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「前夜祭 中編(NARUTO)」

Pr.K (2005-01-21 17:24/2005-01-21 17:26)
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「う〜〜んと、キャッチセールスは近寄らないで欲しいな」

 初対面、しかもこっちは暗部衣装だというのにそんな台詞を悠々と吐く彼に対し私は


「・・・・・・違いますから」

 よくまぁ怒りを堪えられたと思う。


――――NARUTO前夜――――


 私の名前はカミシデ。苗字はない、ただのカミシデだ。
 生まれなど覚えていない、ただ火影さまに拾われ、火影の影となるべくして生きている。それだけの女。
 今回の任務は簡単だ。そう、相手がこの男でなかったならば。

 シメナワ。木の葉の黄色い閃光の二つ名を持つ、恐らくはこの里で最も最強に近い男。

 ここ3年以上暗部への勧誘を、時には力づくで断り続けた木の葉内最危険人物指定を受けたこの男の説得。
 ついに私にお鉢が回ってきたというわけだ。肯かない場合は殺せという命令が、私の数人前まではあったらしいが今はない。
 人の命が無駄になるというのが理由。死体の処理は確かに面倒だろう。主にゴミ処理班が。

「じゃあ電気屋に出してたTVの修理が終わったの?」
「だから・・・・・・」

 どんな手を使っても、“色”を使ってもいいらしいが、

「僕眠いんだけどね。それに見たい番組終わったのに時間は今日はもうないし、明日また持ってきてね」

 ――何故かこの男だけは説得できる気がしない。

「・・・・・・本気で言っているのですか」
「ううん、君真面目みたいだから遊んでる」

 落ち着け、任務はこの男の説得だ。決して抹殺じゃない。クナイを抜く理由は何処にもないんだ。チャクラを練り上げて火遁の印を結ぶ必要も

「じゃあお休み。部屋の鍵は表から閉めといてね」

 ――とりあえずは豪火球でいいか。


         ◆


 この男は狂っている。

「酷いなぁ。リンスもう切れてるから明日買いに行かないと駄目なのに」

 チリチリにしてやった髪の毛を弄りながらも本人に傷がまったくないという時点でおかしい。自分が使える全力の豪火球だったのに、ここらへんは『閃光』と呼ばれるだけはあると思う。
 この時点で諦めて帰ってもいい、もう私の任務は失敗したも同然なのだから。
 無理だ。この男を『説得』出来るやつは恐らく伝説の三忍ぐらいの変人集団でない限りは不可能だろう。ならもう一つの任務を果たすしかない。

「――シメナワ殿「あのねぇ、布団とかそういったものが燃えていたら火事だよ火事。危ないじゃないか」
「実は火影「暗部なんだからせめて水遁とか家屋に実害の少ない術を使うべきなんじゃないかな?」
「是非おあ「あ〜あ、もうこんな時間だ。明日はカカシ君に祝いの品でも買ってあげようと思ってたのに・・・・・・暗部に料金請求していい?」


