少年は子供だった。
だから知らなかった、自分がどういった存在か。
少女に出会ったのは偶然、彼女の願いを叶えたのは気まぐれ。
だから彼女の言葉など、どうでも良い事だった。
「じゃあ、あなたのおよめさんになったあげる」
「いや、いらないし」
「やくそくだよ、せかいいちのまじゅつしさん」
「・・・きみ、よくひとのはなしをきかないっていわれない?」
これが始まり、少年の不幸の・・(女難も含む)
<和樹十五歳、ドイツにて>
「・・・あのさ、勘弁してほしいんだよね、俺としては」
今和樹の周りには黒いカソックを着た代行者と呼ばれる三人の教会の刺客に囲まれている。
「黙れ!神に仇名すものに死を」
「・・・意思の疎通って大切なことだと思わない?」
「フン、裏切り者の戯言に付き合っている暇は無い」
「一応、退職届も出したんだからいいじゃん」
その言葉と共に男達が黒鍵と呼ばれる剣を和樹に向かって投げつける。その速度は人が回避できる距離ではない。だが、
ガギン、ギン!
いつの間にか和樹の手に握られた三本対、合計六本の黒鍵が男達が放った黒鍵を弾く。
「な、・・」
「・・・仕方がない、俺に攻撃を仕掛けたんだ、死んでくれ」
和樹から凄まじい殺気が放たれ、黒鍵を構える。
男達は和樹が放つであろう黒鍵を回避するため身構える。
すると、突然和樹の姿がブレ消えた。
「「「!・・」」」
男達が、和樹の姿を探そうとするが、
「ぎゃああああああ!!!!」
男の一人が胸から三本の黒鍵を生やし絶叫する。
正確には男の背後に回りこんだ和樹が黒鍵を突き刺しただけだが、
男に刺した黒鍵を抜き、残り二人の方に振り向くと同時に、和樹の右腕がぶれる。
ドシュ!
男の一人の眉間、心臓、腹の三箇所に黒鍵が刺さり、数メートル吹き飛ばされ倒れこむ。
「・・・・・」
「残りはお前一人だが?」
男は恐怖に震えていた、ありえない。自分たちは異端審問もこなす腕利きの代行者だ。
魔の眷属だって、何体も滅してきた。
それが、こんな中学生程度の餓鬼にあっさり殺されるなんて間違っている。
「な・・ぜ?それほどの力がありながら教会に敵対する!」
「・・・勘違いするな、俺からは何もしていない。貴様らが俺を殺そうとしているから返り討ちにしているだけだ」
「そもそも貴様が、『埋葬機関』を辞めなければ「黙れ」・・」
和樹の殺気がさらに膨れ上がる。
間違いなく常人なら発狂し死に至るほどだ。
「前にも言ったはずだ。『気まぐれだと』俺に敵対しなければ、何もしないともな」
それは、逆に言えば何かしたら容赦しないと言う意味だ。
「じゃあ・・・さよならだ」
その言葉と共に和樹が左手の黒鍵で男を切り裂いた。
「しかし、最近教会の質も落ちた気がするのは、俺の気のせいかな『王冠』」
「やっぱり、ばれた?」
和樹の後ろから声が聞こえ、和樹はそちらを向く。
そこにいたのはまだ少年と言っていいほどの金髪の人物。どこかこの状況を楽しんでいるようだ。
「久しぶり、和樹」
「そうだな、『王冠』」
和樹は友人のあったような態度で挨拶をする。
「で、死徒二十七祖にして『埋葬機関』のメンバーでもあるお前が何のようだ?」
「友人の一人でもあり、元『埋葬機関』の同僚に会いに来ただけど?」
「俺があそこにいたのはたったの半年程度だし抜けたのも二年前なんだからほっといてほしいんだがな」
和樹は疲れたように、答える。
「そうだね、やめた理由が、『めんどくさい』、『厭きた』、『給料が安い』なんて理由は後にも先にも和樹ぐらいだよ」
そんな理由で、やめたのか和樹よ?バイト感覚か
「聖典だって返したんだからいいじゃん」
良くないと思うぞ和樹。
「・・まあ、僕は君が気に入っているから、別に構わないけど、一緒に遺跡探索をしてくれれば」
その言葉を聞き和樹が不機嫌になる。
「それだけはごめんだ」
「もしかして、前のことで、怒っているの?」
「当たり前だ!!黒鍵だけでゴーレムと戦えるか!あいつら固いんだぞ!」
「和樹は、神に属するものとも、魔に属するものとも敵対しているんだから大変だよ」
「話をそらすな!まだドラゴンと戦った時との話があるんだぞ!」
「そういえば、黒の姫がこっちに向かってきてるよ」
「じゃあな、ソロモンまた会おう」
態度を百八十度かえ、神速も真っ青な速度で、逃げ出す和樹。
「・・・彼は、自分がどれだけもてるか、知ってるのかな?」
多分知らないだろう、妹や黒の姫を苦手にしているはそのせいなのだから。
「まあ、僕には関係ないけどね」
その五分後、和樹をまんまと逃がした『王冠は』黒の姫ことアルトルージュ・ブリュンスタッドの怒りを買い消滅の一歩前までにさらされる。
二年後、日本と呼ばれる極東の島国で和樹の物語が始まる(女難も)
あとがき
なんだかわからないものが出来ました。
一応後、二、三作品とのクロス予定のハーレムストーリーです。
皆さん、ついて来れるかな?
・・・・・・・調子こいてすいません。
見捨てず応援してください。