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「両儀なる瞳『Fate編』〜第1章〜(まぶらほ×Fate/stay night)」

鬼神 (2005-02-27 04:39/2005-02-27 04:51)
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それが現れたとき、士郎は呆然とした。
所々砕け散り、ある意味において瓦礫と貸した倉庫の中に佇む少女。
青い服を羽織、銀色の鎧を纏った流れる金色の髪。
燐とした雰囲気は、紛れもなく本物であった。
少女は士郎を見ながら言葉を紡ぐ。

「問おう、貴方が私のマスターか?」

そう問いかけられた士郎は、それに答える事が出来ない。
その、余りの目の前の少女の美しさに、士郎は時が止まるのを感じた。
ああ、本当に彼女はなんて


なんて、綺麗なんだ。


◆ ◆ ◆


「はっ?」

かくして、和樹はわけがわかりませんと言う表情を作り上げる。
そりゃそうだ。
まったく持って、意味がわからない。
なぜ、こんなことになっている。
そもそも、なぜ自分がそんなことに参加しなくてはいけない。
それが和樹の頭を支配している事だった。

「だから、あんたは今から冬木市で行われる聖杯戦争に参加しなさい」

などと言ってくれます、和樹の目の前にいる青の魔法使い様。

「ふざけんなブルー、なんで俺がそんなもんに参加しなきゃならない」

と言い切る和樹。
で、目の前にいる『ミス・ブルー』こと蒼崎青子は、笑みを浮かべながら言ってのける。
その笑みに悪意を感じるのは間違いないし、気のせいではない。

「簡単よ、暇だから」

「暇ならアンタが参加すりゃいだろ。俺は嫌だ」

「ったく、我が侭ね」

「どっちがだ!」

と言ってやりたいものの、無駄だと和樹は気付いている。
そもそも、この目の前の女ともう1人の魔法使いは、とくかく迷惑人物として名を馳せている。
そりゃもう、勝手に事件を起こすだけ起こして責任を取らずにとんずらするような奴だ。
何を言っても無駄だとは和樹も気付いているものの、せめてもの抵抗としてこう言っている。

「とにかく、俺は嫌だ。出るなら他の奴にしてくれ」

「いやよ。志貴を参加させたいけど、参加させようものならお姫様が黙っちゃいないし」

「そりゃそうだろ、そんなもんに志貴を参加させた次の日には、お前は地獄の底だぞ?」

「へぇ、私に対して『お前』とは、いい度胸をしてるじゃない」

「黙れ、このアオアオ」

「―――」

で、このあとに和樹とブルーの殺し合いが開始されたのは事実である。
なお、勝敗に関してだが。
3日間も殺しあって、結局和樹が敗北した、とだけ記しておこう。
現存する正真正銘本物の魔法使いに和樹が勝てるわけないって・・・


◆ ◆ ◆


「ふざけんな」

で、和樹が気付いた時には冬木市に来ていた。
どうやらブルーに無理やり連れてこられたらしい。
転移魔術で。
それも和樹が気絶している間に。

「なんでだよ」

頭が痛くなってくる和樹。
これは厄日か、と考えてしまう。
もちろん、考えたところで意味などないのは間違いない。
だって、相手はなんと言っても、あのブルーだし。

「くそ、帰ったら絶対に殺してやる」

いや、無理だって。
殺したら殺したで、世界のパワーバランスが崩れるから。

「そもそもだ」

和樹は周りを見回しながら、思う。

「なんだよ、この泥のような禍々しいさは」

と愚痴る。
周りの景色は平凡だ。
だが、街を覆うマナそのものが何か違う。
そう、それは泥だ。
余りにも、禍々しすぎる。
ありとあらゆる怨念が凝縮したような禍々しさ。

「これが、聖杯のマナ、か?」

聖杯戦争を開始する直前には、聖杯のマナが街に漏れ出すと聞いた事がある。
だが、これはなんだ?
本来、聖杯のマナは純粋だ。
色で表すなら、無色透明。
故に、方向性がなくどのような形でも具現化しうる。
だが、今の段階でこの街を覆っているマナは黒。
それも、余りにもどす黒い。
黒を通り越して、深淵なる極限の闇とも言うべきか。

