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「龍 第24話 (まぶらほ+リアルバウト+その他)」

太刀 (2005-01-08 16:10/2005-01-09 19:11)
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電源を入れパソコンを起動させる。
画面にログが表示されるが、直ぐに消え基本画面までプログラムが立ち上がった

「さて」

MOディスクを入れた女が、慣れた手付きでキ−ボ−ドを操作してデ−タを表示する。
画面に一人の少年が写し出された。
10代前半の東洋人。漆黒のジ−ンズ姿で肩にズサ袋をかけている。長旅を続けてきたのか所々に汚れが見える。
映像の横に少年の経歴が続いて表示された。

「神城ぼん太。ギルドに所属する6thクラスの傭兵。ギルドの間では『黒い閃光(ブラック・ライトニング)』の異名で呼ばれ、新人で今一番売り出し中と・・・・ 」

あからさまな偽名に苦笑した。
少年の姓は、特定の人間にとっては必要以上に警戒をもたらす威武を秘めている。
少年自身が何もしなくても、良からぬ考えを持って干渉してくる可能性もある。少年の姓が持つ意味を知り、なお手を出してくる相手は一癖も二癖もある古狸のような人物だ。
偽名でギルドに登録したのは、そのテの輩を相手にするのが嫌だったのだろう。

「約40日間、修行先で名乗っていた名前を使っているのだな」

別に持ってきたファイルに目を通す。九州に拠点を構える退魔士一族の家で一夏の間、過した事が書かれている。
偽名を名乗る時は、咄嗟に呼ばれた時でも反応できる名前でなければならない。大抵は自分の名前をもじるか、親しい友人の名を借りる。

「ギルドに所属して、僅か3ヶ月で6thまでランクを上げたのか」

女の口から称賛の声が出る。
ギルドは、全世界に支部を持つ人材派遣会社のようなモノだ。扱っている商品は俗に言う傭兵だ。
傭兵は年齢も性別も関係なく、ただ実力だけが求められる。
豊かな先進国では考えられないが、後進国の中では物心ついたら既にギルドの傭兵として所属している子供もいる。
世界的に見れば画面に映る少年の年代で、傭兵と呼ばれる少年・少女は珍しくも無い。
人道主義に反すると、声を高々に反対運動をする者もいるが、その日の食事にも困る国の人間からしてみれば、安全で裕福な場所から人命優先とデモを起こしてくれるよりも、その日のパンを援助して欲しい。
土地が痩せて農業に適さず、産業を興そうにも資金援助してくれる相手も居ない国の国民にとって、人材が総てだ。
彼等がギルドを選ぶのは、他に選択肢が無い生活環境の所為ともいえる。
傭兵として外貨を稼いでくれれば、他国から食料を輸入できる。
それにギルドを最も利用するのは、先進国の人間達だ。この世界には妖魔と呼ばれる、生きとし生きる者の天敵が存在する。

妖魔は生きとし者から流れでる、負の気が受肉する事で誕生する。理性も知能もないが破壊衝動と、生あるモノを憎悪してもしきれない本能のみで行動する。
一説には世界が、生と死を均等にする為に生み出したシステムなのではないかと学会で発表した学者もいる。
妖魔退治専門の機関が各国にも存在するが、お役所仕事に付きものの対応の遅さが欠点として挙げられる。
そこで出てくるのがギルドの傭兵だ。退魔士や埋葬機関と云った実力はあるが一般市民とは馴染みも薄く、中々と連絡がつかない連中よりも、少し大きな町に行けば大抵、支部があるギルドの傭兵を雇った方が早いのである。

ギルドには実力のパロメ−タ−としてランク付けを、所属している全傭兵に対して行っている。
誰もが最初は20thから始まり、依頼の成功率や倒した相手によりランクが上がっていく。
傭兵を続けていく内、仲間から異名で呼ばれるようになり、雇い主がそれを知っていれば、己が一流になったと考えてもいいだろう。大抵は4thを超えなければ異名を付けられる事はないし、異名の殆どは本人の知らないところで決められる。

「異名の所以は、チョンセン共和国での戦闘だったかな?」

共和国とは名ばかりの軍事独裁政権の国として有名なところだった。
今では、民衆が革命を起こし過去の名前としか残っていない。当時のメディアを騒がせた近年稀に見る大事件だった。

一般には報道されなかった映像を再生する。ノイズが混じった画像が画面の左端に流れはじめた。


「こちら、スコ−ピオンリ−ダ−。スコ−ピオン2応答しろ。繰り返すスコ−ピオン2応答しろ」

くそっ!狭い操縦席の中で男は悪態をついた。
男はチョンセン共和国が誇るA・S部隊スコ−ピオンの隊長だった。スキンヘッドに強面の顔に焦燥が浮ぶ。

「隊長!ダメです!スコ−ピオン4とも連絡が取れません」

右斜め前方を歩く部下から、不安が入り混じった報告を受ける。

「何がおこったのだ!?」

部下との通信を切って叫んだ。まるでわからない。今回のミッションも国の食料倉庫を占拠した連中の鎮圧だ。
馬鹿な民衆は我々と将軍の為に、馬車馬のように働けばよいものの生意気に「税率を下げてくれ、でなければ私達は冬を越せない」と民衆の代表と名乗る男が将軍の邸宅まで押しかけてきた。
将軍は不届きな男に怒りを表し、男の右腕を切り落とさせた。もちろん見せしめの為だ。