「いい加減にしてください! 話を聞く気がないのですか!!?」

「うん」

 ・・・・・・そんな簡単に答えられるとは思わなかった。

「だって君の話最後まで聞いたら碌な事なさそうじゃない「火影様が一度直々にお会いしたいと申し上げておられます」

 今度は仕返し代わりに私が中断してみた。しかめっ面が見れて気持ちいいが、なんだろうこの敗北感。

「やだよ面倒くさい。会いたいならそっちからこっちに来ればいいじゃないか。最近は書類に判子押すような事件しか起きてないわけだし」

 ああ、その通りだ。この男の理論でモノを言えばそうなるだろう……なんで分かってるんだ私は。

「――“申し上げておられた”だけですので」
「……ようは君の独断かい?」
「はい」
「真面目だね。君みたいな忠臣が多くいれば僕は必要ないでしょ」

 そうはいかない。仕事漬けだった火影様を喜ばせることが出来るとしたらこれくらいだし、これには多くの意味がある。
 風来坊なシメナワが自ら火影に馳せ参じる。それだけで、最近火影様の影を利用し色々とあくどい事をやっている連中にもアワを食わせられるかもしれない。
 私は彼らが大嫌いだ。この里にとって必要な力を持っていなかったら今すぐにでも首を狩りに行っている。
 もし火影様に影口を叩いているようなら、殺すだけでは済ませないが。
 そして私は火影様を敬愛している。これは愛情ではなく“畏敬”だ。何もなかった私を拾い、忍術というものを学ばせてくれた火影様がいなかったら、私は路地裏で体を売る以外に生きていけなかった。
 色の仕事がないわけではない。しかし、それすら忍務と思えば耐えられる。『生きるための金』の為とは違うと思いたい。
 だから、こういった手段をとらせてもらおう。


「カカシとかいう貴方の生徒の命と引き換えでは?」


「……ほぉ」

 手ごたえは、ある。
 もちろんこれは嘘だ。『写輪眼のカカシ』を捕えられるほど私は強くないし、そのような手を使ったら間違いなく何らかの処罰を受けるだろう。
 濃密度の殺気とチャクラが凝縮する気配。早く条件を提示しないと……


「――で、何処に」
「なっ……!?」

 緊張のあまりしてしまった瞬き、その数瞬の間に私の後ろから首に苦無を突きたてようとする手が伸びている。
 座っていた布団には欠片のしわもない。
 間違いない、この男はバケモノじみている。
 月明かりが反射して輝く黄金色の美しい髪がちらほらと見える。普段なら見惚れたかも知れないが、この状況ではそれは三途の河原に広がる死の草原にしかならない。

「早いとこ答えてくれない? 急いで助けに行かなきゃいけないんだけど」
「あなたは……!」

 木ノ葉を敵に回しても生き残れるのですか。そう言おうとして、その言葉の虚しさに口を紡ぐ。

「生き残れるさ」

 頬が驚愕の表情を形作る。

「前に似た様なこと言おうとしたヤツが居たから……暗部? 火影? 木ノ葉の里? 上等じゃないか、蝦蟇さん達呼び出して暴れまくれば交通機関を潰せるし、暗部二十人ぐらいなら楽に勝つ自信はあるよ」
「怖くないのですか」
「フフン、怖くない戦いなど、それは一方的な虐殺の場合に過ぎない。僕に虐殺趣味は無いからそんなことはしないし、その程度の怖さなんて、夏にうようよ沸いて来る蚊が耳に入ったときと同じぐらいの物だよ。……さあ、ラストチャンスだ、言え」

 ――駄目だ、恐怖で口が動いてくれない。
 終わり、か。


「……じゃ、もう寝るけど?」


 ――は?

「お休み…………くぅ」

 口の端がニヤニヤとしている……
 遊ばれた、そのことを自覚した私をサッカーボールキックを決めて外に飛び出した。カエルが潰れるような音が聞こえたが、火照ったこの身を冷やそうと池に向かう足を止められなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 顔を跳ね上げて水を払う、その拍子に視界に入った月がきれいで、少しだけじぃっとして見つめていた。
 なんという屈辱だろうか。あのような軽薄主義な男に軽くあしらわれたのは初めてだ。
 濡れきった体に目をやる。服が張り付いてラインが浮き出ているのがやや恥ずかしいが、誰も居ないみたいだから良しとしよう。
 よく考えたら、あの男は常に眠たげで、此方は色を使ってもいいといわれたからやや刺激的な服装をしていたのに、全く触れてこようとはしなかった。
 幼少期を歓楽街で過ごしたから慣れているのか、はたまた興味が無いだけか、それとも……
 やめよう、このままだとくだらない方向に思考が向いてしまう。あの男は、女としても良い男だが、付き合うには気力が居るし、人を不安にしかさせない人種なのだから――間違っても、そのような感情を抱かない方がいい。


「あのねぇ、隙多いよ君」
「――何故、ここにいる」

 チャクラで足から木にぶら下がっている理由はなんだろうか。そんなわけの分からないことしか思い浮かばない。
 なぜ、シメナワがここにいる。

「不思議そうだけど、気配ダダ漏れだし、近所でこういったことしそうな場所ってここしかないもん」

……迂闊だ。辺りを見回したら、ここ先ほどの家から数キロも離れていない。いや、コイツの家の周りが田舎なだけなんだが。

「なぜ追いかけてきた」
「……もしかして気付いてなかったりする?」

そう言って一枚の紙を渡した。

「……伝票?」
「そだよ。焦げた畳と散髪及びリンス代」

――呆れた、たった一枚の伝票のために追いかけてきたこの男は、本当に狂っているような気がしてくる。

「頼んだよ、せっかく願いを聞いてあげようって思ったんだからさ」
「ああ……?」

 なんだと。今、この男は何と?

