「和人様・・・」
私の前で、私を始めて認めてくれた大切な人が傷ついていた。
この人は私に居場所をくれた、今では大事な私のご主人様。
「大丈夫ですか?」
その傷ついた姿を見た私は、私の硬い胸で和人様を抱きしめた・・・
「…悲しいんですね」
何も話そうとしない和人様の頭を、私は筋肉質な腕を使って包み込んだ。
「ありがとう、和麻」
和麻・・・?
私の名前は和麻だっただろうか?
記憶にある私の名前は和美のハズだ。
それに和麻と言う名は、私が男の子だった時に私に付けられる名前だと、昔父上に教えられた覚えがある。
・・・・・・なら私は男の子?
いや、私は女の子のハズだ。
なのに、何故私は男の子の名前で呼ばれているのだろう。
「君は僕が一番頼りにして、一番信頼している男だからね」
女の子の私に、和人様は男と言ってくる。
まあ、男の子発言意外は嬉しい事を言ってくれてるけど。
「そして、君は僕が一番愛している男だ」
そう言って、和人様は私の硬い胸に手をやった・・・・・・
あれ?
自慢じゃないけど、私の胸は硬く無い。
普通の10歳の女の子以上に発育が良い私は、ほんの僅かだが胸がある。
将来を楽しみにしていた私の胸は、いったい何処に?
それに愛している男って?
転生日記7話 初出動! 極上○○○
「はっ!」
和人様に愛の告白をされていた私、しかし気がつくとそこは私しかいなかった。
たしか、この部屋は和人様が私に用意してくれた部屋だったはずだ。
「夢だったんだ・・・・・・」
胸に手を当てると、そこには小さな膨らみがちゃんとある。
夢の中では筋肉質で父上のような腕だったのに、現実の私の腕は女の子らしい腕だ。
修行していた関係上、ちょっと筋肉がついているが・・・
「夢でも嬉しかったなぁ」
お布団の中で、夢の中の事を思い返す。
一部分を除いて、あの夢は嬉しい夢だった。
「和人様、やっぱり男の子の方が良いのかな・・・」
それも年上の・・・
女の子に生まれた私には、和人様に好きになってもらえないのかもしれない。
この事を考えると胸が苦しくなる。
私には、昨日まで夢があった。
その夢は、風牙のお姉さんに教えてもらった事や、神凪で生活して手に入れた知識から思い描いた夢だ。
その夢は和人様と体で愛し合う事。
風牙のお姉さんが言うには、この世には二つの愛の繋がりがあるらしい。
それが心で愛し合う事と、体で愛し合う事。
体で愛し合うには何か特別な行為をするらしいが、そこまでは教えてもらっていない。
それでもこの世で一番簡単な愛し合い方で、男の子と女の子がいれば良いらしい。
それにこの愛し合い方には、片思いで十分だとも教えてくれた。
それと世の中には、男の子同士や女の子同士じゃ無いとダメな人達がいるとも、お姉さんは言っていた。
そして心で愛し合うのは難しいらしい。
両思いになる必要があって、両思いになっても簡単にはできない愛し合い方だと、私に教えてくれた。
それでも、難しいけど心と心が通じ合っている事は素晴らしい事みたいだ。
(体は簡単に奪われるけど、心までは奪えない。この心はあの人だけのモノだから・・・)
色々教えてくれた風牙のお姉さんが、泣きそうな顔で言った事を私は忘れてない。
私は今までの人生で(まだ10年しか生きてないけど)、高望みすると望みが叶わない事を学んでいる。
だから、私は和人様と心と心で結ばれる事は望んでいない。
どんな方法で結ばれるか知らないけど、体で結ばれるだけで私は十分幸せだ。
それに神凪にいた時に、男の人達が言ってた、
「風牙は俺達の奴隷なんだから、主人である俺達に体で奉仕するのは当然」
とか
「気持ちよかった」
などと。
体で愛し合うのは気持ちの良い事みたいで、女の子の奴隷がご主人様と体で愛し合うのは女の子の奴隷の義務らしい。
これが神凪の人達から勝手に、私が手に入れた知識だ。
義務という事は強制だという事だけど、和人様にならしないとね。
気持ちよくなって欲しいし、和人様からは私が一番欲しい物を貰ったからお返ししないと。
と、この私が手に入れた知識から考えて、和人様と体で愛し合う事が私の夢になったのだ。
義務でもあるみたいだから、恥ずかしく無いんだから・・・・・・
和人様のお母様には、この夢は恥ずかしくて言えなかったけど。
だって愛し合うなんて、やっぱり他の人には恥ずかしくて言えないよね。
でも、恥ずかしくてもやらないと。
それが私の義務だしね!
