*このssはTo Heartの浩之が主役、月姫の志貴が準主役です。
また、浩之はLeaf Fight97をベースに独自設定が盛り込まれいます。
そのようなssが嫌いな人はご注意ください。
「はっ? 先輩何て言った?」
「邪悪な存在が現れました」
ある日、芹香に呼び出された浩之は開口一番そう言われた。その言葉に対し、浩之は問い返す。
「それって、この前のガディムみたいな奴がまた現れたってことか?」
数ヶ月前、異世界の勇者ティリアや鬼の末裔柏木耕一、毒電波を操る特殊能力を持つ長瀬祐介等と共に異世界の破壊神ガディムと戦っていた。そのような存在がまた現れたのかと思い尋ねると、芹香は少し思案して答えた。
「いえ、この世界に元からいた存在です。ですが、考え方によってはガディムより、もっと危険な存在かもしれません。」
「もっと、危険って・・・。そんな奴等どうしようもないぞ」
耕一達特殊能力者と違い、普通の人間でしかなかった浩之が彼等と肩を並べて戦えたのは、その時だけ不思議な力が使えたからだった。他人の力を“模倣”するという能力。技術は勿論の事、特殊能力や果ては多種族の血や魂につらなる力や身体能力まで模すという凄まじきものだった。
「あの力はもう使えないしよお」
ラルヴァとの戦いの中、いつの間にか目覚めていたその力は、しかし、ガディムとの戦いの後、その力はガディムとの戦い後、失われていた。
だが、芹香は首を振って否定する。
「・・・・・・あの力は浩之さんが元から持っている潜在能力です。特殊な力を持っている人達に囲まれた事に影響されて一時的に覚醒したのでしょう。」
「マジかよ・・・・」
芹香言葉に驚愕する。その力がまさか自分自身に眠るものとは思わず、てっきりガディムの召喚か何かに影響で偶然扱えた力だと今まで思っていたからである。しかし、驚愕が覚めるとやがて浩之は決意したように言った。
「そっか、俺の力なのか・・・。それで先輩、俺に何かできるのか?」
ガディムの時の騒ぎがまた起こるというのなら無視してはいられない。厄介事に自ら関わっていくのもどうかとも思うが、生来のおせっかいである彼には、それを知ってしまい、自分にどうにかできる力があるのに何もせずにいるなどいられなかった。
その力強い言葉を聞いて芹香は僅かに表情を変え、嬉しそうにして頷く。
「はい。迫っているのは吸血鬼と呼ばれる人の血を吸うものです。浩之さんは、普通の人達が襲われない様に見回りをしてください」
「吸血鬼、ルミラさんみたいなもんか? それから、見回りってどこをみまわるんだ? あまり広い範囲だと俺一人じゃ無理だぞ。」
立て続けに質問をした浩之に芹香は一つずつ答える。
「ルミラさんとは別の死徒と呼ばれる存在です。見回るのは三咲町という街です。それから、浩之さんの他に、耕一さんとルミラさん達にも頼みました。後、浩之さんにはサポートにセリオをつけます」
「おっ、その3人等がついてるなら頼もしいな。しかし三咲町って3つ隣の町か。そんな近くの所にそんなヤバイ奴が・・・」
真面目な表情をする浩之。その真剣な表情を見て彼に好意を持っている芹香は顔を赤くする。
「それから、その町の学校短期編入届けを出しておこうかと思うのですが」
「編入? そりゃ、また随分大げさな話だな」
そりゃあ、世界でも有数の大財閥の来栖側グループならそれぐらい簡単だろうがと思いながらも、小市民的な彼はそう答える。それに対して、芹香は首を振った。
「でも、毎日移動するのは大変でしょう」
「そうだな・・・・。よし、たまには別の学校行ってみるのもおもしろくていいか」
そして、少し考えた後、浩之は決断する。それから、ふと気付いたように言った。
「そういえば、俺に特殊能力があるってのは、先輩の言う事だから信じるけどさあ。俺、使い方なんかわからないぜ。使えないんじゃ、持ってても意味無いだろ?」
自分の秘密を聞かされて、その驚きが大きすぎて気付かなかった疑問を放つ。それに対し、芹香は大丈夫ですと答えた。
「浩之さんの力は強い才能や異能の持ち主が周囲にいればいるほど目覚めます。吸血鬼と出会えば浩之さんはその力の一端が使えるようになる筈です」
「あっ、そうなのか」
納得する浩之。そして芹香は付け加えるように言った。
「浩之さんが2年生になってから能力が急激に伸びたのもそれが原因のひとつになっています」
「えっ、そうだったのか!?」
浩之は2年になってから学校の成績が急激に伸びた。1年の頃は真ん中から下辺りをうろちょろしていたのに、今では学年10位以内に入ることも珍しくない。2年になってから始めたエクストリームという格闘技も夏の大会に参加し、いきなり男子県ベスト4に入っている。それは、周りの頑張っている少女達に影響され、やる気をだしたのも最も大き要因であったが、急激な伸びには浩之に眠る”模倣”の力が関わっていた。
「言われてみれば、2年になってから特殊なの多いよな、俺の周り」
格闘少女に、万能少女、魔術師のお嬢様、金髪ハーフの動くものには百発百中の弓使い、とどめに人間そっくりのメイドロボに超能力少女である。ガディムの時に関しては言うまでもない。
「まっ、これで聞きたい事は大体聞いたな。よし、任せろ。先輩は大船に乗ったつもりで、どーんと構えていてくれ。」
「はい、頼りにしています」
胸を叩いて言う浩之に芹香が頷く。
そして、浩之は三咲町へと転校した。
(後書き)
何か、ちょっとTo Heartの新しいアニメとこの組み合わせのすっごくおもしろいクロスを見て書きたくなった作品です。そのss、浩之と志貴がすっごくいい感じの親友だったんで、このssでもそんな関係を描けるのを目標にしたいです。
これは月姫の始まる少し前の時期、つまり死徒とは“奴”のことです。ただ、芹香の入手した情報は間違いがあったらしく、“二十七祖が三咲町で蘇る”という情報が“死徒が三咲町に侵入した”というように結構致命的な誤認があったりします(笑)