始めに
すみません……15禁と言ってもエロくないです、ちょっと表現的に卑猥なだけです。
「ぅうん……なんだか暖かい……ふぇ?」
タマモは眼を覚ました、時間は午前5時過ぎ、いつもなら起きる事などありえない時間だが、現在タマモの置かれている特殊な状況の所為で、早起きをしてしまったのだろう。
「……ずっと離さなかったんだ」
タマモの身体は未だに横島の腕の中。横島の言う通りに、やましい事など無かった。少し残念に思う一方で、横島の言葉に嘘が無かった事にちょっぴり喜んでいるタマモ。
「ふふふ……横島も私の魅力にメロメロって訳ね♪」
自分自身の想いを棚にブッチで置き去りにして、そんな勘違いをしてるタマモだったりする。少し痛いと思えるが、これも恋する乙女が為せる業だと思いたい。
『先生ぃぃ!! 散歩の時間でござるよぉぉぉ!!!』
そんなタマモの少し痛い思考を中断させるに、十分なシロの大音声が響く。近所迷惑を気にしない辺り、シロを少し尊敬出来そうで……やっぱり出来ないタマモであった。
「んぁ? んだよ、人が折角安眠してるっつうのに。まったく、毎朝毎朝よく飽きないもんだ」
そんなシロの大音声が目覚ましとなったのか、今までタマモを抱きしめながら眠っていた横島が目を覚ます。
慣れているのか、そんな大音声の目覚ましにも関わらず、嫌な顔一つせず。むしろ、シロの来訪を喜んでいる様にも見受けられる。
「毎朝?」
そんな、自分の知らない横島を垣間見たタマモは、当然の如く怒っている。
前々から、シロと横島は似ているとか、仲の良い師弟だとかは思っていたが、まさか、毎朝の如く逢瀬を交わす関係だとは、露も知らなかった所為だろう。
「うを!? ってタマモか……おはよう」
その言葉で、腕の中に居た暖かい存在に気付いた横島。タマモが居た事に少し驚きはしたが、それでも柔らかい笑顔を浮かべていた。
無自覚に人外を堕とす手腕は、寝起きでもその鋭さに曇りは見えない。
「ま、毎朝ってどういう意味よ?!」
そんな横島の柔らかい笑顔を直視してしまったタマモはと言えば……ギリギリのラインで防御している。
耐えている一因と考えられるのは、横島とシロの関係に対する怒りだろう。
何せ、『自分に惚れている横島』と言う構図が、タマモの頭の中に、明確にイメージされているのだ。そんな自分に惚れている男が、他の女と、黙って毎朝の様に散歩しているなど、許せる筈もない。
「どうもこうも無いだろ、何時もは一緒の部屋で寝泊りしてるんだったら、毎朝出掛けるシロの行動原理ぐらい解るだろ?」
そんな事を知る由もない横島には、タマモの怒りを理解出来ない。鈍感なのか敏感なのか、タマモの言葉に、イマイチ判断に苦しんでいた。
「解る訳ないじゃない、何時もこんな時間に起きてる訳じゃないんだから」
「そうなのか?」
「そうよ。今日は特別なのっ!」
タマモは顔を赤らめながらも、特別という辺りを強調して言った。しかし、その想いを向ける対象である横島には伝わらない。
「そういうモンか? っと、その前に離れてくれ、身動きが取れん」
「別に問題ないでしょ」
タマモは、現状にかなり満足している、横島が何を言おうが無視しても構わない。なにせ“自分に惚れていて、絶対に護ってくれる人物”の腕の中にいると思っているのだ。タマモは、金毛白面九尾の妖狐としての、本来あるべき状態を確認して、恍惚の笑顔を零さんばかりに顔の筋肉を緩め、横島の胸に頬をスリスリさせていた。
「問題ありまくりなんだがな~、朝の定例会議も糾弾してるし」