「これじゃ、呪いもいいところだな」

明らかに、今回の聖杯戦争は何かが違う、と和樹は考えていた。
本来なら、冬木市の聖杯戦争は60年周期で開始される。
だが、今回は異例の10年と言う短い期間で開始されることとなった。
おそらく前回の聖杯戦争が完全に終結されなかったと言うのが原因だろうか。

「やれやれ、やな事になりそうだ」

和樹は溜息を吐きながら呟く。
その答えは、ある意味において正解であった。


◆ ◆ ◆


かくして、衛宮士郎は魔術師であった。
いや、正確には違う。
彼は魔術使いであった。
本来であれば、魔術師は「 」に到達するためにひたすら知識を学ぶ。
やがて、目的が手段となり、体から血の匂いが取れなくなる外道の者たち。
それが魔術師であった。
だが、魔術使いは違う。
彼らは魔術を手段として用いる者たちだ。
言うなれば、「 」の到達などどうでもいいと言う魔術師からは異端的な考えの持ち主たちである。
そして、士郎はそう言った意味において、紛れもなく魔術使いであった。
ただ、彼は特別であった。
同時に、彼は不完全でもあった。
士郎が使える魔術は、この世で1つだけ。
唯1つだけだ。
幸か不幸か、その唯1つの魔術こそが、魔術師にとっては最高級の禁呪であった。
それ故、士郎は最弱でもあるし、同時に最強でもあった。

「これで、よしっと」

士郎は程よく学校のもろい部分を直すと工具箱を手に取る。
もちろんながら、士郎はお人よしだ。
これ以上ないくらいお人よしだ。
悲しいかな。
彼は壊れていた。
心の大事ぶな部分が、少しだけだが欠けていたのだ。
それは10年前の出来事が原因である。
その欠落は非常に歪んでおり、直すのは苦労しそうであった。
事実として、士郎を引き取った衛宮切継ですら、その歪みを直すことは出来なかった。
ただ、切継は自分の夢を、決して士郎には話さなかった。
話せば、士郎は自らと同じ道を進むであろう事が切継には理解できていたからだ。
幸か不幸か、切継には現存する魔法使いと知り合いであった。
だからこそ、切継は彼らに士郎を預けようと考えた。
壊したはずの大聖杯が、いまだに活動を開始しようとしていると魔法使いから話されたとき、彼は眩暈を起こした。
なぜだ、と。
大聖杯は壊したはず。
なのに、なぜ活動しているのか、と。
魔法使いはこう答えた。

「壊したのは入り口だけじゃ。本体そのものは、まるで無傷」

それを聞き、切継は絶望のどん底にたたき起こされた。
大聖杯の不成立。
それ故に、残留したマナの量は膨大だ。
これでは60年どころか、10年ぐらいで聖杯戦争が開始されてしまう。
それを予感し、切継は魔法使いにお願いをした。

「士郎を魔術師として育てて欲しいと」

もちろん、唯と言うわけにはいかない。
魔術師は基本的に等価交換。
何かを得るためには、何かを失わなければならない。

「では等価交換じゃ、願いを聞き入れる代わりに貴様の命をわしによこせ」

なんとも無茶な等価交換である。
しかし、切継自身の命はそれほど長くはなかった。
つまり、今この瞬間にも切継の命の火がどんどん小さくなっていく。

「わかりました、僕の命でいいのなら」

切継に迷いなどない。
そもそも、これは等価交換と言えるのだろうか。
いや、本人たちがいいのであれば、それでいいのだろうが。

「では、士郎はわしが魔術師として育て上げよう。
それでよいな?」

「はい」

そう言って数時間後、切継は死んだ。
もちろん、士郎は悲しかった。
義理とは言え、彼にとっては唯一の肉親だったからだ。

「小僧、貴様が士郎か?」

そこに現れた老人。
顔に濃い皺を刻み、黒い神父のような格好をして杖を持った老人。
まさしく、賢者を思わせるような老人だった。
何より不思議なのは、老人の目が『赤い』ことだろうか。

