初めての投稿となります。
どうかよろしくお願い致します。m(_ _)m
このお話は主人公最強及び至上主義である作者によって作成されております。
お嫌いな方は読まないことをお勧めいたします。
見苦しい所が多々あると思いますがご容赦ください。
数時間前までは住人が寝静まった静かな住宅地であったそこは、
今や瓦礫と炎が支配する荒野と成り果てていた。
その灼熱の荒野を唯一人の少年が彷徨っている。
意思を持ったかのように踊り狂う炎は少年の身体を何度も舐める。
だが、彼はいくら身体を焼かれようとも、その歩みを止めようとしない。
大人ですらも耐えられない状況でありながらも、
少年を突き動かすのは生への執念だろうか。
彼は一歩一歩頼りなげにではあるが、
確かに地面を踏みしめている。
だが、少年の足掻きも空しく、とうとう瓦礫へと倒れ込んだ。
少年の目に映るのは隣人達の黒焦げの死体、
彼の世界を焼き尽くすかのように踊り狂う炎、
そして、毒々しいまでに漆黒に染まった孔である。
正常なものなど何も無い。
今、彼の周りに有るのは現世に現出した地獄だった。
少年はこの惨劇を創り出しているのが、
漆黒の孔から垂れ流されている毒であることを誰に教えられることなく理解していた。
だが、理解したからといって無力な庇護されるべき少年になす術は無い。
この地獄を終わらせることも、
死んだ人々を甦らせることも、
そして、自らをこの場から生還させることさえもできない。
しかし、彼からは死への恐怖や怒りは感じられない。
なぜなら、少年に残されたものはもはや何も無かったのだから。
家族、家、そして記憶(心)までもが炎によって灰燼と成り果てた。
先程まで彼を動かしていた執念は、身体に染み付いた生存本能だったのだろう。
だが、踊り狂う炎は少年のこれまでの人生の意義を殆ど奪ったのにも関わらず、
彼の身体と魂までもを飲み尽くそうと欲していた。
もはや一ミリたりとも身体を動かすこともできない少年は、
ただ手足を投げ出し、空っぽな心を抱えて空を見上げている。
その顔に浮かぶのは幼い彼には似つかわしくない諦観の色。
その彼の視界にふと遮るものがあった。
泣きながらも笑っている男。
恐らく初めて見ただろう大人の涙に少年は笑った。
それは嘲笑ではなく、見るものを溶かすような純粋な笑みだった。
「生きていてくれてありがとう」
そう喜ぶ男に少年は極上の笑みで返したのだ。
そうして少年は現世へと帰還した。
「・・・輩・・先輩!起きてください!朝ですよ!」
少年は聞きなれた声で現世へと復帰した。
「う〜ん!朝かぁ〜」
硬いところで寝てしまったために凝り固まってしまった身体を伸びをしてほぐす。
まだ眠いのか目蓋が半分落ちている目を擦る。
少年の顔は整っていると言って良いだろう。
だが、それは大部分のアイドルのように、
ある種の脆弱さを感じさせるようなものではなく、
鋭さと精悍さを感じさせる。
例えれば武人のようなな美しさである。
だが、何よりも目を惹きつけるのは、その濁りの無い真っ直ぐな意志を宿す眼だ。
その眼を見たものは、その放つ光の美しさゆえに彼に惹きこまれることだろう。
「ありがとう、そしておはよう。桜」
一週間にニ、三度は寝坊する自分を起こしてくれるかわいい後輩に、
笑みを以って日ごろの感謝と挨拶をする。
人を蕩けさせる彼の笑みに、
桜は頬を彼女の名前の通りに染める。
「???」
自分の笑みが女性に対して絶大なる威力を有していることに彼は気づいていない。
人はこれを鈍感と言う。
「もしかして、朝飯の用意はもうできてるか?」
ほぼ確信をもって少年は桜に聞く。
「はい、もうできてますよ」
確信は外れることはなかった。
まあ、桜が彼を起こすのはいつも食事の用意ができてからだったから、
予想できない方が可笑しいのだろう。
「ありがとうな」
またも少年は彼女に礼を言う。
彼女にとって、純粋な憧れ――いや、崇拝と言って良いだろう――を向ける彼からの感謝は、何にも勝る至上の喜びを与えてくれた。
笑みを浮かべながら本宅へと引き返していく少女の背中を身ながら少年は思う。
(今度から土蔵で眠るのは止めにしよう。寝る時は部屋で・・・いや、無駄か・・・)
これまで何度の決心したにも関わらず一度も果たされていない決心であった。
最早、九割以上諦めている。
(それにしても何で魔術の修行をすると土蔵で寝ちまうんだろうな?)
「せんぱ〜い!」
桜の呼ぶ声に少年は些細な疑問を切り上げ、彼女の後を追う。
この日より再び彼、衛宮士郎は運命に巡り合った。
だが、彼は過去とは違い、力を持っている。
それこそ大概の運命を切り開けるほどの力を。
ただ少年は義父との誓いを胸に、
自らの信念に基づき力を揮うだけである。