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「扉の向こう プロローグ〜第六話(幽白inGS+月姫)」

桜始開 (2005-01-29 21:45)
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 とある事務所での出来事


「こんちわーっす」

「横島君!! すぐに支度して!!」

「どうしたんすか、美神さん。そんなに焦って……」

「横島さん、こんにちわ」

「あぁ、おキヌちゃん、一体どうしたんだい、美神さん」

「実は、さっき仕事の依頼が入ったんです」

「へぇ、よくこんな時期に仕事なんて来たね」

「はい」

「で、どんな仕事なの?」

「不思議な力に目覚めたのでどうにかして欲しいらしいです」

「ふーん、簡単な仕事だね」

「ほほほほほほほほほほ、仕事よ、仕事ーーーー!!!」

「で、場所は?」


 とある町の道端の出来事


「ねぇ〜、志貴。旅行に行こ〜」

「どうしたんだよ、アルクェイド。そんな急に……」

「ん〜、なんとなく!」

「なんとなくって……」

「いいから、行こ〜〜」

「うーん、秋葉がなんていうかな……」

「妹ニャんてほっといて、二人で新婚旅行に行くニャ」

「どこでそんな言葉覚えたんだ!! それに突然猫化するな!!」

「いけません!! アルクェイド!!」

「わっ! 先輩!! いたんですか?」

「酷いですね、遠野君。私ってそんなに存在感ないですか?」

「いえ、そういうわけじゃ……」

「そうですよね、どっかのアーパー吸血鬼に比べれば私のほうが存在感ありますよね」

「どっからわいてきたニャ、馬鹿シエル!!!」

「そんなことより、あなた何を考えているんですか!!
 どうして、遠野君とあなたが新婚旅行に行く必要があるんですか!!
 だいたい、新婚旅行というものは決行しているもの同士が始めて行く旅行のことで……」

「そうだ!! 旅行に行くんだったら先輩も一緒に行きませんか?」

「えっ、本当ですか?」

「えぇ、皆で行った方が楽しいでしょ、な、アルクェイド」

「うーん、志貴がそういうのならいいよ」

「で、どこに行くつもりなんだ?」


 とある高校の校舎の裏の原っぱの出来事


「幽助がさらわれたぁーー!?」

「本当のようだね、相手は蔵馬と飛影も知ってる。
 しかも幽助をとらえるさえ出来るヤツ」

「プー助をわざわざ残して伝言役にまで使いやがった。
 一体何をたくらんでやがる」

「とにかく蔵馬に連絡しなきゃ!! 場所分かる?」

「二つ駅先だ。そこにあいつの家と学校がある!」


 とある洞窟の中の出来事


「……………仙水か」

「穴は順調に広がってるようだな」

「一つ障害がある」

「障害?」

「魔界と人間界の境である亜空間に強力な結界がはってある。
 穴が広がりきったとしてもこのままでは強力な妖気を持つ妖怪はこちらにこれない」

「結界か…問題ない。
 結界破りを技とする呪術者を何人か知ってる」

「そいつらは使えないな。
 亜空間にはられた特殊な障壁だ。呪術による一般の結界とはレベルが違う。
 この結界には私と違うタイプの次元をつかさどる能力者が必要だ。
 私の能力なら次元の扉を開けることは出来る。
 だが、扉の間に張ってある結界は外せない。
 亜空間にはられた結界を切り裂くことが出来る能力者が必要だ」

「次元を切る能力者か、よかろう。
 俺が必ず見つけ出す。


 邪魔者を始末するついでにな」


 違う結末を望んだ者たちが一本の流れとなる。

 集う場所は「魔界の扉」




 扉の向こうに  第一話


「着いた……のはいいけど、これはかなり異常ね」

 赤いコブラから颯爽と降りる一人の美女。
 その眼はあくまでも目的を追い詰める狩人の目。
 その姿は男の眼を釘付けにする。
 女の名を美神令子という。
 そんな彼女は眉間にしわを寄せあたりを睨みつけていた。

「どう、おキヌちゃん、何か分かった?」

 その声にこたえるように、もう一人の女性が車から現れる。
 今ではめったに見ることがなくなった巫女服を着こなし、
 清純さを絵に描いたような女性だ。
 彼女の名は氷室キヌ。
 親しい人は彼女のことをおキヌちゃんと呼ぶ。

「皆、何かに呼び寄せられているみたいですね。
 でも、蟲ばかりなので何を考えているかまでは……」

 二人はとある企業の社長から一つの依頼を受けていた。
 依頼の内容は、

「不思議な力に目覚めてしまった。変なものが大量に見えるのでどうにかして欲しい」

 との事。
 アシュタロスとのごたごたのせいで、仕事が無かったのだが、久々に依頼が入ったので迷わず受けたのだった。
 ギャラもなかなかよかったし……
 というわけで、その依頼主の会社がある場所、蟲寄市にやってきたのはいいのだが、
 これがとんでもないことになっていた。
 市全体を囲うように黒い膜がはっておりそれに吸い寄せられるかのように、
 低級の妖怪が大量にいたのである。
 一般市民には見えないようなので、騒ぎは起きてないが……

「まったく、もう少し早くこれたらよかったのに……」

「あんたのせいじゃないですか!!!」

 突然コブラの後部トランクが開かれ、中から一人の少年が飛び出してきた。
 額には汗、腕にも汗、足にも汗、来ているシャツは汗まみれ。
 横島忠夫だ。
 アシュタロスとの戦いでの英雄だとか、人界唯一の文珠使いとか言われているけど、
 所詮は美神令子の丁稚である。
 何故、横島がトランクに入っているかというと…………横島だから?
 まぁ、コブラ自体が二人乗りの車。
 三人乗ると道交法違反らしい。

 実は三人は二日前にここに着くつもりだったのだ。
 しかし、とある事情でここに来るのが遅れてしまった。
 その理由となったのが……

「それにしてもあんた、たった一日で良く退院できたわね。
 体の90%以上も火傷したら普通死ぬわよ」

「文珠使いましたからね……って、美神さんのせいであんなことになったんでしょうが!!」

 遅くなった理由は横島の入院のせいだったりする。
 といっても、その入院する羽目になったのは横島のせいではない。
 全部、美神のせいである。
 正確には美神姉妹。まぁ、姉、美神令子の方が全面的に悪いのだが……
 詳しいことは端折るが、美神令子の妹、美神ひのめ。
 彼女の持つ念力発火能力(パイロキネシス)が原因である。
 その被害を一斉に被ったのが横島というわけだ。美神令子のせいで……
 結果、人体の90%以上の大火傷。
 即座に入院。次の日退院という荒業をかましたのだ。
 いくら文珠を使ったからといっても、ありえない回復力だ。
 体の表面積、20〜30%の火傷でもやばいというのに……

