「ガツガツガツガツガツガツガツガツ、んー、ゴクゴク、おかわりだ」
「はいはい〜〜〜、ランスちゃんは良く食べるねー♪」
ひよこやの皆の食事スピードは早い……その中でも、ランスちゃんのスピードはずば抜けてると思う。
他の皆は商人だから、早く食べるのはわかるけど、ランスちゃんは仕事を全然しないし…木花凄い矛盾を発見。
「がつがつがつがつがつがつ、ん?木花……貴様もさっさと食わんか」
「木花はランスちゃんが食べ終わってから食べるから良いよ♪」
「‥むぅ、ジロジロ見るんじゃない、食いにくいだろうが」
バツの悪そうな顔で、それでも先ほどと変わらずに……ガツガツと、皐月ちゃんの倍のスピードで食べ始まる。
それをニコニコと見つめながら、おかずやご飯をお皿に盛り付けるのが木花のお仕事、結構おもしろいんだー。
だってランスちゃん、気持ちのいい食べっぷりだもん、作った人間としても嬉しかったり☆
「ねえねえ、ランスちゃん……ランスちゃんは、何で陸ちゃんの許婚になったの?」
「がつがつがつがつ、んぐ、ゴホッ!?そ、そんな事を何でお前に答えなくてはならんのだ!」
トントントン、背中を叩いてあげながら耳をピコピコ、なにさー、感じ悪いの。
だって気になるんだから仕方ないよね…………つーか、ランスちゃんが小さな女の子と結婚の約束をした事実からして怪しいと思うんだ。
いつもお部屋に堂々と置いてあるえっちぃな本は…こう、何ていうか……木花が及びも付かないような、ぼーん、きゅ、ぼーん、見たいな感じだもん☆
………うーん、ランスちゃんの好きな女性のタイプって、ずっーと、ずっーーとそんな人だと思ってたのに。
謎は深まるね♪
「ねえーー、おしえてーーー」
「くっ、し、しつこいぞっ!!ええーい、うっさい、うっさい、うっさーーーい!」
卓袱台返し…ガーーッて吼えながら、肩で大きく息をするランスちゃん……ちなみにお料理は全て非難済みだから大丈夫なのだ。
うー、ガードかたいなぁ……いつものようについ本音を漏らすような事は無いようだけど、木花はここで引かないぞっ!
とりあえずはランスちゃんの口から散ったものを、ふきふき〜〜〜〜〜、よしっ。
「…………ランスちゃん、木花の事嫌い?」
「うっ………………な、何だ突然、き、嫌いではないぞ」
ジーッと下からランスちゃんを見つめる、ふふっー、ランスちゃんが女の子の涙に弱いのは木花はリサーチ済みなのだよ〜☆
さあ、さあどうするランスちゃん!?
「……ええーい、耳をピコピコ嬉しそうにしてる時点で嘘泣きだってバレバレだッ〜〜〜〜!!」
むんぎゅっと、耳を掴まれて持ち上がられる……ブラブラ…鼻息荒いランスちゃんに睨まれる、ご飯粒まみれでちょっと笑っちゃいそう♪
でも、金色の瞳は、この世界でも物凄くめずらしくて…思わず見つめてしまう、あうー、耳痛い…ウサ耳族の急所は耳なんだけど。
金の眼は、鋭利な印象を受けるけど、とても…綺麗なんだよね?ランスちゃん……でも一度その事を言ってあげたら…不機嫌になった。
自分大好きのランスちゃんが、ほめられて、不機嫌になった……何でさ?…木花はそこが不思議で不思議でたまらないのだ。
「10歳のガキが人の過去をあれこれ詮索するんじゃないッ!もっと美人に成長したら答えてやるッ!」
「ええーー、今でもじゅーぶんに美人だよ〜〜〜!ほらほら〜〜〜!」
顔を近づける、耳は相変わらずいたーっ、開けっ放しの障子の向こうからは冷たい朝の冷気、そんな寒い部屋でランスちゃんは嫌そうに顔を歪める、むっ。
何だか気に食わない、このこの〜〜〜。
「ああっ、もう、わかった、わかった!お前は今でも十分に綺麗だと認めてやるッ!だから顔を近づけるなガキッ!」
「む〜〜っ、今ガキって言ったな〜!ガキじゃないよ、ほらほら〜〜〜!」
「そういうところがガキだってんだっ!ええ〜〜〜い!暑苦しいわ!」
確かに木花は子供で、ランスちゃんからみたらちびっ子かもしんないけど、そこまであからさまに子ども扱いされると何か嫌。
頬を擦りつけるとランスちゃんは”ゲッ”って言うし、女の子に対する扱いがなってないとか思っちゃうわけで。
ドスドスドスドス、廊下を走る音……この乱雑な感じからして皐月ちゃん?
「えーっと、ランス兄貴〜〜〜〜ッ、今日の配達なん…だけ………ど……いや、まさかそこまで守備範囲広いとは思わなかった、ごゆっくり」
ガラガラガラ、ピシャッ……障子が閉められる……その向こうからは皐月ちゃんが大声で『ビックニュースだぜみんな〜〜〜』…あ、あれ?
