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「『神々の迷惑な戦い』第八話(GS+聖闘士星矢)」

あらすじキミヒコ (2008-03-22 15:57/2008-03-28 11:41)
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「これが……拙者の最強形態でござるよ!!」

 堂々と言い放ったシロは、横島たちに作られた聖衣(クロス)を身にまとっている。そのため、現在の外見は、 アルテミスシロ中学生バージョン となっていた。
 彼女と対峙するは、海将軍(ジェネラル)の一人、クリュサオルのクリシュナ。

「そうか……
 『最強形態』というのであれば、相手に取って不足はない!」

 ここは、ポセイドン海底神殿と呼ばれる空間。その中でも、インド洋の柱の前である。
 魔神アシュタロスが『魂の牢獄』から解放され、神魔のパワーバランスが崩れた後。神々同士の潰し合いすらバランス補正に利用されてしまう時代となった。
 そして、アテナとポセイドンという神々のケンカに、美神たちは巻き込まれた。おキヌが誘拐されたのだ。
 彼女は、ポセイドンの妃となることを拒んだために、メインブレドウィナと呼ばれる大きな柱の中で水責めにあっている。これを壊して開けるには、まず、他の七本の柱を破壊しなければならない。
 そのため海底神殿に乗り込んだGSメンバー。彼らの活躍で、すでに二本の柱は崩された。
 三本目の柱を壊すため、今、シロとクリシュナの戦いが始まる!


    第八話 ポセイドン編(その三)


「うおーっ!!」

 霊波刀の出力を最大にして、シロはクリシュナに突撃した。
 しかし、クリシュナの槍に、軽くあしらわれてしまう。

「な……なんと!?」
「おまえの光る剣……
 コスモで作られた武器のようだな?
 だが、そんなもの……
 この黄金の槍(ゴールデンランス)の敵ではない!」

 そもそもクリュサオルとは、ギリシア神話では、ポセイドンの息子の名前だ。生まれたときから黄金の剣を持っていたと言われるほどの強者である。
 その名を冠するジェネラルであるクリシュナは、黄金の槍を持っていた。『黄金の剣』では神話そのままであり、畏れ多いからなのだが、それでも効果は同じだ。悪を成敗する聖なる槍なのだ。

「拙者だって……神さまの力を借りているでござる!」

 シロは人狼の少女である。人狼の祖を辿れば、それは、月と狩りの女神アルテミスの従者。そして、今、シロには、その女神アルテミスの力が降臨しているのだ。
 ……と、シロは思っていた。
 しかし。
 クロスの形が『アルテミス憑依状態』と同じだからといって、別に、実際にアルテミスの力が取り憑いているわけではないのだ。
 その点、彼女は勘違いしているのだが、誤解を指摘する者は、ここには誰もいない。

「ならば……
 おまえの信奉する神が貧弱なのだろう!
 信ずる神の脆弱さを恨むながら……死ね!!
 フラッシングランサー!!」
「は、速い……!!」

 クリュサオルが、目にも止まらぬ早業で、槍を多撃する!


___________


「うう……悔しいでござる……」

 シロは立ち上がったが、すでに脚もふらついている。
 何度うち合っても同じだった。こちらの攻撃はアッサリいなされてしまうし、むこうの攻撃には対応できなかった。目では追えても動きが追いついていかないのだ。
 もはや彼女の体はボロボロ。ミミズ腫れや擦り傷、小さな切り傷が至るところについていた。

「せっかく……先生が鎧をくれたのに……」
「……その『先生』とやらに感謝するのだな。
 その程度で済んでいるのは、クロスのおかげだ」

 クリシュナは、シロの防御力の高さに驚嘆していた。
 彼のゴールデンランスは、何ものをも貫く神の槍のはず。ところが、もう数えきれないくらいシロを直撃したにも関わらず、刺し通すことができないのだ。

(ふざけたクロスだ……。
 防御面積が狭いように見せかけておきながら……)

