「さて、格好つけちゃったし。俺も少しはあがくとしますか!」
暗い穴の中を落下中の忠夫はそう呟くと令子のバックから拝借してあったサバイバルナイフを取り出すと壁に向かって突き立てる。
「暗くてあまり見えないけど、そんなに離れていないはず・・・だ!」
ガッ!
ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!
「うひゃわ!耳が~~~~!?」
ロープにつかまっていたために壁からはそれほど離れていないとの考えていて、ナイフは壁に当たったことに気付きホッとしたのだが、予想外だったことはナイフと壁の摩擦音は黒板を爪で引っかいたような嫌な音を立てて耳を攻撃することであった。
耳を塞ごうと思っても両手でナイフを突き立てているためにそれも出来ない。忠夫は下につくまでただひたすらに不快音を我慢するしかなかった。
ギギィイイイイイイイイイイイイイイイ!!
「いやああああああああああ!!」
ドフッ・・・
そんな感じで下まで到達したのであったが、落ちた衝撃で気絶してしまう。そんな忠夫を影ながら見守っている影が・・・。
「あっ!忠夫様が!!」
「忠夫く~ん!?」
ここに忠夫が令子達と一緒に仕事に出かけるときから影ながら見守る三人の美女がいた。その名を、それぞれ美衣、フミ、冥子と言う。彼女達は令子とエミが敵をバッサバッサと倒していく様子を安心して見ていた。どんな妖怪が出てこようとあの二人が手を組んたのなら負けないと信じているからだ。美衣だけはまだ二人のことをよくしらないので不安そうな顔をしていたが。
そんな最中で忠夫が目の前で落とし穴に落とされたのだ。影ながら見守っていたはずの冥子とフミがそんなことも構わず助け出そうと駆け寄ろうとするが、襟首を美衣に掴まれてしまいそれも敵わず、ジタバタともがくだけである。
「離して!私は忠夫様を助けにいくんです!」
「私も~!!」
「落ち着いてください。あの落とし穴に落ちても死なないのはわかっているでしょう?」
そう、忠夫が落ちたことで取り乱した二人とは違い、美衣は落ち着いていた。何故なら、ここに侵入する前に以前から南部グループのことを調べていた六道SSからこの屋敷の構造図をもらっていたからだ。その図によれば落とし穴が設置されていることもわかっていて、その上それから落ちたとしても、それほどの高さがあるわけではないのでひどくても骨折程度で命を失う危険は低いこともわかっている。(可能性がないわけはない。頭から落ちれば死亡することもあるから)そして、忠夫のあの体勢からでは頭から落ちる可能性は低いと見ていたからそんなに取り乱すことなく冷静でいられる美衣である。
「そ、そうね~。取り乱しちゃったわ~。ごめんなさ~い」
「いえ、大切な人があんな目に合うのを見たらそうなるのはわかりますから」
美衣に諭されて落ち着きを取り戻した冥子だったが、我らが暴走クイーンはそんなことではとまらない。
「待っててください!忠夫様。あなたのフミが助けに参ります!私がきたからにはもうごあん・・・「大人しくしててください!!」んん~~~!!!!」
美衣の言葉など全く耳に入っていなかったフミは今にも飛び出していきそうな雰囲気であった。そのため、何を言っても無駄だと理解した美衣は後ろからフミを鎖で(縄だと引きちぎられる恐れがあるから)雁字搦めに縛り上げる。ご丁寧に首にはしっかりと首輪もされていた(猫だから?)。そのときの美衣の手の指にはそれぞれに鎖があり、フミに巻きつけた鎖は中指から伸びていたり、美衣の目が紅だったりする錯覚を見たような気がするが気のせいだと思いたい。さらに布で口を塞いで言葉を封印した。蓑虫状態となったフミはもぞもぞと動くだけしか出来ない。そんなフミをビカラで担ぎ上げる冥子。
「それでは、私達もいきましょうか?」
「OKよ~」
と冥子達も落とし穴に向かって飛び込んでいくのであった。
鎖で縛られたフミは大人しくするしかないのであるが、鎖に縛られているというシチュエーションによって変なスイッチが入ったのか今は妄想で頭の中がいっぱいであある。