「それにしても……これいったいどういうことですかね?」

「わからないわ。こんなに大量の妖怪が集まるなんてただ事じゃないわね」

「どうします、美神さん」

「そうね……とりあえず、私とおキヌちゃんは依頼主の社長のところに行くわよ」

「はい」

「あの〜、俺は?」

「あんたは、この膜の中心部を探してきてちょうだい。はい、見鬼くん」

 そういって、変な人形を手渡す。
 こんなのもって街中歩いていたら、怪しい。
 犯罪ではないから、警察には呼び止められはしないだろうが……

「えっ!! 俺一人でですか!?」

「そうよ、ただし、先走らないこと、危なかったら文珠で逃げなさい」

「何で俺独りで行かなきゃならないんすか」

「理由なんて無いわよ。それに、あんたの安全よりもギャラの方が大事に決まってるわ」

「…………(もうやめようかな)」

「なんか言った?」

「ノー!! サー!! 早速調査に行ってまいります!!」


「はぁ〜、どうしよう」

「どうしたの、志貴?」

「いや、帰ったら秋葉に何されるかと思うと……」

 市営電車の中、がたんごとんと揺られながら椅子に並んで腰掛ける三人組。
 一人は純朴そうな青年。今では珍しい黒髪短髪の眼鏡をかけた青年。
 青年に話しかけている女性はどっからどうみても外国人。金髪ではっきし言ってかなり美人。
 そして、もう一人。最後の一人は二人の会話には入らず手元のガイドブックを読んでいる。
 こちらも美女だ。しかも眼鏡装備の先輩属性。
 そんな美女二人に挟まれた青年の名を遠野志貴と言う。
 金髪の美女がアルクェイド。先輩属性のお方はシエルといいます。

 彼は二日前に自分の恋人であるアルクェイドにいきなり旅行に行かないかと誘われたのだった。
 もちろん賛成だったのだが、いかんせん自分には行動の自由が無い。
 彼には一人の妹がいるのだが……その妹、かなり、兄を溺愛している。
 そんな妹に恋人と旅行に出かけるので外泊の許可をくれと言えるわけが無い。
 一応、兄の威厳を見せたいとこなのだが……無理。
 丸一日をかけて説得したのだが、泥沼どころか、地下室行きになりそうなほどごちゃごちゃする羽目になった。
 しかたないので、旅行は中止かなと志貴自身はそう思っていたのだが、そうは問屋は下ろさない。

 結局諦めて、その日は寝床について明日アルクェイドに謝ろうと考えていた。
 が、自分の彼女は即断即決。時間と金に糸目をつけずに、常識なんぞほっといてしたいことをする。
 そんな彼女が諦めるはずが無かった。

 普段なら、自分の世話係をしてくれているメイドの翡翠に起こされるのだが、今日は違っていた。
 眼を覚ますと、なぜか電車の中。
 それも、アルクェイドと自分の高校の先輩であるシエル先輩に挟まれて。
 今までこういうことが無かったわけではない。
 無駄に、こういう突発的な状況には慣れてしまった。
(恐らく、アルクェイドとシエル先輩が寝ている俺を拉致して、電車に乗ったんだな……)
 すぐに、状況を理解して、旅行を楽しもうと思って入るのだが…… 

「なぁ、アルクェイド。秋葉には断ってきたのか?」

「ん? 妹には何も言ってないよ」

 判決は下された。自分は帰ったらエライ目に合わされるだろう。
 エライ事を“言われる”とは思ってない時点で彼の人生は決まったようなモンである。

「ところで、シエル先輩。何を読んでるんですか?」

「目的地のガイドブックですよ。旅に情報収集は欠かせませんから」

「へぇ、どんなとこなんですか?」

「はい、どうやら近くに洞窟があるようですね」

「…………それだけですか?」

「はい」

「…………なぁ、アルクェイド。なんでそんなとこに行こうなんて言い出したんだ?」

「ん〜、なんとなく!」

「はぁ……、ま、ゆっくりと羽が伸ばせそうだからいいか」

 電車に乗ったのがはじめてなのか、アルクェイドは喜んでいる。
 それを見るだけで、志貴も癒される。
 シエルはシエルで、目的地にあるレストランをチェック中。
 のどかな雰囲気を三人を包む。
 同じ車両に乗っている男達の殺気なんてお構い無しだ。
 蟲寄市に向かう電車の中はとんでもない空間を生み出しつつあった。


「ひでぇな」

 町の中を数人の男女が歩いている。
 一人は髪の毛を立てた金髪の男。
 もう一人は眠たそうな眼をした男。
 さらには、一人の老婆。
 そして最後にヤンキー風の青年。
 実に統一性の無い四人組だ。

「普通の人間にゃ見えてねーようだな」

 ヤンキー風の青年が金髪の青年に話しかける。
 話しかけられた青年の名は城戸亜沙斗。
 この町に住む中学三年生だ。
 だが、彼は普通の人間ではない。

 一月前、彼を含めた不特定多数の人間に共通して起きた現象。
 激しい頭痛と強烈な吐き気。
 それだけでも十分異常だと言うのに、さらにそれに輪をかけるのが、
 「領域」と呼ばれる能力の発露である。
 超能力、霊能力などと同じように分類される力。
 自らの周囲に自分だけの「領域」を広げ、その領域内にのみに発動する力。
 普通の人間なら、その領域に入ったところ何も感じない。
 それを感じることが出来るのは同じ「領域」の力を持つものか、
 霊能力者など、人あらざる力を持つものである。

 彼が目覚めた力は、「影」、シャドーである。
 自分が踏んだ相手の行動を封じる力。
 彼が知ってるだけどこのような力を持つのは後二人。
 今この場に一緒にいる柳沢光成。
 眠たそうに辺りを見回している青年だ。
 彼の力は「模写」、コピー。
 触れた相手の姿形、声紋・指紋、はては記憶や性格、ここの霊力の波長を現す気紋ですらコピーする。
 今この場にはいないが、最後の一人が海藤優。
 能力の名を「禁句」、タブー。
 領域内の全ての暴力行為の禁止。そして、「領域」内で決められた「禁句(タブー)」を口に出すと、
 相手の力に関わらず、魂を奪う。 

「どうスか、この街の感想は?」

「蟲だらけでそれどころじゃねーよ」

 城戸の声に答えたのは、ぱっとみ、ヤンキーとしかいえないような青年。
 彼の名は浦島幽助。
 かなり奇妙な体験をしてきた青年だ。
 その全てを語るのには時間が足りないので割愛するが、
 とある戦いの勝者である。
 もちろん、ただの戦いではない。
 人あらざるもの、妖怪と呼ばれるものたちが戦う死の武道会。
 暗黒武術会の覇者である。
 そして、霊界探偵と呼ばれる因果な仕事をしている。
 元をたどれば彼の人生に一度あるかないかの善行が原因なのであるが、
 そこら辺は「幽遊白書」か「幽遊白書完全版」を読んでください。

「シケた街っスよ。陰気くせーし娯楽もない。
 いつかおん出てやるってずっと考えてた。
 でも、不思議ですよね・・・
 今、この街を守りたいと思ってる。
 こんな状態を見ながら陰でニヤけてる奴らがいるかと思うと、
 胸クソ悪くてヘド出そーですよ」

 …………第四部?