 クリシュナは、心の中で苦笑いしてしまう。
 ゴールデンランスで突いた感触では、鎧で覆われていない部分にまで、見えない鎧があったのだ。どうやら、クロスがシロのコスモ……霊力を増幅して、パーツが無いむき出しの部分に、霊力の衣を形成しているようだった。
 そう。
 これこそ、このクロスの最大のポイントである。覆いすぎると女性的露出が減るが、ちゃんとカバーしないと防御力が低い。そんな横島的ジレンマを解決するためのアイデアだった。
 もちろんクリシュナは横島を知らないので、『覆いすぎると女性的露出が減るが』ではなく、

(硬いパーツで覆いすぎると
 身動きが悪くなるから……ということだろう)

 と、常人の感覚で理由を推測している。
 しかし、この一点以外、クリシュナの分析は正しかった。


___________


(強敵でござる……)

 一方、シロは、クリシュナの攻撃力に驚いていた。
 これまでの敵と比べても強い。シロは、そう感じていたのだ。
 いまだ強力な魔族と戦ったことはないシロである。美神たちと因縁深かったメドーサとも対戦していないし、アシュタロスとの長い戦いにも全く参加していない。
 シロの経験の中で最強だったのは、おそらく、フェンリルとなった犬飼であろう。アルテミスの力を借りて、それでも、最後は美神に助けてもらう必要があったくらいだ。
 しかし、化け物フェンリルだけではない。最近、正々堂々とした戦いの中でも、強き相手がいた。

(天狗どの……!!)

 今回がおキヌを救うための戦いであるように、あの戦いは、タマモを原因不明の高熱から助けるためだった。
 しかも、天狗は、シロの父親とも剣を交えたことがあったのだという。
 シロが病気になり、薬が必要だった昔。
 真剣勝負であるがゆえにシロの父親から片目を奪ってしまったのが、天狗だったのだ。

(父上……)

 狼の習性だ。
 大切な仲間……群れの一員を助けるためであるならば、多少の犠牲も厭わないのだ。
 そう。
 シロだって、この強敵を倒すためには……。


___________


「……なんのマネだ!?」

 いぶかしむクリシュナ。
 彼の目の前で、敵の少女は、両手を大きく広げて立っていた。
 まるで観念したかのようなポーズだが……。
 違う!
 大地を踏みしめた足にはシッカリと力がこもっており、そして、その目から闘志の炎は消えていない。むしろ、燃え盛っている!

「くるでござるよ……」
「……なに!?」

 小声でつぶやいた少女は、

「その槍で……拙者を突くでござる!!
 拙者、受けとめてみせるッ!」

 今度は、大きく叫んだ。
 クリシュナも、負けじと声を張り上げる。

「……面白い!!
 その挑戦、受けて立とう!!
 くらえーっ!!」

 少女の体の中心を……鎧のパーツではなく霊力の衣のみで守られている、その腹部を目がけて。
 クリシュナは、力強く、ゴールデンランスを突き出した!


___________


 グサッ!!

 黄金の槍が、シロの体を貫いた。
 ただし、

「……逃げを計ったな、卑怯者め!」

 クリシュナの狙いは外され、ゴールデンランスは、シロの脇腹を貫通していた。

「……しかし逃げきれなかったようだな」
「違う……これも計画でござる……」

 不敵な笑みを浮かべたクリシュナに対し、シロも、苦痛に耐えながらニヤリと笑う。
 迫ってきた槍からシロが体をわずかに動かしたのは、怖じ気づいたからではなかった。体の重要な器官を避け、かつ、シッカリと刺されるためだったのだ。

「もう……放さない!」

 今、激痛に顔をゆがめたシロは、左手を槍に伸ばし、強く握り込んだ。

「これで……槍の動きは封じたでござる!!」
「そうか……!!
 傷口の筋肉をしめ、
 槍をその身から抜けなくしたのだな!?」

 かわせない速さだからこそ。
 下手に避けようとするのではなく。
 自分の体で持って、槍の動きを止めたのだ。

「次は……折らせてもらうでござる!」

 シロは、右手の霊波刀を槍の柄に叩き付けた!


