外道 終章
注意!!
好きなキャラがイヤというか悲惨な目にあっているのは嫌だとか言う人は絶対に読まないことをお勧めします。
それを無視して読んだあと文句言われても知りません。それを踏まえて読むか読まぬか判断してください。
はっきり言って下記のキャラが好きな人には毒物のように思います。まあ、捉え方次第でしょうけど。
該当キャラ:テンカワ・アキト、ホシノ・ルリ、ラピス・ラズリ、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレー
ついでに碇シンジは壊れです。
といっても序章では壊れシンジのみですが
「これで名実共にあんたがこの組織の長ってわけね」
黒の王子こと、テンカワ・アキト死後、そのあとを追うかのように北辰もまた逝った。もともと体調がすぐれず、近いうちに逝くと思われていたので組織に属するものは自然と受け入れられた。
「不服かい?」
シンジはアスカの言葉に皮肉のニュアンスが込められているように感じて笑顔を浮かべながら問うた。
「べーつに」
ぷいっと顔を逸らすアスカにシンジは苦笑した。その仕種からみんなが忙しくって誰も構ってくれないと拗ねているだけだと分かったからだ。
「仕方ないよ。みんな忙しいからね」
そう言って自分の後ろに控えているルリ達が用意したお茶をすすった。ルリは無事、出産を終えて身軽になっていた。
「じゃあ、あんたはどうなのよ!」
「僕? 一応、やることやって合間の休憩を取っている所だよ。暇してるんなら僕が少しだけど相手してあげようか?」
「やーよ。シンジってば直ぐにエッチな事しようとするから」
「そんな事は無いと思うけど…」
「嘘つきなさいよ! あんた、暇さえあればルリやラピス、それにマユミ。はたまた屋敷の女達とやっているじゃない! 私は同じ目に会うなんてごめんよ!」
ばんっ! と片手をちゃぶ台にたたき付け、もう片方をシンジに指を突きつけて言った。
「うわっ!」
シンジは突き出された指を慌ててのけぞって回避した。避けなかったら確実に目を潰されていた。
シンジを名実共に組織の長と言ったが、アスカもまた、北辰、黒の王子がいなくなった今、戦士として頂点にいた。
確かに黒の王子に戦いに及んだ時にはナノ・マシンに身体強化の助けもあって一級の戦士としての技量を持っていたが、それでも黒の王子には手が届かなかったが、今はハンデ(黒の王子が毒を受けていたことをアスカはしらない)があったとしても倒した事で自身を持ち、それがそれまでの北辰の執拗なまでに叩き込まれた技が結びついて、飛躍的な技量の促進が行われ、主だった戦士たちよりもアスカは何歩も抜きん出ていたからだ。
もっとも、そのアスカでも全盛期の北辰や黒の王子には足元にも及ばない。彼らは正真正銘の規格外だったからだ。それは彼女も自覚しており、日々の積み重ねは忘れていない。
「ちっ! 避けたか!」
ちょっぴり、アスカは悔しそうにした。何だかんだいっても、今のアスカを相手できそうなのは周りではシンジだけであった。
「危ないって! アスカ! それに下品だよ。かわいい女の子がやるなんて」
「うっ、うるっさい!!」
シンジの可愛いという言葉に顔を真っ赤にして過剰反応したアスカは怒鳴って動揺する心をごまかした。それ故にあっ、もう女の子じゃないんだっけというシンジの呟きを逃してしまった。それはシンジにとっては幸いであったろう。
「もう、気をつけてよね」
そう言ってまたお茶を飲み始めた。
「むう…(こいつも、やるわね…)」
さっきシンジが咄嗟に動いたにも関わらずその手に持っていたお茶が零れ落ちていない事に気づいたアスカはやっぱりこいつは油断なら無い奴だと再認識した。
そんなやり取りをしている二人にシンジの後ろに控えているルリ、ラピスは自然と顔をほころばせていた。あらゆる意味で普通でないシンジ達が年相応の態度に見えたからだ。
「…やっぱり、怒ってる?」
ここ最近イラついているアスカに心当たりのあったシンジは恐る恐る聞いてみた。
「わかんない…」
そういってアスカは今は何もなくなったお腹…子宮辺りに手を当てた。結局、あのテンカワ・アキトや北辰との交わりで子を宿した。その子がある程度大きくなり安定した所でアスカの子宮から取り出し、人工子宮に打つしたのだ。普通ならそんな事はできないのだがこの組織にはそれだけの技術があった。