『ああ、鎖で縛られて身動きできない私・・・首には首輪をさせられて・・・さながら私は飼い主の言うことを聞くしかない愛玩動物・・・飼い主はもちろん忠夫様♪私は飼い主である忠夫様の言うことを聞くしかできないの。でも、忠夫様は私をかわいがってくれて・・・』
『ほら、フミ。散歩に行くぞ』
『いやぁ、忠夫様~、恥ずかしい~。首輪をとってぇ』
『なんだい?ペットが首輪をするのは当然のことじゃないか?野良になりたいのかい?』
『いやぁ。捨てないでぇご主人様~!!』
『ば~か、捨てるわけないだろ?俺のカワイイペットなんだから。ほら、散歩にいくぞ』
『ご、ご主人様~。はい、ご主人様とお散歩嬉しいですぅ♪』
『そして、お散歩が終わったらお風呂に入って一緒のお布団で・・・』
『こ~ら、暴れるなって。体が洗えないだろ?』
『でもでも~、裸なんて恥ずかしいんですぅ』
『お風呂では常識でしょ?さ、洗わないと・・・』
『あ。んぅ・・・そ、そんな!そこは・・・忠夫様~♪』
『さあ、寝ようか。おいで・・・』
『はい///忠夫様、暖かいですぅ』
『フミもだよ。おやすみ。僕の可愛いフミ』
『おやすみなさい。私の大切なご主人様』
『なんちゃってなんちゃってきゃ~~~~~~』
「ん~♪♪♪んん~♪♪♪♪」
鎖で縛られているのに恍惚の笑みで悶えているフミ。美衣、ドン引きである。冥子はなれているので平然としていて、それにまた美衣が驚愕したとか。
「横島さんはどうですか?」
「ええ~、ちょっとショックで気絶してるみたい~。でも~、大きな怪我はないみたいよ~」
「そうですか・・・それでは、私達は先に行きましょう」
「そうね~」
冥子の診断結果を聞き、忠夫が気絶しているだけであることを知って、美衣は内心で安堵しつつ、先に進もうと促し冥子もそれに同意した。最後にチラっと忠夫のことを振り返るとフミを引きずり(まだ鎖で縛ったままである)先の部屋へと進んでいく。何故まだ鎖が繋がれたままかというと、忠夫が気絶している姿を見たフミがまたも興奮状態に入っていたからだったり・・・。
『元来、眠りから覚ます方法は愛しい人からへのキッス!さあ、忠夫様私のあっついベーゼでお目覚め・・・ってなんで先に進むんですか!?忠夫様を起こして差し上げないといけないんですよ?それより、いい加減にこの鎖外してくれませんかね?ねえ?ちょっと?私の話を聞いてくださいってば!!』
とか、フミは叫んでいるのだが実際には・・・。
「ん~!!ん~!!んん~~ん、ん~~~!!」
としか聞こえていないために美衣、冥子には理解出来なかったのである。まぁ、理解できたとしてもフミの意見は通らなかっただろうが。
先の部屋に向かった美衣達はいきなり部屋に入ることはせずに作戦会議を行う。
「やっぱり~監視カメラがあるわね~」
「では、当初の予定通りにそれを使うんですね?」
「ええ~。それは私がやるから~それまでの間に邪魔が入らないようにしてほしいのよ~」
「わかってます。それは私とフミさんで引き受けますから」
「よろしくね~。じゃ~、作戦開始よ~」
冥子は影から袋を取り出す。中には陶器か何かが入っているのかカチャカチャと音がする。物を確認した冥子達はフミの鎖を外すと部屋へと侵入を試みる。その頃になるとようやくフミが落ち着いたからだ。
侵入した先は中心に大きな壷が一つ、ポツンとおいてあるだけの広い部屋であった。
「作戦開始よ~!!」
「「了解!」」
「SET~、HUT~!!」
冥子の掛け声とともに美衣とフミが壷に向かって一直線に走る。そして、冥子は袋から取り出した物を振りかぶっていた。
壷からモヤが浮かんできて何かが出てきそうな雰囲気だったが、それが出現するよりも速く、フミと美衣が壷を逆さにして地面に置いてしまう。ご丁寧にその上に自分達が乗り壷を押さえ込んだ。
「それにしても、怪しげなんで押さえちゃいましたけど、これってなんの壷だったんですかね?」
「さぁ?でも、モヤみたいのが見えたので何かがいたんでしょうね。まぁ、何もないに越したことはないでしょ?」
「それもそうですね」