___________


(痛いでござる……。
 この作戦はダメでござるよ……)

 そりゃそうだ。
 シロは、自分の体を貫く槍に、上からインパクトを与えたのだ。自分で自分の傷口をえぐる形になっていた。
 しかし、無駄ではなかった。
 クリシュナ自慢のゴールデンランスを、真っ二つに折ることが出来たのだから。

(うっ……うぐっ!!)

 シロは、これが最後の激痛と思いながら、先っぽ側半分となった槍を、腹から引き抜いた。

「これで……拙者の勝ちでござるな!?」

 彼女の前で、クリシュナは、少しずつ後ずさりしている。
 得物を折られた槍使いなど、牙を抜かれた狼のようなもの。もはや犬っころ以下である。
 シロは、そう思ったのだが……。
 戦いは、まだ終わりではなかった。


___________


 クリシュナは、その場に腰を下ろした。
 しかし、負けを認めて座り込んだわけではない。

「……この男!?」

 シロは驚いた。座禅を組むような姿勢のクリシュナからは、それほど高い霊力が出ているのだ。
 分厚い霊力に包まれた彼は、地面から浮いているようにすら見える。

「これがクンダリーニだ……。
 もはや……おまえの負けだ」

 セイントがコスモ、GSが霊力と呼ぶエネルギー。
 クリシュナにとって、それは『クンダリーニ』である。
 シロを認めたからこそ、彼は、体内に眠らせていたエネルギーを全開にしたのだ。
 そして、殺すには惜しい敵と思ったからこそ、自分の信念を説き始める。

「シロとやら……おまえは
 まだ子供だから、わからないのだろう……」

 インド洋の島国で生まれ育ったクリシュナは、多くの貧困を目の当たりにしてきた。
 それは、人々が微笑みを忘れ、堕落と腐敗にまみれた結果である。
 時代は、まさに世紀末なのだ。

「そして、この世紀末に救世主となられる御方こそ、
 ポセイドンさまなのだ……!!
 これは……ポセイドンさまの世紀末救世主伝説なのだ!!
 その世界観にあわせたからこそ、俺もモヒカンなのだ!!」
「ええーっ!?」

 意味が分からぬまま驚くシロ。
 一方、クリシュナは、淡々と理想を語り続ける。
 ポセイドンの力で、世界全土に大洪水を引き起こし、全てを洗い流す。そして、浄化された大地に、新しい世界を作り上げる。
 そのために、アテナと地上の覇権を争うのだ。

「……アテナ?」
「わかっている。
 おまえたちはアテナの手の者ではなく、
 アフロディーテの配下なのだろう」
「いや……そうじゃなくて……」

 シロの否定にも耳を傾けず、クリシュナは、再び口を開く。

「だが……これも必要な戦いだったのだ」

 クリシュナにも、最初は理解できなかった。
 アテナとの大事な聖戦の前に、なぜ、別の神の軍に挑むのか?
 ポセイドンの代理であるはずのカノンが何か暗躍しているのではないか。そうまで考えた時期もあったが、今ならば分かる。
 新しい時代のために、ポセイドンの妃が必要だということが、クリシュナにも実感できていたのだ。

「シロ……
 おまえは武人であるが、同時に、女でもあろう?
 人類の子孫繁栄のためには、最低限度の女性は必要だ。
 この海底神殿に……俺のもとに残れ!!」 

 誤解してはいけない。
 別に、クリシュナはシロに惚れたわけではない。
 ただ、新時代の礎を築くために、すぐれた女性を欲していただけだ。
 しかし、この言葉はシロを怒らせた。