しかし、そんなタマモの行動原理を知らないし、そもそも何故タマモが甘えているのかすら横島には理解出来ない。
しかし、タマモの言動とは別に、横島には問題が発生している。
青年特有の、更には煩悩が人より桁外れな横島にとっては、それが顕著に現れる……詰まる所、男子の本能とも言うべきか、朝駆けが盛大に勃興していたのだ。
「朝の定例会議? って何よコレっ!?」
タマモは自身の太腿に感じる暖かくて固い物質。朝駆けが勃興する様を発見し、ちょっとどころか、かなり驚いている。
「若さを持て余した、青年の主張とも言うべきなんだろうな~」
横島はタマモに食指は動かない。
しかし、蕾とは言え、タマモの身体はれっきとした女性の身体である。そんな女性の身体が横島の身体に寄りかかっていて、更にはその女性が、己の胸に顔をスリスリさせているのだ。その女性が、たとえ横島の食指が動かないタマモであっても、悲しいかな女性の身体と言うだけで、煩悩が刺激されてしまう。
ついでに言えば、タマモから漂ってくるこの部屋に似つかわしくない、世にも芳しき乙女の香りがここぞとばかりに主張している。それを横島は至近距離で嗅いでいるのだから、横島にその気がなくとも、横島(非炉)とて反応せざるをえない。
「へぇ~、こうなってるんだ」
タマモは、前世の記憶を多少ではあるが継承している。しかし、平安の世にあっては男女が臥所を共にする事は稀であった。
故に知識程度にしか朝駆けの勃興を知らない。更には意識した異性の朝駆けの勃興現場……気にならない訳がない。
「アホか! 触んなっ!」
「いいじゃん別に、減るモノじゃないし」
「減る! 確実に俺のナニかが縮むっ!」
「じゃあ見ると触るの、どっちがいい?」
「何その究極の選択!? って、どっちもアカンわー!」
「じゃあ両方する?」
「誰がそんな事するか! ワイはロリコンやないんや!!」
「何を今更! 私を一晩中抱きしめた男の癖に!」
「他意なんぞあるか! あんな顔したタマモを、帰したアカンて思ただけじゃ!」
「それだけで十分な状況証拠よ! あんたは私に惚れたのよ!」
「誰がじゃ! 誰が誰に惚れとんねん!」
『先生ぃ! 居ないのでござるかぁ!!』
「黙れ! 私が惚れたって言ったんだから、あんたはそれに従ってればいいのよ!」
『先生ぃ? 寝ているのでござるかぁ?』
「何で従がわなアカンねん! 俺はそんな錯綜とした趣味しとらんわぁ!」
「横島がなんと言おうとこの際無視! あんたは私に縛られなさい!」
「ドアホ! なんでお前に縛られなアカンねん!」
「だったら私を縛りなさいよ! それぐらい許してあげるから!」
「俺はそないディープな趣味なんかあらへん! 縛ってええのは古新聞・古雑誌だけじゃボケェ!」
「意味が違ぁぁぁう! 束縛って意味よっ!」
『先生……はっ!? そうなのでござるな! 可愛い弟子に起こされると言う夢をお持ちなのですね!! もしや!? そのまま昨日の様な…………今行くでござるよ先生ぃ♪』
「束縛なんて必要ない! 愛さえあればいいだろうがぁ!」
「今言った! 確実に私の事を愛してるって言った!」
「それこそ意味が違うわボケェェ!!」
「先生ぃ♪ 今愛しの弟子がくんずほぐれつな起こし方を……ぉお!?」
「「は?」」
「な、な、な、なななななななな何してるでござるかぁぁぁ!!!!」
いい加減ナレーターを放棄していた事を謝らなければならない……マヂですんませんでした!