移した理由はアスカが子を産むには早い年齢であるという理由も一つだが最大の理由はアスカの立場にあった。アスカはNervに属し、ある兵器の専属パイロットとなっていた。その立場がアスカに子を産ませる事を許さなかった。
そんな訳で頭でわかっているものの、喪失感もあり、ここ最近、感情を持て余していたのだ。
「……そう」
男の自分には分からないとシンジはそれ以上は踏み込まなかった。この気持ちを理解できるのは多分、後ろに控えているルリやラピス、それに屋敷の女達だけだろう。
「そういえばあんた。マユミは結構大事にしているみたいだけど、同じくらい、いいえ、それ以上に想い入れのありそうなルリ達の扱いはぞんざいね」
沈んだ雰囲気は好きじゃないとアスカは最近、シンジのお気に入りとなった、どこからかつれてきた娘、山岸マユミとそれに関連した疑問を話題に出した。シンジを長に組織が整理され、屋敷の女達の待遇もそれなりに改善されているというのにアスカの知る限り、未だルリ達の扱いは今までと変わりないのだ。
「ふふ、ルリやラピスを蔑ろにしている訳じゃないよ。例えるならマユミは温室でしか育たない花なんだ。ルリ達と同じように扱ったら散ってしまうよ。だからってルリ達が雑草っていう意味じゃないよ?」
シンジの言葉に一瞬、不安そうにしたルリ達をシンジは両脇に来るように招きよせた。
(ふーん、ルリ達ってこういう表情もできるんだ)
普段、人形めいた美しさを醸し出す二人の意外な一面を見てアスカは感心した。
「彼女達は妖花なのさ。精気を吸い取り、妖しく美しく咲く…何時までもね」
そういってシンジはルリ達を抱き寄せた。言っている事は酷いが陶然とした物言いと彼女達への暖かな眼差しが、ルリ達に無類の愛情を寄せているとアスカは感じ取った。それはルリ達にも伝わっているようだった。
それは非常に歪んだ愛の形だが、この屋敷に住まうもの達はみな歪な心を持っているのだから、屋敷においてはこれが自然なのかもしれない。
「じゃあ、あのファースト・チルドレン…綾波レイって娘は?」
ついでにアスカは人形とするためにここに預けられ、最近、Nervに完成したとして送り返された娘について聞いた。自分の立場、セカンド・チルドレンとしても気になる所だった。
「綾波レイ…か…あれは魔性の女だね…ルリやラピスを知っていなかったら、僕は彼女におぼれていただろうな…」
シンジはそう言って抱いていたルリ、ラピスもっと強く抱き締めた。
「あっ」「はぅ」
「やっぱり二人の方が僕にはあっている。アレは僕には危険すぎる。どこまでも堕ちていってしまいそうだった…」
「どういう事よ」
「僕がアレと最初に交わった時、強烈な快楽と共に自分が融けて、ドコにも居なくなってしまうような感覚に囚われてしまったんだ。恐かったよ。天にも昇るような気持ちの良さから、奈落のそこへ墜ち、自分が無に帰ってしまうと感じたから」
「そう…」
シンジの言葉にアスカはゾクリとした。似たような事を自分も感じたことがあったからだ。目の前の男に。
だが、どちらもその恐怖を克服、いや折り合いしていた。でなければシンジは綾波レイを人形として仕上げ、調律させる事はできなかっただろうし、アスカも廃人のままだっただろう。
「アスカ…君はもうじきNervドイツへ帰還することになる。例の兵器の弐号機が完成したんだってさ」
「本当!?」
「そんな事で嘘を言っても僕の得にはならないよ」
君を怒らせるデメリットは大きいしねとシンジは心で付け加えた。だが、アスカの喜びようから北辰が話題となっている弐号機について何も話していない事を知った。知っていたならここまで喜べないだろう。教えるべきか…とシンジは判断に迷った。だがアスカの性格から考えて、これからやろうとしている事に支障をきたすと判断したシンジはこの場で伝える事をやめた。
「ふふ、やっと私の時代が来たわ! ファーストにも誰にも負けない…ってあれ? たしかファーストって例の兵器の零号機専属よね…あれ? じゃあ、0、1、2なんだから初、初号機があるって事じゃない! だれよ初号機専属パイロットは!!」
アスカは選ばれたパイロットが一人足りない事に気づいた。
(…何でそういう事に気づくかな…)
余計な事に気づいたとおそらく3人目として選ばれるだろう事を知っているシンジは心の中で嘆息した。
「君がセカンドなんだから、まだ選出されていないんじゃない」