でも、やり方解らないけど・・・・・・
それに和人様は男の子が相手じゃ無いとダメな人みたいだしなぁ。
男の子に生まれてきたかったよぉ。
「愛してる、和人・・・」
「行き成り気持ち悪い事言うな、終」
「だから、そのタマゴ焼きを俺に・・・」
「誰がやるか」
和美が自分の部屋で、愛し合い方で悩んでいる頃、和人、終、余は朝食を三人で仲良く食べていた。
この三人は昨日のホ○疑惑により、母とメイド達の親切な気配りで同じ部屋に寝ていた。
もっとも大人達は和人達を○モだとは思っていない。
そこは和人の母がちゃんと和人を教育している。
ただ、和人達をからかっているのだ。
実はこの屋敷で和人達をホ○だと思っているのは、可憐な少女一人だけだった。
そのまま寝ていた部屋に朝食が運ばれ、三人は仲良く朝食の時間となったのだ。
「それで、どうなってるんだ?」
御飯を口に入れながら、終は和人に声をかける。
「それは俺達への疑惑か?
それとも風牙衆の事か?」
「終兄さんが聞きたいのは、風牙衆の事だと思います」
食べることに忙しい終に変わって、それ程忙しくない余が答える。
「風牙衆なら大丈夫だ。昨日の夜に、風牙衆全員を保護したと連絡が入っている。
神凪にも家から政府に圧力をかけて黙らしているから安心しろ」
「ちゃんと仕事してたんだな」
「俺がやった訳じゃないけどな」
「知ってるよ。だって俺達とずっと遊んでたからな、オマエ」
「昨日は楽しかったね、終兄さん」
「そうか?」
昨日やる事が無い子供達は、一日中遊んでいた。
見た目が最年長な終が、一番子供のように遊んでいたが本人は忘れているようだった。
「風牙衆はこれからが大変なんだけどな」
「そうですね。終兄さんなら、なにか食べ物をあげれば怨みを忘れてくれるんですが」
「余・・・」
「今は解放された喜びで一時的に忘れているけど、神凪への怨みが消えた訳じゃないからな」
実際、和人には頭の痛い報告がきている。
すでに一部の過激な男達が、神凪への復讐を叫んでいると。
復讐止めろと、和人は簡単には言えなかった。
神凪一族が風牙衆にした事を考えれば、それは人として当然の感情なのだから。
だからと言って、和人は復讐を認めた訳では無い。
風牙衆を解放するのに政府と契約を結んでいるし、風牙衆が神凪一族を潰す訳に行かないからだ。
神凪一族は外部に敵を多く作り、政府内部にすら敵は存在している。
それでも神凪一族が潰される事は無い。
それは神凪一族が、裏の世界で重要な位置にいるからだ。
仮に神凪一族がいなくなれば、この国は妖魔などにより荒れる事になってしまう。
それは神凪一族がこの国最大の退魔組織であるのだから、その組織が無くなればどうなるかは誰にでも予想できた。
神凪一族を潰すには、神凪一族以上の退魔組織でなければ政府が黙っていない。
そう、潰れた神凪一族の変わりができる組織でなければ。
退魔組織としての風牙衆には、神凪一族の変わりはできない。
仮に風牙衆が神凪一族に裏から、それこそ暗殺などで神凪の力を奪えば、政府は風牙衆を許さないだろう。
風牙衆の行動は、国を危険に導くかもしれないのだから。
「まあ、そんな事情もあるから風牙衆は、神凪からの要請により情報を渡すって契約ができたんだよ」
「風牙衆が無ければ、神凪もその力が半減しますからね」
「それでも自由にはなったけどね。今までは上下関係だったけど、これからは対等な関係だから」