腕を無くした男を見た民衆の反応は、畏縮するどころか我々に対して石を投げつけてきた。
民衆が大人しく従うものと考え、出向いていた将軍に石が当たり、額が割れ流血した。
この事に怒り狂った将軍は、Rk−92サ−ベジ13機で編成された我が部隊スコ−ピオン隊に叛乱した民衆を反逆罪で死刑にしろと命令した。

銃一つ持っていない無力な奴らが、我等に抵抗できる筈もなく。数分も発たずに命令を完了した。
此処で一つの誤算が生まれた。
反逆罪で死んだ連中の中で運よく生き延びた一人が、半死半生ながらも何が起きたのか仲間に伝えると、連中は各地で武力蜂起してきたのだ。
スコ−ピオン隊は、その度に叛乱した罪人を裁いてきた。暗紅色の装甲に血がつく度に、反乱者達の悲鳴が耳についた。
まるで我等スコ−ピオン隊の強さを讃える賛美歌のようだと、部下の一人が言った。
その事を聞きつけた将軍も、その通りだとスコ−ピオン隊員全員に勲章を与え、より一層職務に励むよう激励した。
意気揚々とする我等は、何回目か数えるのも面倒になった鎮圧を行うべく出撃した。

「あの噂は本当だったのか!?」

今回の出撃の前に妙な噂が流れた。ギルドの傭兵が反乱者共に雇われたと云うのだ。
ギルドの傭兵は、報酬金と契約を裏切らない限り、誰にでも雇われる話は有名だ。
将軍は一度ギルドの傭兵を雇ったが、奴等は何もしなかったのに契約期間が過ぎたので報酬金を貰いたいと言ってきた。
将軍は「役立たずに払う金はない」と傭兵にキッパリと宣言した。
傭兵共は剣呑な目付きで「契約違犯すれば我々を二度と雇えませんが」と楯突いてきた。
将軍がそのような脅しに屈する筈もなく、スコ−ピオン隊の銃口を傭兵共に向け国外追放を命じた。
傭兵共は最後に「ギルドは契約を裏切った相手を許さない」と捨てセリフを吐いて逃げていった。
将軍とスコ−ピオン隊員達は、負け犬の遠吠えと相手にしなかった。

「隊長!スコ−ピオン3から通信です!」

3機1チ−ムで行動しているスコ−ピオン3からの通信回線を最大にして繋ぐと、戦闘音と思える銃撃と爆発が騒音となって木霊した。
たまらず音響のボリュ−ムを下げる。操縦席に設置されているスピ−カから、狂ったように叫ぶ部下の声が流れてきた。

「ちくしょう!なんだよアイツは!?なんで当らないんだ!?」

どうやらスコ−ピオン3は敵と交戦中だ。
通信が繋がった事も気が付かないのか、スコ−ピオン3の隊員達は此方の応答にまるで反応しない。

「ベイシャンが殺られた!く、くるな――――――ぁぁぁぁぁ」

サベ−ジ9号に乗っていたベイシャンの死を見た、サベ−ジ10号のオペレ−タは向ってくる黒い閃光に照準も定まらないまま、銃を撃ち続けた。

「ま、まるで・・・・・・・黒い・・・・・・光だ」

無茶くちゃに操縦スティックを引いた拍子に、外部スピ−カ−とオ−プンチャンネルの通信が開いた。広範囲に今のセリフが響き、次の瞬間サベ−ジの爆発音が聞こえた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

スコ−ピオンリ−ダ−に残りの2〜4号の隊員達は、蒼白の表情を見せた。結局、敵の情報を何一つ入手できなかったばかりか、抵抗らしい抵抗もできずにスコ−ピオン3の3機が殺られたと分かったのだ。
スコ−ピオンリ−ダ−は此処から前方、数キロにある湿地帯で罠を張り、迎え撃つと動揺を隠せない部下共に命令した。
敵が何者かスコ−ピオンリ−ダ−は考えた。短時間の間に虎の子であるサベ−ジが9機も破壊された。
残機は自分を含め4機。今の状況で分かるのは正体不明の敵が凄腕だという事だけだ。
最後の通信で「黒い光」との断末魔の意味は、高速移動する黒色に塗装されたA・Sを見て叫んだのであろう。
想定敵戦力は同型機6機以上か、米軍で開発中と噂されるM9ガーンズバックのプロトタイプを実戦投入してきた可能性もある。
どちらにしろ、この湿地帯の後方は崖で背後からの襲撃はない。ガスタ−ビン・エンジンのデコイを湿地帯の中心に設置して、左右に別れた2機と正面に隠れた2機で、誘い出した敵に集中砲火を浴びせる作戦だ。
チャフを空中にばら撒くだけばら撒いたので、遠距離ミサイルは使えない筈だ。変わりに此方も機体が直接接触しない限り通信不能になったが、この際しかたがない。

空から雨がポツポツ降ってきた。緩やかに降り出した雨が次第に激しくなっていく。
スコ−ルのような豪雨になるまで数分と係らなかった。
操縦レバ−を握る手の体温がいやに熱く感じる。各種のセンサ−が豪雨によって本来の半分程度しか役に立たない。
モニタ−に表示されるレ−ダ−を凝視していると、サベ−ジ3号が潜んでいる方向から爆発音が轟いた。