「ふざけるなーっ!!
 女性は……
 子供を作るための道具ではないでござるッ!!」

 シロには分かっている。
 おキヌがポセイドンの妃になどなるわけがない。彼女は、横島に惚れているのだ。
 そして、横島は……シロにとっても、大事なひとである。

「そうか……やはり子供なのだな。
 これだけ言ってもわからぬとは……」

 クリシュナは、シロの霊力が上昇するのを察知していた。
 それでも、まだクリシュナの敵ではない。
 彼女の闘志に免じて、せめて、ひとおもいに殺してやろう。
 それが、一人の武人に対する礼儀だろう。
 心を決めたクリシュナは、奥義をくり出した。

「マハローシニー!!」
「うっ……!」

 クリシュナのクンダリーニ……霊力が光となって全身から放出された。
 その強力な霊圧で吹き飛ばされたシロは……。
 もはや意識を失っていた。


___________


「シロちゃん……今朝は、お寝坊さんなのね?」
「……あれ!? おキヌどの……!?」

 気が付くと、シロは、事務所の屋根裏部屋にいた。
 ベッドの上で身を起こした彼女に、おキヌが優しく微笑んでいる。

(……ちがう! おキヌどのは、今ごろ……)

 シロには分かっていた。
 これは夢なのだ。
 だから……。

「たまには……俺の方から誘うのもいいだろ?」
「……先生!!」

 横島が率先して、シロを散歩に連れていく。
 シロは幸せだ。
 彼女のしっぽも、幸せそうに揺れている。
 ただし……。

「いいですね、こういうのも!
 へへへ……」
「そうだろ、おキヌちゃん!」

 今日の散歩は、ゆっくりだ。
 おキヌも一緒だからだ。
 シロの目の前で、横島とおキヌは、仲良く手をつないでいる。

(先生とおキヌどのは……やっぱり、お似合いでござる)

 いつのまにか、シロは、二人の間にいた。
 左手を横島に、右手をおキヌに握られている。
 三人並んで歩いているのだ。

「なんだか……シロちゃん、
 私たちの子供みたいですね!?」
「おいおい……。
 俺たち、子供ができるようなこと、
 まだ……やってないぞ!?」
「もうっ!!
 横島さんったら……!」

 シロを挟んで、二人が冗談を言い合う。

(『子供ができるようなこと』……。
 もしも、拙者だったら……)

 かつて、シロは、もう死ぬと勘違いした横島から、

「どこのどなたか存じませんが
 その胸の中で死なせてくださいーッ!!」

 と言われて、胸に飛び込まれたことがある。
 その時に返した言葉、

「拙者まだ心の準備が……」

 それは当時の正直な気持ちであり、今でも、同じだった。

(拙者には……まだ
 その覚悟は、ないでござるよ)

 いつかは、シロもその気になるのかもしれない。
 だが、今は違う。
 それならば……。

(今は……お二人の幸せを祈るでござる)

 おキヌと横島の二人を、心から祝福しよう。
 そのためには……。
 まず、おキヌを、ポセイドンの魔の手から助け出さねばならない!

『おまえが……そのつもりなら……』
「……女神さま!?」

 戦意を取り戻した彼女の前に、女神アルテミスが姿を現した。

男!!
 身勝手で汚らわしい役立たずのゴロツキども!!
 ……しかし、おまえがそこまで想うのであれば
 中には……立派な男もいるのでしょう……』
「……そうでござる!
 先生は……すばらしいひとでござる!!」
『よろしい!! 力を与えます!! お手っ!!』

 女神のパワーが、シロの体に注ぎ込まれた!


___________


「……!?」

 目を覚ましたシロは、自分の体の異変に気づいた。
 擦り傷や切り傷の跡も、脇腹を貫かれた傷も消えてはいない。
 しかし……。
 成長しているのだ!
 もはや、アルテミスシロ中学生バージョンではない。これは、アルテミスが憑依したときの姿そのものである!!

