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「ある暗部の物語(NARUTO)」

桜始開 (2005-01-24 00:56)
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 霧だ。
 濃い霧が橋の上を覆っている。
 あの霧の中にいたら、ほんのちょっと前でさえ何も見えないだろう。
 霧の中から聞こえてくる斬戟音も小さくなった。
 そろそろ、戦局が動きそうだ。
 しかし、あの中で戦うというのは下忍はもちろん、上忍にとっても厳しいだろうな。

「まぁ、中にさえ入らなければどうってことないんだけどな」

 このぐらい離れていれば、誰にも気づかれないだろう。
 そう、思いながら俺は気配を消したまま、建設途中の大橋を見つめ続ける。
 眼下には、ガトーとゴロツキが潜んでいる。
 すぐ真上にいるんだぞ。
 口に出して普通に呟いているんだ。
 少しは気づいて欲しいな。
 気づかれたら気づかれたでショックなんだけどよ


 ある暗部の物語

    第三話   作:桜始開


 しばらく………いや、時間的にはそれほど立ってない。
 が、戦局が動く。
 それも、かなりやばい方向に。

「このチャクラ…………九尾か!?」

 うずまきナルトについての情報を集めている途中で知った真実。
 ある一定の年齢の大人、あるいは忍びならば公然の秘密となっている事実。
 うずまきナルトの中に封印されている九尾の狐。

「封印が解かれたか!?」

 いや、それにしては弱い。
 憶測に過ぎないが…………完全には解かれてはいないようだ。
 どうやら、力が漏れ出しているという表現が正しいようだ。

「白には荷が重過ぎるな」

 血継限界の持ち主であろうと九尾の狐の力の前ではチリに等しい。
 しかし、この禍々しさ。
 さすが九尾の狐といったところか。
 四代目が命を懸けてまで封印したというのも理解できる。
 話で聞いていたがこれほどとは……
 あの時オレは任務で里の外にいたからな。

「これならば里が滅びかけたというのも理解できるな」

 情報収集専門だからだろうか?
 直接的な戦闘ではなく、思考の読み合いチャクラの読みあいを主体とする戦闘を主に行う俺だからか?
 初見ではあるが九尾の恐ろしさが身にしみる。

「しかし、こいつら…………馬鹿か?」

 結構近くにいるというのに、オレの下にいるガトー率いるゴロツキの奴等。
 全然気にもしていない。
 九尾なんて俺の敵じゃねえよ、という感じじゃなくて、本当に気づいてねぇ。
 ガトーも何を考えて、こいつらを護衛にしようとしたんだ?


「白が死んだか……」

 予想に反して、ナルトは白を殺さなかったようだ。
 どうやら、ナルトと九尾の狐の同調性が高まっているようだな。
 だからこそ、ナルトは九尾の力に飲み込まれなかったのだろう。

 さて、ガトーの奴等が動き出している。
 また、馬鹿なことをするのだろう。
 だが、オレが気にしているのはもう一人の忍び。
 名前も知らないが、ただ分かるのは再不斬と同じ霧の抜け忍ということぐらい。
 結構前から、オレとは橋を挟んで反対側に位置する木の枝に潜んでいた。
 相手は俺のことに気づいていないようだが、俺は最初から気づいていた。
 オレから見ると遁法(※1)の何たるかをまったく考えていない隠れ方だ
 それほど強い忍びとは思えないが、再不斬との戦いで消耗したカカシ上忍では荷が重いだろう。
 というか、春野サクラ以外の全員がかなり体力チャクラ共に消耗している。

 どうやら、カカシ上忍を含め皆あいつに気づいていないようだ。
 仕方ない。
 さっきはまでは九尾の狐のチャクラでそこらを監視する余裕などなかっただろうし。
 その前は再不斬・白と戦っていたんだ。
 再不斬・白があいつに気づいていたかは分からないが、どうやらオレの出番といったところか。


 音もなく、気配を立てずに霧の抜け忍の後ろに立つ。
 だが、すぐには殺さない。
 こいつが行動する瞬間を狙って殺す。
 それがオレの暗殺パターン。
 戦闘に関する技術・力を高めなかったため、こういう暗殺しか今までしてこなかった。
 人は何かを狙って行動する際が最も周囲に対する警戒が薄れる瞬間である。
 だからこそオレは相手の背後で息を潜める。
 さすがに背後に突っ立っているだけじゃすぐに見つかるだろうから。
 狸隠れの術(※2)で潜む。
 術を発動する際のチャクラのうねりは自らの体内でとどめる。
 決して、外には漏らさない。
 無論、音一つ立てはしない。
 見立てではあるが、こいつの力ではオレが何処にいるかなど分かることはないだろう。
 いや、それ以前にオレという存在がいるということさえ気づいてはいない。


 すると、再不斬がガトーに向かって突進し始めるのが見える。
 オレの目の前にいるこいつは恐らく、ガトーを守るために動くだろ。
 その瞬間に俺の仕事は終わる。

 5メートル
 再不斬がガトーの護衛の中に突入する。
 目の前のこいつは動かない。

 4メートル
 数本の刀が再不斬の体を貫く。
 まだ動かない。

 3メートル
 数人の護衛を吹き飛ばし、ガトーに向けて再度走り出す。
 こいつはまだ動かない。

 2メートル
 再不斬が体に幾つもの刀で貫かれた状態でガトーを睨みつける。
 動かない?