「なに!?」

慌ててレ−ダ−を見直す。やはり何も映っていない。
驚きが醒める間もなく今度は、サベ−ジ4号が狙撃ポイントに選んだ小山から爆発音と火の手が上がった。

「た、隊長〜」

最後の部下が恐怖に駆られ、持ち場を放棄してスコ−ピオンリ−ダ−が隠れている穴までやって来た。
サベ−ジ2号が後ろからワイヤ−ロ−プで直接回線を繋いでいる。

「なんだオマエは!?」

回線から幽霊を見たような悲鳴が聞こえた瞬間、背後に居るサベ−ジ2号が爆発炎上した。
豪雨の中でサベ−ジの機体が燃えて崩れていく。

「どんな攻撃を受けたんだ!?」

ミサイルが直撃でもしない限り、あそこまで破壊されない。カエルの尻にストロ−を挿しこみ、空気を吹きこんで内側からボンッと弾けるような最後で破壊された。
危い!スコ−ピオンリ−ダ−は正体不明の敵を罠に引きずり込もうと誘いをかけたが、自ら逃げ場のない場所を選んだのではないかと後悔した。
機体の上半身を起こし、穴から這い上がろうとサベ−ジの足が大きく動いた時、正面スク−リンに黒い光が走った。
黒い光はサベ−ジに取り付くと、頭まで一瞬に昇り詰め、人間でいったら鎖骨のあたりに位置するパネルを抉じ開けた。
B5版の雑誌サイズのパネルの中には、ハッチの強制開放レバ−がある。
黒い光はレバ−を握ると、安全ピンを弾いてぐっと右に回した。

「はぁ!?」

スコ−ピオンリ−ダ−が間抜けな声をだした。
サベ−ジがたちまち緊急停止に切り替わり動きが止まる。圧縮空気が吹き出して、カエルを思わせる大きな頭部がスライドした。
首の後ろのハッチが開く。人間一人がぴったりと納まるコクピットには、スキンヘッドの男が、黒い光の正体を見て目を丸くしていた。

「子供だとぉ・・・・・・・」

絞るように出した声は、表現しがたい感情が含んでいた。
漆黒のジ−ンズに身を包んだ少年が、腰から手榴弾を取った。安全ピンを抜いてコクピットに投げ込み、ハッチを勢いよく殴りつける。ハッチが少年のパンチによって強引に閉鎖させられた。
スキンヘッドの男が手榴弾に気付き、何とか捨てようと手を伸ばした瞬間、サベ−ジ1号は内側から爆発した。


「機体性能が戦力の決定的差じゃない」

A・S13機を相手に勝利を収めた少年が、吐き捨てるように言った。
なんて御粗末な腕前だ。圧倒的有利な条件でしか戦闘を行った事がないのでスコ−ピオン隊の操縦技術は並程度だ。
それでも普通の人間にとっては脅威なのだが、少年程の実力を持っている相手には通用しなかった。
サベ−ジの長所と短所は戦友のカシムから聞いていたが、こいつ等は長所を生かさず短所のみ見せていた。いくら高価な機体でも乗るオペレ−タ次第で総合戦闘力が幾らでも変わる。
戦友が乗ったサベ−ジ相手なら、少年が先程見せた荒業は使わなかった。いや、使わせて貰えないだろう。戦友の凄腕を知っているだけにスコ−ピオン隊員が近代最強兵器に、おんぶで抱っこ状態だったのが、よけい気に食わない。

「最強部隊がこの程度の国だから問題ないと思うけど、先生の方は大丈夫かな?」

少年が年相応な表情を覗かせ、別行動している兄弟子の安否を・・・・・気にするまでない事に気付き、変わりに「やりすぎてないかな〜」と別の意味で心配した。


同時刻、将軍官邸に2mを越す大男がミサイルランチャ−を左肩に担ぎ、右手にはマシンガンを持って大暴れしていた。
チョンセン共和国将軍、最後の言葉は

「ば、馬鹿な!サベ−ジ13機が全滅だと!?ギルドの傭兵は化け物か!!!」

と叫んだのを革命に参加したルポライタ−が記事に残している。


「この戦闘以降、神城ぼん太はブラック・ライトニングの異名で呼ばれるようになったと・・・・・」

黒一色のぼん太が戦場を駆け抜ける姿は、一筋の閃光だったと見た者は語っている。

「ん?」

なにかおかしい。女はデ−タを見ていて、違和感に気がついた。

「そうか、剣を使っていない」

少年は最も得意とする武器を使わずに、A・S13機を相手に手榴弾と生身で挑み勝ったのだ。
普通なら誰も信じない話だが、女は「流石だな」と考えていた以上の実力を秘めた少年に今までよりも更に強い興味を持った。
鬼神と呼ばれる老人から教わった剣術の威力は女も知っている。何故なら鬼神の娘と一時期パ−ティ−を組んでいた過去があるからだ。

女は知らなかったが、少年は旅に出る前。神威の拳を教わった師、東方流玄に旅の間は剣術の技を使うなと厳命を受けていた。
異界で一度だけ、剣術奥伝・奥義を使用したが、あの時は仕方が無かった。対峙した相手が強すぎたのだ。