(拙者の夢を通して……
 女神さまが降臨なさった!)

 シロは、再び立ち上がり、クリシュナをキッと睨んだ。

(今度こそ……負けないでござる!!)


___________


(やっぱり……あんた、バカ犬ね)

 実は、シロとクリシュナの戦いを、隠れて見守る者がいた。
 タマモである。
 二人の戦いの途中で、近くまで来てしまったのだが、手を出してはいけない雰囲気だったので静観していたのだ。また、最近の書物から『槍使いは九尾の狐の天敵である』という知識を得たことも、参戦しなかった理由の一つとなっている。
 ところが、シロがやられてしまった。
 ならば仇討ちというのも考えたが、それを望むシロではなかろうと思い……。
 妖狐の幻惑能力を駆使して、シロの夢に干渉してみたのだ。

(……横島本人以外、みんな気づいているのね)

 横島の周囲の女性が彼に好意を寄せていることは、タマモも理解している。この水面下の横島争奪戦で、どうも、おキヌが一歩リードしているらしい。その現状を、美神もおキヌもシロも、認識していたのだ。

(あんな奴のどこがいいのかしら?)

 タマモも横島を嫌いではなかった。しかし、異性としての好意は、今のところ持っていない。だから、冷静に状況を観察できるのだった。

(でも……シロは脱落ね)

 あの夢の中で、シロは、踏ん切りをつけてしまったらしい。
 これで、シロは、もうヤキモチをやくこともなく、おキヌ救出に専念できるだろう。
 しかも、タマモも、秘かに加勢したのだ。
 女神アルテミスの幻覚を見せるという形で。

(その分、バトルは頑張りなさいよ!?)

 今、この場には、『シロがアルテミスの力で急成長した』という幻が蔓延している。
 一対一の戦いであっても、これくらいの助けは構わないだろう。
 そして、これは……。

(これで借りは返したからね!)

 かつてタマモが高熱で苦しんでいた時に、薬を手に入れるために頑張ってくれたシロ。
 薬自体は必要ないものだったが、しかし、その気持ちには報いる必要があったのだ。

(……あとは、あんた一人で十分でしょう!?)

 タマモは、その場をあとにし、別の柱を目指した。


___________


「……なんということだ!!
 マハローシニーを受けても立ち上がってくるとは……」

 本当に驚かされる戦いである。
 普通ならば、良くて失明、悪くて即死のケースである。
 だが、クリシュナの目の前で、シロは不屈の闘志とともに蘇った。クリシュナは知らないが、シロは人狼であり、人間よりも身体能力が高いため、失明も免れたのだった。
 さらに、シロ自身の姿も変わっている。シロは、スタイル抜群の女性になってしまったのだ。

「ここまで育てば、さすがの俺もドキドキだ……」

 煩悩など捨てたはずのクリシュナでさえ、そう思ってしまうくらいだった。
 そして、外見だけではない。シロの霊力もグンとアップしている。
 この霊力上昇は、タマモによる幻覚ではなく、事実だった。プラシーボ効果である。
 良く言って素直、悪く言って単純な部分のあるシロは、女神が憑依したという思い込みで、霊力が上がってしまったのだ。アルテミスシロ中学生バージョンの時にも同様に思い込んでいたはずだが、その頃の『思い込み』は、まだ足りなかったのだろう。いや、夢の中での決意も、霊力上昇を助けているのかもしれない。

「それでも……おまえが俺に勝つことは無理だ……。
 俺に……チャクラがある限りはな!!」

 強者の驕りからではなく、強敵に対する敬意から、クリシュナは自分の弱点を伝えた。
 ここで彼が『チャクラ』と呼んでいるのは、彼の体内で『クンダリーニ』を生じさせる七つのポイントのことである。GSにとっての『チャクラ』は霊力中枢であるが、『クンダリーニ』が霊力である以上、両者は同じものといえよう。