「確かに、僕が士郎ですが」

「そうか。
わしの名はキシュア=ゼルレッチ・シュバインオーグ。
正真正銘の魔法使いじゃよ」

「・・・・・・・・・・・」

その時の士郎の目が、『何を言ってるんですか、この人は』と言っていた。

「貴様、信じていないじゃろ?」

「はい、爺さんの時もありましたから」

と聞き、ゼルレッチは頭を抑えた。
何を言ってくれたんですか切継、といわんばかりに。

「悪いが、わしは切継のように魔術師ではなく本物の魔法使いじゃ」

「へぇ」

「やっぱり信じておらんじゃろ?」

「はい」

何の躊躇もなく言い着てる士郎に、ゼルレッチは再び頭を抑えた。
どういう育て方をしてるんだ切継、といわんばかりに。

「まぁよい。切継の願いでな、お主はわしが引き取ることになった」

「おじさんが?」

「そう、わしがじゃ。
そして切継の願いでな、小僧を魔術師にしてやろう」

それを聞き、士郎は目を見開いた。
切継はどんなに自分が願っても、魔術師の勉強をさせてくれなかった。
ここ数日で、やっと基礎の1つである魔術回路の作り変えたを習ったばかりだ。

「まぁ、小僧にも学校などがあろう。
わしが相手をするのは長期的な休みになってからじゃ」

そう言って意地悪そうな笑みを浮かべるゼルレッチ。
それを聞き、士郎は軽く頷いた。
何より、彼の姉を自認する女性には、迷惑をかけたくないと言うのも本音であったからだ。

「よろしくお願いします」

そう言って頭を下げる士郎。
そんな士郎を見ながら、ゼルレッチは軽く笑みを浮かべた。

「わしのことは、これから老師と呼べ」

「わかりました、老師」

こうして、2人の修行が始まった。


◆ ◆ ◆


その後、時たまゼルレッチは士郎の家に訪れては魔術の講義を開始した。
しばらくして、ゼルレッチは士郎に全くと言っていいほどの魔術の才能がないことに気づく。
当たり前だ。
そもそも、最初に出来たのが投影という非効率的なものだったのだ。
その絶対的な非効率的な魔術を、士郎は最初に使った。
すぐにゼルレッチは士郎に強化の方をするように教えた。
それでも、強化の方はなかなかうまくいかない。
それをゼルレッチは不思議に思った。
最初に出来たのが投影で、次に出来たのが強化。
その強化もまた、うまくいかないときが多い。
このような現象を、ゼルレッチ自身は何度か目にした機会がある。
ミス・ブルーと呼ばれる女性がもっともいい例だ。
万能型と専門型。
万能型はその名の通り、何でもこなすことが出来る。
所謂万能型だ。
それ故に、自身にこれと言えるものが存在しない。
専門型。
言うなれば、出来ることが1つだけ。
他には何も出来ない。
悪く言えば、出来るのはそれだけ。
だが逆に言えば、その1つだけに対して驚異的な才能を見せつける。
ミス・ブルーと呼ばれる女性は魔術師としては二流以下であった。
だが、破壊という一点においては他の追随を許さない。
どちらが「 」に到達しやすいかと言われると、何とも言えないのが現状だ。
そして、ゼルレッチはある考えに到達した。
この目の前の衛宮士郎という少年の使える魔術は1つだけ。
そして、それは強化でもなければ投影でもない。
だが、この時点でゼルレッチが理解できたのはそれだけであった。
それから数ヶ月して、再びゼルレッチが衛宮家を訪れた際、不意にゼルレッチは違和感を感じた。
それは、士郎とゼルレッチが後によく利用する事になる工房。
その中に、1つだけ簡単な包丁のような刃物がおかれていた。
それを見たとき、ゼルレッチは強烈なほどの違和感を感じた。
これは何かが違うと。
すぐにゼルレッチは士郎を呼び、この包丁について何かと聞いた。
すると士郎は、それは最初に投影したものだと言ったのだ。
それを聞き、ゼルレッチは背中に冷たいものが流れるのを感じる。
そんなことがあり得るのだろうか。
投影魔術は、現代魔術においては劣化魔術としてレッテルが貼られている。
当然と言えば当然だ。
たとえ投影できても、それがちゃんと具現化しているのはわずか数秒。
超一流の魔術師が全身全霊の魔力を用いても、せいぜい数十分。
それ故、投影魔術は使い道がない故に劣化魔術として烙印を押された。
だが、士郎の投影魔術は今だにこうして形を保っている。
これはすでに投影魔術などではない。
言うなれば、投影魔術の名を用いただけの全くの別物だ。
では、これはいったい何なのだろうか。
世界の修正力から逃れきるほどの、この投影物は。
そこで、不意にゼルレッチの脳裏に1つの言葉が過ぎった。
固有結界。
リアリティ・マーブルと呼ばれる、禁呪。
本来は悪魔や精霊が持つ異界常識。
だが、長い長い年月を経て現代魔術世界において、術者の心像風景を現実世界に投影すると言う魔法にもっとも近いとされる完成された禁呪。
その答えに到達したとき、ゼルレッチは畏怖の念を士郎に抱いた。
まだ10歳にも満たない子供が、それも正真正銘の魔術師としての初心者である士郎が。
いったい、誰が予想できるだろうか。
こんな年端もいかない子供が、固有結界を行使できるなどと。
だが、それしか考えられない。
士郎が使える魔術は、強化でもなければ投影ですらない。
そう、衛宮士郎が使える魔術はたった1つだけ。
その名を、固有結界。
ならば、修行方法は決まった。
ゼルレッチは、すぐさま士郎の修行方法を変えた。
彼の体に流れる神経そのものが魔術回路と化していた回路。
その全てに魔力を流し込んで、残り5本の魔術回路を開く。
少しずつ開いていくつもりだが、それでは聖杯戦争にまで間に合うかどうかわからない。
ならば、多少の無理はいいだろう。
そう言うわけで、士郎は体の中にある27本の魔術回路は全て開かれた。
そこから、ひたすらゼルレッチは投影させた。
最初は、その辺の電気機器から杖、槍、剣。
それら全てを試した結果、士郎はとりわけ剣との相性が抜群であった。
なぜなら、剣関係のものを投影させたら1度たりともミスらなかったからだ。
これで、士郎の属性は剣と言うことが判明した。
ならば、あとは徹底的に投影させるだけだ。
決して、質を落とさないように。
ひたすら士郎に投影をやらせた。
魔術回路から発生する魔力は、次第に増量していく。
そうして、士郎は僅か5年で、固有結界を展開するまでに成長した。
もともと、そう言った事に関しての適正が異常なほど高かったのも理由だったのだろう。
何しろ、士郎の魂は「 」と繋がってしまっているのだから。
辛い時もなんどもあった。
だが、その度に士郎は切継の死に際の言葉を思い出す。