「他にはBクラス魔獣ヒドラを筆頭にサイクロプスにオークやゴブリンそれにレイス(邪霊)まで倒している。これなら6thまでランクを上げる筈だ」

短時間で、これだけの実績を挙げた傭兵はそうそういない。それに一緒に旅をしている男の経歴も面白い。

南雲慶一郎、現在3thランク。パニッシャ−の異名で恐れられる男だ。
実力的には1thランクなのだが、気に食わない依頼人の仕事は絶対に受けず。何より金で動かせる男ではない。
ギルドに所属したのも、世界を旅するならばギルドの身分証明はパスポ−トよりも有効だからだ。滞在期間や面倒な手続きも「ギルドの傭兵で仕事にきた」と言えば入国するにもスム−ズに進む。
こんな簡単に入国審査がすむにも理由がある。
ギルドの傭兵は顧客の信用を無くすような真似はしない。金で雇われた傭兵が信用を無くせば、捨て駒扱いされるのが分かっている。
仮にギルドの傭兵がテロリスト紛いの事を仕出かしたのなら、待っているのはギルドによる粛清だ。
ギルドの傭兵に対する信頼度は、鉄の掟によって築き上げられてきた。


ギルドに登録する際、契約書に記載する事項は二つ

『依頼人が裏切らない限り、絶対に此方からは裏切らない』
『世界魔術師協会が加盟国に指示した、<秩序法典>を犯さない』

・・・だけだ。
国連は張子の虎だが、世界魔術師協会は違う。各国の指導者が苦々しく思いながらも頼らなくてはならない組織だ。
ギルドは世界魔術師協会の下位組織と揶揄されるが、実際その通りなのだ。
国連に加盟しなくても、世界魔術師協会に加盟しない国は無いと言われる世界最大の組織である。


コンコン

ドアの外からノックをする音が聞こえた。女が入れとパソコンの前から動かずに言うと「失礼します」と一人のメイドが一礼し入ってきた。 

「お館さま。会議の時間です。皆様方も席についていらっしゃいます」

「そうか」

女は最近、母親から家の家督を継いだ。夫も居るが、あの男は家に収まるようなタイプではない。
副総裁としての地位に据えたが、男がその気になれば何時でも家から飛び出すだけの実力がある。
金でも権力でも力でも男を縛る事はできない。あの男は相棒と一緒に飛空挺(古代遺跡で発見される、力場を張って空を翔る船)で誰よりも速く翔ぶ事だけを望んでいる。
女が家督を継ぐ時の条件に、完全無欠の花婿を迎えろと家の伝統で決められていた。
母もそうしてパリに来た父を捕まえた。結婚はしなかったが二人の間に子供が生まれた。
その子供が女である。
女は伝統など如何でもよかったが、種馬に選んだ男は一人だった。
色々と策を練り、女は男を捕まえた。契約の形で結婚して子も生した。女が是ほどまで事を急いだのは、不治の病が女を蝕んでいたからだ。
現代の医学では完治が不可能と言われた病だが、男の喧嘩友達に『盾』と『符』を所持する者がいた、その二人が持つ『盾』と『符』の力によって女の病は完全に治療された。
男は契約が切れても女の基を離れず、女に向かい

「海賊の用心棒にならないか女王」

とさえ言ってきた。
女は男を海賊と呼び、男は女を女王と呼んでいた。その呼び名は、名は体を表すというセリフにピッタリの表現だった。
男は相棒であるダイアナ・イレウ゛ンスと二人だけで、女と出会う前まで自由に飛んでいた。
仲間と呼んでも差し支えない『盾』と『符』の所持者達にも言った事の無い言葉で女を誘った。理由は女には分からなかったが、男が自分の船に相棒以外の人間を乗せる事が、どれほど名誉な事かだけは分かった。
あの『盾』と『符』すら得られなかった言葉だ。

女は自分の命が助かるものとは考えていなかった。それに生まれたばかりの娘も幼かった。
男と一緒に行くのはいいが、子どもは連れていけない。
何しろ、二人が目指すのは必ず戻れる保証はない、未知の領域だからだ。
男と女は好きで行くからいいとして、娘はまだ自分で選択できるような歳ではない。友達も必要だろうし、万が一の場合に、子どもを巻き添えするのは目覚めが悪い。
だが、二人の考えを他所に男と女は5歳になった娘を母に預け、旅発たなければ行けなくなった。
そして、長い旅から帰ってきた。


「セレスはどうしている?」

屋敷に帰ってきて一度しか顔を会わしていない娘の事が気になった。

「先代様と稽古中でございます」

「母には苦労をかけているな、わたしは・・・・・・」

娘のセレスティンを母に預けて7年以上の歳月が流れた。
女も好きで娘と離れていた訳ではないが、親子のコミニケ−ションなるものは殆どやっていない。
母の代から家に仕えている者から言わせれば、セレスティンは若い頃の母に瓜二つと言ってもいい程、似ているらしい。
女の髪は燃えるような赤髪だが、娘のセレスは母に似たキラキラと輝く金色の髪。容姿も母の若かりし頃にそっくりだ。隔世遺伝とも言えばいいのか母親である女よりも祖母の外見を受け継いでいる。
性格も祖母譲りだ。性格を形成する時期に、娘から離れていた事もあり一緒に暮らしていた祖母の気質を見事に受け継いだ。
だが、瞳の色がセレスティンを女の娘だと語っている。青みがかった灰色の眼が・・・・・

「それも、これも星詠みのくだらない占いの所為だ」

娘の元を離れた発端を思い出し、腹をたてた。
あの星詠みの占いは外れる事はないが、変える事はできる。男と女の旅の目的はソレを変える事だった。
星詠みは言う「ある種のモノの意思はそれ自体が運命のように働くことがある。あるレベルの力を持ったモノがそれをやろうと決意したことは、一度や二度防いだところで遅かれ早かれ現実になる・・・・・・が、例外も無論ある」