「相手が誰でもオレの生まれた街で勝手なマネさせんですよ」

「意気込むのはいいが先走るなよ。能力を持っている半面危険も大きいんだからな。
 それよりも、穴の中心を見に行った蔵馬達は大丈夫だろうな。
 いわば敵の本拠地なんだろ?」

「蔵馬はお前と違って安心だ。ヘタなマネはせんよ」

 と、四人組の最後の一人、幻海。
 彼女の年齢は不明だが、結構な年であることは見た目で分かる。
 しかし、この四人の中である意味もっとも強い人物でもある。
 そして、浦島幽助の師匠だ。
 今では現役を退いて、自分の家でゲーム三昧。
 恐らく、どっかの猿と気が合うだろう。
 幻海ついてもやっぱし、「幽遊白書」「幽遊白書完全版」を読んでください。

「信用ねーな、クソ!!」

 今まで自分がしてきた事がちょっとは理解できる幽助であった。


「本当にここが穴の中心なのか?」

 もう一方の四人組がなんも無いただの原っぱに突っ立っていた。

「ただの原っぱだぜ」

 そういったのは四人の中で最も長身、桑原和真である。
 彼も幽助と同じように、暗黒武術会の覇者である。
 生まれながら、強い霊力を持っており、霊波刀を生み出すことが出来る。

「本当になんにもないね」

 彼女の名はぼたん。
 ぱっとみ、人間のようだが、実際は違う。
 死んだ人間の魂を霊界に導く、霊界案内人。
 幽助が霊界探偵になった際の助手を務めていたのだが、
 今では、完全に霊界探偵としての仕事を逸脱している気がしてならない。

「人為的に空間にゆがみを作るときは必ず円形になり、その中心には強力な術者がいる。
 場所はここ以外には考えられない」

「地上にそいつがいないとなると…………」

 二人の名は蔵馬と海藤優。
 海藤のほうは既に簡単な紹介は済ましているので、省いておこう。
 蔵馬。彼は正確には人間ではない。
 女性の胎内にいた赤ん坊に憑依した妖怪、蔵馬である。
 今では普通に高校に通うっているが、幽助、桑原同様に暗黒武術会の覇者である。
 なお、海藤とは同じ高校に通うクラスメイトで、
 高校の総合テストでは常に一二を争っていたりする。
 なお、海藤はいまだに蔵馬、人間名、南野秀一には一度も勝っていない。

「地下か……」

 四人は地下を睨む。
 もしかしたらすぐ下には、敵がいるかもしれないのだ。

「一度、幽助達と合流しよう
 ん、誰か近づいてくるな」

 蔵馬が気づいたように、四人の背後から彼らに近づく人の気配がする。
 敵意や気配を隠そうなどということはしていないので、敵ではないだろう。
 だが、油断は禁物である。

「ここかなぁ……ん、誰かいるのか?」

 草を掻き分けて、一人の青年が四人の前に姿を現す。
 その男は、珍妙な人形を持って突っ立っていた。




 美神とおキヌの二人は横島と分かれた後、とある企業の社長室の中にいた。

「では、このお札を額に貼ってくれませんか」

 そういうと、依頼主であるハゲの社長にお札を渡す。

「う、うむ、これでいいのか」

 受け取ったお札を額に貼り付ける。
 まるでどころかまんまキョンシーである。

「はい、では…………封!!」

 本来なら、長ったらしく必要も無い呪文を唱えるところだが、今は急いでいる。
 能力の封印に必要な要素は全部、額に貼られているお札にこもっているからそれを発動させるだけで十分だ。

「……お…おぉ…、見えない見えないぞ! ありがとう!!」

 はたから見るとおかしな状況ではあるが、えらく感謝する社長。
 まぁ、不十分な封印なのでもしかしたら、封印が解けるかもしれない。
 が、そのときはそのときだ。裁判になっても勝てる。

「それでは、報酬の方を所定の口座に振り込んでおいてください」

 本来なら、現金で今すぐ手渡してもらいたいところだが、今はそんな状況ではない。
 まるで、アシュタロスがコスモプロセッサを発動させたときのように、
 雲霞のように大量の下級妖怪があちらこちらにいるのだ。
 金にならないことはしないが、金になるなら手伝おうかなと思ってはいる。
 だから、横島に単独で調査させているのだ。
 彼は数人のグループでの行動も得意だが、スタンドアローンでの行動も得意とする。
 それに、変に強敵なんか出てきたりしても、文珠があればどうにか対処できる。

「(一人の方が彼は動けるからね)」

 いまだ、ぺこぺこしている社長をおいて、二人は横島との待ち合わせ場所に向かった。


 扉の向こう 第二話


「アルクェイド……貴女、本当に偶然ここを選んだというのですか?」

 蟲寄市に着いた志貴一行は駅前の広場で呆然としていた。
 理由は言わずもがな。やたらごろごろしている下級妖怪の存在に驚いているのである。

「なんとなくのつもりだったんだけど………呼び寄せられたみたいね」

 両者共に吸血鬼専門みたいなものだが、妖怪を相手にした事が無いわけではない。
 しかし、ここまでの数が一つの町にいることははじめてである。

「とりあえず、原因を調査しましょう」

「そうね、このままじゃ志貴が落ち着けないからね」

 そう、現在志貴はアルクェイドが借りていたホテルで待機中である。

 志貴は七夜と呼ばれる退魔を専門とした組織の一員である。
 その血には退魔衝動と呼ばれる物が存在する。
 退魔衝動とは、異形の力、物を持つ者に対する強烈な殺人衝動である。
 それは七夜最後の生き残りである遠野志貴も変わらない。

 電車でこの街に入ったときは驚いたものである。
 突然、桁外れの退魔衝動が起こったからだ。
 あまりの衝動の強さなので、アルクェイドに攻撃をしようとしたほど。
 アルクェイドは今はどっからどう見ても普通の人間にしか見えないが、実際は違う。
 真祖と呼ばれる吸血鬼の親玉みたいなものである。
 普段は何も感じないが、初めて出合った時は、十七分割してしまったものだ。

 これはいけないと、なんとか自制しつつホテルで待機。
 しかし、ホテルの中も下級妖怪の巣。
 一応、結界ははっておいたがこれでは落ち着けないだろう。

「とりあえず、この結界の中心部を探しましょう」

「そうね、この現象をどうにかしないと……」

 二人は連れ立って、この黒い膜の中心部に向かう。


「へぇ〜、霊界なんてあるんだ」

 膜の中心で出合った横島と蔵馬率いる四人。
 五人はそれぞれの状況を軽く説明してそれなりに打ち解けていた。
 今では、横島は普通にため口だ。
 それにつられて、蔵馬達もため口でしゃべってしまう。
 ここらへんは横島の美点といえよう。

 最初はおかしなヤツだ、と二組は思っていた。
 蔵馬達から見れば、変な人形持って街を歩き回るおかしな人形売り。
 横島から見れば、どう見ても格好いいとは思えない二人組みの男が、
 二人の美女を連れてこんなとこで青○かぁ!!といきり立ったもの。
 言っておくが、蔵馬は男である。
 そりゃ、ぱっと見は女に見えるが……

 そのままならば、変な奴がいるなと思うぐらいだが、横島があることに気づいた。
 四人が四人、揃いも揃って、霊力が高いということに。
 そのことに気づいたら、横島君、馬鹿正直に四人の目の前で、

「あんたら、何者? 妖怪、それとも、GS?」

 と聞きました。

 あんたは本当にアシュタロス戦役の英雄か?
 相手がGSならいいだろう。
 だが、妖怪だったらどうなっていたことか。
 まぁ、ここらへんは彼の今までの戦闘が関係する。
 いや……ボケればツッコミ、ズッコケは必ずしてくれるノリのいい敵ばかりだったし……

 そんなわけであっさり聞いてきた横島。
 蔵馬達はかなり驚いた。
 GSかと聞いてくるということはこの人はGS……のはずだ。なんでここにいる?
 まぁ、蔵馬は納得していたが……

「(このような異常事態。どこかの誰かがGSに依頼したのも納得できる)」

 しかし、蔵馬・ぼたんを除く二人はGSと出会うのは初めてだったりする。
 ぼたんは霊界の案内人として、時々GSという人たちとであったことはある。
 海藤はそもそもGSと係わり合いになるような生活はしていなかった。
 なら、桑原はどうだろう。
 桑原は今まで結構妖怪変化とのいざこざに巻き込まれてきた。
 でも、GS「ゴーストスイーパー」と出会うのは初めてだ。