「士郎、幸せになるんだよ」

切継は理解していた。
士郎の体の中に存在する魔具。
それが、決して彼に平穏を与えないのだと言うことを。
過ぎた力は、時として争いを生むのだから。
だからこそ、切継はゼルレッチに士郎を託した。
彼が幸せになるために。
幸せを勝ち取るために。
それが、紛れもない切継の願いであったのだから。
そして次第に修行場所も変化していった。
最初は衛宮邸。
そして、士郎が夏休みや冬休みなどとなるとゼルレッチは彼を連れて世界を回った。
とにかくゼルレッチの修行はむちゃくちゃであった。
突然死徒の群れの中に放り込まれて生きて帰ってこいなんて事はザラであった。
さすがは、はっちゃけ爺さんの異名を持つだけはある。
そんなこんなで、ここ数年はゼルレッチが管理している千年城で修行している機会が多い。
今回もそうであった。
そこへ突然の聖杯戦争が開始されるという知らせ。
それは、あまりにも唐突だ。
だがゼルレッチは理解している。
紛れもなく、士郎は聖杯戦争に巻き込まれるだろうと。
それはすでに決定事項だ。
彼の中に存在する魔具が、そうするのだろうから。
聖杯戦争という名の戦争の準備が進められる。
戦争の開幕ベルは、今はまだ鳴らない。


◆ ◆ ◆


「本当に、厄日だ」

和樹はそう思わずにはいられない。
目の前にいる、ボンテージスーツのような艶かしい衣装を羽織、目には眼帯のような者をつけた女性。
おそらく美人は間違いないだろう。
流れるような紫色の髪は、まさしく彼女を女神のように連想させる。

「貴方に恨みはありませんが、マスターの命令ですので」

そう言って、女性は和樹に襲い掛かってきた。
都市群として開発が進む冬木市。
そのビルにへばり付く蜘蛛の如く、軽快な動きだ。
何処から取り出したか、鎖付の杭を振るってくる女性。