ランスちゃんを見ると……白くなっている、真っ白だよね♪……や、ヤバッ。
「お、俺様は………俺様はロリコンなんかではないわぁあああああああああああああああああああああ!!!」
ピシャアアアアアアアアアアアアアン、雷がおちました……主に皐月ちゃんと木花の頭の上に…うぅ、頭痛いよ〜〜〜〜。
○
「ランスさんーー、オレがいない間に何かあったの?機嫌……悪いよね?」
目の前をドカドカと進んでゆくランスさん、町の人は既にそれに慣れているのか抜群の回避能力で横に避ける。
魚を売っているオジサンはランスさんが通るときは声を潜め、いちゃついてたカップルの人たちは隠れるように適当な店に入ってゆく。
その中で唯一、女の売り子さんだけはランスさんに熱い言葉を……あー、もう、恥ずかしいな☆
「俺様はいつも通り、至って沈着冷静なジェントルマンだぞ」
イライラオーラ全開なんですけど、むーっ、どうしちゃったのかな?とりあえずは配達をちゃんとこなさないと。
片手に持った猫ジャラシを撫でながら思う、猫が花のように地面から生えてる不思議なしょーひん、売れ筋らしいけど。
これならちょっとわかる、可愛いじゃん……寮の外猫、昨日はバイトでエサやれなかったけど大丈夫かなぁ。
トンッ、そんな事を考えてると、横を通り過ぎようとした大きなライオンのような人に睨まれる……え、えっと。
「ああん?兄ちゃん……何処に眼をつけんとんじゃ?…うまそうなものを持っとるやないか…そいつで許してやろう」
猫ジャラシがにゃっと震える、周りの人々は眼を合わせないように足早に…ランスさんは気づかずにブツブツと何かを言いながらどんどん遠ざかってゆく。
「だ、だめっ!!こいつはちゃんとお客さんに届けないといけないのっ!第一、あんただって余所見してたじゃないか!」
「余所見ぃ〜〜〜〜〜?ワシの眼は最初から横についんとんのじゃ!兄ちゃん……あんま舐めた口をしてると、テメェごと食っちまうぞ」
ダラダラと涎が地面に垂れる、うぅ、怖いかも……でも、この人は間違ってるッ!間違ってる人にはいそうですかとなびくような人間じゃないんですけどオレ。
キッと睨みつけたやりながら、猫ジャラシを心配させまいとギュッと抱いてやる…大丈夫、だいじょうぶ。
「食えばいいじゃないかっ!オレは間違ったことは言ってないし☆食ったら化けて出てやるかんな!」
「なははははははは、じゃあ、その幽霊も食っちまえばいいだけだ、いただきまーーす!」
ガボッと、大きな口がゆっくりと開いて近づいてくる、やばい、大口を叩いたのはいいけど、あ、足が震えて動けない。
…………あう。
「……何をしとるんだ貴様は、さっさと俺様の後をついてこんか」
ゲシッ、自分の体の何倍もあろうかというライオンの人を、いつものように当たり前の顔で蹴り倒しながら……ランスさん。
うわ、ちょっと泣きそうかも。
「て、テメェ……良くも人の頭を…ガッ!?」
ゲシッ、ゲシッ、ゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッゲシッ。
え、えっと。
「ほれ、さっさと行くぞ………ちょっとはマシになったと思ったら、俺様がいないと何にも出来んのは変わっていないみたいだな、ふんっ、使えんやつめ」
足を高速で繰り出しながら、耳をホジホジと……ライオンの人は何だか色んな事を叫びながら地面でじたばたじたばた……町の人はさっきより余計に眼を逸らしているけど。
た、助けてもらえた…で良いのかなぁ……そんな事を考えてると腕を掴まれて、引っ張られる。
「手を離すなよ、勝手にいなくなられては迷惑だからな」
「う、うん」
でも、何だか少し嬉しいかも。
○
夕焼け、配達も無事かんりょうーーーー、二人で歩く帰り道は、人通りの少ない川沿いの道。
よーし、今日もしっかりと働いたし、何だか気分いいなーーー、汗水流して仕事をするのはやっぱり好きだ、
よく水野には”勤勉すぎ”って言われるけど、楽しいから仕方ないじゃん。
川に映った自分の顔は、どっちかと言うと女の子って言うよりは……少年って感じ、短く切り揃えた真っ黒い髪に、もう少し焼いても良いかなーって思う白い肌。
まじめそーって言われるけど、どうなんだろう?輪郭はふっくらしてるし、眼もまん丸……うーん。
「ねえ、ランスさんって、昔のオレのこと、好きだったの?……それって、もしかして、幼女趣味?」
「……いきなり舐めた質問だな、貴様じゃなったらそこの川に突き落としてぶっ殺してるところだぞ、光栄に思え」
「あ、ありがと」
夕焼けに染まった茶色の髪をしたあの人は、振り返らずにそれだけを言って鼻を鳴らす、怒ってるって言うよりは…呆れた感じ。
も、も少し深く聞いてみよう。
「ランスさんって女の子好きだよね?」
「違う、女の子が好きなのではなくて、可愛い娘ちゃんが好きなのだ、不細工は女だろうが男だろうが滅べばいい」
やっぱり、改めて聞くと凄い思考してるなこの人、えーっと、小石を蹴りながら、今度は別の質問。
ランスさんの影を見ながら……口を開く。
「小さい女の子は?」
「別に好きでも嫌いでもない、ガキはガキだ、ただ、成長したら可愛い娘ちゃんになる可能性のあるガキは死なすわけにはいかん」
………単純な考え、だったら……オレはどーだったんだろ?……今の自分がランスさんの目に留まるほどの美人には思えないし。
将来そうなるとも思わない………モヤモヤする。
「だったら、小さいときのオレは……好きだった?」
「……好きでも嫌いでもない、貴様は俺様のものだ……昔も今もな、って何を自分から聞いといて顔を赤くしてるんだっ!」
だ、だって………うーん、ますますわかんなくなった。
昔のオレって?
書けないあとがき。
あとがきは書けないので、3×3EVILさんに感謝して、お返事を(苦笑)陸は幸せにしたいなぁと思っていますが、丸くなってもランスなので、浮気やら色々あります、それでも、こんな感じでゆったりと書いてゆきたいと思っていますので、もしよろしければ次回も読んでやってください、でわ。