壷の上で足を組んで色っぽく座りながら、美衣は自分の尻に敷いている壷のことを疑問に思うが、フミに何もないに越したことはないと言われ納得する。そんな会話を繰り広げている間、一方では冥子によるスローイングが行われていた。
「ヤ~~~~~ハ~~~~~~!!」
ポイッっとな。
冥子の手から放たれたのは円盤状のガラスであった。それは綺麗な放物線を描いたと思ったら、突如加速し監視カメラのレンズに引っ付いた。実は、飛行能力を持った式神でガラスをその監視カメラのレンズまで運ばせたのだが。
「これでよ~し。美衣さ~ん、フミさ~ん。先に進みましょ~」
「この壷はどうしましょうか?」
「そうね~・・・封印して持って行きましょう~」
言うや否や冥子はその壷を先ほどフミを縛っていたのに使っていた鎖でフタ代わりに縛っていく。そして、穴を塞いでいる鎖にお札をペタっと貼り付けて壷を封印したのであった。
「これでよ~し。フミさ~ん、これをよろしくね~」
「了解です。お嬢様」
封印した壷をフミに託すと一行は先に進むのであった。
ちなみに。冥子が監視カメラにつけた円盤状のガラス、実はマジックミラーである。監視カメラには冥子達がいるにも関わらず、ただの部屋としか映っていないように見えている。これによって、上で監視しているはずの須狩の目を誤魔化すことができて目の前に現れる南部グループの武装集団に集中できるのであった。
「むっ!侵入者か!?おい、本部にれんら・・・「させません!」がはっ!」
「なっ!大丈夫か?」
「余所見なんて余裕あるんですね?」
「はや!?・・・ぐはっ!!」
「援軍をようせ・・・「みんなお願い~!」ぎゃああああああああああああ」
速きこと風の如く。冥子達に気付いた武装団達は本部に連絡、増援の要請をしようとするが、それよりも速く冥子達が襲い掛かり相手の意識を狩る。電光石火の早業で意識を奪うと前へ、前へ。敵は一人たりとも逃さずに狩っていくのであった。
「逃がすか~~~~~~!!!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!」
又一人、犠牲者が出たようである。
「う・・・ん?」
冥子達が武装集団を狩っているころ。落とし穴に落とされ、落下した衝撃で気絶していた忠夫がようやく意識を取り戻した。
「ここは?」
目覚めたばかりで働いていなかった頭が徐々に回り始め、自分の置かれた状況を思い出す。
「そっか、穴から落ちて・・・」
状況を理解したら行動は早かった。まずは自分の体の状態をチェックする。
トントン・・・ダンダン・・・タッタッタ
つま先を軽く地面にタッチさせ、次は力を入れて地面を踏みつけ、最後にもも上げを行う。どこにも痛みがないのを確認すると、今度は腕を振ってみる。
ブンブン
「これも大丈夫」
幸いにもどこにも怪我を負っていないようだ。体に異常がないことを確認し終えると、エミと令子に合流すべく忠夫は先に進むと決断したのだった。
「俺が生きてるって信じてくれて頑張っているだろう姉さん達がいるのにじっとしていられないよ!」
だそうで。忠夫は早速先へと歩き出す。
その先にあるのは開け放たれている部屋の入り口。まるで、いつでもかかってこいと挑発しているような印象を受ける。実は冥子達が突入してそのままだということは忠夫には想像も出来なかったろう。
そんなことは全く知らない忠夫は警戒しながら部屋へと入る。
「誰もいないみたいだな・・・罠でもあるのか?」
部屋の中央を過ぎたころ。忠夫は疑問に思う。何せ、敵の姿どころか罠の類すら現れないのだ。
「まさか、本当に分断するだけの効果しか狙ってなかった?」
一向に出てこない敵や罠に忠夫は大きな勘違いをしてしまう。実は忠夫が通った部屋には武装集団や魔物がいたはずなのだが、先行している冥子達に全て倒されているのだから仕方ないだろう。ご丁寧に倒した者達は全員縛り上げて端っこのほうに転がし、白い布をかけてカモフラージュしてあったりする。忠夫は見事にそれにひっかかり全く気付かぬまま先に進んでしまうのであった。
「あれ?これって・・・泣き声?」
なんの問題もなく先に進んでいた忠夫。そろそろ最深部へと到達しそうな時であった。先の部屋で鳥の鳴き声のような甲高い声とかすかに聞こえる女性の声に気付く。