 1メートル
 ついに再不斬がガトーを射程距離に収める。だが、そこにさらに追撃を喰らう。
 何故動かない。こいつはガトーの護衛ではないのか?

 0メートル
 そして、再不斬が咥えたクナイがガトーの首をはねる。
 何を考えているんだ。この忍びは……

 結局こいつは動くことはなかった。
 どうやら、とっくにガトーの護衛を諦めたようだ。
 だが、まぁいい。
 木の葉の忍びではなく、霧の抜け忍だが、ガトー暗殺は成った。
 俺の仕事もこれで終わりだ。

 安堵して、里に帰ろうと思っていたら、目の前の忍びがこちらに向いた。
 一瞬、驚いたが何のことはない。
 俺がここにいるとも思わずにただ振り返っただけだ。
 心配する必要などない。

 だが、それとは別に俺は目の前のこいつの笑みを見て不思議に思った。
 まるで、目の前で起きた愚かな喜劇を見たかのような嘲笑を。

「(どういうことだ? こいつは何故笑っている?)」

 死んだガトーに向けて笑うのは、心情的には分からないが理解は出来る。
 だが、こいつの目線は再不斬に向けてだ。

「(何故こいつはガトーではなく、再不斬に対して笑う?)」

 思い出せ。
 こいつはガトーのすぐ近くに潜んでいた護衛の一人。
 それは間違いない。
 今までのこいつの言動からいってそうであろう。
 なら、何故笑う。

 ふと、ガトーに関するデータを洗いなおす。
 性格、執念深く、ケチである。
 そういえば、ガトーに関する噂があったな。
 たしか、それは…………

 そこまで来てオレは一つの答えを導き出す。
 それ自体はオレが勝手に導いた推測に過ぎないが、信頼は出来る。
 たとえ、間違ってたとしても、特に困ることではない。
 そう結論付けるとオレは、既に立ち去った霧の抜け忍の後を追い始めた。


 後日、オレは里に帰り、火影さまに報告書を提出していた。

「ご苦労だった。それでどうじゃった?」

「はっ、ガトーカンパニーに対する潜入任務、及びにその社長ガトー暗殺任務の件について報告いたします」

「許す」

「ガトーカンパニーが火の国に与えたであろう証拠は既に提出済みであります。
 ガトー自身は霧の抜け忍、桃地再不斬によって惨殺され、暗殺の任は果たせませんでした」

「それはよい。他に報告は」

「ありません」

「本当か? なら、何故里への帰還が遅れた?」

「それは……どういう意味ですか?」

「桃地再不斬がガトーを殺したことはカカシからの報告で既に分かっておる」

「それならば別におかしなことは……」

「現地で傷を癒した後、下忍をつれて帰還したカカシよりも、
 単独任務である暗部のおぬしの方が遅く帰還するのはどういう意味じゃ?」

「……………」

「おぬしは一体波の国で何をしたのじゃ」

「ガトーカンパニーの社長、ガトーは霧の国の抜け忍、桃地再不斬の手によって殺された。
 それ以上のこともそれ以下のことも起きてはいません」

「…………そうか、分かった。任務ご苦労じゃったな。
 おって次の任務を下すまで、待機しておれ」

「はっ!」


「ん、柊じゃないか」

 火影さまへの報告も終わり、うちに帰る途中のオレに声をかけてきたのは、

「薄葉の姐さん」

 同じ暗部仲間の一人だった。


 暗部名、薄葉(ウスハ)。
 それ以外の一切の情報は火影以外知らない暗部。
 実力は暗部中一二を争うほどの強さを誇る。
 姿自体はよく暗部の詰め所で見られるが、その姿は毎回異なる。
 ただ、どんな姿をしてようと、腰に掛けられた薄い緑の文様が描かれた独特の暗部面は変わらない。

 そんな人が俺の背後から声をかけてきた。
 敵が何処にいるかを識別することにはある程度の自信はあるが、この人が何時何処から現れるかは気づけない。
 いや、一度気づいてしまってから、この人にはちょくちょく相手にされる。
 言っておくが、オレはこの人のことを姐さんというのは単に最初に出会ったときが女性の姿をしていたからだ。

「柊。今のオレは男だ。姉さんなんて呼ぶな
 だいたい、俺の正体を知っているお前にそういわれるのは何か嫌味に聞こえるんだ」

 そう、オレはこの人の正体を知っている。
 いや、正確には知らされたといったほうがいいか。
 知りたくもなかったが、半ば無理やり知ってしまった。
 これは俺のプライドが許せない。
 雀の涙ほどのプライドだが、知りたいことは自分で調べ上げるというちょっとした意地がある。
 だから、何時かはこの人が何を考えているかを調べるのがオレの目標だ。
 だが、今のとこそれが成功したためしはない。
 苦労して、探りたてても、実はそれがフェイクだったりするし、探らせてやった、てな事が数度ある。
 最近ではこの人の依頼でいろいろの情報を集めさせられている。

