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「ラ・カンパネラ 序章(GS)」

にょふ (2008-05-11 15:33/2008-05-14 16:38)
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 アシュタロスの乱より一ヶ月の時が流れた。

 敵に寝返った筈の少年は、実はオカルトGメンのスパイであり、人間の敵どころか人間を救う為の英雄的な働きをしたと大々的に報じられた。

 そして、その少年は―――


      GS美神極楽大作戦!! 〜ラ・カンパネラ〜

            序章 〜ダ・カーポ〜


「えっと……俺って死ぬんスか?」
 この物語の主人公の言葉は、この先物語を進める為にも是が非でも、回避したい事案である。

「違います、横島さんには二つの選択肢しかありません」
 沈痛な面持ちの竜神族の武人、小竜姫は言葉を続ける。

「人のままで在り続けたいと望み、死を願うか…」
 小竜姫の顔色は悪い、小竜姫にとって横島は弟子であり、弟子であるからこその家族であり。更に言えば、好ましいと思える程素直で、頑張り屋で――あまりにも、悲しい思いをさせてしまった懺悔の念もあった。

「魔族として、転成を望むかです」
 小竜姫はいい終わると唇を噛み締める、先の乱の英雄に対する仕打ちがこれだと言うのか?
 折角助かった命の使い方すら自由に選べない程、彼には厳しい選択しか用意されていなかった。

「それって選択肢じゃないっスよね…」
「ヨコシマ! 私と一緒の魔族になるでちゅ!!」
「パピリオ、お前な〜」
「ヨコシマは私と一緒の魔族になるのがいやでちか?」
 幼い容姿なら、思考まで幼なかった。子供の質問に近いその問いに横島は苦笑いする。
 横島が魔族を嫌う訳がない。何せ初めて愛した女性は魔族だ、しかも敵であった筈の蛍魔ルシオラ。

「馬鹿、誰がお前やルシオラを嫌いだって言ったよ、俺はお前達が大好きなんだぞ?」
 その言葉と共にパピリオの頭を優しく梳く、その時の表情は何時もの横島の笑顔。
 その笑顔は美神から人外誑しと呼ばれる程に、人外に対して途方も無い魅力を兼ね備えた、稀有な程に清い笑顔だった。

「あ、あの横島さん?」
 ちょいと置いてけぼりな感じがして、少し悲しい小竜姫が慌てて声を掛ける。何せ小竜姫も人外――誑されている人外の一人だったりする。

「小竜姫さま、一つだけいいですか?」
「……はい、私に答えられる事であれば幾らでも答えましょう」
 その清い笑顔を急に真剣な表情にし、小竜姫の方を見詰める横島、こんな表情もまた、小竜姫にとってはご馳走だろう。
 しかし、そんな真面目な横島に相対する為、深呼吸し横島の方へ真剣な面持ちを浮かべる、先程までの赤面など露も見せない。

「じゃあ、スリーサ……すみません」
 瞬間、横島の首筋に神剣の煌きが走った、超加速もかくや、と言った程の速度であった事だけはココに書き記しておきたい。

「ふざけている場合じゃありませんよね?」
 笑顔がとても綺麗で麗しい竜神族が武人、小竜姫の額にシャープなものが浮かんでいるのは気の所為……じゃない。

「ご尤もDEATH」
 やんわりと小竜姫の神剣を摘み、器用に首だけを移動させている横島。
 幾ら剣を突き付けられていようと美人の傍を離れたくない! と言うのが横島クオリティーだったが、文字の変換ミスをする程度はビビっている。

「ふぅ……ルシオラさんの事ですよね?」
「……はい」
 神剣を収めて横島をじっと見詰める小竜姫。そして、そのの言葉でおちゃらけた横島の雰囲気が激変した。
 今まで忘れた事などない、蛍の化身たる魔族ルシオラ――

 ――先の大戦で横島と知己を得、飼い主の姉とペットと言った関係ではあったが、それでも互いに惹かれあい、求め合うかの様に愛を育み、そして――必然の様に、愛し合う様になった。
 しかし、アシュタロスとの戦いの最中、ルシオラを襲ったベスパの攻撃を、横島が己の命を賭して庇い、救った。
 そして、救った代償として己の霊基構造に傷を負った横島だったが、それをルシオラが己の命を賭して救った。
 死すらも厭わず互いを愛し、そして死が二人を別っても尚、愛し合う二人――そんな今は亡き恋人の名前を聞いただけで、横島の心は軋み、涙が溢れそうになる。