不思議に思っていた忠夫だが、次の瞬間に走り出す。それは・・・。
「きゃあああああああああああああああああ」
自分の知っている女性の悲鳴が聞こえたからだ。
「間に合ってくれ!・・・令子姉さん!!」
忠夫は必死に走った。令子が悲鳴をあげるほどの事態なのだ。大変なことが起こっているということだけは理解できる。右手に自分が最初に出来た霊能、霊気の盾を出現させて、忠夫は最後の部屋に入った。
「!?」
そこで目にしたのは令子が鳥の妖怪に攻撃されそうになっている姿だ。忠夫は考えるより先に体が動いていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
バキャアアアアアアアアン
「忠夫!?」
「姉さん!!」
令子とガルーダの間に割って入ったのである。その後、かろうじて令子と一緒に距離をとることが出来たのだが、危機はまだ続いている。気を緩めることが出来ない状況に陥り冷や汗が出そうな状況だ。そんな完全にシリアスなシーンだったのにも関わらず、その空気を全く読まずに三人の美女が現れたのであった。
あとがき
なんとか完成。ちなみに表現が微妙にアレだったので15禁にしたラッフィンです。
いや・・・なんというか、忠夫サイド書かずにそのまま話を進めていたほうがよかったな~と後悔しています。
なかなか文章にならないし、やってみたら案外話しが短かったりといろいろと問題が起こりまして。でも、こうして無事に投稿することが出来たことはよかったです。
もう一つの話も半分ほど書きあがっているのでもう少しで投稿できそうです。
今回はこのへんで。
レス返しです。
Tシロー様
三人姉妹(?)登場!!
忠夫サイドとかいって、全然忠夫の出番がありません(仕様です!)
そして、グーラー・・・出番なし!!
俊様
>キャッツは三人
正解ですw
魔鈴さんはこの展開が終了した後に出す予定ですのでもうしばしお待ちをwww
そして、GM‘sも出てきますよ~www
>ゴーレム
大丈夫です!こっちにはゴーレムよりも強力な人がいますからw
DOM様
>落ちが無くて
だってだってぇ!味方にいつも落ちをつけるキャラがいるんだもん!
敵くらいは真面目にしたいじゃないの~!!!
次回、南部グループに恐怖の愛が襲い掛かる!!
星の影様
>ネタが分からなかった
騙せた~~~~~www喜んでいる私がいる(爆)
>正義のGS
え?正義?彼女らに正義って・・・ブラコンだし・・・。
ケイのネタは考えてありますよ~wwwって、あらら。美衣さんに追いかけられてそれどころじゃないです・・・ゾクッ!!
こ、このプレッシャーは!!(恐る恐る後ろを振り返ると・・・)
『うふふふふふふふふ』
ぎゃあああああああああああああああ!冥奈さあああああああああああん!!
(あまりのショックに私は気絶した)
内海一弘様
素通りになった理由、おわかりになりましたか?
そうだったのです!全てはキャッツ○イのおかげだったのです!
(∂。∂?)……ン?
何か黒いオーラのようなものが通りすぎていったような・・・
だが、動けぬ私には何もできな・・・・ガクッ
にょふ様
HAHAHAHA待たせましたなw
フミさんの登場じゃああああああああああああ!
そして、地味に冥子の必殺技が炸裂!!
HEY2様
変態エロ夫婦・・・なんかあの二人を見てるとそんな感じにしか思えなく・・・
>キャッツカード、盗み出すのは忠夫様の心
逆に盗まれると感じるのは私だけでしょうか?
財産に関しては次回にわかりますよ~wwwこれにも意味がありますw
鹿苑寺様
>小竜姫さまと愉快な鬼門たち
一度、私のことをどう思っているか問いたださないといけないみたいですね。
そんなことしたら、精神に異常をきたす人が続出しちゃいますって!!
ここは西条、ピート、神父で・・・(ぉ
カシス・ユウ・シンクレア様
みんながみんな、そろいも揃って三女がケイなんて・・・ひどいわ!
ケイは男の子なんだから三“女”なんて表現が出来るわけないのに!!(ぉ
それから私の趣味に勝手に女装ショタを追加しないように!
私はおキヌちゃん派なんだから!!