風牙衆を完全に神凪一族から解放したい和人だったが、それは無理だったのだ。
三咲家の力でも、神凪一族の力を減らす事を政府に強要する事は出来ない。
今回の風牙衆の解放は、風牙衆は今後も神凪一族に協力するという条件があったから実現したのだ。
この方法なら神凪の力は見た目上、まったく変わってないのだから。
「神凪とケンカする為には、神凪以上の組織じゃ無いとダメって事か〜
ケンカはタイマンが一番なのに」
一人だけ朝食を終えた人物が、一人愚痴をこぼす。
「・・・・・・俺はできるけどな」
なにしろ和人と神凪一族がケンカをすれば、神凪一族は強制的に力を失い自滅するのだ。
自滅した以上、どこからも文句を言われる事は無い。
「それと神凪の過激派にも動きがあるみたいだ、一応監視してるけど」
「この前誰かが逃がした妖魔、魔族だっけか?そっちは?」
「・・・捜索中だ」
その時、部屋のドアが開いた。
部屋に入ってきたのはメイドで、その手には紙が握られている。
その渡された紙を読んだ和人の顔が、10歳の顔から大人の顔に変わっていく。
「その魔族が神凪の過激派と接触したらしい」
「場所は解ってるのか、和人?」
「ちゃんと密会現場を監視している」
「どうします、和人さん?」
嬉しそうな終と違い、余の顔は真剣だ。
「決まってるだろ余、ここは俺達極上退魔団の出番だ」
終は立ち上がり、行こうぜと二人に目で語りかける。
「なんだ、その極上退魔団って?」
「極位神所属
最上級退魔団
略して極上退魔団だ」
終は胸を張り、己のネーミングセンスを披露した。
一応、和人達三人は三界でも上位の存在なので過大広告では無い。
「極上退魔団、動くぞ!」
そう宣言した終は、呆れている二人を残して部屋から出て行ってしまう。
「行こうか、余くん」
「行きますか、和人さん」
行かない訳には行かない二人は、先に行ってしまった終を追いかけて行く。
この時、極上退魔団の三人の頭には天竜の存在は無かった。
おまけ
その頃の天竜君
「はい、あ〜ん」
「余は自分で食べたれるぞ、鈴」
「天竜様、あ〜ん」
「・・・・・・あ〜ん」
若い二人は、ただ仲良くご飯を食べていた。
あとがき
恋する乙女な和美を書いてみました
10歳で胸が少しあるのかは知りません。
間違ってたらすいません
これは男男の絡みに引っかかるのかな……
ここに自サイトのアドレス載せますね
http://www.geocities.jp/mkphr571/
レス返し
にのまえ かずや様
>しっかりと警察の皆さんに監視してもらわないと、逆恨みで酷い目に遭いそうです
先を読まれてしまいましたね。逆恨みで酷い目には遭わないんですがね
>純粋な疑問
そして疑問は確信へ変わりました(ぇ
皇 翠輝様
まだぴんちです。ホモ疑惑はまだまだ続きます
>サイトのアドレスが知りたいのは私だけでしょうか
今回はアドレスを載せたので、見に来てくれると嬉しいです
月流様
>転生日記の続編、楽しく読ませてもらいました
ありがとうごさいます、これからも頑張りますね
>宗主は義足
この作品内ではまだですね
本編だと綾乃は何歳の時に<炎雷覇>を受け継いだんでしょう?
一応確認すると、本編の1巻で和麻は22才、綾乃は16才でしたっけ?
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