「ご心配には及びません。魔族に転成するのであれば、確率がかなり上がります、具体的に言えば、人間であった場合を1とすると、魔族に転成すれば100程度の可能性になるでしょう」
 彼の身体には、彼が愛した恋人ルシオラの霊基構造が多分に含まれている。
 反面、横島がその影響を受けない為にも魂の殆どを失い、転生不可能な状態に陥り。再び、横島と再会するの方法は、横島の子供として生まれる以外に方法がなかった。

「百倍っスか……はは……良かった……本当に良かった」
 その言葉を聞いた横島は、自分の胸を押さえて泣いていた。再び会える可能性が高まった、今は亡き恋人の事を思って。

「ヨコシマ……ルシオラちゃん…」
 パピリオもまた涙を流す。
 姉と義理の兄になったかも知れない二人の気持ちを考えたら、パピリオもまた涙を流していた。

「横島さん、今一度問います、あなたは人間としての生を望み、死を願うか……魔族となり、その人間としての生を捨てるか…」
「決まってるじゃなっスか、俺は魔族になります――そしてルシオラを…」
 横島の結論は決まっていた。

「はい、解りきった事とは思いましたが、一応確認だけは必要でしたから」
「そんな事、言う必要すらありませんよ」
「横島さんならそう言うと思っていましたが、横島さんだけの問題ではないと思います。美神さんや、親御さんにも連絡を入れた方がいいと思いますよ?」
「あ゛……あ、あはは。そうっスね、何か完全に忘れてました」
「美神さんはともかくとしても、親御さんには連絡を入れた方がいいですよ。たとえ魔族に転成しようと、親子の契りを失う訳ではないのですから」
「親父とは軽く縁切りし……嘘です! はい!!」
 瞬間、小竜姫の神剣が横島の喉元に迫る。横島の稀にでる失言は、習慣染みたセクハラよりも頻度は低いものの、結構重要な場面で出てしまう。

「仏の教えにも先祖を敬い、子孫繁栄を加護してもらうと言う文言があります。あまり仏の教えを蔑ろにしないで下さいね?」
「それじゃ、子孫繁栄の手助けをっ!」
「やはり人間としての死を選ぶのですね♪」
 その時の小竜姫の笑顔たるや――あまりの綺麗さに、パピリオが軽く小水を零しかけていた。

「なはは……すみません…」
 人間の守護者たる神族にあるまじき行動だったが、それ程小竜姫の怒りが凄いと物語っていた。
 しかし、小竜姫の照れた表情から、そんな怒りが照れ隠しの行動である事を、何処かで絶対に覗いている神族調査官だけは知っていた。

「小竜姫よ、もう少し落ち着かんか、それで小僧の師匠を名乗るつもりか?」
 ここまで沈黙を保ってきた、人界駐在の最高権力者兼猿の斉天大聖孫悟空老師が口を挟む、偏に恋に臆病な弟子の為と、先の大戦で傷つき、大事なモノまで失った孫弟子の為にも。

「老師様……申し訳ございません」
「儂に謝る事は筋が違うじゃろ、ほれ、たまには素直にならんか」
「……はい、横島さん、あまり調子に乗って女性を誘うのは褒められた行為ではありません……特に私を誘う場合はもっと紳士的に誘って下さい」
「え、あ、はい」
 最後の方は、小竜姫の言葉が小さかった所為で、横島には聞き取れなかったが、それでも小竜姫の言う事も尤もなので頷いた。
 この決断が彼の運命に、うねりを生じさせるとも知らずに。

「とにかく小僧は早急に下山し、その旨を美神の嬢ちゃんと、両親に知らせるのじゃな」
「うス! それじゃ!」
横島は文殊の≪転≫≪移≫で自宅へ戻った。気持ちは向かないが、小竜姫と猿神に言われた通り、両親への連絡の為に。