後、横島とタマモの現状も伝えておきます……現在の横島とタマモの構図は、それはそれは痛い状態である。
なにせ、横島の朝駆けの勃興を見ようとする、タマモが横島に馬乗りになり、更には頭の位置が逆なマウントポジション。
下に居る横島も、タマモの穿いている白いナイロン生地のナニかがチラチラと視界に写る所為か、赤い顔をしつつも煩悩が故に、顔を逸らすという行動を失念していた。
つまりは、ドアの鍵など人狼の力で破砕して、横島の部屋に上がって来たシロから見れば、タマモに無理やり穢されようとしている横島なのだ……今まで書けなかった事、平にご容赦を。
「な、何とは……うを!?」
横島は現在、己が置かれている状況に気付いた。まぁ、タマモの白いナイロン生地のナニかには、眼を離せずにいたのだが。
「どうもこうも無いわよ! 見せないのがいけないのよ! 馬鹿犬も手伝いなさい!!」
タマモは現在、己が置かれている状況に気付きもしない。
何せ必死だ。金毛白面九尾の妖狐としての矜持の所為か、断固として自分への愛を認めようとしない横島に、怒りがMAXになり、いつもの冷静な仮面など、1分前にゴミ箱に捨てていた。
「タマモ……お主と言う輩は」
シロの表情に色が消えた、そんなシロを見て、横島はこれで己の正義が護られると、タマモが座っている位置に近い所為で、撫で下ろせない胸を撫で下ろした。
「いいからさっさとする! 早くしないと朝駆けの勃興が見れないのよ!」
タマモの眼は逝っちゃいけない所に逝っている。その眼はまるで、初めてデジャブーランドを目の当たりにした時の、12倍(作者独自比)程度にまで輝いている。
「お主はそのまま先生を捕縛! 拙者が強襲するでござる!」
横島の願いはそもそも破綻していた、何せシロが昨日見た妄想は、現状とあまり変わりのない光景であり、攻守が交代したぐらいにしか写らない。
「何でやねん!!??」
大阪人が大阪人として天寿を真っ当したのであれば、一万回は言うであろうベタな言葉で突っ込む横島……しかし、効果は期待出来そうにない。
「うっさい! とりあえず口を塞ぐモノ……あった!」
「ちょふごっ!?」
『ちょっと待て!』と言いたかったのだろうが、タマモの手により横島の口は封じられた。傍にあったテレビのリモコンで……横島の歯が折れない事を祈らずにはいられない。
「先生ぃ♪ 先生から頂戴した文珠。斯様な場面で使うとは思いませなんだ♪」
文珠を横島から頂戴したと言うのは、多少認識の反故がある。
シロが使用するつもりの文珠は、仕事中の危険を減らす為に、美神が横島から強制搾取している文珠を所員に渡している。
そんな美神から渡された文珠(超高級な霊具)を使おうと言うのだ。
シロも、タマモと同じ様に逝っちゃってる。それも完全に逝っちゃ駄目な方向に逝っている。多分にこれも、横島とタマモの痴態を見た所為で、昨晩見た妄想が現実を侵食してしまったのだろう。
「ふぁめふぉ! ふぁめふんふぁ!! ふぉっふぁ~~!!!」
『止めろ! 止めるんだ!! ショッ〇ーー!!!』多分そう言っているのだろうが、今時〇ョッカーが通じるか些か疑問である。
閑話休題。
「≪縛≫では面白味に欠けるでござるな……おぉ! ≪従≫なら問題ござらんな♪」
何が面白味に欠けるかは、非常に気にはなるが、それ以上に横島の理性が心配だ。なにせ――
CASE1、対犬飼ポチ(八房)での特訓の際に、気絶した横島を介抱する為に、顔を舐めてヒーリングを行ったシロに、ドキドキしていた事案。
CASE2、その後に、横島の目の前で着替え様としたシロに完全にドキドキしていた事案。
CASE3、犬飼ポチがフェンリルに為り、シロに霊破砲をぶつけた時も、『てめえ、俺のシロに!』と叫んだ事案。
CASE4、これは違うかも知れないが、シロが予防注射をする為に上京してきた時に、駅前で顔を舐められて、『ここじゃいやーー!』と叫んだ事案。
――西条の仕事の手伝いの、霊刀殺人事件の場合は、逆光でシロと知らずに飛び付いたので却下するにしても……上記4つの事案を鑑みるに、横島がシロに弟子以上の感情を持つ可能性は否定しきれない。
超閑話休題。
「何でもいいから早くしなさいよ! 横島って無駄に力があるんだから!!」
シロに引き換えタマモの声に余裕はない、現在逆マウントポジションを維持しているタマモだが、横島は青年の身体であり、タマモはそれより力の弱い、中学生然とした姿である。ライブDEピンチと言った所だろう。
「心配無用でござる……さぁ、先生♪ 拙者らに≪従≫うでござるよ」
シロの手に握られる文殊に≪従≫の文字が浮かぶ。そして――
「ふぬぬぬぅぅぅ!!」
――光と共にその文殊の効果が発揮された……≪惚≫や≪恋≫でなくて良かったのか、シロ?
