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「妖と魔と神に愛されし風 プロローグ(GS)」

J (2008-05-05 00:26)
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 >初めて投稿させていただくJと申します。
  GSの本編再構成モノです。
  非常に拙い作品ですが少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。
  完結目指して頑張りますのでよろしくお願いします。


横島忠夫という少年は特別に容姿がいいというわけでもなく、頭がいいというわけでもなく、運動神経は良かったがずば抜けているわけでもなかった。小学生という年齢にもかかわらず若干、いやかなりスケベなところがあったが正直で明るい性格で他人と隔たりのなく接することができる子供だった。
勉強ぎらいでいたずらをしたり、遊んでばっかりだったが寂しそうにしている学友に積極的に声を掛けたり、捨てられた猫や犬を拾って来ては飼い主になってくれる人間を日が暮れるまで探す子供だった。

横島が拾ってきた猫や犬が横島家で引き取られることがなかったのには理由がある。
普通の一般家庭には絶対にいない先住人がいたからである。
金色の毛並みが非常に綺麗で表情が豊かな子狐だった。
ただ普通の狐と大きくことなる点がいくつか存在した。
まず、尻尾が九本存在し、イヌ科の動物であるはずがお揚げと稲荷ずしが大好物であった。子狐はタマモと呼ばれていた。横島家の誰かが名づけたわけではない。横島が子狐がそう名乗ったと証言したのだ。


横島とタマモが出会ったのは横島が小学校一年生の時だった。

商店街のくじで家族旅行が当たり家族で栃木県の那須温泉に旅行に行った最終日のことだった。

なんの前触れもなくいきなり横島が「助けて!痛い!」と誰かが言っていると両親に伝え近くの森に走りだした。突然走りだした息子を追って森に入った横島の両親、百合子と大樹が見たものは足が罠に掛かり苦しそうにもがいている子狐とそれを懸命に外そうとしている息子の姿だった。息子の行動には百合子も大樹も驚いたが一生懸命生き物の命を救おうとしている息子を蔑ろにするようなことはせず共に罠を外してやりぐったりした子狐を大阪の自宅に連れて帰った。手負いの子狐は当初暴れたが横島がいろいろと話しかけ横島が大樹にお揚げか稲荷ずしを買ってくるよう頼むと急に大人しくなった。

この時の光景を百合子は後に友人の六道夫人に泣いている子供を宥めているようだったと語った。

子狐が横島家に運ばれてきてから数日たつと横島は子狐をタマモと呼ぶようになった。
百合子が何故タマモという名前をつけたのか尋ねると横島は本人がそう名乗ったと答えた。
これを聞いた百合子はさすがに少し心配になった。尾が九本ある時点で普通の狐と異なることに百合子は気付いていた。様子を見る限り一人と一匹の関係は良好だが万が一の可能性を考え学生時代の友人である六道夫人に一度様子を見て欲しいと頼んだ。

友人の依頼を受けた六道婦人は横島家を訪れた。そしてこの日、横島に特殊な能力があることが発覚した。
不測の事態に備え六道夫人がわざわざ影から出し連れてきた式神と横島が会話を始めたのだ。
大人たちは最初子供らしい微笑ましい光景だと見ていてが横島が六道夫人に式神達が抱えている悩みを話しだした時事態は急変した。六道夫人は最初は子供の冗談と思いにこやかに聞き流していたがムキになった横島が訪れたことない六道邸の様子を式神達から聞き出しそれを六道夫人に伝えると横島と式神達の間にコミュニケーションが成立していることを認めざるを得なかった。

その後、いくつかの検査が行われ横島はそれなりに知性と呼べる物を持つ生き物と「会話」ができるということがわかった。六道夫人は横島の能力をこう評した。「オカルトの歴史が知りうる限り最も無害で優しい能力」と。

百合子に余計な心配をさせた横島は当然のようにシバかれたが………。

タマモに関しても六道家と横島家共同で調査が行われ殺生石から出てきた「傾国の美女」の転生であることが発覚したが毎晩同じ布団で眠る子狐と横島の様子や普段居心地がよさそうに横島の頭の上に乗っているタマモの様子を見ていた百合子と大樹はタマモが凶悪な妖怪とは思えずさらに追加調査を行い玉藻前に関する歴史的認識が誤っていることを知った。このような過程と百合子と大樹の了承を得てタマモは横島家の正式な一員となった。

横島家の一員となったタマモを百合子と大樹はきちんと守った。
調査のことをどこかで嗅ぎつけ横島ごとタマモを排除しようとした一部の政治家を六道家と共同で社会的に抹殺し文部科学省に介入し教科書の内容を改正させた。ご丁寧に政治界に今後横島家の一員に手を出したら「消す」と明確なメッセージを残しタマモの安全を確保した。