「ふむ、やはり小僧はそちらを選ぶ……いや、小僧なら尚更じゃな」
「はい……しかし、本当に大丈夫でしょうか?」
「魔界の動きか? それは大丈夫じゃろう。魔界軍も動くであろうし、そもそも神魔最高指導者様達の御触れを聞かぬ馬鹿者もおるまいて」
「確かに、あれ以上の保険はありませんね」
 神魔両最高指導者が横島の為だけに触れを出した。それだけで異常な優遇措置だが、横島はそれだけの影響力を持っていた。
 魔神アシュタロスの世界の反転を狙った大作戦。表向きはそうであったが、アシュタロスの本心は、もう悪い存在であり続ける事に疲れ、世界の理を逆転させる事で、新たな秩序を作らんとしていた。
 更には、悪の存在である自身の滅亡を渇望し、横島の大事な人の命と引き換えに、世界の理を逆転させる野望も潰え、その罪で渇望した滅亡を許された。
 この事件で一番の功労者は、横島とルシオラであると神魔の最高指導者は思っているし、ロクに身動きの出来なかった自分達が、横島に何か出来ないかと思っていた時、横島の魔族化と言う話が持ち上がったので、せめてもの償いの一つとして、手出し無用の触れを出したのだった。

「ヨコシマが魔族になれば、きっとルシオラちゃんの復活も早まるでちゅよ」
「うむ、元々魔族であるルシオラの魂をサルベージするのじゃ、魔族になった小僧ならばかなりの確率でルシオラの因子を持った子を成せるじゃろうて」
「しかし、魔族から魔族の子が生まれれば、成長が遅いのでは?」
 小竜姫はルシオラと同時期に創られたパピリオの方に視線を向けて一つ悩む、恋人であるルシオラを横島の子として転生させるのはいいが、その子供が成長する頃には横島も……。
 チャンス♪ と小竜姫が思った……とは声に出しては言えない。

「ふふ〜ん、それは大丈夫でちよ小竜姫! 元々ルシオラちゃんはあの姿での創造が運命付けられていたでち! 幾ら子供として産まれても、すぐに……成長する……でちよ……私と違って…」
 そう言い切るとパピリオは涙を流した、恨むべくはこの身体で創造した創造主のアシュタロス。何の趣味かは知らないが、何故子供の成りで創造したのであろうか? 答えはアシュタロス以外に知り得ない。

