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「黄金の獅子を受け継ぐ者8(まぶらほ+セイント星矢)」

アーレス (2005-07-18 23:41)
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「…誰だ俺を呼ぶ小宇宙を放つのは……」

深夜2時、自分を呼ぶ小宇宙を感じ和樹は目を覚ました。

「行ってみればいいか…」

獅子座のパンドラボックスを背負うとそっと寮を出た。


――――――――――――――――――――――


和樹は小宇宙に導かれ、彩雲寮と朝霜寮の間にある広い空き地に入った。

「結界?それも高濃度の小宇宙でできた…」

獅子座の黄金聖衣を纏った和樹が呟く。

「いい加減出てきてはどうです?前獅子座の黄金聖闘士・アイオリア!」

暗かった空き地の一角が突然明るくなった。そこには雄々しい獅子の気配を放つ青年、約20年前に起こった冥王ハーデスとの大戦で命を落とした前獅子座の黄金聖闘士・アイオリアがいた。和樹と同じ獅子座の黄金聖衣を纏った彼は和樹の前に立った。

「…和樹よ。今のままでは奴らとの戦いに生き残ることはできない。悪いことは言わない。今すぐ聖闘士を止めろ」

「……突然そんなこと言われて、はいそうですかとやめられるか!俺は聖闘士であることに誇りを持っている!!」

「セブンセンシズの扉が半開きでしかないおまえには死しか待っていないぞ…」

和樹が構えた。

「そこまで言うなら!教えてやる!!俺の小宇宙を!!ライトニングプラズマ!!!」

「それ程度で粋がるな!!ライトニングプラズマ!」

二人の雷光がぶつかり合う。

「なっ!?」

和樹のライトニングプラズマがアイオリアのライトニングプラズマに競り負けした。

「ぐあぁぁぁ!!」

幾多もの雷光の雨に撃たれ和樹は吹き飛ばされた。その姿をアイオリアは冷徹に見る。

「この程度で、黄金聖闘士とは…」

「まだだぁ!!」

素早く起き上がるとアイオリアに襲いかかる。


―――――――――――――――――――――――――――


「…ん〜和樹さまぁ〜♪……ンギャ!」

寝ている千早の顔に隣のベットで寝ていたはずの神代の蹴りが入った。

「もぅ、神代のバカ…いいとこだったのに」

なんとなく和樹の顔が見たくなった千早は部屋の隅にある大きな鏡にかぶせられている布を取った。この鏡は和樹の部屋にもあり、この鏡を通って二つの部屋を行き来している。向うの部屋に行くつもりはなかったが和樹の顔だけ見ようと鏡を覗き込んだ。
和樹がいない。それだけならトイレにでも行ったのかと思うところだが千早は違和感を感じた。その違和感を確かめるため、鏡を通って和樹の部屋に入ってみる。いつもの部屋だ。だが、何かが足りない、大事ななにかが…。

「!?」

その何かに気がついた千早は急いで自分の部屋に戻り、神代を叩き起こす。

「神代!起きて!!神代!!」

「痛い!お姉ちゃん痛いってば!!起きたから!ねぇ!!」

枕で殴られて起こされた神代は暴走する姉を同じく枕でぶん殴って正す。

「ハァハァ…で、どうしたの?」

「和樹さまがいないの!!」

「トイレとかじゃないの?」

「トイレに聖衣を着ていく!?聖衣がないのよ!!」

再び枕を振り回しはじめた姉を再び叩いて正す。

「指令がきたとか、聞いてないの?」

「うん…」

「とりあえず、探そうよ。もしかしたら、黄金聖闘士の誰かがいらしたのかもしれないし」

「そうね」

神代はどこか自分の主を依存している姉を落ち着かせると急いで着替える。神代自身もどこか和樹を依存しているところがあるが、目の前で姉が慌てる分いくらか冷静な判断ができたのだ。

(もう大事な人は無くしたくないんですからね!和樹さま!!)


――――――――――――――――――――――――


「グホッ!!」

何度目だろう、地面に叩きつけられるのは。

「まだ立つのか?その根性は認めるが、それだけではな!これで終わりにしてやる!!」

「まだだ!ライトニングボルト!!」

和樹の雷光を交わし懐に入ったアイオリアは和樹がミダス王に放ったのと同じ技、獅子咆哮を和樹に叩き込んだ。

「!!!!」

そのまま再度地面に叩きつけられた和樹の意識は遠のいていった。


―――――――――――――――――――――――


…俺はあの人に泣いて欲しくない。なんであの人は泣きながら俺を抱くのだろう……
何度も何度も「ごめんなさい。こうするしかないのです」と言い続けている……なんで謝るの?俺はあなたのためなら命すら捧げるのに……俺にとってあなたは母ではない…いや、母と子である以前に俺はあなたを護る闘士のつもりだ。だから俺は言った。
「泣かないでください。アテナ」と…そいういとあの人は俺をさらに強く抱きしめた。
泣かないでください…アテナ…母上……