「なんで驚いてるんだい?」
「……何故だ、何故いきなり承諾した?」
「君“何故”ってのが多いね……ごめん」

いきなり私の前に降り立ち、頭を下げてくる。水の中に靴が浸かっているが、平気なんだろうか。

「君真面目だからってからかい過ぎちゃったから」
「そのような理由なら、何故先方の時に承諾しなかった?」

「いきなり火遁とかぶつけてくるヤツと交渉するわけないじゃない」

――うちの暗部はよほどのバカだったらしい。そんなこと思っていたら、


「君は綺麗だし、っていうか好みだったりして……ね?」

 爆弾発言をかましてくれた。

「なぁっ……」
「ま、じゃあお休み」


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 それから先のことは全く覚えていなかった。翌日火影様に呼ばれたと思ったら、この男が真面目腐った顔で忠誠を誓っていて、私とこの男2人っきりの小隊という条件でいつの間にか交渉が成立していた。
 無茶苦茶だと思う、ありえないと思う。だが、


「駄目だ、死ぬなカミシデ! 君が死んだら、ここまで頑張った意味が無いじゃないか!!!」

 今では、私の手をギュっと握ってくれているこの男が、こんなにも愛おしい。


  ◆

「――シメナワ? 聞こえてるかしら……」
「聞こえているさ、君の声なら、聞き逃すかよ……!」

 ああ、始めてあった時はこうなるなんて思わなかったし、この男がここまで優しいヒトと思っていなかった。
 でもいつの間にか結ばれて、そして過ごした少しの間の蜜月が、その思いを証明してくれている。
 私の中のこの子も、きっと……

「子供の名前、思いついた…………」
「僕もだ! 2人で悩んでどっちがいいか決めよう! じいさんも考えててくれたんだぜ!!」

「――NARUTO、UZUMAKI」

「なると……?」
「ええ、私達には苗字が無かった。だから受けた迫害だってあるわ。……あなたはそんなもの吹き飛ばしてしまったみたいだけど」

 もう目が見えない、頬に落ちてくる水滴の心地よさが拾い上げてくれる意識が私の全てだ。


「自分が許せないものを吹き飛ばし、仲間を引き込み守るように渦巻く、大きな大きな鳴門……シメナワ」


この子、きっと強くなると思わない?


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 まぶたが落ちるこの瞬間だけはいつ見ても居た堪れない気持ちになる。
 火影であった昔から、それだけは変わることが無い。
 何故だ、何故ワシより若い者はすぐに死んでしまうのだ!

 そう、この男も。


「――爺さん。医者はなんて言ってた」
「……帝王切開をしても、胎児も危ないと。生きる力が、根源的な生命力が足りないそうだ」

 皮肉にも、九尾のチャクラは子宮にまで影響を与えていた。邪悪さを打ち消す為にカミシデが自分のチャクラを注いだおかげで侵食は止まっているが、一歩遅かった。
 九尾のチャクラを既に赤ん坊の生命力にヒビを入れており、帝王切開の後に掌仙術を使っても、恐らくは一生ものの障害が残ることは間違いない。


だからこそ


「……じゃあ、これはどうだ?


 無いものは、減らしたやつに補わせる!!!」


この男は、死地へと出向いたのだ。


普通に後書き


やっと試験関係が片つきました……その間に投稿したアレは大幅シーン追加中。忘れてください。
神父のたずなにスタンガン仕込み終わった(マテ)ので、次回はあっちでお会いしましょう。


しかし、なんでこの掲示板タイトル部分が文字化けするんだろう・・・・・・直ってなかった。

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