◆◆◆
「ふ~ん、横島って案外大きいんだ」
「ほほぅ、流石は先生の逸物でござるな。父上のより大きいでござる」
「まぁ、朝駆けが勃興しているからな…」
「何か文句あんの?」
「文句が言える状態だったら、口酸っぱく言ってるっての! ……それよりも、いつもは反目しあっているお前等が、何で手を組んでるんだこの野郎!!」
「私は、別にあんたが誰に手を出そうと一向に構わないからかな?」
「左様でござるな、拙者もその意見には賛同でござる」
「な、なんだと!?」
「素直になりなさいよ。折角、ここまでお膳立てしてあげたんだから。それにあんただって、据え膳食わぬは~、とか思ってんでしょ?」
「くっ! た、確かに……くそぅ、まったく嘘がつけん! これが文珠の力だと言うのか!」
「流石先生の文珠でござるな。拙者らの言う事に素直になっているでござるな♪」
「ちょっと予想とは違ったけど、流石は私を庇護するに十分な男ね、これからも私を護ってね♪」
「お前のあんな顔なんて二度と見たくねぇから……お前は俺が護る……って!何言わすねん! 恥ずかしい事言わすな!!」
「ふ、ふ~ん、その代わりに私の鳴き顔見せてあげるわよ♪」
「今は要らん! 後もう少し成長してから来てくれ!!」
「だらしなくおっ立てておいて良く言うわね~。どうせ私達に見られて興奮してるんでしょ?」
「誰がや! 俺はそんな錯綜とした、趣味の持ち主なんかやあれへんのや!!」
「どっちかしらね? 私達に魅力を感じないのか、見られる事に興奮を覚えないのか……ねぇ、どっち?」
「後者だ……くそぅ! 何で嘘言われへんのや!!」
「≪従≫の効果覿面ね♪ ふふ、素直になったらサービスしてあげるわよ?」
「せ、せめて、昨日の様な姿になってくれ!」
「昨日の姿? 何でござるか?」
「あぁ、これの事よ……ほら」
「何と!? 流石は女狐と言った所か」
「大丈夫よシロ。どうせ横島だってシロにだって興奮してる筈だもの」
「上からの物言いには関心せんでござる! しかし、本当でござるか?」
「正解っ! くぅぅ! 俺の、俺の馬鹿ぁ! なんて霊能力をもってしまったんだ!」
「てなわけで、これは疲れるから解除するわね」
「あぁ!? せめてもの情けが!!」
「いつもの私じゃ不満だってぇの?」
「誰が不満を持つか! くぅ! 何て悪質な文字を籠めやがる!!」
「先生がいけないのでござるよ、素直に拙者らの想いを、汲み取らぬ先生がイケナイ♪」
「随分と嬉しそうじゃない、そこまで横島の事が好きなの?」
「当たり前の事を聞くな、お主とてそうなのでござろう?」
「ん~、私の場合は昨日気が付いたんだけど……まぁ、好きになった時間なんて関係ないじゃない」
「それもそうでござるか。先生の魅力に気付いたお主を、責める要因などありもさんからな……まぁ、拙者の場合は、初めての恋でござる♪」
「あ、あの~、二人で話があるんだったら、俺はお暇させて頂き「「駄目よ(でござる)」」な、なんでじゃ」
「そもそも、そんな格好で外に出て行く気♪」
「うっ!? し、しかしだな、俺はそちら側の趣味はないんや…」
「ふ~ん、ちょい♪」
「あぁん♪」
「何て声出すのよ~、ちょっと触っただけじゃない」
「そないな事言われたかて仕方ないやないか~!! 自分の手以外に触られて記憶なんてあれへんのやぞー!! ドチクショー! 全部俺が悪いんかーー!!」
「先生は、初めてでござったか? ふふふ、女冥利に尽き申すな♪」