――――――――――――――――――――――


「!?」

屍のように動かなくなった和樹から今まで以上の膨大な小宇宙が溢れ出した。

「思い出した…俺が全力を出せなくなったわけが……思い出した…あの人の涙のわけを…」

囁きながら体を起こし、そして…

「がぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」

そして、吼えた。獣のように、小宇宙でできた結界を揺るがして。


―――――――――――――――――――――


「!?」

「沙織さん?」

「アテナ?」

「和樹が封印を解きました」

「「!?」」

アテナ・城戸沙織の言葉に教皇でありペガサスの神闘士・星矢と偶然居合わせたアンドロメダの神闘士・瞬は顔を見合わせた。


――――――――――――――――――――――――


「「和樹さま!?」」

和樹を探しに出ていた千早と神代は和樹を感じた。いつもの暖かい小宇宙ではなく牙と爪を剥き出しにした黄金の獅子の小宇宙を感じた。

「お姉ちゃん!」

「うん!行こう!」

二人は感じた方向に向けて走り出した。


――――――――――――――――――――――――――――


「ぁぁぁあぁぁぁ!!!!」

吼えるのをやめた和樹はアイオリアと対峙した。

「ただキレタだけか、目覚めたのか、見極めさせてもらうぞ!ライトニングボルト!!」

「燃えろ、我が真の小宇宙よ!彗星拳!!」

コンプレックスから使うことを避けていた彗星拳を迷わず使った。ライトニングボルトと彗星拳がぶつかる。

「オオオ!!」

「なに!?」

彗星拳がライトニングボルトを破った。威力こそライトニングボルトには劣るが貫通力のある技、それが彗星拳だ。
ギリギリで避けたアイオリアは和樹の気配が突然消えたことに戸惑った。

「上か!!」

「遅い!ライトニングブラスト!!」

上から降ってくる蹴りを受け止めるが、その威力にアイオリアの立つ地面が陥没する。

「クッ!」
(星矢のペガサスエアシュートと互角!?いや、威力だけならこちらの方が上か!)

ライトニングブラストの威力に体勢を崩されたアイオリアは和樹の次の攻撃が迫る。

「ライトニングスラッシュ!!」

振り下ろされた右腕から四つの雷のヤイバが放たれた。アイオリアはそれを臨界点まで高めたライトニングプラズマで撃ち抜いた。放たれた雷光は消滅することなく空中を漂う。その光景はまさに宇宙であった。そしてアイオリアの小宇宙が増大していく。

「…これほどの力があれば、奴らにも遅れは、とらんだろう。ならばこの技!今こそおまえに受け継がせる!!受け取れ!この獅子座の黄金聖闘士アイオリア最強の拳!フォトンバースト!!」

アイオリアの生み出した小宇宙の星々が和樹の体の中に入り込み、せめぎ合い、内部から和樹を破壊しようとする。和樹はその苦しみに耐えながら、構えた。その構えは何かを持っているような構えだ。

「まさか!!和樹、おまえ!」

アイオリアは驚愕した和樹の使おうとしているものに武器に…


―――――――――――――――――――――――


「確かここだと…和樹さま!」

「待ってお姉ちゃん!」

空き地に着いた千早と神代は倒れて動かない和樹とその近くに立っている和樹とまったく同じ黄金聖衣を纏った青年がいた。二人は迷わず青年アイオリアから和樹を庇うように二人の間に割って入った。

「安心しろ。俺はもう何もしない。そろそろ時間だからな。和樹が起きるまで待てるかと思ったがそうもいかないようだ。…すまないが伝言を頼まれてくれないか……」

アイオリアから放たれる暖かい気配に二人は信用し頷いた。

「ありがとう。…おまえは俺よりも強い。俺の持つ最高の牙はおまえに与えた。その牙を、そしてあの武器をどう使うかはおまえしだいだ…とな、よろしく頼むぞ」

雄々しい黄金の獅子を宿した男は薄れ、そして消えた。


あとがき
アーレスです。
ずっとやりたいと思っていた和樹VSアイオリアの新旧獅子対決ができました!
次回から『ノー・ガール・ノー・クライ』編をやる予定です。

それではまた……キミは小宇宙を感じたことがあるか!?

レス返し

>D,さん
そういえばそんなものありましたね。さて、いつだそう…

>シンさん
まさしくそのとおりでございます。力だけ求めてもだめです。

>ななしさん
これからですよ。これから……ね。

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