大神や最高位の四大熾天使。それに七大魔王すら絡みとる因果の鎖を断ち切れるのは、運命と呼ばれる因果の輪から外れた存在の力を用いればいい。
それが出来るのは、この世を創造すると同時に消えた存在が、己の分身として生み出した12の秘宝を手にした者だけである。
女の夫は12の秘宝の一つ『槍』の所有者だった。

「あまり、待たせる訳にもいかない。そろそろ行くとするか」

女は考えを止め、椅子から立ち上がる。
メイドが差し出してきた上着に袖を通した。パソコンの電源を切る前にメイドに画面に写る少年を見せた。

「月詠、頼みたい事がある」

「なんでございましょう」

月詠と呼ばれたメイドが女の言葉を待つ。

「この少年をセレスのバ−スデ−パ−ティ−に招待する」

月詠は顔にこそ出さないが、内心驚いていた。
画面に写し出された少年は傭兵だ。傭兵を雇わなくても当家には海上騎士団ブル−リボンが居る。それに月詠が指揮する第一装甲猟兵侍女中隊がパ−ティ−会場を運営および警護にあたる。
月詠はMMM将校の中で大佐(ハウスキ−ピンクメイトロン)の階級を持ち、MMMの中で一目おかれるメイドである。
月詠に匹敵するメイドは現在、MMMの中には見当たらない。
今の月詠には及ばないが、才能ならばロ−エングラム家に仕える第二装甲猟兵侍女中隊に配属が決まったシンシア・フロストか、第五装甲猟兵侍女中隊のリーラ・シャルンホルストの両名の名前がでてくる。

二人ともムンスタ−家政学校始まって以来の才媛と、将来を期待されているが、リ−ラが配属する第五装甲猟兵侍女中隊は13年前から主人を持たない。
MMMの中でも疑問視されているが、MMM上層部は「問題無い」の一点張りで外部に情報を一切公表しない。
現在、ドイツに拠点を構えるオランダ出身の資本家の下でメイドをしているが、資本家を主人と認め働いている訳ではない。
資本家の老人も、第五装甲猟兵侍女中隊がメイド技巧を高める為に自分の基に居る事は承認している。
老人はMMM副会長だけあって第五装甲猟兵侍女中隊以外の部隊から、老人を主と誓約したメイド達が100人は居る。そちらのメイド達が主人の性欲も含めた相手をしている。

第五装甲猟兵侍女中隊の戦力は本部小隊一個、猟兵小隊4個、装甲猟兵小隊1個、装甲小隊1個、捜索小隊1個、工兵小隊1個から成っている。
通常の中隊編成の倍に匹敵するメイド達が日夜、家事遂行能力と戦闘能力の向上に励んでいる。
様々な憶測が飛び交う第五装甲猟兵侍女中隊だが、月詠は真実に近いと思われる噂を耳にした事がある。
誓約前だが彼女達には、既に主人が居て月に一度。主人の日常を映した映像を見るという。
噂の域を出ないのは彼女達、第五装甲猟兵侍女中隊の一人も映像の事を口にしないからだ。


「わかりました」

嫌味にならない洗練された動作で月詠は頭を下げ少年の名前を聞いた。
月詠が誓約した相手は女の娘であるセレスティンだが、主人のセレスティンに危害が及ばない限り、女の命令は聞くしかない立場でもある。

「名は神城ぼん太・・・・・・・・・分かっていると思うが、むろん偽名だ。本当の名は式森和樹。式森茜の名代でセレスのバ−スデ−パ−ティ−に参加してもらう」

「しき・・・・・もり?あの式森でございますか!?」

はじめて驚きの表情を見せた。月詠がセレスティンの教育係件メイドとして仕えるようになってから知った、ある一族の宗家を司る家名だ。
当家とも親交が深い。女が居なかった7年間。セレスティンは誕生日に必ず届く茜のプレゼントを心から喜んでいたのを月詠も知っている。

「そうだ。それにセレスとは一度、会った事もある」

本人同士は忘れているかもしれないが、和樹とセレスは7年前に出会っている。
交わした約束も多分、忘れているだろう。が、女はあの時に言った娘のセリフを覚えている。
折角7年振りの娘の誕生日だ。誕生日プレゼントは趣向が凝った方がおもしろい。


――――ゾクリ

女難のニュ−タイプ
式森和樹は眉間をピ−キンと光らせて、慌てて周囲に注意を払う。
一瞬、脳裡にリボンで身体をグルグル巻きにされた自分が見えた。

「この感じ・・・・・・シャアか!?」

「お客さん?それはシャアではなく鍋ですが」

「ゴメン、なんとなく言いたかっただけだから」

店の前で騒いて、店員が注意してきた。
和樹が商品を手にしている店は、国境沿いにある町の雑貨屋。旅の途中で壊れた道具を買い直す為に、品選びをしていた。
数千人単位の町だが人の出入りが多いので五月蝿いくらいに賑わっている。

「和樹、俺は食料を調達してくる」

一緒に旅を続ける南雲慶一郎が野菜や肉を売っている露店へ向った。
宿は取っている、此処で別れてもはぐれる心配もないので「はい」と簡単に応えた。
離れていく慶一郎は、遠ざかっても頭一つ分は背が高いので、よく目立つ。

