転生日記1 ある朝の独自
人に転生して10年と四日目の朝。俺は何時ものように朝飯を食う為に食堂への長い廊下を歩いている。
それと四日目などと細かく言っているが、今だけだ。何せ四日前が俺の誕生日だったから数えやすいのだ。あと十日も経てば自分の今までの人生の長さなど、簡単に忘れてしまうだろう。
「しかし、無駄に長い廊下だ・・・」
自慢じゃないが、この実家(人としての)とてつもなくデカイ。何しろ代々つづく大富豪の家だからな。
そして今の俺はその家の三男坊だ。
そうそう今の俺の名は三咲和人(みさき かずと)。
前世?は炎の精霊王の息子だ。こっちの名は人では発音はムリだから教えても意味が無いな。
三咲家は江戸時代に富を築いた商人の家だ。戦前までは岬だったのだが、戦後の当主である(今の)俺のじいちゃんが三咲に変えたのだ。なんでも「二回枯れたが、三度咲き誇っているから」だそうだ。そう、この家は明治維新、太平洋戦争と生き抜いていた名家で由緒ある財閥なのだ。
「どうした、こんな所で?」
廊下の真ん中で突っ立っていた俺の後ろから、声が降ってくる。
「なんでも無いよ、兄貴」
そう、今俺の後ろに立ち、俺の頭を撫でてくるのは三咲家の長男。つまり俺の兄である三咲時人(ときと)だ。
しかし、さすが我が兄。背は高く顔も良い、おまけに頭も良いし当然金もある。
まあ、天使のよう と評判の俺には敵わないだろうが。
「そう言えば今日だったな、神凪に行くのは」
「おう」
「まあ頑張ってこい」
「兄貴も、な」
「ま、お互い頑張ろうな」
そう言って兄貴は玄関へと歩いていく。兄貴は春から警察官になったのだ。
正確には警察官僚なのだ。東大の法学部を卒業した兄貴はキャリアとして警察に入り、未来の警視総監になるのが夢と本人は言っている。
もっとも真相は違う。なんでも小学校からのライバルが警察に入ったことが一番の動機らしい。当然このライバルも東大の法学部卒だ。
それと、風の噂では大学でライバルが二人に増え、この三人は三人とも警察官僚になったのだ、と誰かに聞いた覚えがある。
そうそう、どうして俺が神凪などに行く理由があるかと言うと、炎術を学ぶ為だ。
もともと俺は炎の精霊王の息子で、神凪などに炎術を教えてもらう必要は無い。
俺は元々最上位の炎の精霊なのだ。だから精霊術に不可欠な精霊とのコンタクトもバッチリだし、技術も父上からの直伝だ。戦闘能力だけなら精霊界でも五本の指に入る。
まあ世界は広いから、天界、仙界などをいれると一流の部類なのだが。
しかし今の俺はタダのガキだ。いきなり力を使うと不信に思われるだろうから、師を持つことにしたのだ。
だが神凪に師事される事になったのは偶然だった。じいちゃんの別荘に悪霊が出るようになり、じいちゃんが神凪に依頼したのがキッカケだ。
もともと俺がこの家の子供に転生したのは、神凪をどうにかする為だ。罰ゲームで人となったが、人生には目的は必要だと考えた俺は、傲慢になっている神凪を改革するか潰す事にした。
神凪一族は父上のこの人間界での代理人。その任はこの世界に調和をもたらす事。
その為に力を貸している。
しかし、今の神凪はその力を与えられた物と勘違いし、他の精霊術師と無用の争いを起こし、傲慢になりすぎている。
神凪が悪名を得るのは神凪の自由だが、神凪の悪名は父上の悪名にもなるのだ。
現に精霊界等では、それを理由に父上の名が蔑まれている。
その蔑む理由は最もで、精霊界での俺は何も出来なかった。
しかし、今の俺は人間界にいる。それも父上の名を汚す一族と同じ世界に。
ならば父上の名を汚す神凪一族と事を構えるのは当然。神凪が昔の神凪に戻れば良し、戻らぬ時はこの世界から消すまで・・・
今の神凪では、潰す事になるだろうが。