「ならば、その『ちゃくら』を叩き斬るでござる!」

 シロが、巨大な霊波刀を出して、クリシュナに突撃した。クリシュナも、これを迎え撃つ。

「さっきは……
 女性相手ということで、無意識のうちに
 力を抑えてしまっていたのかもしれない……。
 だが、そんな失礼なことは二度としないぞ!!
 シロ!! 今度こそ……本当の最期だ!!
 マハローシニーの大いなる光に飲み込まれて
 ……涅槃に旅立ちたまえ!!」

 前回以上の強烈な光が、クリシュナの体から解放された。
 しかし!
 聖書の伝説においてモーゼが海を二つに割ったように、シロの霊波刀が、クリシュナの光を切り裂いていく!!

「……バカなーっ!?」
「見えたでござる!!」

 クリシュナのチャクラは……。
 一カ所に集中しているわけでもなく、体中に分散しているわけでもなく、胸に北斗七星を描くわけでもなく。
 それは、正中線に沿って縦一列に並んでいた。

 ズサーッ!!

「見事だ……シロ……」

 霊波刀でチャクラを切り裂かれたクリシュナは、その場に倒れ込んだ。
 命こそ取り留めたようだが、完全に気を失っている。
 それに、霊力中枢を断たれた以上、マリーナとしては、もはや再起不能かもしれない。

「か……勝った……!
 女神さま……ありがとうでござる……」

 本当に力を貸した『女神』が誰であるか知らぬまま、疲れきったシロは、その場に膝をついた。


___________


 一方、シロがクリシュナと死闘を繰り広げていた頃。

「立てーっ、ヨコシマ!!
 この程度で倒れるとは……
 それでも、俺の弟弟子かーっ!?」

 横島は、北氷洋の柱の前で、ボコボコにされていた。
 まるで美神にセクハラしてシバキ倒されたかのように血だらけである。セクハラの結果の血ダルマならば慣れているが、シリアスバトルでこうなるのは珍しい。
 彼の敵は、クラーケンのアイザック。今でこそジェネラルの一人であるが、かつてはセイント候補生として、ゴールドセイント水瓶座(アクエリアス)のカミュに指導されていた男だ。

「何度も言ってるだろ……
 俺は、おまえたちの一門に入った覚えはねえぞ」

 文句を言いながら立ち上がる横島。
 そもそも横島がアイザックに『弟弟子』と呼ばれるのは、十二宮でのカミュ戦が原因である。あのとき横島は、カミュの凍気技に対し、『凍』文珠で戦ってしまった。

「どちらが、より絶対零度に近づけることが出来るか?」

 という勝負に引きずり込まれてしまい、その中で、横島はカミュを倒したのだ。しかも、横島はカミュの技のポーズまで模倣していた。だから、カミュにとって横島は、『短い戦いの間にカミュの技を盗み学んだ男』、つまり『ある意味カミュの弟子の一人』となったのだ。
 それ以来、カミュの弟子に会うたびに、弟弟子扱いされてしまう横島なのであった。


___________


(まるで弱いじゃないか……。
 本当にこの男が、我が師カミュを倒したというのか?)

 アイザックは、ジェネラルとなった今でも、カミュを敬愛している。そして、そのカミュが最新の弟子ヨコシマと戦って負けたという噂を耳にしていた。
 ポセイドンの海闘士(マリーナ)となった自分。
 アテナの聖闘士(セイント)である、師カミュと弟弟子の氷河。
 アフロディーテの美闘士(ワンダフル)であるらしいヨコシマ。
 道は違えど、それぞれ、理想と正義に燃えたクールな戦士だと考えていたのだ。しかし、いざ戦ってみると、そうとは思えないほど、横島は貧弱だった。

(これでは……役に立たない……)