「厄日だ」

そう呟くと、和樹は何もない空間に手を伸ばし、天鎖斬月を取り出す。
そして、鞘から天鎖斬月を引き抜くと、襲い掛かってきた杭を弾き飛ばした。

「!! あなた、唯の人間ではありませんね」

「どうして、そう思う?」

「私は英霊、唯の人間が今の攻撃を弾き返せるはずがありません」

「ま、確かにな」

などと納得したように言う和樹。
同時に、ミスったなぁ、と和樹は考える。
迎撃することは簡単だ。
和樹が思うに、目の前の女性は本調子ではない。
おそらくマスターから魔力がほとんど供給されていないのだろう。
未熟者もいいところだ。
いや、もしかしたらマスターは魔術師ですらないかもしれない。
何しろ、サーヴァントのマスターは別に魔術師でなくてもなれるのだから。

(もちろん、裏技か何かが必要だろうけどな)

と心の中で付け足しておく。
同時に、本気でいかなかなぁ、と和樹は考える。
英霊の戦闘能力は強大だ。
人としての極限値を上回っている。
なぜなら、世界がそう定義しているからだ。
確かに、和樹は人としての戦闘能力を大きく上回っている。
それこそ、英霊に匹敵するほどに。
だが、いくらなんでも相手が本物だと分が悪い。
もちろん、撃退できないこともないが。

(マジで行かないと、こっちが殺されるな。ったく、これだからブルーの考えることは)

と溜息を吐きたくなる和樹。
瞬間、和樹の瞳が『両儀』と化した。

「! その瞳、魔眼ですか」

「眼帯をしてるのに、よくわかるな」

「そうですね、では行きます」

そう言って女性は杭を振るう。
まるで蛇のようにうねりながら杭は和樹に襲い掛かった。

「ふっ!」

襲い掛かる杭を和樹は天鎖斬月で弾き飛ばす。
だが、女性は弾き飛ばされた杭を簡単に掴むと、よりうねりを加えながら杭を和樹に対して投げてきた。
その杭の動きが、より変則的になる。

「ちっ・・・『クイックシルバー』」

和樹が指を鳴らすと、瞬間的に世界がモノクロと化す。
全ての動きが、超スローモーションに。
それは、目の前の女性とて例外ではない。
すかさず和樹は移動を開始した。
スローモーションの世界で、和樹の動きだけが普通だった。
神速を超えるほどの移動速度で、和樹はあっという間に女性との距離をゼロにした。
した瞬間に、タイムアップ。
世界が、元の色を取り戻す。

「なっ!?」

驚く女性。
当然だ。
英霊は人間の能力を遥かに上回る。
その英霊である自分が、懐に入り込まれるまで気付かなかったのだから。

「驚いている暇はないぞ?」

そう言って和樹は天鎖斬月を振るう。
だが、その刀身は女性が持つ杭によって受け止められた。

「腕力は、ほぼ互角か」

「のようですね」

女性は力任せに天鎖斬月を弾き飛ばすと、夜の空へ跳躍した。
そのまま、ビルに蜘蛛のような体勢で着地する。

「このまま距離を取って戦わせていただきます」

「なるほど、な」

確かに、天鎖斬月の射程距離を考えれば妥当な判断だ。
当然の判断だ。
そう、当然すぎて欠伸が出てくる。

「だが、それは軽率な行動だな」

「・・・どういうことですか?」

「こういうことさ」

瞬間、和樹は天鎖斬月に魔力を込める。
その刀身に黒い光が宿った。

「斬式・天鎖斬月」

瞬間、和樹は天鎖斬月を振るった。
刀身の斬撃を巨大化させ、斬撃は一直線に女性に向かって飛んでいく。

「なっ!?」

これには流石の女性も驚いた。
まさか、このような攻撃手段が存在するとは彼女は知らなかったのだ。
だが、うかつとはこのこと。
そこで、女性は気付いた。
和樹の姿がないことに、

「い、いったい何処に!?」

「いつまでそっちを見てるつもりだ?」

突然の声。
声の方向は後ろ。
女性が後ろを見ると、そこには5mほど先にビルの壁に足をつけて、今まさに天鎖斬月を振り下ろそうとしている和樹の姿があった。

「迂闊にもほどがあるぜ?」

「!!」

そう言った瞬間、和樹は天鎖斬月を振り下ろした。
再び、黒い巨大な斬撃が女性に襲い掛かる。

「くっ」

女性は咄嗟に、斬撃の射線から逃れるために、体を動かそうとする。
だが、和樹はそれを許さない。
すかさず、空いていた左右に移動した。
余りの速さに、和樹が2人いるような錯覚を覚えさせる。