 理由は簡単。
 GSと霊界探偵の受け持ち先が違う。
 GSは民間、すなわち、霊能力を持っていない人が霊障をどうにかして欲しいと思って依頼する相手。
 霊界探偵は霊界からの直接の依頼で、妖怪同士のいざこざを解決したり、霊界から面倒の解決がメインだ。
 民間からの依頼なんか無い。
 すなわち、GSは表側の存在。霊界探偵は裏側の存在といっていいだろう。
 それゆえ、彼らが同じ事件を解決ということはめったに無いだろう。
 まぁ、GSも霊界探偵もどちらかというと裏側に近いが……

 そんなわけで、殆ど出会うことが無い霊界探偵とGSだが、
 唯一、例外は美神除霊事務所。まぁ、まだあったことは無いが……
 美神除霊事務所はやたら神族魔族との係わり合いが深い事務所だ。
 だから、もしかしたら、霊界からも依頼があったかもしれない。
 あるかもどうかも分からないが、神族魔族経由で会うこともあったかもしれない。
 だが、今回はあくまで偶然。
 ぼたんが驚くのもしょうがない。

「とりあえず俺、上司の美神さんとこに戻らないといけないんだけど……」

「俺等もそろそろ時間だな」

「俺は駅前なんだけど……君達は?」

「俺達もです」

「じゃあ、美神さんと話しみない? いろいろ、手伝って……くれないかもしれないけど、
 まぁ、話す価値はあると思うよ」

「そうですね、仲間ととりあえず話してからにします」

「じゃ、行こうか」

 五人は連れ立って、原っぱから出る。
 先に進む三人、桑原、海藤、ぼたんの少し後ろで、横島と蔵馬が内緒話を……

「誰かついてきてるっすね」

「気づいてましたか」

「いやー、結構厳しい人生だったから……」

「はぁ……」

「で、どうする?」

「相手がどんな力を持っているか分かりませんし、それに、アジトの場所も分かりませんから、
 とりあえず今は泳がして起きましょう。そう、手出しはしてこないでしょうし」


「それにしても、横島君遅いわね」

「そうですね」

 一方、駅前の通りをうろちょろしている美神とおキヌの二人。
 することもないし、そこらの妖怪を払っても暖簾に腕押し。
 面倒くさいので、街を散策している。

「それにしても、一体何なのかしらねこれ」

 あいも変わらず、大量の下等妖怪。
 さすがにうんざりしてくる。

「そうですね……ん? 美神さん……これ……」

「えぇ、結界ね、これは……」

 街を歩いていると、二人の周りの空気が一変した。
 だが、周りの道行く人はまったくの変わった様子は無い。

「どうやら、霊能力者か、もしくは、別の変わったやつが近くにいるわね」

「はい」

 辺りを見回し、異気が漂ってくる方向を探知する。

「この地下ね」

 そこには、「麻雀クラブ つみこみ」の看板がおいてあった。




「美神さん、私おかしくなっちゃったんですか?」

「大丈夫よ、おキヌちゃん、私も同じもの見てると思うから……」

「双子さんでしょうか?」

「あんな双子いて欲しくないわよ」

 柳沢、「盗聴(タッピング)」の室田を「模写(コピー)」中。
 失礼な二人だ。
 どっちはとは言わないけどさ(笑)


 扉の向こう    第三話


「界境トンネル?」

 「麻雀クラブ、つみこみ」というある意味喧嘩売った名前の雀荘で起きていた珍事の後。
 TVで十分放映できるレベルだけど、皆信じない事件が終わったあと。
 その場にいた関係者っぽい七人は連れ立って、通りの中心部にたむろっていた。

「あぁ、どっかの馬鹿が魔界と人界をつなげようとしてるんだ」

 人を疑う……というか疑うと同時に殴る幽助と、人を騙して、コケにする美神令子が普通にしゃべっている理由。
 それは幽助の師匠、幻海のお陰だったりする。
 幻海は、GSとして働いたことはない。
 が、GS理事会(GSのまとめ役みたいな感じ)に半端でない発言力を持っている。
 無論、そんな幻海を美神が知らないわけが無い。
 また、幻海の方もGS業界トップの実力を持つ美神令子を知らないはずが無い。
 両者は面識は無いが知識としては知っていたのだ。
 そんなわけで二組のファーストインパクトは穏やかに進んだ。
 が、その内容は穏やかではない。
 魔界と人間界をつなごうとしているヤツをどうにかしようという話だ。

 美神としては、こんな面倒くさい事件に関わりたくなんか無い。
 しかし、幻海にコネと恩を売っとくのも良い。
 それに霊界、すなわち魔界からの依頼で働いているらしい。
 小竜姫様かワルキューレあたりのコネを使えば、小金ぐらいは手に入るかもしれない。
 いやいや、交渉のしだいによっては一攫千金。
 それに、良い物もらえるかもしれない。
 そんなわけで、美神側は現状維持を決定した。

「で、どうだ? 見つかったか?」

 幽助が、しけた顔して鼻栓を大量に詰め込んだ男に聞く。
 男の名は室田。
 領域「盗聴(タッピング)」を持つ男。
 その能力は半径30M以内の人間の心の声を聞くこと。
 強い考えであればあるほど、その声は大きく聞こえる。
 なお、出入りは自由らしい。

「いや・・・・・・・・・・・・あの女!?」

「いたか!」

 幻海が、室田がとっさに向いてしまった方向を睨む。

「あの女、これから担任の教師とヤる気だ!!」

 室田の頭に三連発の攻撃が入る。
 幽助、幻海、美神の順だ。

「まじめにやれ!!」
「ぶっ殺すぞ、てめー!!」

 あんま目立ってはいけないはずなのに、目立つグループだ。


「ん…………あそこの女二人!!!」

 今度こそヒットか!?
 その場にいる全員があたりを警戒する。

「…………逃げられた?」

「一体どうしたんだ、室田」

「いや……さっき声が聞こえたんだが、
 『結界の中心部を探す』この声が聞こえた。
 その後で、この力に気づいて逃げられちまった」

「うーむ、別の能力者か何かだろう。
 他に何か聞こえなかったのか?」

 という、幻海の問いに、

「一人の女は心の片隅で『カレー』と言っていた。
 もう一人はなんか分からないが猫の鳴き声が聞こえた気がする」

「なんじゃそりゃ?」 

 幽助の言うことももっともだが、それに該当する二人組がこの町にいる。
 というか、世界中探してもそういう二人組はそう見つかるもんではない。


「今のは一体なんでしょうか?」

「うーん、なんか盗み聞きされた感じがしたわね」

 心の片隅には常に「カレー」な女性、そして心の何処かに猫がいる女性、そんな二人組。
 シエルとアルクェイドの二人だ。
 二人は一瞬だけ室田の領域に入ったのだが、そこはプロである。
 一瞬にして、室田の領域から脱出。気配も消して辺りをうかがっている。

「もしかしたら、この現象の関係者かもしれません」

「そうね………あそこ、数人の能力者が集まってる」

「待ちなさい。アルクェイド、あなた今何をしようとしてました?」

「えっ? 志貴を困らせてるヤツをぶっ飛ばそうかと……」

「貴女は本当に真祖なんですか? もっと物事を考えて行動してください」

「むぅ〜、だったらシエルはどうするつもりなのよ」

「とりあえずは情報が必要です。というわけで、あそこの集団を尾行しますよ」

「シエル一人でやってよ、そういうことは。私はこの結界の中心部に向かうわ」

「……分かりました。あなたに尾行なんて器用な真似を要求はしません。
 中心部に向かうのはいいですが、調査だけですよ。
 変に手を出してとんでもないことになったら困るのは、私達だけでは無いんですよ」