「先生。気にしてないようだな」

ポツリと呟いた。クタニエが先生に宛てた手紙の内容は知らないが、慶一郎の態度に変わる所は見られなかった。

「あれから、もう一週間か・・・・・・・」

和樹は一週間前に別れた舞穂達を思い出した。


うっすらとした、青色の視界。
ときとぎ気泡が浮び上がっていく、歪んだ光景。
その向こうに、眼鏡をかけた女の顔が、ゆらりと見える。
いま和樹が身を横たえているのは、特殊な液体の満たされた大きな浴槽だ。
魔導都市ノアの医療室で、倒れた身体を癒していた。

「もう回復している。ほとんど死に体だったのに・・・・・」

眼鏡をかけた女性。神官長クタニエが和樹の回復具合に唖然とした。現代医学の常識を打ち崩された医者のように取り乱しはしないが、少なからず医学の心得もあるぶん動揺を隠せない。

「和樹君、治ったの?」

浴槽の中で浸かっている和樹をガラス越しに覗いている舞穂が、本を片手に医療機を操作しているクタニエに和樹の状態を聞いた。

「大丈夫の筈です。ちょっと待ってください」

クタニエが古代語で書かれたマニュアルを見ながら、数十個はあるボタンを次々と押していく
密閉されていた浴槽の中に液体が、除々に流れ出していった。やがてすべてが廃棄され透明な浴槽の蓋が開く。

「どこか、異状はありませんか?」

「・・・・・・・いえ、疲労も、ほとんどないです」

和樹は身を横たえたまま、手を持ち上げて拳を握ったり開いたりした。
浴槽の淵に手をあて身体を起こす。残った液体も身体から滑り落ちていく。10代前半の少年とは、とても信じられない程、鍛え抜かれた肉体があった。
着痩せするのか、服を着ていた時よりも大きく見える。右胸を背後まで貫いている古傷と、右肩に彫られた片翼の刺青が印象に強く残る。

クタニエは裸身の和樹を見ても、少しも慌てず。瞳孔の動きや舌の色、脈拍を測った。
慶一郎以外の男性は人として見ても、異性として見る事はなかったクタニエらしい行動である。
和樹自身も女性から裸を見られたくらいで慌てるような、感覚は持ち合わせていない。
幼い頃から、妹の沙夜と一緒の風呂に入っていた男だ。

それ以外でも幼稚園時代に山瀬千早に山瀬神代の姉妹。
雨で濡れた身体を温める時に風椿玖里子。
剣術修行の後に鬼塚美雪
九州神城家で修行を終え、汗を流す時に神城凛。
一族が集まる会合の時に防森の陽之森陽子、月森香倶耶、星森星華、影森沙希。
無理矢理、子供の和樹を風呂場に連れ込んだ紅尉紫乃。
香港で偶然、風呂場で出くわした烈華鈴。

ソラで言っても13人は名前を言える。

「はい、和樹君」

舞穂が液体で濡れたままの和樹にタオルを手渡してきた。

「ありがとう舞穂ちゃん」

鬼塚家で下宿していた時は、毎日のように一緒に風呂に入っていただけあって舞穂に裸を見られても、微塵も気にしない。
受け取ったタオルで身体を拭く和樹に、クタニエが重要な話があると医務室の壁に嵌め込まれた水晶に手をかざした。
平面に加工された水晶に、数字と理解不能な記号がびっしり写しだされた。
服を着終わった和樹が、水晶の文字を見たが始めてみる記号だ。

「これは、皇とカレルハ−ティル様との闘いで計測された数字です」

クタニエには記号と数字の意味が理解できるようだ。感心する和樹に続いて話を進めた。

「途中で皇の氣が爆発的に増大しています。リミット・ブレイク『限界超越』でしたか?
普通の人間がこれだけの力を身に注げば、一秒も持たずに自滅するのですが・・・・」

少なくとも数時間以上、和樹はリミット・ブレイク状態で闘っていた。

「分かった事があるのですが、リミット・ブレイク中は問題ないのです」

リミット・ブレイクは常人が数万回発狂死するような痛みに耐え、烈一族の秘義で脳に刷り込まれた言霊(キ−ワ−ド)である。人体が宇宙と繋がる道と言われる7番目の門サハスラ−ラを開けて外部から力を取り込む。
取り入れている最中は身体の限界点自体もあがっている。ロ−ルプレイングに例えれば最高レベル99と決められているのを無視して、最高レベルを1000まで上限をあげるのだ。
ステ−タスもレベル1000の数値に上がっている。そんな状態でレベル99に戻れば空気を入れすぎた風船みたいに破裂する。
リミット・ブレイク状態が長ければ長い程、空気が多く流れ込む。
数時間以上も体内に力を取り込んだ和樹は、リミット・ブレイクが解除された瞬間に溜め込まれた力が暴走する筈だった。

「封神剣様の付属効果によるエナジ−リフレッシュが大きかったのです」

和樹の表情が瞬間、能面のように無表情になった。
魔導都市ノアに来るハメになった元凶にして、アトランティス文明が持っていた総ての魔導技術と神龍王ナ−ガの御霊によって創られた至上最強の剣。現在、和樹の心臓を鞘として眠っている。
その実態は厄病神と大差ないと和樹は思っている。
封神剣を使えば、リミット・ブレイクの反動を抑える事ができても、今度は封神剣を心臓から引き摺り出さなければいけないのだ。
自分の心臓をスプ−ンで抉り出せるのなら、試してみればいい。
他人が迷いを見せずに刺してくる痛みなら耐えられるが、自分でジワジワと心臓を掴みとるような苛虐趣味は無い。

