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▽レス始

「トイレの花子さん(To Heart2)」

虎空王 (2005-12-06 17:18)
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 トイレのそれも特定の個室なのよ……

 そのドアをノックして、そして呼びかけるの。「花子さん」って……


 しかし今更『学校の怪談』が流行るとは思わなかったな。
 例のミステリ研の会長さんが熱っぽく語った怪談。
 俺自身にとってそういう話はそれこそ『ネタ』でしかない。まあ、このみのようなタイプにとっては地獄だろうが。

 基本的に俺の登下校は騒がしいものになるのだが、本日の下校は一人である。
 本日学校であったことを頭の中で反芻しつつ俺は家路を急いだ。

 そしてたどり着く我が家。
 以前ならたまにこのみが世話を焼いてくれる程度のこの家での生活だが、ここ最近はずいぶん賑やかなものになっている。
 それを演出してくれている人の顔を思い浮かべるが、とりあえずはトイレだ。

 んでもって当然ながらノックなどせずにガチャリと。


「え?」


 奇妙なせせらぎの音の中、便座に腰掛けていたイルファさんが呆然と声を出した。
 かくいう俺も頭がパニックになってどうすればいいのかわからない。

「えー、あー、うー」
 言え! 何か言うんだ貴明!
 そう自らに言い聞かせた結果、口をついて出たものはというと


「トイレのイルファさん……」
「なに馬鹿なこと言ってるんですかー!」

 うむ。見事な蹴りだよ、イルファさん。
 世界を狙えたかもね、金的でさえなければ。


「ったく。ノックぐらいしてくれてもいいじゃないですか」
「ほんとごめん」
 そう、最近ではちょくちょくイルファさんはこの家に来るのだ。

 前回、イルファさんのことでミルファともめたが、結局今では合意の下三人でつきあっている。
 ちなみにその時のミルファの台詞

「貴明がスケベなのはわかりきってるし」

 ごめん、俺が悪かったです。

 こんな関係ではあるが、イルファさんはもちろん今でも瑠璃ちゃんのことが大好きだ。
 その上でのつきあい、俺は『家族』の一言で説明を済ましている。

 ただ、いきなり俺が彼女持ちになったことで隣近所がいきなり騒がしくなった。
 その筆頭が言うまでもなく向坂姉弟である。
 雄二はどうということもないのだが、タマ姉の化け猫のごとき変貌は本気で怖かった。

「ターカー坊?」

 キシャーと襲い来るタマ姉をミルファが乳ビンタで撃退したのも今となってはいい思い出。実際にはそう見せかけたエルボーだったが。


「あとついでに言えば『トイレのイルファさん』ってなんですか。花子さんじゃあるまいし」
「それもごめん。学校で怪談を聞かされてさ」
 イルファさん、小首をかしげて
「ということは七不思議とかですか?」
「うんまあ、そんなとこ」
 そしてその際、妙な疑問が飛び出したのだ。

 もしノックも何もせずにいきなり開けたら?

「俺の場合はイルファさんだったわけだ」
「だからやめてくださいと。そもそも学校じゃないですよ」
 顔を赤くしつつはっきり怒るイルファさん。これ以上はつっつかないほうがよさそうだ。
「そういえばイルファさんだったらどう思う?」
「え? 私だったら……そうですねえ」
 イルファさんはしばらく考え込んでいたが

「何もないんじゃないでしょうか」

 と、考えもしなかった答えを返してくれた。
「どうして?」
「ええと、そのなんて説明したものか……」
 しばらく考えをまとめていたようだがやがて話し出す。
「確率論とでも言いましょうか」
「へ?」
 なぜそこでくじ引きの話が出てくる?

「Aが存在するためにはまずBに対して自分を主張しなければならないんです。そしてそれをBが認知することで初めてAは存在できます。つまりBがAを認識できない状況になった場合Aは存在できないんです。想像できますか? どれだけ主張しても認められなければ存在しないということと同義なんですよ」

 話しているうちになんかやたら興奮してきたようで、どんどん熱を帯びてくる。

「これを拡大すると、認識者つまり観測者は無限の可能性に対して形を与えることができるんです。つまり『ノックして花子さんと呼ぶ』という『選択』によってそこに花子さんという『事象』が誕生することになります。確率論的宇宙解釈とくると言い過ぎかもしれないですけど。で、貴明様。人の話聞かない悪い子には所英男ばりの三角締め極めますよ?

 ごめん、話半分も理解できなかった。というより鼓膜から先に行ってないわ。

「まあ、そういうわけでいきなり入ったら何もないと」
「ええ、結局はそういうのは信仰が生み出すものですし。恐怖がなければそこには何もありませんよ」
「ふーん」
 正直そこまで難しいことを考えられるほど俺の頭は上等でないので、少し熱くなっている。
 少しのどが渇いたということもあるので、たまたま近くに置いてあったペットボトルから水を飲もうとして

「ぐえ」

 それができずに台所に走った。
「貴明様!?」
 信じられないほど無味乾燥な味。これは以前の理科の実験で覚えがある。
「これ蒸留水だ……」
 慌てて吐き出して口をゆすいだ。もちろん汚いわけではないが、飲むのはあまりよろしくない液体である。
 イルファさんに心配ないと手を振りながら居間に戻ってきた。
 その勢いでペットボトルを元の場所にどんと置き、イルファさんのすぐ隣に腰をおろす。
「はあぁ」
「大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫」
 そのまま軽くイルファさんに体重を預けた。
「でもなんで蒸留水なんかが」
 さっぱりわからん。
 もう一度盛大にため息をつこうかと思ったとき

「ただいまーっ」

 ミルファの声が響いた。
 我が家の元気っ娘のお帰りか。大概こっちから迎えに行く必要もなくあっという間にこっちまで来る。
「ただいま。貴明、姉さん」
「おかえり」
「おかえりなさい」

 そうやりとりをして、ふとミルファがあるものに目をとめる。
「貴明、ひょっとしてそのペットボトルに口つけた?」
「ああ。ひょっとしてまずかったか?」
 そのときのミルファの笑顔といったら……にこやかすぎて逆に怖かった。

「聞きたい?」
「いや、その」
 聞かないほうがよいと俺の全細胞が訴えている。
 だが無情にも

「後で貴明をからかおうと思って、それあたしの電池の排水なんだ♪」


 HMXシリーズに搭載されているエネルギーシステム。
 水素を利用した燃料電池。
 これは使用しているうちに水が発生するため、メイドロボはときどきそれを抜かなければならない。
 そして彼女たちはある特定の場所からそれを行うのである。
 そう、先ほどイルファさんがやっていたように。

 飲めないわけだ。蒸留水というか純水なのだから。


 かきーんと固まる俺。
 別段汚いわけではないとはいえ、俺が口をつけたものって……。

 しかしそんな俺をさらに追い詰めるようにしてミルファたん、妖艶な表情を見せてくる。

「ね、生で見たいとか思わない?」


 とりあえず「Yes」とだけは言わなかった俺を誰かほめてくれ。


 あとがき

 下品ですみません。あと展開も強引でしたね。
 精進いたします。

 エロ坊は「Yes」と言わずに「はい」と言ったんだと思うひと、手ーあげて。

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