との間で戦闘が発生したんだけど、そこに『闇の福音』が現れて反乱者達を撃破したらしいんだ。そしてそれ以前に呪術協会に襲撃の事実はなく、さらに和睦の使者は『魔法』協会に属する人間らしい。」

 メレムはそこまで言い切ると手元の紅茶を一気に飲み干した。
 その多少マナー違反の行為にナルバレックは眉をひそめるが、思い立ったように椅子から立ち上がると

「なるほど、そういうことか。今現在『闇の福音』は『魔法』協会に『飼われている』。そうだな?あの『闇の福音』が暢気に仲良しこよしをするはずもなく、『陰陽寮』特に関西呪術協会は和睦する直前とはいえ極度の魔術師アレルギーだったはず。敵対してきた魔術師を派遣するとは思えん。派遣するなら『神炎の神凪』や忌々しい『神鳴流の剣姫』といった手元の駒を使うはずだ。ならば『闇の福音』は『魔法』協会に何らかの手段で強制的に使役・ないし封印されたうえで強力な魔術砲台として利用されているとみるのが妥当だろう。」

 そんなどちらかというと自分に言い聞かせるように話すナルバレックに対し、感情を感じさせない人形じみた笑顔を顔に張り付かせてメレムは問いかけた。

「それで、この情報をわざわざリークしてきた『時計塔』の思惑に乗るのかい?意図は見え見えだけど、きっと極東における勢力拡大の拠点が欲しいんだと思うんだよね。極東、特に日本で魔術協会所属の霊地は『蒼崎』か、『遠坂』の管理地ぐらいだもの。しかもどちらも『魔法使い』が関わっているから、迂闊に手をだせないし。」

 そのメレムの物言いにナルバレックは苛立たしげな態度を隠そうともせず答えた。

「そんなことは判っている。『時計塔』の古狸どもは『我々』に斥候の真似事をさせたいという事はな。迂闊に日本に手をだせないからこそ、わざわざ『吸血鬼』の情報を『我々』に流したのだ。その情報が真実ならば、それを元に『魔法』協会の監視という名目で日本での影響力を高め、情報が誤りにしても『魔法』協会や陰陽寮が『我々』のほうに目が向いているのを隠れ蓑に間諜を紛れ込ませる。どちらにしても直接関与していない奴らの腹は痛くも痒くもないということだな。」
「ならどうするの?君の事だから判ったうえで思惑に乗ると思うんだけど。」

 ナルバレックがどう答えるかが分かっているのを承知で質問をするメレム。だがそれには答えずぽつりとつぶやいた。

「シエルを動かす。」

 ナルバレックから零れた言葉に、メレムの人形じみた顔に驚愕が生まれる。

「ええっ!?それがどういうことか判ってるのかい、ナルバレック?」
「承知している。このことにより『真祖の姫』『殺人貴』及び『遠野財閥』に不審を感じさせるのは、『承知している』よ。」 
「じゃあ、なぜ!『姫君』や『殺人貴』、『遠野財閥シークレットサービス』には散々痛い目にあったじゃないか!」
「だからこそだ。」
「っっ!」

 その荘厳な響きすらあるナルバレックの言葉にメレムは、はっと息を呑む。

「シエルはデコイだ。音に聞こえし埋葬機関・第七位『弓のシエル』。これほどのビッグネームが動けば誰もが注目せざる得ない。『真祖の姫』『殺人貴』『遠野財閥』『魔法協会』果ては『陰陽寮』までもな。そうすれば重大な隙ができる。今挙げた面々に加え、『時計塔にも』だ。」