「あっ! そうか!」
単純! と心の中で舌を出しつつも問題は先送りって事なんだよなとシンジはまた嘆息した。
「寂しくなりますね」
ルリがアスカの別れを惜しむ言葉を口にした。シンジはラピスをちらりと見ると静かになっていいといった感じでいるのが手に取るように分かった。別にラピスはアスカが嫌いなわけではない。どちらかというと好意的だ。だが性分が静かでいる事を好んでいるのだ。
「そうね」
アスカもまた変ではあるが居心地のいいこの場所を離れる事に一抹の寂しさを感じた。それと共に自分の中に燻っていた想いに気づいた。
「では近々、送別会をしなければなりませんね」
「そうね」
ルリ、ラピスは下準備をしなければならないと考え始めた。
「…やっぱり、私、赤ちゃんを産みたかったのかもしれない」
ポツリとアスカは呟いた。そうしたら自分は独りでは無くなるから。
「どうしたの?」
いきなりの発言にシンジ達は困惑した。
「いま、独りは寂しいって気づいたから。だから…」
言葉を詰まらせてポロポロとアスカは涙を流し始めた。壊れてしまった母親の行動も今なら理解できるような気がした。
アスカの様子にシンジはおろおろとしたが意外なことに直ぐに行動したのはラピスだった。
ラピスは泣くアスカを自分の胸に抱きしめた。アスカは一瞬戸惑いを見せたが素直に身を委ねた。
「ふう、アスカ…大丈夫だよ。君に半月を付けてあげる。組織の力とコネでNervドイツに潜り込ませるよ。だから寂しがらないで」
不器用な励ましをシンジは口にした。半月に属する娘達には負担をかける事になるけど大事な妹分だからと快く引き受けてくれるだろう。だがもらうべきものはもらうと、要求されるに違いないとシンジはこれからのことにげっそりとした。
「ぐす、ありがと…シンジ…」
普段は外見に似合わずその心根は猛獣以上の危険な存在だが今は非常に可愛く見えてしまった。シンジはなれないお礼の言葉を掛けられて頬が熱くなるのを感じてアスカから顔を逸らした。
「わかっているんだ。赤ちゃん産んで、その子を抱けば私、戦えなくなる。戦士ではなく母親になってしまうから…」
「母親か…」
シンジにとって父親同様に縁遠い存在だ。まあ、近い存在といえばルリ達が当てはまるのかもしれないがシンジにとっては女である事の方が強い。
母は強しと言うが例の兵器の特質上、そうなれば起動できなくなるのではないかと資料からは予想される。その資料が間違っている可能性はあるのだができるだけリスクは避けたいのだ。
今のアスカの気持ちを一番良く分かっているのはルリ達だろう。彼女達もまた今までにも子を孕み産んできたが一度もその子達を抱いた事はなく、母親ではなく女である事を強要されているのだ。
「やっぱり、僕は外道だな…」
どうやら自分はとことん二人の父親から業を継いでいるらしいと自覚した。一人は血筋から、もう一人は教えからだ。今、可愛がっているマユミの場合は時が来ればそれもいいだろうと思っていたが、ルリ達だけは何時までも自分の女としておきたいのだ。これだけは多分変わらない。
それを目一杯自覚したからこその言葉だった。
「何をいまさら」
もう泣き止んだのか何時も通りの姿を取り度したアスカが言った。
「そうだね。そういえば師匠の最後に挑んだ勝負はどうだったのかな?」
シンジは北辰がテンカワ・アキトとのアスカへの孕ませ勝負を口にした。
「わかってんでしょ!」「愚問ですね」「外道…」
呆れた表情で少女、美女達は口々に言った。
「そうかな?」
ニヤリと少年は口元を歪めた。
<おわり>
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後書き
夜華からの人には滅茶苦茶おひさしぶりです。それ以降の方には始めまして。Wandering monsterです。
…やってしまいました。毒電波を受信しての初の18禁モノ。勢いで書いてしまいました。あんまりエロく無いような気がしますけど。
色んな意味で人を選びそうな内容で危険だったかもしれません。でも、注意書き書いていたから大丈夫ですよね…多分。
これにて外道は終わりです。最初は一回で投稿しようと思ったのですが容量オーバーだったので序章・本編・終章の三つに分けました。
後、表現が足りなくって分かりにくい所があったような気がしますが最後まで読んでくれた方々ありがとうございます。