罠に掛った経験からかタマモはかなり人見知りが激しかった。それでも横島にはデレデレに甘え時々お揚げや稲荷ずしをくれる百合子と大樹には友好的だった。横島の幼馴染の夏子と銀一にはジト目ながらもみごとな毛並みに触れることを許していた。
穏やかな日々は横島が小学校三年を終え四年生に進級する直前に横島が事故に遭い両足に重症を負い入院したことで突如中断された。横島の負傷の理由は実に横島らしいモノだった。

いつもの三人と一匹で歩いていた所春風に帽子が飛ばされ周囲をよく見ずに反射的に交通量の多い道路に歩み出てしまった幼馴染の夏子を庇い両足を負傷。これが横島の入院の理由だった。
負傷した横島を見たタマモはすぐに横島家に走った。幸い距離はそれほど離れておらず百合子は在宅中だった。横島のようにタマモと会話をする能力がない百合子だがタマモの必死な様子を見て自分の息子が何かに巻き込まれたことを感じタマモの後に従い事故現場に向かった。
百合子が現場に辿り着いた時にはすぐに動揺から立ち直った銀一が近くの民家に駆け込み呼んだ救急車に横島が乗せられたとこだった。

幸い命に別状はなかったものの脚部は回復する見込みが高いが長期間リハビリが必要と百合子と大樹は医師から告げられた。途方にくれていた一同を助けたのは以外なことに六道夫人からの一本の電話だった。

「百合子。忠夫君のこと聞いたわ。それで私から提案があるの。六道家の子会社がオーストラリアと南米を結ぶためにニュージーランドのオークランドにあるのよ。そこに地域貢献ってことで六道家が支援しているリハビテーションセンターがあるんだけどそこに家族で行ってみない?自然も綺麗だし忠夫君が英語学ぶのにいい機会になると思うわ。百合子と大樹さんがそこの子会社で働いてくれるなら忠夫君の治療費と引っ越し代とかは全額六道家が負担するって契約でどう?」

百合子と大樹は非常に優秀な人材であったが金持ちというわけではなかった。横島が身を盾にして守った夏子の両親から治療費を請求することに躊躇いを感じていた所にこのオファーが来たのだった。百合子と大樹は横島に事情を話すと。

「タマモが一緒なら行く。金髪のねーちゃんたくさんいるかもしれんし。」

照れ隠しと焼きもちで横島に噛みつくタマモを見ながら百合子と大樹は自分たちの息子が思っていたより遙かに強いことを知った。

引っ越し当日を迎えタマモを膝に乗せた車いす姿の横島を二人の幼馴染は見送りにきた。銀一は横島の肩に手を置き一つ頼みごとをした。

「なあ、横っちのバンダナ貸してくれへん?今度会ったら返すわ。」

「おう、横島様のお守りじゃ。大事にしてくれや。」

そう約束して友人二人は誓いを交わした。横島のバンダナを手にした銀一が別れを告げ後ろに下がると泣きはらした目をした夏子がおずおずと進み出た。

「横っち。ごめんな。本当にごめんな。」

「ええいもう!ええ女が泣くな。俺が勝手にしたことやし。」

相変わらず軽い調子の横島をキッと夏子は睨みつけツカツカと横島に歩いていきガシッと顔を掴み思いっきりキスをした。

「馬鹿!なんでそんな優しいんや!馬鹿!バカ!馬鹿―――!!ああもう!ちゃんと帰って来てや!大好きやで横っち!」

泣きながら走り去っていく幼馴染を怒り狂ったタマモの大暴走に巻き込まれ薄れつつある意識の中横島は茫然と見送ることしかできなかった。


一騒動あったものの横島家の海外移転はその後特に問題なく終わり横島はリハビリと新しい学校生活を始めた。
最初は決して優しいものではなく横島は何度も挫折しかけ泣いたが努力しつづけた。そんな横島の頭の上か隣にはいつもタマモがいた。

観察するように励ますようにずっと金色の目で横島を見つめていた。


やがて横島がオークランドに来てから10か月が過ぎた。


その頃には横島は杖があれば大抵の場所には行けるほど回復しておりタマモを頭か肩に乗せてしょっちゅう散歩していた。新しい学校と環境にも慣れつつあった。
横島がいつもどおりタマモを頭に乗せて自然公園を散歩していると普段他人に無関心なタマモが突然前方から歩いてきた男性に向かって唸りだした。その唸り声には警戒と僅かな脅えが含まれていた。

「タマモ?どうした?は?人間じゃない?何言ってるんだいきなり?」

「ほう。君は日本人かね?それに九尾の妖狐を連れているとは珍しい。名はなんと言うのかね?」

「あ、日本の方だったんですか?俺は横島忠夫っていいます。こっちの狐はタマモです。」

「ふむ。私は芦原優太郎という者だ。これもなにかの縁だろう少し話でもしないかね?」

これが横島忠夫と芦原優太郎。魔界と神界では魔王アシュタロスと呼ばれている男との出会いとなった。

横島忠夫小学四年生の11月のできごとだった。

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