「な、早・・・」

「斬」

2人の和樹は、同時に天鎖斬月を振り下ろした。
前後左右から、巨大な黒い斬撃が女性に襲い掛かる。
逃げ道は少ない。
そもそも、この斬撃を受ければ自分はかなりのダメージを受ける。
女性は直感的にそれを理解した。
受けてはいけない。
前後左右に逃げ道はない。
ならば、あとは

(上!)

女性は迷う事無くビルの壁を蹴った。
蹴って斬撃の射線上から逃れる。
だが、それは当然故に読まれやすい行為。

「そう、それだ。当然、選択肢はそれしかなくなる。
故に、その行動はひどく読みやすい」

気付いたときには、和樹は女性の目の前で天鎖斬月を振り上げていた。
振り下ろすまで、1秒もかかるまい。

「!!」

「残念だが、これで終わりだ―――クイックシルバー」

その瞬間、世界がモノクロと化す。
斬式・天鎖斬月は、使用者の魔力を吸い取り斬撃そのものを巨大化して飛ばすという特殊能力がある。
それとは別に、もう1つ特殊能力があった。
それは、使用者の身体能力の向上。
特に、スピード面に関して言えばサーヴァントの中で最速と言われるランサーと同等かそれ以上の能力を発揮する。
その中で、『クイックシルバー』による時間のスローモーション化。
もはや、誰も彼を捉えることは出来ない。

(さて、聖杯戦争も開始されていないようだし、ここで誰かを脱落させるわけにはいかないだろうな)

そう考えると、和樹は咄嗟に天鎖斬月の刀身を回転させる。
刀身の峰を前にし、思いっきり目の前の女性の脳天に一撃を叩き込んだ。
ようは峰打ちである。
同時に、世界が色を取り戻す。

「あぐっ!」

突然の脳天の激痛に、女性はまっ逆さまに地面に落ちた。

「ま、今日はこの辺と言うことで」

そう言って和樹は天鎖斬月を何もない空間に戻す。

「・・・・・・・・そうですね、貴方はマスターではないようです。
このようなところでリスクを負うべきではない」

まるで自分に言い聞かせるように言う女性。
同時に、女性は何もない闇の虚空にへと飛び上がった。
そして、その姿もまた闇に紛れ込む。

「またお会いしましょう」

「俺は会いたくないが、な」

そんなやり取りの後、女性の気配は完全に近くできなくなった。

「やれやれ、面倒なことになりそうだ」

と、和樹は疲れたように呟いた。


あとがき
ってなわけで、Fate編を開始します。
現在、和樹にサーヴァントをつけ様かつけないかは考え中です。

皇 翠輝さんへ
>宮間の漢達に幸あれ・・・・・・・。
無理です。
>キシャー並びに母キシャーに死を超えた絶望があらんことを・・・・・。
無理です、キシャーですから・・・(汗

suiminさんへ
いえいえ、私も何故没落しないのか不思議です。
それから、確かに宮間は下手なことをしてしまうでしょう。
特に女性が。

惨劇現場の料理人さんへ。
被害総額は、億単位じゃなくて兆単位じゃないですか(ニヤリ
だって、キシャーですし(ニヤリ

紫苑さんへ
ぶっちゃけます。
たぶん、狼さんの出番はないです!!
だって、来るための理由がないし。

ていんさんへ
無理です。
誰もキシャーの暴走を止めることは出来ません。
そう、私にさえも・・・(汗

D,さんへ
さて、どうでしょうか。
その辺はネタばれになりますので、うまくはいえません。
まぁ、ハーレムよろしくな展開も可能性の1つと考えておいてください。

COOLさんへ
はい、探偵紳士シリーズを出してみました。
私は探偵紳士シリーズが好きなので!!
でも、以外に出るのは名前だけだったりして(ぇ

foolさんへ
宮間の祖先は嫉妬の神!!(ぇ
なぜなら、あれだけの嫉妬パワーを出しているのだから!!(ぉ

って、事ですね。
次回は、士郎君に視点が行くかもしれない今日この頃(マテ
ではでは

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