私が彼と出会ったのは、ある寒い夜の事だった……。
「ちょっと、アンタ?人の事務所の前で何寝てるのよ?風邪引くわよ?」
依頼から帰ってきた私は、事務所の前で倒れている男を見つけ声をかけた。
「………………」
「ちょっと、大丈夫なの……!?」
「………………」
「私の事務所の前で死なないでよね!?後が面倒なんだから!!」
必死に話しかける私の声にようやく彼が反応した。
「うぅ……」
「――っ!!よかった、生きてるのね?」
「…………腹減った」
私は思いっきりこけた。
〜甦る魔王〜
なんでかほっとけなくて、彼を事務所に招きいれ、食事を出してあげた。
私が人のために食事を作るなんてめったに無いことだ。
「ふぅ〜〜、満腹だぁ〜〜…………ぐぅ〜〜……ぐぅ〜〜……」
「お粗末様。って、アンタ!何いきなり寝ようとしてるのよっ!!おなかいっぱいになったんならもう帰りなさいよねっ!?」
すると男はきょとん、とした顔で私を見た。
「帰る家が判らない」
「はぁ!?」
思わず聞き返す私に、彼はさらにとんでもない事を言った。
「どうやら記憶喪失らしい……。何も思い出せんのだ」
「ちょっ……えっ……本気で言ってんの……?」
「あぁ……。そうだ、見たところ何か仕事をしているようだが、俺を雇ってくれないか?」
結局本当に記憶喪失らしかったので、雇う事にした。
時給は255円。
ただし三食付で事務所に住まわせてやると言う条件で、だ。
彼が唯一覚えていた事は『ラオ』という言葉だけ。
というわけで私は彼の事をラオと呼ぶ事にした。
一週間後。
ようやく仕事に慣れてきた彼とともに、私は仕事に出かけた。
仕事の内容はとある洋館に集まった悪霊を退治すること。
そう、私の仕事はゴーストスイーパー(GS)なのだ。
しかし……。
私は現場に向かう途中、車を運転しながら悩んでいた。
「〜〜♪」
助手席で鼻歌混じりに風景を眺めている彼。
彼は私の職業がGSである事にもあまり驚かなかったし、仕事もきちんとこなす。
ひ弱そうに見えて結構体力もあるので便利なのだが……。
「ちょっと、ラオ?アンタまた私のお風呂覗いたでしょ!?」
「はぁ?俺はそんなことしてないぞ!?」
「嘘つきなさい!アンタが来てからもう7回目よ!?アンタ以外に誰がいるって言うのよ!?」
そう、彼が来てから私は毎日シャワーを覗かれるのだ。
いや、シャワーだけではない。
なんだか四六時中監視されてるような気さえするのだ……。
「濡れ衣だぁぁぁぁぁぁぁ…………ってか、死ぬ!マジで死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
簀巻きにして車の後方にロープでくくりつけた彼の声が聞こえる。
いい気味だわ。
男らしく白状すれば許してやるのに。
さて、仕事現場についた私はさっそく屋敷の中へ入ることにした。
「ほら、さっさと来なさいよ!」
「あだだ……3時間も車で引きずられた俺にいう事はそれだけかぁ!?」
「さっさとする!!」
バギャッ!!