「あ、あの、シロさん? その、貴女の身体では些か…」
「それもそうね、シロは変化出来ないから、まだ無理ね」
「な、なんと!? 拙者の孔には入りもさんと申すか!?」
「まぁ、あんたの身体はまだ成長中。性交で余計な負荷を掛けるより、少し時間を掛けて手足が伸びてからの方が成長もスムーズよね」
「お主も似たような……まさか!?」
「大丈夫よ、幾ら私でも、共同戦線を張ってるヤツが居る状態で、抜け駆けなんてしないわ、横島は私達の共有財産なんだから♪」
「タマモ、お主…」
「でも、横島の初めては私が貰うわ! これだけは譲れない!!」
「な!? それは駄目でござる!! せめて二人一緒にするでござるよ!!!」
「?! それもそうね♪ 二人一緒に……ふふ♪」
「そうでござろう? 先生の悦ぶ事をする事こそ、拙者の喜び!」
「そうなると……横島?」
「な、なんでしょうか!? ドキドキなんかしてないよ! ホントだよぅ!!」
「ごめんね、ちょっとお預けしちゃうけど……いい?」
「そんな瞳で見詰めんといてー! ドキドキしてまうやないかー!」
「ふふ、ドキドキしてもいいのよ? 別にお預けといっても……ほら、これだったら、してあ・げ・る♪」
「ちょ、タマモ?!」
「気持ちいいんでしょ?」
「う、うむ、めっちゃ気持ちえぇ……くそー! 素直が自分が憎らしいーー!!」
「タマモ? 何をしているでござるか?」
「私の前世の記憶、ここを触ると男の人でも気持ちいいの。今じゃ一般的かも知れないけどね」
「乳首を弄くって悦ぶのは女子だけではござらぬのか。奥深いでござるな」
「シロもしてあげたら?」
「うむ、拙者も先生に悦んで頂けるならば、どの様な事でも致すでござるよ♪」
「コレは二つあるんだから、OKよね♪」
「さすれば服を脱がすでござる! ささ、お召し物をこちらに」
「ぅうむ、従いたくないのに従ってしまう……我が文珠ながら、なんと恐ろしい!」
「……あんた、本当に“あの”横島?」
「なんだよタマモ? 人が“無理やり”素直に服脱いだぐらいで」
「違うでござるよ先生、タマモは先生の身体を見てビックリしているだけでござる。かく言う拙者も同じく驚いておりまするが」
「そうね、何時もの横島からは想像も出来ないぐらいに引き締まった肉体……と、この傷は何? 火傷にも見えるし。そもそも、こんな大きい傷ってありえないわ」
「……これは」
「言いなさい、私達は横島の事を、一つでも多く知りたいんだから」
「……アイツを庇って……俺、死んだんだ」
「「は?」」
「いや、最終的には助かったんだが……これは、アイツ……ルシオラを庇った時に、ベスパにつけられた俺の弱さの証だ」
「ルシオラって誰よ?」
「アシュタロスって奴の娘で、俺の恋人だった魔族だ」
「先生? 先生には恋人がいたのでござるか?」
「あぁ、俺の命を救う代わりに死んじまったけどな。いや、俺が殺したのと同じだな」
「何よ……何なのよ! 何処の誰だか知らないけど! 何で私の知らない横島の事を……なんで何時までも縛ってんのよ!!」
「ルシオラはそんな女じゃねぇ! アイツは……アイツは俺を本気で愛してくれた、初めての女だ……だから、俺が勝手に縛られてるだけだ」
「……解ったでござる」
「「シロ?」」
「先生は、そのルシオラ殿の事、忘れる事は不可能でござるな?」
「あぁ……絶対に忘れちゃ駄目な、大事な女性だ」