俺がじいちゃんに頼んで見た別荘での神凪の術者は、まるで子供だった。
やって来るなり一族を誇らしげに自慢し、実際の除霊は言うほどのものではない。
確かに一般の炎術師よりは強いだろう。しかし、父上の加護を受けている一族として見た場合、まったくの落第だった。
なにしろ一般の炎術師でも少しの才能と、かなりの努力をすれば容易に追い抜ける力なのだから。
さらに悪霊だけでなくじいちゃんの別荘の一部を焼く、小物を取り逃がすなどの失態を犯していた。
これは攻撃のみに特化しすぎ、探知能力が無さ過ぎたせいだ。炎術師として見ても、探知能力が無さ過ぎるのは退魔師として失格だろう。
まあ取り逃がした小物は俺が炎術で倒しておいた。ほんの小さな炎で、だが。
それを見ていたじいちゃんは自分の事のように孫の才能を褒め、神凪の術者も褒めたたえた。
神凪の術者はおべっかで褒めているのがバレバレだったが。
こうして俺はじいちゃんの別荘を燃やした事を不問にする代わり、神凪で炎術を学ぶ事になった。
一般的に炎術師が育たないのは、師がいないからだと言われている。精霊とコンタクトする事ができる人間は希少だ。そして精霊を扱う者など数える程だし、大抵はその技術を組織だって独占している。すなわち技術はその組織内の人間にのみ、伝えられているのだ。
「良い和人、一生懸命やるのよ」
そう言って飯を食った俺を送り出してくれたのは、姉の早紀だ。
高校生である姉貴は。何時もは学校に行くのだが今日は日曜だ。のんびりと家でくつろいで過ごすようだった。
まあ、その方が街の治安の為にも良い事なのだろう・・・
「それと和人、女に注意しなさい。アンタに近づいてくる女なんて、財産目的なんだから。明人兄ぃみたいになりたくないでしょ」
とはこの辺りを仕切る女ボス、姉の言葉だ。
それと明人とは三咲家の次男で、現在大学生だ。よく女性にモテルが、大半は財産目的のお姉さん方なのだった。
それと親父(この世界の)は女性関係に問題無い。お袋と今でもラブラブだ。
なにせ時人兄貴はお袋が15の時の子供で、それから23年間二人は毎日愛し合っている。
精神的にも、肉体的にも・・・
それと、父上も人間として生活した事があると言っていた。俺とは違い記憶を封印して。まあこの世界では無いようだが。
確か父上の人間としての名は和樹。母上は何時も父上をこの名で呼んでいるので、よく覚えている。
そして、そこで母上と出会ったのだ。だから母上は元人間だ。
父上を怒っている時は、まるで魔王だが・・・
それでも普段の父上と母上は仲が良い。親父とお袋に匹敵する程に。
それらを見ているので、姉貴のアドバイスはあまり実感できない。
俺は神凪に向かう途中、この世界にはいない父上と母上を想った。
きっと今もどこかで「浮気者には死を!」とか「赦してよ、夕菜」、「キシャ〜〜〜」
と愉快に楽しく過ごしているに違いない。
さて神凪まで後少し。神凪が変わることが出来るかどうか、見極めないとね。
あとがき
今回は主人公の一人称にしてみました。どうだったでしょう?
内容が無いのはまあ勘弁してください。
まだ風の聖痕のキャラは出ていません、オリキャラのみです。
次回でやっと(?)登場します。
それと幾つかの作品とクロスさせてみました、今のところ2つです。
予定では3つになる予定です。しかし、クロスした作品のキャラがメインになる事は基本的無いですけどね。ゲストキャラとして登場してもらいます。
まあ、二人程メインになる予定ですが。
さてクロスさせる予定の三作品。皆様、お分かりでしょうか?
1つはもろバレですが、残り二つは何でしょう?
1つについては大きなヒントがあります。
もう1つはコレで気が付いたらスゴイってヒントがあります。
暇つぶしにでも考えてみてください。