「ぐはぁっ!?」
「参ったわね……結構数が多いわ……」
屋敷の中は想像以上に悪霊でいっぱいだった。
おまけに各部屋ごとに除霊をしないといけないので時間がかかりそうだ。
「まぁしょうがないわ。サポート頼むわね、ラオ?」
「あぁ、任せろ」
「行くわよっ!!」
んで、3時間後。
ようやく最後の部屋の除霊を終え、一息ついた私たち。
「ふぅ……やっと終わったわね〜」
「あぁ、そうだな」
と、そこで私は柱の影からこちらを窺う影に気付いた。
「誰っ!?」
私の声に反応して、人影が逃げていく。
「どうしたんだ!?」
「誰かがこっちを見てたのよ!!ラオ、捕まえるわよ!!」
「あ、あぁ!」
どうやら不審な人影は洋館の周りの森の中に逃げたらしい。
だが、私たちは森の中へ入った瞬間、そこも悪霊で渦巻いていることに気付いた。
「な、なんなのよ、これ!?森にまで悪霊がいるなんて聞いて無いわよっ!?」
「驚いている暇は無いぞ……!!早く追わなくては!!」
「そ、そうね……!!」
私たちは悪霊を払いながら森の奥へと人影を追った。
しばらくすると、急に森が開け広場のような場所に出た。
「なんだ……ここは?」
「さぁ……判らないわ……あの人影も見失っちゃったみたいだし……――――っ!!あれは!?」
「どうした!?」
私が見つけたもの……それは世界でもっとも忌まわしき者とされている悪魔の紋章。
数年前、世界中を恐怖に陥れた悪魔の封印だ。
「まさか……こんなところに封印されていたの……!?」
「どうした?知ってるのか?」
ラオがとぼけた口調で私に尋ねた。
「知ってるも何も!!これは魔王の封印よ!!数年前に世界を騒がせた魔王の封印だわ!!」
「これがかぁ?」
と、ラオが封印に近づいていく。
「バカっ!!触るんじゃないわよっ!!」
「へ?」
彼の手が封印に触れた。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
突然目の前が白く染まったかと思うと、私は吹き飛ばされた。
気付いた私の目の前には甦った魔王の巨大な姿。
『フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!良くぞ封印を解いてくれたな、愚かな人間よ!!』
「なんてことなの……!!魔王が復活してしまった……」
『フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!今度こそこの星を破壊し尽くしてくれる!!手始めに女!!貴様からだ!!』
魔王の手が輝き始め、巨大な光弾が放たれた。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
私は空中に吹き飛ばされた。
私がもうだめだ、と思った時だった。
フワッ。
私の体は誰かに抱きかかえられていた。
スタッ!!
綺麗に着地する。
「大丈夫かい、おぜうさん?」
私を抱きかかえていたのは……。
バキッ!!
「ラオっ!!なにふざけてんのよっ!!あんたのせいで魔王が復活しちゃったじゃないっ!!」
頭にこぶを作っているのに、妙に元気いっぱいのラオだった。
「あががっ……ふっ、元気のいいベイビィだぜ……」
頭のねじが5、6本外れたのか、台詞がおかしいラオがキッと魔王を睨みつけた。
「へっ、悪霊を操るタイプの機動兵器、ゴブーリキの遺産『アシュタル・オイッス』だなっ!!相手にとって不足はねぇぜっ!!」
「な、何言ってんのよ、ラオ?」
「俺はラオなんて名前じゃねぇっ!!いるんだろ、出て来いよっ!!」
彼が呼ぶと、木の陰からあの謎の人影が現れた。
フードを取ると中から現れたのは妙に派手な格好をした女…………、とヘビ??
「やっと正気に戻ったのね、ダ・サイダー?ったく心配かけさせるんだから……」
え……ダ・サイダー?
「ダーリン、心配したジャン!!」
と、その喋るヘビが彼の肩に飛び乗った。
ダーリン??
「なんだか知らねぇが……おうよ!!んじゃあここは一丁、やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁってやるぜ!!」
その後、魔王は彼の操る黒いメカによってあっさり倒された。
そして、彼はあの謎の女とヘビと共に宇宙へ帰っていった。
記憶を失っていた間の事は覚えていなかったらしい。
まぁ、おかげで給料払わなくてすんだから、ラッキーといえばラッキーかな?
ふぅ……また新しい助手探さなきゃ……。
でも、世界を救った勇者様以上の助手なんて……ねぇ?
無限に広がる大宇宙。
そこでは今日もやかましい一行が旅を続けていた。
「ちょっと、ダ・サイダー!!アンタ、また私のカップ麺勝手に食べたでしょ!!」
「おう、うまかったぜぇ!!ぬわっはっはっはっはっは!!」
「キィィィィィィィィィ――――ッ!!この間もアタシのラ王勝手に持ち出してぇっ!!」
「ちょっと、待て!?あれは食う前にお前が俺様を宇宙に蹴り落としただろうがっ!!そのせいであのミカミカワールドに落ちて……」
「うっさいわね!!アタシのカップ麺返しなさいよっ!!」
「ブスねーちゃんはあんな物ばっか食ってるからぶくぶく太るんジャン!!」
「あんだってぇ、このクソ爬虫類!!」
「ホントの事言ったまでジャン!!」
「大将〜、新シイ星ガ見エテキヤシタデゲス」
元仕置きロボの報告に、ダ・サイダーは木の棒と刀を取り出した。
「うむっ、新たな冒険が俺様を待ってるぜぇ!!ちなみにこれは棒・剣。ぬわっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはーーーーーっ!!!!」
Side story of the legend of lamuness……
episode 1……
end
あとがき
またまた読み手を選ぶSS第3弾!!(爆)
最近またTVシリーズから見直してラム熱再燃中なもので……^^;
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