「だったら、それで構わないでござるよ」
「ちょ! あんた何言ってんのよ!!」
「タマモ? お主は前世で何をしていたのでござるか?」
「何って……庇護を受けてた鳥羽上皇が死んで、その原因が私だって言われて……それから…」
「もういいでござる、タマモは先生の傍に居たいと申しておったな?」
「そうよ! それだけは絶対よ!」
「ならば、先生の心に住まうルシオラ殿の事など、気にする方がおかしいでござるよ。先生が忘れられぬのであらば、それで構わぬではござらぬか」
「ちょ、シロ、お前何言ってんだ? 俺は……外道だっ! お前達みたいな子供に弄られて興奮する様な、最低な男なんだぞ? それに、心に他の女も住んでいる。それもずっとだ…」
「では、拙者らが忘れてくれと申せば、文珠の力を借りてでも、忘れてくれるでござるか?」
「それは無理だ、たとえ命と引き換えにしても、それだけは出来ない」
「ならば、それでいいでござる。先生の心を、先生の全てが欲しい訳ではござらぬ。タマモもそうでござろう?」
「……はぁ、まさか馬鹿犬に諭されるとは思わなかったわ」
「まぁ、拙者も先生がルシオラ殿の事を忘れると申せば、その場でナニを握りつぶしていたでござるがな」
「なっ!? 嘘でもそんなこと言っちゃ駄目だろっ!」
「嘘ではござりませぬ。先生が斯様な薄情者であれば、それこそ拙者の千年の恋も冷めもうす。そして、その強い気持ちの一部でも、拙者らに向けてくれれば最上の喜びでござる。ささ、早速契りましょう先生ぃ♪」
「あ~、あのなシロ? それはちょっと早計ではなかろうか?」
「確かに早計でござったな、ならば、拙者の手足が伸びるまでは、拙者とタマモで先生を満たして差し上げまする♪」
「と言う訳で、ルシオラの事はどうだっていいわ! 要は私達も必要だって思い知らせればいいだけよね~、うふふ、覚悟なさい横島ぁ♪」
「タ、タマモさんやぃ? その瞳に宿る力はなんでせう?!」
「私って~、Sなの♪」
「いややぁー! 俺はそんな趣味やないんやぁー!!」
「大丈夫よ、年若のあんたにそんなハードな事はしないから。それに男って、大体の奴は、年齢を重ねるごとにMになるんだから♪」
「今するって言った! いややぁぁーー!」
「うっさい! そんなに叫んだら、文殊の効果がなくなるでしょ!!」
「な、なぬ?! ≪従≫以外にも文殊使ったのか!?」
「私の分でね。まぁ、声の出るコトするんだから、部屋に≪防≫音しとかなきゃ駄目じゃない。隣に花戸母娘と貧乏神も居るし」
「な、なんでや? 何でそんな事に少し興奮を覚えるんや俺!? ち、違う! ワイにそんな趣味はあれへんのやー!!」
「露出狂の気あるんだ…」
「そんな冷ややかな視線は止めてぇー! ドキドキするやないかーー!!」
「Mの素質十分じゃない♪ ふふ」
「ささ、先生は楽にしておいて下され」
「な、なにを?! は、早まるな!」
「何を今更、それとも、私達じゃ駄目?」
「タ、タマモ……そ、そんな悲しそうな顔するんはズルイ…」
「それとも、拙者らではいけぬ理由でもあるのでござるか?」
「周囲の炉に対する冷たい視線やら、おかんの倫理感が……ひぃ!?」
「? 横島の母親ってそんなに怖いの?」
「怖いどころの話やない! お、おかんはアシュタロスより強敵や!!」
「そのあしゅたろすが、どの様な強さかは知りもさんが。何となく強いとだけは伝わり申すな」