「……いいじゃない、成長はするんだから……私と違って」
 パピリオの声に小竜姫も呼応する、自分の胸の方に視線を向けて。


◆◆◆


「……あっ、おかん久しぶりやな」

『はぁ、あんたは……大概にしいや!』

「な、なんやねん急に!?」

『美智恵さんから話は聞いてる――ルシオラさんの事もな』

「――そうか」

『何で家に来えへんねん! ウチがどんなけ心配したか解ってんのか!?』

「あぁ……結構大変? つうか、色々あったけど、自分の事でおかんに愚痴でも言えってんか?」

『あんたがそう言うんやったらええけど…』

「心配すんなや、ルシオラやって生き返るねんから」

『美智恵さんの話やったら、あんたの子供として生まれるって話って事で、こっちもこっちで人工授精の準備もしとるけど?』

「……ちなみに卵子は?」

『あんたに一番近い因子もってる人に決まってるやん』

「何でおかんとの子供を作らなあかんねん!!」

『それやったら誰も傷付かんやろ?』

「俺が傷付くわ! アホな事言うな!!」

『人の決意をアホ呼ばわりか? 随分とえろうなったな〜』

「何の決意や!?」

『アホでどうしようもない駄目息子の為に、涙を呑んでウチの卵子と子宮を提供しよう……ってな母親の決意やがな』

「頭痛てぇぇ」

『まぁ、冗談はさておき――愚痴でもないのに、なんで電話寄越したんや?』

「何処まで冗談か解らへんのが怖い……って、ぶり返してもしゃあないな。そこに親父もおんの?」

『助六は会社におるで、なんや珍しいな、あんたが宿六に用事があるやなんて』

「まぁな……これから? いや、今までかな?」

『煮え切らんな……なんやねんな?』

「――俺、人間辞める事になってん」

『…………は?』

「ルシオラの事聞いたんやったら、俺の身体の構造の変化も聞いてるやろ?」

『まぁ、身体の霊基構造か? それがルシオラさんに補充されたって事は聞いたけど』

「うん、んで、その霊基構造の変化の所為で、人間の器が壊れる可能性が高いって話や」

『……随分と落ち着いとるな』

「そらそやろ、別に魔族になりゃあ、問題ないねんから」

『魔族ってルシオラさんや……あのアシュタロス言う奴と、同じもんになるって事か?』

「せや、せやからおかんと親父にも今までの礼を……言わなアカンねん……今まで育ててくれてありがとう……まだ17年しか生きてへんけど――充実した人生やったわ」

『で?』

「なんやねん……人が折角シリアスバージョンでお送りしてる所を無視して」

『で、あんたが魔族になって何が変わるねん、もうウチの息子や無くなるんか?』

「……それは」

『何も変わらんやろ? そんなことで一々連絡すな』

「……おかん」

『はっ、何辛気臭い声出しとんねん……宿六にはウチから言うとくから……アイツもそんな所やろうしな』

「あぁ、俺……おかんと親父の息子でよかったわ」

『今頃気付いたんか? 遅い遅い』

「……おかん。俺はめっちゃ幸せモンやな…」

『ナマ言うな……アホな息子の癖に』

「晩に……また連絡するわ……おとんにも……直接言うから」

『おとん……ね、久しぶりに聞いたわ……宿六にも言うたりや』

「ん、考えとく」

『あぁ……ほな、晩に』


◆◆◆


「「辞めるぅぅ!?」」
 まったくのユニゾンで、横島の辞表提出に驚きを隠せない美神とおキヌ。

「はい」
「理由をいいなさい理由を!!」
「そうですよ! 折角平和になったんですよ!?」
「あ〜、俺、魔族に成らなくちゃいけないんスよ」
「「は?」」
 再びユニゾンで疑問符を浮かべる美神とおキヌ。話が見えないが、雲行きだけはしっかりと怪しい雰囲気である事には気付いていた。

「アシュタロスの後釜とかそんなんじゃないんスけど。俺の霊基構造の所為で、魔族に成るか死ぬかのオルタネイティブらしいっス」
 横島は何時もの様に軽い口調で語るが、それでもその話はそんな軽い話ではない。生か死か、そんな選択肢を迫られたと言っているのだから。

「おるたねいてぃぶ? どんな意味ですか?」
「二者択一よ、まったく、横島君の癖に英語を使うなんて生意気よっ!」
「あぁ、そういう意味だったんですか……俺も教えられた通りにしか喋ってないんで端的にしか解らなかったんスよ」
 横島自身は生きて魔族に成るか、そのまま人間として死を真っ当するか、と尋ねられたのでオルタネイティブの意味までは知らなかった。
 真面目な話なのに、台無しな横島だった。

「まったく。何であんたは、そんなに不幸を一身に背負わなきゃいけないのよ…」
 美神の顔が曇る。先の乱で恋人か世界かを迫った自分と、世界を選んだ横島の事を思い出し、思わず泣きそうになる。
 美神自身だったら答えは違ったかも知れないし、同じだったかも知れない。そんな事は美神も知り得ないが、それでもその横島の選択で、彼にとって途方もない悲しみを植えてしまったと言う想いだけは胸に残っていた。

「横島さ〜ん」
 おキヌは泣きながら横島に抱きつく、幽霊の時代から横島の事が好きなおキヌにとって、あまりにも過酷な運命を背負わされた横島に、涙を流す以外に対処法がなかった。

「ありがとうおキヌちゃん、俺の為に泣いてくれて。美神さんも……俺の事で怒ってくれて、本当にありがとうございます」
 自分の為に怒ってくれる人、自分の為に涙を流してくれる――それだけで、横島は嬉しかった。

「まぁ、あんたは私の丁稚だから、本来あんたの殺生与奪権は私のモノなのよ。それを勝手に奪われたんだから……怒るのも当然でしょ」
 美神は素直になれない、今まで強く生きる為に弱みを見せた事がなかった所為か、人前で素直になる事を極力避けている。
 ここに来て、母親、もしくは信頼すべき大人がいない所為で、思春期にちょっと曲がった考えを持ってしまった弊害が出た事は彼女の母、美神美智恵にすら想像出来なかったであろう。