「その御様子では、皇が封神剣様を使われる事はありませんね」

ふぅ〜と溜息が洩れる。クタニエにとって封神剣は信仰している宗教の祭器だ。その祭器が主と認めた者を皇として仕えるのは、神官長たるクタニエにしてみれば、しごく当然の事だった。

「金輪際御免です」

皇として仕える和樹の言葉は、これ以上ない位キッパリ言い切った。

「ですが皇・・・・・此れからはリミット・ブレイクを封印されるのですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

Aクラスまでの魔獣相手なら今の力量でも問題ない。Sクラス相手でも飛天流剣術を使えば撃退できる。だが、SSクラス相手になると魔法を使わなければ勝利するは難しい。
SSクラスが早々居るわけないのだが、13年と短い人生の中で既に2回遭遇している。
もし3回目の遭遇があったらどうする?逃げるか?闘うか?
何もなければ前者を迷うことなく選ぶ。SSクラスから逃げるのは恥ではない。
――っと言うかアレは人間が勝てるような生易しい相手ではない。
逃げられるものなら、神龍族の姫龍カレルハ−ティルとの闘いだって逃げていた。

だが、後者の闘いを選んだ時は、絶対に逃げられない理由がある筈だ。
ならば手段は多い方がいい。

「封印はされないのですね」

クタニエが和樹の顔を見て、予測していたように言った。

「そんな皇に、面白い物をお見せします」

しかたがない〜と未来から来た万能猫型ロボットのように、後ろに置いてあった物を取り出した。
クタニエが手に取った物を見せるよりも速く、舞穂がドアを一枚、和樹の前に置いた。

「どこまでもドア〜」

舞穂が嬉しそうに説明を始めた。

「このドアは亜空間に繋がっていて開けても開けてもドアが無くならないの−」

「それ・・・・・意味があるの?」

「ないよ−」

舞穂は開けては消えて、新しく現れるドアを際限なく開け続ける。
和樹はむなしいツッコミを入れたが、軽くかわされた。
ある意味すごい魔導具だが、コレを如何しろと?確かに面白いといえば面白いものなのかもしれないが・・・・・・・

「違います!見せたい物は此方です!」

握りこぶしより少し大きなオ−ブ。中心に猫の目を思わせるスゥ−と縦の線が入っている。

「これは無彩色の瞳(モノクロ−ム)と言います」

アトランティス時代に創られた魔導具の一つで、対象者の力を封じる為に使われていたものだ。
封じるといっても総てでは無く、対象者が持っている特殊能力や技巧の一部しか封印できない。使えるのか使えないのか微妙な魔導具だが、対象者を選ばない所が一番の注目点だ。
神族や魔族それに、どんな魔獣の力も一部分封印できる。
唯、欠点として上げられるのが、対象者が自ら望まない限り使えないのだ。それも一回使用すれば壊れる消耗品。
アトランティスの魔術士たちも、初めは一部分でも力を封じられるのならと息巻いて研究に励んでいたが、完成したものは、どう手を加えても対象者が望まない限り発動しない。
戦っている相手に、力を自分から封印して下さいと言って誰が封印する。
当時、戦争中だったアトランティスは無彩色の瞳を数個創った時点で開発・生産を止めた。

「アトランティスの魔術士達は『無彩色の瞳』の本当の使い方を、創っておきながら理解できなかったのです。この魔導具は本人が望まなければ力を封印する事は出来ませんが、本人が望めば限定的封印ができるのです」

リミット・ブレイクを使って、発動状態の負荷の反動に耐えられる有余時間は3分間。
3分間ならリミット・ブレイクを使用しても身体が耐えられる。1日1回だけならの話だが。

「光の巨人と同じ、時間制限付きになると言う事ですか・・・・・・・」

「光の巨人?何の事でしょうか?」

テレビとは縁のない生活を送っていたクタニエに、光の巨人ネタは分からなかった。
だが、3分間だけでもリミット・ブレイクを使えるのはありがたい。
リミット・ブレイクを使わなければ倒せないような相手には、必殺技で、短期決戦を挑むので3分間でも問題ない。
それに、リミット・ブレイク中の記憶も行動もはっきりと覚えているのだが、まるで自分が自分でないような感覚になる。興奮剤と鎮静剤を致死量ギリギリまで打たれたような感覚だ。
あの時、リミット・ブレイクが解けたのは正直、助かったと思っている。
和樹はクタニエから無彩色の瞳を受け取り、直ぐに使った。


「地平線が見える」

医務室から出て外の風景を目にしたら、自然と口からこぼれた。
此処は魔導都市ノアの内部、外観は箱舟で全長1500mはある超ド級戦艦。
大きいと言えば大きいのは確かだが、地平線が見える筈はないだろうと目を擦った。

「変わらない・・・・・・」

川が流れ、緑豊かに木が生い茂り、動物たちが放し飼いされている。ここは本当に船の中なのか、どうにも自身が持ってなくなってしまうような無茶苦茶な環境と広さであった。

「魔導都市ノアの内部は、亜空間に固定された直径約3500キロほどの球形空間です」

口を半開きしている和樹に、クタニエが説明してくれる。和樹が治療中の間に魔導都市ノアのスッペクを調べていたのだ。
直径3500キロって確か月と同じ大きさだったなぁ〜と、あまりにも大きなスケ−ルに感覚がついていかない。
そんな和樹を知ってか知らずかクタニエが説明を続ける。