「俺のおかんは、炉とか浮気とか二股とか……そんな不義理が大嫌いな潔癖症やねん!」
「横島? 不義理って何?」
「な、何ってタマモ。お前にもそれぐらいわかるだろ?」
「そうね、私も浮気は大嫌いよ。でも、私が許した相手なら問題ないわ。シロみたいに、純粋に横島が好きな女とかだったらね」
「左様でござるな。先生を悪しく言う輩、利用しようとする輩も許せぬでござるな」
「不貞は悪……とは思わんのか?」
「シロと横島を共有しようとしている時点でないわね」
「拙者もでござる、拙者は先生のお傍に居れるだけで幸せでござる」
「お、お前等…………解った! 俺は戦う! お前達をおかんに認めさせ……れるのか?」
「はぁ、これが横島なのよね~。まぁ、それでもいっか」
「で、ござるよ。先生は普遍の魅力を持ち続ける、快男児でござるからな~」
「褒めてねえな」
「褒めてるわよ? じゃ、さっきの続きしよ♪」
「なぬ!?」
「先程からの言動を鑑みれば……文珠の力は抵抗されておりますな」
「でも~、もう逃げないわよね♪」
「うぅむ」
「それとも、私達から逃げれるとでも♪」
「それは無理でござるなぁ♪ 拙者らの家は美神殿の屋根裏部屋でござるから、絶対に顔を合わせるでござるよ♪ 美神殿の前で迫っても宜しければ……でござるな♪」
「お、おまえら、それは脅しじゃねえか?!」
「それともその格好で警察に駆け込む? 妖狐と人狼に無理やり犯されるー! って?」
「くっ! 俺が公然わいせつで捕まるやないかっ!」
「じゃ、そういう事で~、いただきま~す♪」
「拙者も馳走になるでござる♪」
「いやー! 気持ち良さ気な監獄が目前にー! 誰か助けてーー!!」
『え? 無理やで。こんなおもろい事、やめさす訳ないやん』
『ですよね~、横っちは解ってませんね~』
「誰? 今の誰!?」
「あむ(ぺろ)♪」
「あふん♪」
あとがき
会話のみの構成もアリかな?と思い書いてみました。テンポの良さを気にして書いたつもりです、皆様に伝わっていれば幸いです。
なんだか、書いていて致命的な間違い……横島の非炉を壊してしまいました。非炉が歪みました。これを非炉歪(ヒロイズム)と読み取れるか、流石に厳しいかも知れません。
前回のレスで、四人様もおりましたので続きを書きましたが……すみません。これが拙僧の限界です。拙僧はこんな横島君が好きなので、書いている内にこうなりました。
皆様はもう少し、格好良い横島君がお好みなのかも知れません(読んでいるSSは殆ど格好良いっス!)。その為にも次の作品では、格好良い横島を頑張って書きたいと思います!……もしかして墓穴?
これで『愛のゆめ』は終了です。一応修行編と銘打って、妙神山に行くパターンを書いてはいるのですが、バトルで、頭の中のイメージ通りに書けません。更には陰陽道を調べてもイマイチ理解出来ませんでした。こんな事だったら、せめて普通科の高校にいくべきだったのだろうかと、今更ながら思い知りました。これからも日々勉強です…
最後に、誤字脱字のご報告や、ご指摘・ご指南等々……あればご感想などを送っていただけると、嬉しい限りでございます。それでは!次作でお会い出来る日まで!!
レス返し、させて下さい。
凛様
『がんばりましたで賞』ありがとうございます!私は賞状を貰った記憶は遠い昔……剣道の段位ぐらいしかありませんので、本気で嬉しいです。これからも読んで頂ける様な、読み易さに留意した文章を書きたいと思います!!