 弟弟子の氷河とともにカミュのもとで修業していた頃、アイザックは、セイントを目指していた。ところが、氷河が個人的な事情で死にそうになり、彼を助ける際、アイザック自身が命を落としそうになる。そして、もう助からないという最後の瞬間、ポセイドンの意志によって救われたのだ。
 しかも、ポセイドンは、海の魔物クラーケンの形を通じて助けてくれた。
 クラーケン。それは伝説の魔物であると同時に、海の守り神でもある。海をいく船を丸呑みすると恐れられるクラーケンであるが、クラーケンが襲うのは悪人の船のみだ。勧善懲悪を地で行う、正義の魔物なのだ。
 だからクラーケンは、アイザックにとって憧れの存在でもあった。死の間際に神に助けられた上、その『クラーケン』の戦士として任じられたのだから、アイザックの感激もひとしおである。

(ポセイドン様を救わなければならないのに……!!)

 アイザックは、ポセイドンへの忠義が厚いだけではない。今回の戦いがポセイドン自身の意志で始められたものではないと気づいてもいた。
 まだポセイドンが半覚醒であることを利用し、巧みに操っているのが、海龍(シードラゴン)のカノンなのだ。
 もともと、アイザックはカノンと仲が良かった。カノンはゴールドセイント双子座(ジェミニ)のサガの弟であり、サガに何かあった場合には代わりにジェミニとして戦う定めを持った男。いわば、補欠セイントだったのだ。ただし、サガの代わりが出来るくらいなのだから、『補欠』とはいっても、並のセイントを遥かに超えた実力を持っている。
 そんなカノンも、アイザックとは異なる事情でポセイドンに助けられ、マリーナとなった。
 『もしかしたら本来のシードラゴンではないのかもしれない』と悩むカノンを励ましつつ、セイント関連出身同士ということで、アイザックは、彼と親交をあたためてきた。カノンがポセイドンの代理をすることすら、友として誇らしく思っていたのだが……。

(俺はカノンも助けなければならないのに……!!)

 親しいからこそ、アイザックには分かっていた。今のカノンは、何かに取り憑かれている!
 そして、コッソリ彼の様子を探っていたアイザックは、『カノン』の独り言から、その悪霊の名前まで知ってしまったのだ。
 しかし、実力者のカノンをも操る悪霊だ。とてもアイザック一人では、かなわないだろう。ジェネラル六人が結束すれば何とかなるだろうが、皆を説き伏せることができるかどうか?
 アイザックには、無理だと思った。

「アイザック? あいつ、セイントのなり損ないだろ?」
「……今でもセイントの師匠を慕ってるらしいぜ。
 あいつ、アテナのスパイなんじゃね?」

 雑兵の間にすら、そんな風評があるからだ。
 そして、一人で、もどかしい思いをしていた彼に、チャンスが訪れた。
 アフロディーテ軍が攻め込んでくるという。
 その中には、カミュ最新の弟子であり、かつ、カミュを倒した男も含まれているという。
 ならば、彼を通じてアフロディーテ軍と共闘すれば、カノンの『悪霊』にも勝てるかもしれない!

(だから我が身をもって
 ヨコシマの力を試しているというのに……)

 横島との対戦を希望したのも、彼をテストするためだった。
 しかし、結果は……。
 不合格である。

(もはや……
 混乱に乗じてカノンを討つ!
 それしか手はないか……)

 カノンを救うのではなく、『悪霊』ごとカノンを倒す。実力差は明白であるが、それでも、やるしかない。
 そう決意したアイザックだった。

(ならば……
 まずは、目の前のヨコシマにトドメをさす!)


___________


(こいつ……カミュより強いんじゃねえか?
 それとも……俺が弱くなったのか?)