「あはは、すみません美神さん……けど、遊びに来るぐらいいいっスよね?」
 横島はたとえ魔族に成ろうと人間の時に知り得た、掛け替えのない友人達と別れるつもりは毛頭ない、唐巣神父が毛根を大事にするのと同じ様に、虐げられても、何だかんだで友人達を大事にするのが横島クオリティー。

「あんた、魔族になるのに人間界にいられるの?」
「あ、はい、一応関東の守護者っスか? そんな感じの暇な職に就くらしいっスよ」
 それはキーやんとサッちゃんこと神魔両最高指導者の計らいだった。
 元々人間である横島に、今までの環境を変えずに生活して欲しいとの償いにも似た感情と。
 魔界に魔王殺しの横島が来て、要らぬ軋轢を生む可能性もゼロではない。と言う、キーやん、サッちゃんの思惑も入っているが、そんなにべも無い話を横島に話していない。

「あんたが?」
「うス、何でもルシオラの霊基構造は結構上位魔族ぐらいの力があって、その因子によって転成する人間の俺は、人界だけで考えるなら、かなりの力を持った魔族に成るらしいっスよ」
 ルシオラは魔神アシュタロスの娘として創造されたのだ、更に一年と言う寿命の短さの代わりに強大な力をも持っている上級魔族。
 そんな因子と人間では最高ランクのGSとして、名は……知られていないが、実力だけはある横島が魔族に転成するのだから、当然といえば当然かも知れない。

「ま、私の仕事に口出ししないなら大歓迎よ。私だって端金で魔族やら神族の過激派を相手にしたくないもの」
「う〜ん、一応神魔の両最高指導者が、俺に手出し無用って御触れを出したらしいんで、そんな馬鹿な事する奴はいないって話ですよ」
「誰がそんな話を信じるのよ? あんたを殺して名声を得ようとする馬鹿な奴だってゼロじゃないんだから」
 美神の懸念もなきにしも非ず。神魔と言っても名声欲がない訳ではない。
 ポッと誕生する魔王殺し、文殊使いの半人半魔、横島忠夫、幾ら最高指導者の御触れがあろうと、その横島を殺して名声を得たりする神魔が居ないとは言い切れない。

「俺だけじゃないでしょ? 美神さんだって結構危ないと思いますって」
「私は美神令子よ。自分の命ぐらい自分で護れるわ」
「それでも護らせて下さい。俺は……美神さん達に危害を加え様とする奴らなんて許せません――だから護らせて下さい」
 その言葉を語る横島の目は、何時か美神達に見せた、純粋なまでの真摯な眼差し。横島にとってはルシオラの事が思い出される。
 だから、もう二度と――誰も、親しい人を失いたくない、横島の嘘偽りの無い本心から出た言葉だった。

「あんた……もう魔族に成り掛けてるの?」
 美神は横島の真摯な視線にドキッとしながらも心配する。
 魔族の大半は高い破壊衝動と殺戮衝動を持っている。欲望に忠実な魔族として生を受ければ、誰しもが持ち得る危険な衝動であり、人界に住まう横島にとって最も危惧すべき力なのだから。

「へ? 俺はただ……もう誰も失いたくないだけです」
「……馬鹿な事聞いて悪かったわ」
 横島の真剣な想いを聞いて美神も馬鹿らしくなった。
 馬鹿で。スケベで。間抜けで――純粋で。明け透けで。愛嬌があって。
 他人に対して心を開かない美神ですら、気付いた時には、心の中に確かに居座っていた様な少年。そんな暖かさを持つ横島が、真剣な眼差しでそう言うのだから、何処に嘘があろうと言うのか。

「いえ、俺が勝手に想ってるだけっスから」
「本当に成長したのね……最初はただのセクハラ小僧だったのに」
 美神は嫌味しか言えなかった。
 この癖だけは抜けない、好きな男を前にしたら尚更、小学生の男の子染みた羞恥心と嗜虐心が、本音を言いたいという素直な気持ちを妨げる。

「いや〜、今でも美神さんに飛びつこうか悩んでるんスよ」
「……馬鹿」
 美神は顔を真っ赤になるのを覚えて椅子を回転させて顔を隠した。
 横島はどうなろうと横島であり――美神はそんな横島の事が大好きだった。

「あれ? 私って本当に影が薄い?」
 最近の仕事でユニコーンに、ドジでおばさん趣味で、意外と腹黒くて――最近影が薄いと言われたおキヌが、ひーんと泣いていた。
 ユニコーンに言われたからではなく、ただの口癖で。


 あとがき(暗っ!)