「わかってるわよ……それじゃ、シエル後は任せたわよ。
 なんか変なにおいがするし、気をつけてよ」

「私を誰だと思ってるのですか。任せてください。貴女よりはマシな結果を出しますから」

 それじゃあ、と言い合い、彼女らは二手に分かれる。
 一人は結界の中心部。
 もう一人は気配を消して、通りの中心部にたむろしている連中、
 幽助・幻海・城戸・柳沢・室田・美神・おキヌの七人の追跡を開始する。


 一方、蔵馬達と同行している横島は言えば……

「あれ〜、美神さん達、いないなぁ?」

「いないんですか?」

 本来の待ち合わせ場所にいるのだが、彼の待ち人は誰もいない。

「携帯に連絡すればどうです?」

「…………携帯持ってないんだよ」

「あぁ、そうですか。それじゃ、俺のを貸しましょうか?」

「…………電話番号忘れた」

「………………そうですか…………」

 まぁ、仕方ないというしかないだろう。
 横島は基本的には電話をかけない。
 話したいこと伝えたいことがあったら直接面と向かっていうタイプだ。
 今の時代、結構珍しいタイプだ。
 ん? 今の時代? …………何時だって良いか(笑)

「ん?」

「どうしました?」

「いや……今、そこの路地裏の誰かいたような……」

 横島が目を向けていたのはビルとビルの隙間。
 幅1mに過ぎない空間だった。
 そこはなぜか雑多な妖怪が一匹もいない。
 だが、横島はそんなことには気づかない。
 彼の優れた美女センサーがとあるレベルの女性を感知したからそれに気づいただけである。
 彼の長年の勘はこう告げている。
『クラスのアイドルがいる!!』
 良く分からない判別方法である。
 そのレベル分けの基準も知りたいものだ。

「気のせいかな?」

 気のせいだろう。
 路地裏のような場所に、女子高生なんかいるわけが無いのだから。
 横島はそう結論付けて、美神達を探そうとその場を離れる。
 その後ろには蔵馬達がついていく。
 なんというか、横島と分かれる機会を逃したといった方がいいだろうか?




 皆殺しだ

 ガキも・・・・・・・・・女も・・・・・・・

 神父も・・・・・・・・・妊婦も・・・・・・

 墓でこの世を埋めてやる

 掘っても掘っても足りないくらい・・・・・・

 掘っても掘っても・・・・・・・

 掘っても掘っても・・・・・・・

 掘っても掘っても・・・・・・・

 掘っても掘っても・・・・・・・

 掘っても掘っても・・・・・・・

 掘っても掘っても・・・・・・・


 扉の向こう   第四話


「全ての人に墓を掘る。俺たち七人で穴を掘る」

「そして、暗黒天使、門番、狙撃手、美食家、遊熟者、医師、水兵か」

 大凶病院の待合室で室田が先ほど聞いた男の声を皆に伝えた。
 しかし、なんて名前の病院だ。不吉すぎるのにもほどがある。

「あの男の声で手がかりになりそうなのはこれだけで、あとは異常な殺意だけだった。
 もうカンベンしてくれ。俺だって死にたかねぇ」


 あの後、室田は一人の男の声を聞いた。
 その声は誰よりも静かで暗い。しかし、誰よりも強い思い。
 先ほどのカレーと猫の女とはワケが違う。
 思わず室田が頭を抱えるほどだった。

 そして、その領域に気づいたのか、それとも、幽助達が自分たちのことを探っているのを知っていたのか、
 彼らは挑戦状を幽助達にたたきつけた。
 領域を展開していた室田に対して攻撃を放った。
 その怪我の治療と、その敵の攻撃範囲から逃げるためにも彼らはこの病院にいる。


「七つの言葉…………奴らのニックネームですかね」

「多分な。それが奴らの能力にも関係しているに違いない」

「でも、暗黒天使だなんてニックネームつけるヤツの顔が見たいわね」

 暗黒天使、ダークエンジェル

 門番、ゲートキーパー

 狙撃手、スナイパー

 美食家、グルメ

 遊熟者、ゲームマスター

 医師、ドクター

 水兵、シーマン

 これが敵となる七人のニックネーム。
 いまのところ、幽助達が知っている情報は敵の人数とニックネーム、それと敵の目的、界境トンネルの開放ぐらいである。
 これだけでは、何も知っていないといってもしょうがない。
 あと、付随するなら敵の主犯格であろう人物の姿ぐらいであろう。
 まぁ、美神の手によってセンスが悪いという前評判がついてしまったが。

「それにしても幽助。お前良くあいつの後を追わなかったな。
 少しは成長したようだな」

 幽助の師匠として今まで長い間、幽助の事を見てきた幻海が感心する。
 今までの幽助は
 何も考えずに行動する!
 頭より先に体が動く馬鹿!
 つまり単細胞!! なヤツだった。
 しかし、今回は頭を使ったか敵を追わなかった。

「追えなかったんだよ。
 一目見て感じたぜ。ヤツはなんかやばい」

 今まで、幾つもの死線をかいくぐってきた野生の勘……と言うべきなのだろうか。

「いやな目ェしてやがったぜ。
 敵が罠にかかるまでジッと待つって感じのな。
 戸愚呂が剛球投手ならあいつは魔球を使いそうな雰囲気だ」

「まず、合格だな。同じ印象をあたしも持った。
 さらに言えば奴は魔球を土壇場まで見せんだろう。
 ヤツが自分の能力を見せるのは敵に止めをさすときだろうな」

 幽助よりもさらに死線と人生経験豊富な幻海が幽助の言ったことを首肯する。
 なんとなく、おキヌは美神を方を見つめている。
 美神は美神で、「気が合うかも」なんて思っていたりするのは秘密だ。

「室田を“撃った”のがヤツじゃないこともそれを裏付けている」

 撃たれたのは室田。撃った物質は、

「消しゴムの切れっぱしだよ」

 幻海の手にあるのは確かに消しゴムの切れっぱしだった。
 だが、それには人間の気が残留していた。
 敵の能力者、恐らく狙撃手(スナイパー)の攻撃であろう。

「弾道先から狙撃手を目で追ってみたが、500m以上離れた所から撃っているな。
 顔までは分からなかったがこれを念で飛ばしたやつは相当の能力者だ」

 皆に能力の説明をした幻海さん。視力は6.0である。


 一方そのころ、とある通りに二人の男がいた。
 一人は先ほど幽助達の目の前に現れた男。
 そして、もう一人が

「追ってきませんでしたね」

 刃霧 要。
 能力名、狙撃手「スナイパー」
 室田を撃った能力者である。

「ああ、以外に浦飯は冷静だったな」

「蔵馬達は引き続き“水兵”が尾行しています。
 どうやら、情報にない人物が一人いるようです」

「ああ、だが、奴らはあとまわしだ、様子を見るだけでいい」

 二人は自分達のアジトに戻る途中である。
 だれも、その姿を気にとめようとはしない。

「浦飯達は最寄の病院に向かったはずだ。
 医師「ドクター」が尾行していることも知らずにな」 


「何者かがたった今領域を広げましたよ!!」

「この病院の中にも能力者が!?」

 ちょうどそのころ、幽助達は何もかが広げた領域の中にいた。
 だが、場所は移動しておらず、病院の中。すなわちもっとも可能性が高いのが、

「医師『ドクター』か……!!」

「気をつけろ! 死角を作るな!
 どっから何が来るかわからねーぞ!!」


「一体なんなんですか!!」

 一方、幽助達を尾行していたシエルも同じく領域内にいた。

「さっきとは違う結界のようですね……!!」

 先ほどの室田の盗聴『タッピング』とはまったく違う性質を持った領域。

「この蟲は……?」

 シエルの目の前にいる看護婦の方や背後には謎の蟲が大量にいた。
 その蟲はどうみて、町にうようよいる低級妖怪ではなく、もっと別の・・・・・
 そう、能力によって生み出された人工の蟲であった。
 なお、現在のシエルの格好は看護士。
 お得意の暗示によって看護士の振りをしている途中である。