 静かに淡々と説明をするナルバレックを半眼で見るメレム。

「あきれた。ただでは転ばないとは常々思っていたけど、今更ながら君の悪辣さを肌で感じたよ。それで?伏兵としては誰を選ぶの?『片刃』かい?」

 降参という風に両手を挙げメレムは更にナルバレックに質問する。

「ふん。そのことだが、『第十三課』の『首切り判事』に要請しようと思っている。『第十三課』にも一枚噛ませてやらんと、マクスウェルが後々騒ぎかねん。」

 それを聞いてメレム遠い極東にいるはずのシエルに思わず黙祷を捧げてしまった。
 そんな黙祷しているメレムに対して、ナルバレックは構わず言葉を続ける。

「メレム。貴様は今すぐにシエルに連絡を入れろ。『闇の福音』を秘匿していると思われる関東『魔法』協会の本拠地『麻帆良学園』に潜入し、『闇の福音』を発見次第これを殲滅しろと。尚これは最重要任務に指定される故、任務遂行の際に邪魔するものはどんな手段をとってでも排除しろ。見敵殲滅だとな。分かったか?メレム。」

 こちらのことはお構いなしに命令を伝えるナルバレックに、通じないと分かっていながらもこれみよがしに大きなため息をつき命令を復唱する。

「了解。埋葬機関・第五位『王冠』ことメレム・ソロモンは第七位『弓』のシエルに最重要任務を確実に伝えます。全くこれぐらい自分でいってほしいな。人使いが荒いんだから。」

 メレムは最後に文句を言うのを忘れずに、気だるげにソファーから立ち上がりドアへと向かった。
 とぼとぼと歩くメレムの背中にナルバレックは「ここからは独り言だが……」と言葉を投げかけた。

「もし秘匿されているとされる『闇の福音』以外の『吸血鬼』が『麻帆良学園』で発見されたら、きっと『首切り判事』は何が何でもこれを殲滅しようとするだろうな。だが『我々』が目標としているのは『闇の福音』なのでな、もしかしたら『協力するのが遅れる』かもしれん。まあ、彼の有名な『首切り判事』なのだから滅多なことで『並みの死徒に遅れをとること』はまずないだろう。『死徒の姫』や『白翼公』などの二十七祖クラスならともかくな。」

 独り言ににしてはいささか大きすぎる声で喋るナルバレックに対し、「このサデイストめ……。」と悪態をつきながらドアをかなり乱暴にしめ、部屋を出て行った。

 メレムが出て行ったことで急に広くなったように感じられる部屋。
 その部屋の中で一人大きく息を吐き出し、自分のために用意された椅子に深く座りなおすナルバレック。
 しばらく神に祈りを捧げるような神妙な顔で考え事していた彼女だが、おもむろに身に着けている法衣の懐から携帯電話を取り出すと、どこかにかけ出した。
 伽藍とした部屋に携帯の呼び出し音が鳴り響く。

「私だ。何、ちょっと耳寄りな情報を手に入れたのだがね。どうするかね?…………。そうだ、………。ふむ、では貴様は………。…………。では期待している。」

 携帯を切り、哂いを堪えるような泣いているような奇妙な表情で、メレムが飲み干してしまったカップをじっと眺める。

「やはり、どんなことでも保険というのは必要だな。忌々しいおフェラ豚供め。主の声が聞こえるまで貴様らの頭をファックしてやる。鳴いても喚いても許しはせん。有象無象ことごとく我らに立ち塞がるものは全て殲滅してやる。私の望むものは『破壊と制圧』。他に一切の興味もない。妥協もない。地獄の奥底で貴様らの悲鳴をバックミュージックにワルツを踊る、それ以外に興味がない。嵐が来るぞ、鉄と血の嵐がな。くくっ、楽しみだ。ああ楽しみだ。生者に施しを、死者には花束を、正義のために剣を持ち、悪魔どもに死の制裁を。しかして我ら聖者の列に加わらん。我らが父たる大いなる主の名の下に、すべての不義に鉄槌を、Amen。」

 哂う。哂う。堪えきれずにナルバレックは哂う。これから起こるだろう全ての闘争に、血を血で洗う殺戮劇に、泣き叫び豚のような悲鳴をあげるモノたちに想いを馳せて。
 響き渡る哂い声。誰もいない部屋、凍りついた空間、空っぽのカップ。
 それは、今までの、そしてこれから死ぬモノ達への死神からのバラッドようだった。


 

 

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