 前回のあとがきに書いた通りに、メーンヒロインはベスパです! 出てませんけどベスパです!!
 しかし! 前回のあとがきに書いた通りならば、完成させてから投稿しようと思っていました……が! 完成していません!! どうもケツに火がついていないと頑張れないので、投稿しつつ完結させます。

 一応、題名と副題の解説を。

 ラ・カンパネラ――鐘。

 ダ・カーポ――曲の始めから

 これは、拙僧の崇拝する作曲家のフランツ・リストの作品の一つです。
 更に、副題で音楽用語を使っていますが、拙僧は音楽は知りません(中学の時の10段階評価で4ですから)。ちょっとクラッシクが好きなだけです。


 レス返し、嬉しい限りでございます


 T2様

 この後の事を考えるとおキヌちゃんが>……蛇足を作るとしたら、ひぐらし〇鳴く頃の皆殺し編みたく、事務所の屋上で横島君とおキヌちゃんが、霊波刀対包丁(限界まで研ぎ澄まされたシメサバ丸)で、月下の決戦もありかもと思ってしまいました。
 これからも、ベタな内容になるかも知れませんが、読んで頂けますと嬉しい限りでございます。


 Tシロー様

 毎回のレス、誠にありがとうございます。
 英理人が冷静になるような描写があればと思いました>……おぉ、早急な感じの原因が解りました、ご指摘ありがとうございます!
 今回の作品は、未だにメインヒロインが出ていない現状ですが、これから横島君とベスパが幸せになっていきます……多分。
 少し長い道のりになると思いますが、これからも読んで頂けますと幸いでございます。


 凛様

 あっまーいw>あざ〜っス!
 私はGSキャラの中で嫌いなキャラはあまり居ません。ファミレスで大好物のハンバーグステーキを食べる時に、付け合せのポティトやキャロッツも食べる方なので(ぉ
 今回は、ちょっぴり裏事情的なモノも含まれていますが、それも次回までです。それ以降は、すっきりと読んで頂ける様になると思います。それでも読んで頂けますと嬉しい限りでございます。


Lonely hunter様

 ご心配頂き誠にありがとうございます。完治致しました!
 美神×横島は……結構好き嫌いが分かれるするカップリングなので、lonely hunter様が好ましく思われないのも無理はありません(私は、子供っぽい美神さんが好きだったりします)。
 今回は、未だにベスパが登場しておりませんが、次の次に登場しますので、申し訳ございませんが、暫くお待ち頂けますと幸いでございます。
 今作は、タマモがゲストキャラとして登場する予定も…。


 海鮮えびドリア様

 黒いおキヌ……やはり書くべきなのでしょうか? 腕を組んで帰ってきた美神さんと横島君を見て、「横島さんは寄生虫に支配されてるんですよ♪」おキヌの持つ包丁の腹には黒い笑顔のおキヌが……ひぐらし〇鳴く頃的な事が浮かんじゃってるんです……電波です。
 そ、そんな電波は無視するとして……今回も読んで頂けていましたら、嬉しい限りでございます。


 星の影様

 お忙しい後は、十分に御身体、御自愛下さいませ。私は気を抜いてしまったが故に、数年ぶりに風邪を引いてしまいましたので…。
 三点とダッシュの使い分け……難しいですが、それでも使って行きたいと思います。強調する部分はダッシュを使い、間が欲しい時には三点を使う。といった具合になると思いますが、まだまだ未熟な私でございますので、至らぬ点ございましたら、お手数ではありますが、ご鞭撻の程、お願い申し上げます。
 おキヌちゃんにつきましても、何か短編を書きたいとは思っているのですが、如何せんネタが浮かびません……もしかして本当に影が薄い?

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