横島エレクトロニクス(株)本社ビル。その最上階(45F)の大きな部屋で、窓から外を見つめている男がいる窓越しに見つめるは、日本の、そして世界の明日………。横島エレクトロニクス(株)代表取締役社長にして横島コンツェルン次期総帥の横島大樹(51)その人である!!
と、そこに――。
――コンコン。
と、社長室の扉にノックの音が響く。
「入りたまえ」
そう、声をかけると――
「失礼します」
と、横島忠夫が入ってきた。
「おお、忠夫。どうだね、課長の椅子の座り心地は?」
「社長。確かに、私と貴方の関係は親子ですが、会社では上司と部下の関係です。ご留意ください。それよりも、折り入って話が………」
「相変わらずの堅物ぶりだな。まあ、いい。で、何の用だね」
「私には手におえない問題がございまして………。まずこれをご覧下さい」
というと、忠夫は西条から回された『マダム・エマニエル』の領収書を大樹に見せた。
「………領収書だな。これがどうしたのかね?」
「実はそれの処理に頭を痛めてまして………、恥を忍んで社長のもとに参じた次第であります」
「なるほど。店の名前が恥ずかしいということね」
「どうか、お知恵を拝借願いたいのです」
「お知恵をったって………。これって………、ごく普通に経理部に回して処理してもらえばいいだけの話じゃないの?」
と、言うと大樹は――、
「――!そうか!お前はこれを経理に回そうとした………。だが、その金額に心を痛めたと言うわけだな………」
と、得心したように勝手に話を進める大樹。そんな大樹に、忠夫は――
「はぁ?」
と、怪訝な声を出すが構わず大樹は続けた。
「このいき過ぎた接待を反省し自分を戒めるために、この領収書を私に見せに来たわけだな」
と、言うと大樹は苦笑の表情を浮かべ――、
「ふ………。お前はバカがつくぐらい正直な男だな。気にせんでいい。その領収書は経理に回しなさい。接待は控えめかつ計画的にな」
「あれ〜〜〜〜〜〜!?これって……、ただ経理に回せばいいんですか?」
「『過ちを飾る勿れ。』お前に最もふさわしい言葉だ」
「――飾る?」
「その領収書はお前の誠実さに対する勲章と思えばいい」
――勲章!!
――翌日。商品開発部企画課のオフィスに、西条がやってきた。
「よう、横島君」
「あ、どうも」
「例のあれ………。片付いたよね。あの領収書。まあ簡単なことだからな………」
「領収書ですか?ご覧下さい」
というと、横島は自分の背の壁の上側を指し示した。そこには――、クラブ『マダム・エマニエル』の領収書が、額の中に納まって飾ってあった。驚く西条。
「な?これはいったい!?」
「あれが私の勲章です」
と、横島は驚いている西条に応える。
「わ、忘れていた……。君、バカだったんだよね………」
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(現時点まで明らかになった登場人物の設定)
横島忠夫(24)〔元キャラ:八神和彦〕
商品開発部一課、課長補佐代理心得。家族は、妻(26)に、娘(1)がいるが、現在別居中。実は、創業者の直系で、次々期横島コンツェルンの総帥でもある。
ハーバード大MBAであることもあってか、社外では『切れ者』という評価が強いが、社内ではもっぱらバカの評価である。
なお、創業者の直系であることは、一部以外には知られていない
横島大樹(51)〔松平芝之助〕
横島エレクトロニクス(株)代表取締役社長、横島コンツェルン次期総帥。横島の父。なお、横島エレクトロニクスは、横島コンツェルンの中核企業でもある。
唐巣和弘(52)〔井上商品開発部部長〕
商品開発部部長。人格者として知られる。
西条輝彦(28)〔村上販売促進部部長〕
横島エレクトロニクスきってのエリートであり、スピード出世を重ねてきたが、最近はその記録も横島に抜かれつつある。なんのかんの言って、創業者の直系には勝てないという典型(w
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