黄昏の式典 プロローグ
様々な可能性が最後に行き着く無限の廃虚の一つ。
生が存在せず、永遠の平穏を保つはずの世界の一つに彼等はいた。
この世界に、他の世界の意思によって呼ばれたわけでもなく存在できているということは、彼等は世界の言うところの生を宿すものではないのだろう。
「何とか間に合ったね、お三方」
彼等の内の一人、闇はなにがおかしいのかとても無邪気に笑い、眼前に立つ残る三人に話しかける。
「だが、本当に厄介なのはこれからだ。すでに協会を通して各組織に連絡させたが、時間がない。恐らく間に合うのは裏だけだろう」
それに答えるのはこの中でもっとも歳をとった老人。だが、身体から溢れ出る存在感と魔力は残る三人と比べても謙遜ない。
「まぁ、それはしょうがないさ。あまりにも唐突だったからね。あれが世界に繋がったのは……」
闇は三人から眼を逸らすと、そこに何かあるのか、何もないはずの虚空を睨み忌々しげに、だがやはり楽しそうに語る。
「過ぎたことを言っても仕方ありません。今はこれからどうするのかが重要なのです」
膨大な神力を宿したものは、極めて理知を感じさせる口調で三人に語りかける。だが、それに答えた膨大な魔力を宿した最後の一人は手をパタパタと降りながら首を横に振った。
「あかんあかん!これ以上わし等みたいなんが干渉したら、あの穴どうなるかわかったもんやないで。とりあえず二組のカードの選別も済んでもうたし、今はじっとしとったほうがええわ」
「そうだねー……確かに、あと僕等にできることはこのままこの世界に存在して、穴が完全に繋がるのを妨害することぐらいだね。と、言うわけでどうだい?あの方法で一勝負してみないかい?もちろん、世界の運命を導くこのカードでね」
闇が虚空より取り出したのは、何の変哲もない普通のカード、トランプとそれを置く少し大きめのテーブルだ。両手で器用にカードを弄びながら、二枚のカードを抜き取ると、その他のカードを四つの山に分け、眼前の三人を見る。
「……いいじゃろう。ならば、ワシは『想い』を取る」
老人はその顔に微かな愉悦を刻むとカードの山に手を伸ばし、山の一つを手に取る。
「そんじゃぁわしは『私念』を」
「私は『意思』を」
残る二人もそれに続き、それぞれ別の山を手に取った。
「じゃあ僕は『誓い』だね。さっそくはじめようか。二枚の最強生命の名を込められたジョーカーに見守られ、もう一組の五十四枚のカードに知らずに守護された愉快で、喜劇で、悲劇で、世界を巻き込む大いなる式典。その前章を」
――――この瞬間に夢であり現実でもある世界から始まりの鐘が鳴り響く。
――――終わりと始まり、始まりと終わり。
――――この二つの意味は世界に届く。
――――それは、世界の終焉を予告する宣告。
――――人は抗う。危機に瀕して抗い続ける。
――――そして、ここに全てが選んだデスティニー・カード。
――――そして、ここに意思が選んだフリーダム・カード。
――――運命は知らずに戦う。可能性を引き出すために。
――――自由は知りつつ戦う。自分の意思を護るために。
――――世界は、一つの目的のために手を取り合う。
あとがき
黒夢です。やはり、最初ということでプロローグは必要と思い一日で書いてみました。
短く、これだけではなにがなんだかよくわからないと思いますが、これから徐々に明らかになっていく予定なので気長にお待ちください。
あと、出てきた四人……わかりましたでしょうか?正直ちょっと不安です。
たぶん更新のペースは一週間の間隔になると思いますが、よろしくお願いします。