「で、なんのようですか? 薄葉の姐さん」

「やはり、嫌味か?」

「いえ」

 嫌味だ。

「まぁ、いい。ところで、カカシから聞いたんだが、お前、ガトーを殺ったんだってな?」

「いえ、ガトーを殺ったのは霧の国の抜け忍、桃地再不斬ですよ」

「ふーん、ところで、ガトーについての噂なんだけど、
 普段表に出ているガトーは本物じゃなくて影武者って言う噂があるんだけど、それはどうなんだ?」

「………………いいえ、あの大橋の上で死んだのは本物のガトーですよ」

「…………いや、まぁ、別にいいんだ。火影さまもそう思ってくれるだろう」

「……………………」

「さて、俺も依頼があるからここらで失礼させてもらうよ。また、後でな」

 そういうと、薄葉の姐さんの姿が消える。
 去り際の一言、「また、後でな」が嫌な感じだ。
 しかし、まぁ……これでいいか。


※1
遁法とは逃げるため隠れるための方法です。
そう考えると、水遁とか土遁とか火遁って、水・土・火を使って逃げる技じゃないかなと思ったり……(汗
このSSでは忍術と遁法は別物と考えます。


※2
狸隠れの術とは、木にへばり付いて気配を消す技らしいです。
原作では大蛇丸が実際に使ってたりするのですよ。第六巻。たしか。
原理は木にへばり付いて、さらに変化の術で木の表面に変化。されに気配を完全に遮断してじっとする。
ただそれだけです。
鶉隠れの術の木バージョンとでも思ってください。
忍びとしての強さは大蛇丸のほうがかなり上ですけど、
大蛇丸が遁法を専門でやってるとは思えませんから、錬度で言えば柊の方が上です。


調子のって書いてみた柊のステータス(Fate風味)

クラス:アサシン
真名:ヒイラギ(ただし、暗部の仕事をしている最中のみ)
属性:秩序 中庸

筋力  E   魔力  C
耐久  E   幸運  D
敏捷  B   宝具  ??

クラス別能力

気配遮断A……完全に気配を立てば発見することは不可能に近い。
       ただし、攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
       しかし、保有スキル「明鏡止水」を有しているため、ランクが落ちることはない。


保有スキル

遁法A…………逃げるため・隠れるための技術。
       気配遮断の能力と同時に使用すると見つけることはもはや不可能。

明鏡止水B……何時、如何なるときでも心を落ち着かせ、冷静にいる心のあり方。
       気配遮断のランクを落さずに済む。
       明鏡止水の心だ!! ド○ーーーーーン!!!!

心眼(真)C……鍛錬によって培った洞察力。窮地において、その場で残された活路を導き出す戦闘倫理。
       ただし、導き出される活路はもっぱら逃げる隠れるのどちらかであることが多い。

サイレントキリングB++
       視界が利かない場所でも、音だけで敵がどこにいるか判別し、相手に気づかれずに殺す技能。
       戦闘に直接加わらなかった場合のみ、相手がどんな忍術・何をしているかが判別できる。


宝具

無し


後書き

波の国編が終わってふと気づいたこと。
ここまでの三話って、プロローグ?
いや、なんかそんな気がして(苦笑
結構大雑把な感じで進めちゃいましたけど、次からはもっと詳しく出来たらいいなと思ってます。
まぁ、これまでとあんま変わらずに進めることになるかも……(汗

とりあえず当面の基準として、柊さんのステータスを決定してみた。
強さ自体はかなり低いけど、逃げる隠れる暗殺するなら最強クラスという設定です。
こんなヤツとかくれんぼは絶対にしたくないな。
結構ありえそうな感じにステータス決めてみたのですがどうでしょうか?

さて、ガトーについてですが……再不斬がガトーを殺した。これでいいじゃないですか。
他に変なことは一切ありませんよ。ええ、ないんです。

薄葉の姐さんの正体…………当面ばらす予定はありません。
もしかしたら、永遠の謎になるかも。
いやいや、スレキャラじゃなくて、オリキャラかも?


レス返し


>タカちゃん様
詳しい説明ありがとうございます。
柊が使う鶉隠れの術も変化した後、蹴られようが何されようが変化の術を解きません。
蹴られてる最中に柊が考えてること、「オレは石」×100

そのアニメってやっぱあれっすか? 三人組の忍者の話。
ん? 下忍三人組……似てるな……クロス…………オレには無理です。


>SP 80様
今回も新しい……というか既存の術をNARUTOっぽくしてみました。
他にもいろいろと手探り状態でやってきますのでよろしくです。

でも、「桶がわぬきの術」とかはどうしようもない。

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