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「ジャンクライフ−1−(ローゼンメイデン+オリジナル)」

スキル (2005-12-09 16:26)
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生まれ出たときの記憶がないということを人はどう思っているのだろうか。
ビデオや写真という記憶媒体を通して、記憶にない己の姿を見て安心するのだろうか。
ああ、自分はちゃんとこの世に生まれ出たという証が存在していると。
ならば、それがなかったとしたら。誰も己が生まれたという事を知らず、己だけが気がつけば存在していたとしたら。
何時の頃からかは記憶がないので分からないが、自分は気がつけばそういう存在だった。

「これで、十七回目の人生か。」

死と生との流転を彷徨う存在としては、生から死ではなく、死から生へと流転する感触は何時味わっても何ともいえないものがある。
生れ落ちる瞬間に記憶を持っているものなど世界を探しても己みたいなものだろう。
己――今回は樫崎 優――は柔らかな布団の上で目を覚ました。
目を開いて最初に目に入るのは壁に貼られたメイド服を着たアニメの女のポスター。
飾られたこれまた女の子のフィギュア。本棚には漫画の本がびっしりと詰まっていて、視線をその横に向ければゲームが詰められた棚が目に入る。

「――これはまた、世界は変わったものだ。」

優は己の部屋をまるで始めて見たかのように見渡すと、ふとベッドの隣に置いてある鏡張りの机の上に置かれている紙に目をつけた。
真っ白な紙の上にただ『まきますか、まきませんか』という言葉だけが書かれている。
優はまるでそうすることが当然のように机の上に置かれていた筆箱から鉛筆を取り出すとまきませんかの所に印をつけようとした。

「なにを、しているんだ?」

そこではっと優は我に帰る。まるでなにか得体の知れない何かに操られるような感覚で『まきませんか』の箇所を丸しそうになっていた。
じっと何の変哲もない紙を眺める。そして、まるで得体の知れないものに逆らうように優は『まきすまか』の方をチェックした。
なにか嫌な予感が優を襲ったが、別に気にすることもないと優は汚れた部屋を見渡す。
どうやら、十七回目の人生の始まりは掃除から始まるようだ。


ローゼンメイデン−ジャンクライフ−


未成年が所持していてはいけないはずの本が二十五冊。だいぶ前に発行されたであろうゲーム雑誌が四十二冊。プラモデルの箱が六箱。
優はとりあえず目に付くものを整理していった結果に出現したそのゴミを眺めながら、小さく呆れたように溜息を吐いた。
掃除をする前に今回の体はどのようなものかと鏡を見たのだが、なかなかの体つきをしていた。
細身だが健康的な体、顔も伸ばしっぱなしの前髪を何とかすればそれなりに見栄えはいい。
身長は百七十前後。どこにもガタのない健康的な体である。だが、ほとんど外に行かないのか肌は女性の肌のように白い。

「なんたる惰弱な体だ。前の体も鈍らではあったが、ここまでではなかった。」

自分の体を優はそう言って侮辱すると、まぁ仕方ないとゴミの本を縛る縄を探すために部屋を出た。
優の部屋は一軒家の二階に存在し、記憶を探ると縛れそうな網のようなものは物置にあるとわかる。
階段をトントンと下りていくと一階でなにやらキャイキャイと騒がしい声が優の耳に入る。
大方、妹あたりが友達を呼んで遊んでいるのだろう。別段気にすることではない。
前までの優はこういう状況であるならば部屋に引き返し、妹の友達がどこかに行くまで部屋に閉じこもっているのだが
今の優が同じように行動してやる義理はない。

「あ、あの人。香織ちゃんのお兄ちゃん?」
「えっ? お兄ちゃん?」

妹の声が聞こえて、そちらにちらりと視線を向けると開けられたリビングのドアを通して妹の友達と目が合った。
愛想笑いを浮かべ軽く会釈をしたので、優もそれに返す。そして、目的の場所に行こうと背中を向けて

「ちょっとごめんね。」

という妹の声と共にリビングのドアが閉められ、足早に妹は優に近づいた。

「ちょっとお兄ちゃん! 友達がいるときは降りてこないでって言ってるじゃない!!」
「なぜだ? ここは香織の領土というわけではあるまい。」
「うわっ。なに、その言葉遣い? また何かのアニメのキャラの真似?」
「これが普通だ。」
「うわぁ。やめてよ。もう、早く部屋に帰って! 友達が来てるんだから!!」
「なら、俺のことなど気にせず遊んでいればいい。可笑しな奴だなお前は。」

優は呆れたように肩をすくめて見せると香織から視線を外し、物置へと向かった。

「ちょっと、お兄ちゃん!?」

背後からぐいっと肩をつかまれ、優は邪魔だといわんばかりにその手を払いのけると物置へと向かった。
後ろのほうで香織が何か文句を言っているが優は意識的にその声を無視する。
そして、物置で目的のものを見つけると自分の部屋へと優は帰っていった。
その際、香織がいたはずのリビングはもぬけの殻で、その友達の姿もそこにはなかった。
自分の部屋に帰ってきた優はそこで自分が部屋を出たときにはなかったはずの年代もののトランクに気がついた。
ひとまず倉庫から取ってきた縄とはさみを机の上に置くと、トランクの前に座り込む。
とりあえずは中身を確認しようとトランクをあけ、そして中には言っているものを見て優は眉をしかめた。