「痛っ!」「いてっ!」「きゃっ!?」

 室田と柳沢、そしておキヌの三人が同時に声を上げる。
 とっさに柳沢が痛みの走った場所を見ると、そこには一匹の蟲がその針を柳沢の手の甲に刺していた。
 指された場所からは少量の血が出ている。

「な……なんだこいつはーーーー!?」

 とっさに蟲を叩くが……

「あ……あああ……!!」

 指された場所から大量の斑点が体に広がっていく。
 そして、

「さ……寒い」「体中がいてぇ……!!」「これは……!?」

「!! 凄い熱が!!」

「おキヌちゃん!! 大丈夫!?」

「一体、今の不気味な化け物は!?」

「魔界の蟲じゃない……病原菌!? ウイルスか!?
 ますます能力者が医者“ドクター”である疑いが強い!!

 気をつけろ!! 二匹だけじゃないかもしれん!!」

 幻海が注意するが、時既に遅し。

「囲まれてる……ウジャウジャいるぜ」

 あたりには無数の蟲……いや、ウイルスが存在していた。

「何かあったんですかァ?」

 うずくまっている室田と柳沢に気がついたのか一人の看護士が近づいてきた。
 ここは病院だ。
 どっからどうみても具合の悪そうな二人をほっとく馬鹿はいないだろう。

「その方達気分が悪いの?」

 この台詞と彼女だけを見れば、白衣の天使を言っても文句はない。
 だが、

「あんた! 肩!! 頭!!」
「はやくふりはらえ!!」
「ちょっと!! こっちに近寄んないで!!」

 その肩に止まっている大量のウイルスが台無しにしている。
 城戸や幽助がそれを注意しても気づかない。
 美神は美神でこっちくんなと睨みつける。
 美神じゃなかったとしても、近づいてもらいたくない。

「え? 何もついてませんよ。
 何言ってんですか、あなた達?」

 そりゃ、気は確かかという顔をしたくなるのも分かるが、幽助たちにとっては死活問題である。
 どうにかして、この状況を打破しなければ……

「見えねーんだ、普通の人間には!
 それにあの生き物明らかに俺たちだけ狙ってやがる!!
 このままじゃ全員あのウイルスにやられる!」

「能力者を見つけんと二人の病気は進むだけだ」

「行くしかないな!!

 ねーちゃん、そこの二人を頼む!!」

 そういって、ウイルスに刺されなかった幽助、幻海、城戸、美神の四人は走り出す。

「あっ!! 病院内は走らないで!!」

 そうは言っては見るものだが、幽助達の耳には一切届かない。
 届いたとしても守ることはないだろう。

 そんな走る彼らの背後から一人の看護士が、

「どうにかしないといけないようですね……」

 きらりと目を光らせていた。




 四人が走る。
 走っちゃいけない病院を走る。
 急患が来たときは走ってもいいけど、一般市民は走っちゃいけない廊下を走る。

「ああッ! もう! 蟲だらけでうっとおしい!!」

 叫んじゃいけない廊下で女性が叫ぶ。

「探すっていっても病院の中は医者だらけですよ!」

「とりあえず医者がいたら全員ぶん殴る!!」

「気が進まんがそれが一番手っ取り早い」

「むしろ、殺すつもりでやるわ!」

「証拠は残さないようにしとけよ!」

「(なんと恐ろしい人たちだ)」

 ま、病院で話す話題ではない。


    扉の向こう 第五話


 一塊で探していては、埒が明かないので、幽助、幻海、美神、城戸の四人は分かれて能力者を探すことにした。
 だが、単独で行動したのがまずかった。
 幽助や美神、幻海だったら個人でも対処できたかもしれないが、敵に出会ってしまったのが城戸。
 城戸は領域を持ってはいるが、基本的にはただの学生。
 そのせいか、敵の攻撃に対処することが出来なかった。

「くくく、手も足も声も出せまい。随意筋の大部分を麻痺させた」

 敵能力者、神谷はこの病院の医師であることを利用してその姿を隠していた。
 偶然、城戸が神谷の近くにおり、近くにいた看護士が神谷が今日休みだと言ったお陰で気がついたのだ。
 しかし、その看護士はその場で神谷に殺害され、また、城戸も殺されそうになっていた。

「いいザマだ。白昼の通り魔、看護婦を殺して自殺・・・といったところだな」

 自らの指先をメスのように変え、城戸の手首を切り裂く。

「やつらが敵を病院の部外者だと思っているのは好都合だ。一人残らず消してやる」

 城戸の手首からは大量の血が流れ始める。
 早く処置をしないと、出血多量で死んでしまうだろう。
 神谷が他のやつらを探そうと立ち上がろうとすると、そこに

「きゃあーーーーーーーー!!」

 一人の看護士が部屋に入ってきた。
 彼女の目に映ったのは、一人の少年が手首から血を探し、同僚は地面に倒れ伏している光景だった。

「神谷医師、これは一体・・・・・・誰かーーー!!」

「(ち・・・騒ぎが大きくなってきたな。ここはなんとかごまかさないと・・・・・・)
 キミ! 大至急警察を呼べ!! 不審な男がたった今逃げていった!!
 病院内に医者に成りすました犯罪者がいるぞ!!!」


「城戸!!」

 そこへ、騒ぎを聞きつけた浦飯がやってくる。

「君、この少年の知り合いか!!」
「こっちの少年はまず心配いらん。発見が早かった」
「一体どうなってるんだ!? 警察を早く呼べ」

 そこには数人の医師が集まっていた。
 口々にいろんなことを騒いでいる。

「(医者医者医者だらけ!!
 この中に犯人がいるのか? それとも、もう逃げたか?
 くそぅ! 全員ぶん殴るか?)」

「犯人は医者に化けてるそうだ!!」
「全棟に連絡しろ! まだ凶器を持ってうろついてるかもしれん!」

「やはりこの病院の医者じゃなかったか!!
 ってことはこいつらじゃねぇ。まだ遠くに行ってねぇはずだ!!」

 数人の医師がそれぞれを見知った人物のように話し合う。
 それをみて、浦飯はここに敵はいないと予測する。
 そんな騒ぐ医師の中、神谷は浦島の言葉を聞いてほっとしていた。