星の影様
句読点の使い方、本当に難しいです。更には三点リーダーの使い過ぎも……んがっ。書いている尻から使う始末です。今回は使い過ぎで、軽くなる程の内容が……本当にすみません!!★につきましても、これからは気をつけていきたいと思います。これからも星の影様に読んで頂ける様な作品を作りを頑張ります!!
方向転換様
後の悲劇(喜劇)とは、程遠い作品で申し訳ございません!一応、横島君には悲劇?だと思います。己の矜持を折られた横島君ですので(物凄い言い訳です)。文殊と文珠……早速辞書に登録しました!ありがとうございます!!次の作品では横タマではありませんが、甘々な話を書くと思います。未定ですが…
PD様
前回は、書いている内になんだかとっても、横島君が豹変してしまいました。私も書いてて意味が判りませんでしたが……今回は全員が豹変しました。流石GSです、書いててキャラが勝手に動いてしまいます!プロットを書いていない、私がいけないのかも知れません。ご容赦下さいます様お願い申し上げます。
鹿苑寺様
今回、横島君が非炉を脱却させてしまいました……申し訳ございませんでした。更に今回のあとがきで非炉歪(ヒロイズム)と言う造語を作ってしまいました。非炉逝(ヒロイック)と、どちらを使うか悩みましたが、後者はネガティブなイメージがあったので、友人に却下されました。これからは、鹿苑寺様がちょっと吹ける様な作品を作りたいと思います!
Tシロー様
読みやすくなってます>。ありがとうございます!これも偏に、Tシロー様を始め、皆様方からのレスの御蔭でございます!!更には、今回、シロが横島を散歩に誘いに来る事もベタでした……あぁ、良い意味でご期待を裏切れる様な作品を作れなかった事、平にご容赦下さいませ。しかも、非炉脱却……ぎゃふん。
紅蓮様
今回、横島君がまったく格好良くありませんでした……申し訳ございません。私は、こういった感じの横島君が好きなのですが、霊動シュミレーターに挑戦する時の横島君は非常に格好良くてそれも好きです。期せずして横島×タマシロになりましたが、甘々を通り越して蜜月な日々になってしまいました!
ラルダァ様
ありがとうございます!これからも読み易さを追求したいと思います……目下の目標はこれに尽きます。しかし……意外や意外。非炉(ヒーロー)の評価が結構高いっス。自分でも予期せぬ収穫でございました。これからも少しひねくれた造語を作っていきたいと思います!!
たかなり様
申し訳ございません!何故かこんな結末になっちゃいました!!ご期待に添えないと思われる今回の作品……前回に続いて甘々な作品になる様、頑張ってみましたが、これが限界です。誤字のご指摘ありがとうございました……しかも、〇〇せざる負えない→〇〇せざるをえない……すみません、これも私の不徳の致す限りでございます。やはり中1の時に、勉強を諦めた余波がこんな所まで波及しておりました……自分でも気を付けて読み直しますが、またの誤字のご報告等ございましたが、お手数かとは存じますが、ご一報下さいます様お願い申し上げます。
フォールティー様
誠に私の不徳の限りです。ありきたりな作品も、自分の発想の浅さが原因です。フォールティー様にご満足頂ける様な作品を作りたいと思いますが、今回もまた、シロが乱入すると言う、まったくをもって、ありきたりでございます。更には後半のご指摘……ぐうの音も出ません、完全に横島の説教が霧散していました……これからもご指導・ご指摘ございましたら、お手数かとは存じますが、ご一報下さいます様お願い申し上げます。
lonelyhunter様
海外からのレスでしょうか?翻訳機とありましたのでそう認識しています。間違った認識でございましたら、申し訳ございません。私は、日本語が不手なら英語は論外な人間でございます。翻訳機を通してどの様に変換されるか、解りません。今回も、乱文になっているかも知れませんが、それでも読んでいただければ幸いです。
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