「人形? それも、随分と精巧な……。」

漆黒の衣装とそれに栄える白銀の髪。眠っているような安らかな顔は人間のソレと変わらないほど上手く作られている。
優はしばらくそれを眺めると、綺麗に立てられたフィギュアに視線を向ける。

「とりあえず飾っておくか。」

意思を言葉にして明確にすると優はトランクから人形を取り出す。
その際にポロリとゼンマイが人形の手から零れ落ち、卓はこの人形の付属品だろうとその手に再び握らせた。
そして、胸を強調するような姿勢で明るい笑みを浮かべているフィギュアの隣に人形を置くとゴミの方へと向き直った。
動くたびに目に入りそうになる前髪をうっとうしいと掻き揚げると優はゴミの整理を始める。
すると整理を始めて数分も立たぬうちに背後で何かが落ちる音がした。
視線を向けてみれば、先ほど人形に持たせたはずのゼンマイが再び落ちていた。
優はそのゼンマイを拾い上げると、持たせたはずの人形を見た。
先ほどと何の変化もなく、人形は無言でそこに存在する。

「これは……もしや、あの物の怪というものか。」

なぜそこまで思考が飛躍するのかは優本人にも分からないが、とりあえずなんとかしようと優は人形を抱き上げた。
そしてその背中に丁度ゼンマイの差し込める場所を発見すると迷うことなくゼンマイを差し込んだ。
するとキリキリとゼンマイは独りでに回りだし、それと呼応するように人形の瞳が開かれていく。
人形はふわりと浮いて、優の手から離れるとその瞳に人を馬鹿にしたような色を浮かべて笑い始めた。

「貴方が私のネジを巻いたのぉ? なんかつまんないカンジぃ。」
「やはり、か。」
「……その視線がなんか嫌な感じだけどまぁいいわ。さっさとこれを指に嵌めなさい人間。」

優は人形の手のひらの上に置かれている指輪に視線を向ける。

「指輪?」
「他の姉妹達のように選ばれるのを待つなんて水銀燈はしない。私が選び、私が決める。人間、貴方はねぇ、私の糧となるの。」
「糧?」
「そうよぉ。アリスゲームを制する為のねぇ。」
「そうか。人生を十七回も経験しているがこんな展開は初めてだな。」

優の不思議な物言いに水銀燈は首をかしげ、そして次の言葉でその顔を真紅に染めた。

「初対面の人形に婚約を申し込まれるとは。世界も変われば変わるものだ。」
「こ、婚約ぅ?」
「それにしても私が決めて、私が決めるとは随分と一方的な求婚だな。まぁ、それだけ女性が強くなったという事なのだろう。」
「ちょっ、ちょっと待ちなさい。鈍い人間ね。私はねぇ、貴方を糧とするといってるのよぉ? アリスゲームを制する為のいけにえよ。」
「物騒な言葉が飛び交うようになったものだ。前の人生では、むしろ男が主導権を握っていたのだが。」
「ちょっとも聞いてるの貴方?」
「まぁそう気にすることもない。いいだろう。お前の申し込みを受けようではないか。」

水銀燈の言葉を無視して、優は勝手に自分の中で結論を出すとその指輪を左手の薬指に躊躇なく嵌める。
キラリと指輪が輝き、力が水銀燈へと流れる。

「ふふっ。おばかさんねぇ。よくわからないけど、これで貴方は私の糧となって、死ぬのよ。」
「そうか。婚約したばかりなのにもうそんなことを考えているのか。まったく、強くなると羞恥を失うとは別であろうに。」
「何を言って?」
「夜伽で俺の精を吸い尽くすと言っているのだろう。心配するな。物の怪がどういう存在であるかは分かっている。」
「よ、夜伽ぃ! ちょっと、人間!!」
「そう大声で言うな恥ずかしい。だが、そう簡単に吸い尽くせると思うな。俺とて、なんどかの経験はある。そう簡単に負けんさ。」
「……!!」
「水銀燈と言ったな。求婚した相手を人間と大きな規模で括った呼び方をするな。俺は樫崎 優だ。優と呼べ。」

そう言うと、優は少し赤くなった頬を隠すように座り込みゴミへと向かい合う。

「さ、さっきから変なことばっかり言ってぇ、人間その馬鹿みたいな誤解を解くから話を聞きなさい!!」
「優だ。」
「そんなのどうでもいいのよ!!」
「優と呼べ。そうしたら話を聞いてやる。それと、喚く前にお前が散らかしたこの羽を掃除しろ。」
「ぐっ、このっ。」
「喋るな。手を動かせ。」

この後、水銀燈は律儀に優のことをちゃんと名前で呼び、人口精霊を用いて部屋の中に散らばった羽を掃除し、優の誤解を解こうとするのだが。
暖簾に腕押し、馬の耳に念仏、全くといっていいほど優の勘違いは解けず、疲れるだけという結果となる。
これが、薔薇乙女が一人である水銀燈の今回のアリスゲームの始まりであった。


あとがき
どうもはじめてましてスキルというものです。
えっと、今回どこからともなくいわゆる電波というものを受信し、ローゼンの二次を書きました。
それも長編です。そして、ローゼンでは敵サイドである水銀燈が主人公のパートナーです。
一応、物語は漫画ではなくTV版を軸として書くつもりです。
拙い作品ですが、どうかヨロシク。
……それにしても水銀燈の口調は難しい。

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