「(くくくくく、よし、後は時間がたてばウイルスでこいつらの仲間は死ぬ)」

「城戸!! 敵はどこだ!! どんなヤツだった!!」

 倒れている城戸の近くに行き、敵の情報を探ろうとする。
 それを周りの医師が止める。
 城戸が手首を切られたショックで体が膠着していると思っているからだ。

「(フン……無駄だ無駄だ。筋肉を麻痺させてるんだ)」

 神谷の領域によって筋肉を麻痺させられた城戸は、すぐ近くにいる敵の正体を浦飯に伝えようとするが出来ない。
 手足や舌、指一本ですら動かせないからだ。

「くそ…しかたねぇ! 城戸、しっかりしろよ。すぐ捕まえて倒してくる! 待ってろ!!」

 そういって、浦島がその場を立ち去ろうとする。
 とっさに、自分の領域を発動させ、浦飯を引き留めさせる。

「(体が動かねぇ!? 城戸の領域! 城戸の“影”か!!)
 城戸!! 俺に「行くな」といってるのか? まさかここに……」

「(そうだ!!ここに敵がいる!!)」

「オレにここにいて欲しいってのか!? 心細いのは分かるが犯人逃がしちまうだろ!」

「(ちがうちがうそうじゃねェェェ。犯人がここにいるんだよぉぉぉ!!
  なんとか教えねぇと〜〜。体のどこでもいい! たのむ!! 動いてくれ!!)」

 城戸の必死の思いもまったく通じない浦飯に何とかここに敵がいることを教えない城戸。
 そんな城戸の思いが自らの領域に新たなる力を目覚めさす。

「なっ!!」
「(城戸の“影”が動いてる!!)」

 そう、今までは影を踏んだ相手の動きを止めるだけの領域だったが、
 城戸の精神の強さによって、自らの領域の根源、“影”を動かすことが出来た。
 そして、その城戸の影は自らが流した血を使って、一人の男の名を床に書く。
 床にはひらがなで三文字。
 か・み・や
 と、書かれていた。

「かみや!? それが犯人の名前か!?」

 敵の名前を浦飯に伝えることが出来たことによって安心したのか気絶する神谷。
 その瞬間、城戸と浦飯の近くにいた医師が首筋を斬られる。
 そして一人の医師を残して全員が倒れる。

「予定変更。病院内の人間、全て殺す」

 自分の名前がばらされ、自分の正体がばらされるのも時間の問題と見た神谷が実力行使に出る。
 まず手始めに、領域で周りにいる医師全員を殺す。

「てめぇか!! 城戸!! 領域をとけ!!」

 襲い掛かってきた神谷の一撃をとっさに後ろに飛び避ける。

「もう“影”がとけている。
 そうか、能力者が意識を失うと効力も消えるのか!!」

「しまったなぁ。もう少しの間「優しい神谷医師」を演じていたかったが……
 病院内にいる人間は全て殺す必要が出来てしまった」

 神谷の周りに無数の蟲、ウイルスが現れる。
 いや、神谷の周りだけではない。
 それは、病院内、神谷の領域全体に現れ、中にいる全ての人間にウイルスを注入する。

「私の念で出来たウイルスは強力だぞ。精神力の弱いものほど死は早く訪れる。
 最初にさされた君の仲間はもっとあと10分かな……」

「その前にテメェを倒す!!」

 一気に間合いをつめ、神谷の顔面に無数のパンチを叩きこむ。
 ついでとばかしに、周りにいるウイルスの破壊する。
 耐え切れず、神谷は吹き飛ばされる。

「能力者が意識を失えば効力が消えると分かったからな!!
 今すぐ眠らせてやるぜ!!」

「ねむらす…………? くくくくくくくくく、うひゃひゃひゃうひうひ…………それは無理だね」

 いきなり、起き上がり、人間離れしか動きで浦飯に攻撃を仕掛ける。
 神谷の攻撃を一撃だけ頬に喰らうが、カウンターでボディーに一撃を食らわす。
 そしてそのまま、壁に吹き飛ばされる。
 かなりのダメージが予想されるが、神谷はニヤニヤと笑っている。
 まったくのノーダメージのようだ。

「その動きとタフさかげん。並の人間の体力じゃねーな」

「能力に目覚めると同時に肉体の機能をメチャメチャに高める方法も覚えた。
 脳内の興奮物質を自在にコントロールできるのさ。
 お陰で痛みもまったく感じないねぇ。ふぇふぇふぇふぇふぇ……」

 そういいながら、ゆっくりと立ち上がる。

「素手で解剖してやるぜぇーーーー!!!!」

 再度、浦飯に向かって攻撃を仕掛ける。
 が、それを見越していた浦飯は既に指先を銃のように握っていた。
 そして、指先にためた霊気を弾丸のように放出する。

「む!!」

 とっさに放たれた霊気“霊丸”を神谷は避けるが、左腕が吹き飛ぶ。
 廊下にぼとりと神谷の左腕が落ちる。

「(これが霊丸か……)」

「もうてめぇを人間とは思わねぇ。次は完璧に当てる」

「忘れたのか? オレの能力は“医師”だぜ」

 そういいつつ、自分の左腕を拾い上げる。
 そして、左腕を千切れた箇所とつなぎ合わせて、右手ですっと撫でる。
 すると、左腕は元通りにくっつき、何事も無かったかのように結合されていた。

「“結合手術”もできるんだぜ」

 繋がれた左腕の具合を確かめるように二三度上下に動かす。

「“医師”という能力でありながら、オレがやって「死ね!!」…はぶっ!!」

 と、そこへ誰かの一撃が神谷の首筋にヒット。
 はっきし言って、シャレにならない音がする。グキッとか、ゴキッとか……

「死んだーーーー!!!!」

「なによ、情けないわね」

 浦飯から少し離れたところにいる美神。
 その手には神通棍。しかも、鞭モード。

「あんた……なにやってんだよ!?」

 妖怪は結構殺してきたけど、人間が死ぬという状況はあまり体験していない浦飯。
 まぁ、浦飯本人が死んだことはあるが。

「何って…………おキヌちゃんに酷いことやって無事にすんでるヤツっていないのよ!!」

 死津喪比女しかり、茂流田しかり、鼠のネクロマンシーしかり……たぶん他にも多数いると思います。
 詳しく説明すると、
 死津喪比女、呪殺+串刺し。茂流田、くびちょんぱ。鼠のネクロマンシー、喰われる、ってとこです。

「くっ………くくくくくくく。援軍を頼むとはねぇ。あの人もそこまでは考えていなかったようだ」

 どう見ても、首の骨が折れている神谷が笑いながら立ち上がる。
 そして、普通に首を元に戻す。
 こういうことが出来るのは、神谷かギャグキャラか中国四千年の某海王ぐらいです。

「ちっ」

「舌打ちすんな」

 よっぽど、本気で殺りたかったのだろう。




 とある病院の廊下。
 そこに三人の男女がにらみ合っている。
 今にも一触即発という状況だ。

 一人は口から血が垂れておりながらも、じっと正面の二人を不敵に見つめる男。神谷。
 もう一人は光る鞭を持ち、その柄でポンポンと手のひらを叩いて、物凄い笑顔をしている女性。美神令子。
 美神令子の近くにいる少年、浦飯幽助は指の骨を鳴らしながら、やくざ顔負けのメンチ切っている。