魔導都市ノアの動力炉は永久機関で動いている。エネルギ−量に換算すれば恒星3個分に匹敵する。
アトランティス帝国20年分の国家予算を費やして完成させた唯一の動力炉だ。
だが、アトランティス時代で永久機関が動く事はなかった。何故なら起動に必要な鍵でありコアである封神剣の魔力を満たす魔法使いがいなかったのだ。
複数から魔力を注げばいいと意見が出たが、魔力には其々、魔力波動値がある。
生物でいえばDNAみたいな物だ。血液を輸血するのと同じように、魔力も似ている物はある程度取り込めるが、完全に一致したものなど、この世に一つもない。
どこの世界に、一人で一億人以上の魔力を持っている人間が居るというのだ。この世界に一人いたが・・・・・・
それらの訳もあって、創ったものの起動させるには至らなかった永久機関だ。

ノアの表面は総てアダマンタイン。四重複合装甲で守られている。水素爆弾が直撃しても傷がつかない柔軟性と硬度を持つ。
人が・・・いや、生き物が生きるに必要な機能は総てそなわっている。
アトランティス人は魔導都市ノアを戦いに負けた時、エクソダス用に造った感じがいなめない。
施設だけでも、学校、劇場、音楽室、広大な訓練ル−ム、病院、保育所、ets・・・・
自然環境とは独立した内部完結型の給俳システム、排水工場をかねる精霊循環炉、酸素供給システムの一環でもありドラゴン達が住んでいる森林地帯。
ユ−ラシア大陸の広さはある穀物園。
それら農作物を管理する魔導人形パペットが2億体。
常時20億人の人口を賄えるだけの食品生産能力はある。


搭載武器

主砲  黙示録砲(アポクリプス)
箱舟の先端に取り付けられたノアが誇る最大最強の魔導砲。
ありあらゆる結界、防御陣、バリア、魔力を無効化し着弾地点を中心に半径数キロの空間を作り上げ、その内部で反物質を練成、爆発させることにより防御方法を無効化されている敵に圧倒的な破壊エネルギ−を与え。着弾10秒後には空間ごと高次元に転移される。
アポクリプスチャ−ジまで1時間かかる。あまりの破壊力の為、普段は封印されている。


副砲  雷神の槌(ト−ルハンマ−) 
方舟の船底に取り付けられている左右に4本の、発射砲から電撃を中心部にある避雷針へ向けて放ち、その電撃を収束し破壊方向を示して全エネルギ−を放出する。
その破壊力は10MeV(メガ・エレクトロンボルト)に達する。

600mm追跡型魔導魚雷−2400門
対艦ミサイル−120門
巡航ミサイル−100門
対空機関砲−18000門


『搭載機』

魔導兵(ゴ−レム・戦闘能力は最新鋭A・Sを凌駕する)2000体
竜牙兵(拠点占領用人型タイプ)30000体

それらの弾丸・エネルギ−は、ノア内部の生産工場で72時間フル生産すれば満タンになる。


「これらに加え、魔導都市ノアは次元飛翔システムが備わっています。この船が持つ最大の特徴です」

都市機能を持つ要塞に、強襲揚陸艦みたいな戦い方されたら防ぎようがないなと和樹は、話の半分を聞き流しながら思った。
どれだけ結界と防衛陣を張ろうと、別次元から敵の首都に現れて直接攻撃。敵が体勢を立て直して、反撃してくれば部隊を速やかに回収して次元移動すれば追跡は不可能。

「・・・ですが、次元飛翔システムの解析には、まだ長い時間が必要なのです」

世界を征服できそうな戦力に頭がクラクラする。
世界征服か・・・・一瞬、考えるがガラじゃないし、何より面倒臭い。
武力統一する事は可能だろうが、どう上手くやっても武力で征服された民族のおきまりとして反乱が起きる。
それに征服すれば、支配しなければいけない。生まれも育ちも言葉も価値観も違う様々な国の人間をだ。
その面倒臭さは例えようが無い。
少なくとも和樹は、そんな役を自分から選ぶつもりはない。

それに、和樹には偉大なる野望がある。この旅の間に菓子職人としての腕を上げる事だ。香港滞在中に中華にかんするレパトリ−を、数百は覚えた。この旅に出てから南雲慶一郎と共に様々な料理を味わい、レシピを教えてもらってきた。
故郷に戻ったら調理士免許を取って、嫁さんを貰って二人できりもりできる小さな店でもいいから、自分の店を構えて、穏やかな人生を過すという壮大な夢がある。

幸い、一族当主の座は妹の沙夜が継ぐことにきまっているので、後継者争いの問題はない。
後は一族の人間がどれだけ文句を言ってきても、逃げ切れる自身はある。
それに故郷にこだわる必要もない。故郷に戻って、あまりにも居心地が悪ければカナダにでも移住しよう。
あの国なら一族の影響力も小さい筈だから。

埒もない事を考えながら、この後数時間続く説明を右の耳から左の耳へ流し、遠くの山並みを眺めていた。


あとがき

メイドに感する事が少しは書けました。本格的に登場するのは玖里子と再会するドイツなのでメイドファンの方々は暫しお待ちを・・・・・・・・その前に夕菜が出てくる予定です。
夕菜は大抵、嫉妬深い・・・・・・・・・ですが、和樹と2人だけで外野がいない時に会えば少しは変えられるのではないかと・・・・・無理かなぁ・・・・
原作で舞穂が登場して、魔王にクラスチェンジする前の夕菜に取り戻せる・・・かな?

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