 どっからどう見ても、美神・幽助の方が悪人に見える。
 まぁ、それを判断する第三者がいないからどうでもいいことなのだが。


 扉の向こう

   第六話  作:桜始開


「とっとと領域を解いて、皆を病気から開放しろ。そうすれば殺しはしねぇ」

「できないね……と言いたい所だが、さすがに二人相手だと分が悪い。
 そこでだ、俺がここから出てくまで、ここでじっとしていくれないか」

「はぁ、あんた……馬鹿ね。そんな甘い真似するとでも思ったの」

 美神にそう反論されるが、当の神谷は涼しい顔だ。

「ふふふふふふふ……仲間を死なせたくないだろ。
 俺がその気になれば、ここにいる全員の病気の進行を早めることが出来るんだぜ」

「くっ……」

「だが、俺をここから逃してくれれば皆の病気から解放してやろう。どうだ、いい取引だろ」

「くっ……しかたねぇ」

 苦々しい表情を幽助は浮かべるが、仲間を救うため、こいつの言うことを今は聞いていなければ……
 が、横にいた美神はそう思わなかったらしい。

「あんた……横島君以上のバカね」

「なっ!? そのどこの誰かは分からんが酷く馬鹿にされた気がするぞ!」

「馬鹿にしてんのよ。幻海さんの言ったとおりに輝けんばかりのバカね」

「んなっ!」

「だいたい、こいつをここで逃がしたところ、皆を病気から解放するとでも思ってるの?」

「いや、でも、病気の進行を早められたら……」

「そんなこと出来るんだったらとっくのとうにしてるわよ。そうでしょ!?」

「ちっ……」

 ずばり核心を言われ、舌打ちをする神谷。

「さて、他の誰がどうなろうと関係ないけど、おキヌちゃんに手を出したのが間違いね」

 某赤い悪魔以上の怖い笑みを浮かべながら、神谷に近づいていく美神。
 その恐ろしさ、味方のはずの幽助が神谷に向かって逃げろと叫びそうになるほどだ。
 と、あわやカタストロフという場面に、

「た……助けて」

 近くの扉から一人の看護士が現れる。
 どうやら、神谷の放った毒にやられた被害者の一人のようだ。
 顔、いや体中に斑点が浮かんでいる。

「くるなっ!!」

 幽助がそう叫ぶが時既に遅し。
 その看護士の背後に回りこみ、首筋に指を当てている神谷がいた。
 神谷の領域、「医師」の力を使えば、この看護士の大動脈を切り裂くのは容易だろう。

「一歩も動くなよ、この女の首を落とすぞ」

 さすがの美神と幽助も動きを止めるしかない。
 おキヌちゃん以外がどうなろうと関係ないと言ったが、さすがに目の前で人質取られていては動けない。

「てめぇ……自分がやってることわかってんのか」

「わかってるさ。看護士を盾にしてとんずらだ。違うかな?」

「そのことだけじゃねぇ! てめぇらが開けようとしている穴は全てを巻き込む! お前らもだ!!
 穴から這い出た妖怪がお前らだけを避けて暴れるとでも思うか!?
 てめぇがやってんのは自殺行為だぜ!」

「自殺行為か。そのとおりだ。
 俺は自分の死に方を決めかねて今まで生きてきた。
 病気で殺されるのも時間に殺されるのもまっぴらだ。

 だが妖怪になら殺されていいな。
 全ての人間を殺してくれるのならな
 数え切れない屍の上……それが俺の死に場所だ」

「その考え方も行為も、両方とも理解できませんね」

 突然、幾筋もの光が神谷目掛けて飛来する。
 光は神谷が捕らえていた看護士には危害を加えず、ただ、神谷の四肢だけを貫く。

「がはっ!!」

 光に押されて、神谷は壁に貼り付けになる。
 そして、分かるのだが、神谷を貼り付けにしたのは光ではなかった。
 それは幾本もの銀色の刃。切り裂くよりも貫くことに特化した凶器。

「誰だ!?」

 神谷を攻撃したのだから、神谷の敵ではあろうが、こちらの味方だと決まったわけではない。
 とっさに、迎撃体制に入る二人。
 いや、既に攻撃態勢に入っている。
 刃が飛んできた方向から予測して、美神が鞭を振るう。幽助は既に霊銃の発射体制だ。

「やめんか、馬鹿もの!」

 神谷を攻撃したであろう人影に鞭が迫るが、その寸前で人影の前に現れた小柄な人物に捌かれる。

「少しは物事の先を読んで行動せんか」

 それは無理だ。
 幽助も美神も、主人公にありがちないろいろ巻き込まれて不運だけど、なんだかんだ言って運がいいという特性を持っている。
 だから、行き会ったりばったりでも十分事は成せる。
 しかし、このSSではそれはない。
 というか、作者もいまいち誰が主人公なのか分からない状況だ。

「いえいえ、気になさらないで下さい。怪我もありませんから」

 そういう幻海の横に立つ一人の女性。
 病院に勤めていたらしいく看護服を纏っている。

 そう、シエルだ。
 病院中は神谷の放ったウイルスに埋め尽くされてはいたが、そこは代行者。
 華麗にウイルスを捌き、被害者の手当てをしていたのだが、勝手が違うのか病状は回復しない。
 どうやら、術者がいるようなのでそいつをどうにかすればいいだろうと探し始め、
 途中で幻海とばったり遭遇。
 シエルのほうは幻海の事を知らなかったが、幻海はシエルのことを知っていた。

「む……お主………埋葬機関の第七司祭ではないか。なぜ、こんなところに?」

 こうなると、この幻海さんの顔の広さが気になっては来る。
 魔法使いとも知り合いなのではないかと疑ってしまう。
 他にもいろんな神様、魔族、妖怪やらなにやら。

 それから、いろいろと事情を話し合い、とりあえず協力しあうことになったのだった。


「さて、こいつをどうするか……」

 幻海の説明で謎の女性、シエルが敵ではなく味方だということも納得した後、
 皆は壁に貼り付けになってる神谷の前に集まっていた。

「くっ………」

 気絶はしてないもの、黒鍵によって貼り付けにされ身動き一つ取れない状態の神谷。

「さて……領域を解いてくれるなら、おキヌちゃんに手、出したことは半殺しで許してあげるわよ」

「ふっ、領域を解くとでも思うか。殺せるものなら殺してみろ。ムショに行くのはお前だぜ」

 こんな状態になってまで強気な神谷は賞賛に値する。
 しかし、その行為は間違ってる。
 ここにいるのが幽助や幻海、シエルだけなら問題ないが、ここには美神家長女、美神令子がいた。

「そっ、なら殺してあげるわ」

 うわっ! って声を上げそうになる笑顔を浮かべながら、神通棍を構える。
 なぜか棒状。
 そして、ゆっくりと構える。

「やばいって、そこは!!」「当然の報いです」「ふぅ」

 美神達には背中を向けた状態で刺さっているため、神谷には一体何が起きてるのか分からない。
 ただ、幽助の本気でびびる声、シエルのどこか期待している声、幻海の諦めてる感が強い声が聞こえるだけ。
 一番気になるのは、幽助の「やばいって、そこは!!」の声。
 そこって…………どこだ?
 と、神谷が疑問に思う間もなく、

「#ΨΣωζ∀ёжИШБфーーーーー!!!!」

 形容しがたい叫び声を上げる神谷。

「うわっ!!」
…………きゃっ
「はぁ」

 なんらかの行動をしている美神の後ろでは幽助が青白い顔してとあるを押さえており、
 シエルはシエルで、何かを思い出したのか頬を赤らめている。
 幻海はもうどうにでもしてやれという感じに背中を向けている。

「ふっ、正義は勝つ!! …………この神通棍はもう使えないわね」

 神谷のとある部分に刺さったままの神通棍から手を離し勝ち名乗り。
 さすがの脳内麻薬も限界を超えたダメージにはどうしようもないらしく、すっかり神谷は気絶している。
 今後、神谷の運命が変わるかもしれない。


「「俺の出番…………」」

 そう呟いたのは、看護服を着た柳沢と廊下でダウンしている室田だった。


後書き……というか確認


大丈夫ですかね?
あっち(GS小ネタ掲示板)で祭りを引き起こしてしまったので、こちらに移転。
一応、プロローグ〜第六話までは総まとめしておいたのですが……
問題…………ないですかね?
ログは流さないようにしましたが…………容量が。。。(汗)
これはどうしようもなかったです。

なにか問題があった場合は言ってください。
自分のせいで発生した問題は自分で出来うる限り対処します。

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