 アイザックが少考している頃、横島も、考え込んでしまっていた。
 さきほどから、何度も『見よう見まねオーロラエクスキューション』を撃っている。カミュ最大の技オーロラエクスキューションと同じポーズからコッソリ『凍』文珠を投げつけるという、横島のオリジナル技だ。
 オーロラエクスキューションのポーズが文珠を隠し持つのに相応しく、また、カミュを知る者に対してはハッタリ効果もある。本家オーロラエクスキューションをも凌駕する、最強の凍気技のはずだった。
 しかし、それが、このアイザックには通用しないのだ。

(カミュには効いたのに……。
 あの時と今とで、何か違うのか……?)

 あれは、美神を助けるための戦い。
 今回は、おキヌを救うための戦い。
 二人とも、横島にとって大切な女性である。

(おキヌちゃん……)

 そのおキヌは、カミュと戦ったとき、横島のそばにいてくれた。恋人同伴で戦場に来たとカミュに誤解され、二人丸ごと氷の棺に閉じ込められたくらいだ。
 脱出後、文珠でおキヌを温めたが、寒さで少し思考が異常になったおキヌは、

「文珠なんかじゃなくて……
 やっぱり、ひとの温もりが欲しいんです……」

 と言い出したものだった。
 これが、横島にとって、カミュ戦の最大の思い出である。

(おキヌちゃんは……大事な女性なんだ……)

 もし他の女のコから同じことを言われていたら、横島は飛びかかってしまっていたであろう。しかし、おキヌが相手では、横島はセクハラできないのだ。

(だけど……)

 寒さにやられた影響が大きかったのだろうか、十二宮でのおキヌは、その後も少し言動がおかしかった。おかげで横島もブレーキが利かなくなってしまい、服の上からではあったが、彼女のチチ・シリ・フトモモを撫でたり揉んだりしてしまった。

(あれは暴走だったよな……ごめん。
 キスのほうは仕方なかったけどな……)

 そう、十二宮では、口移しで解毒薬を飲ませるシチュエーションもあった。おキヌの唇のやわらかさも味わってしまったのだ。

(あれが、おキヌちゃんのファーストキス……)

 おキヌは、自ら、そう言っていた。
 そして。
 もうひとつの『ファーストキス』。
 今度は、人命救助という言いわけも出来ない、本当のキス。
 ソロ邸でおキヌが誘拐された夜、その少し前に交わされた、甘い甘いキス。
 まるで恋人同士のようなキスだったが、しかし、おキヌと横島は、そんな関係ではないはずなのだ。

(おキヌちゃん……何を考えていたのか……)

 彼女の真意を知るためにも、彼女を助けないと……。

(……!?
 いや、違う!!)

 ここで、横島の中で、何かが燃え上がった!
 おキヌの気持ちを確かめるために、彼女を救出する。そんなシリアスな気持ちで戦っていたから、横島は弱かったのだ。
 今、彼の中で、より横島らしい感情が燃え上がった。

(そうだ、俺は……!!)

 おキヌを助け出すのは、彼女の気持ちを聞くためではない。それも理由の一つではあるが、もっと大切なのは……!!
 おキヌのチチ・シリ・フトモモの感触を、そして、やわらかい唇の感触を、再び堪能するためだ!
 さらに……!
 もしも、おキヌがその気であるならば、さすがに、もう遠慮する必要もない。
 その先も……!!
 最後まで……!!!

(うおーッ!! おキヌちゃんーッ!!)

 横島の妄想が、煩悩が、そして霊力が、ドンドン増大する!


___________


「さらば少年の日々!!
 お父さんお母さんっ、忠夫は男になります!!  
 おキヌちゃんをオンナにしますーッ!!

 横島が、突然、叫び始めた。

「何を言っている……!?
 言葉の意味はよく分からんが
 とにかく凄い霊力だ……!!」

 アイザックから見て、今の横島は、凄い自信に満ちあふれているようだった。

「煩悩全開『絶対零度』……!!」
「なにーっ!?
 技を発動させるポーズが違う!?」

 これまでの横島の凍気攻撃は、すべて、カミュのオーロラエクスキューションと同じポーズから放たれていた。
 しかし、今回は違う。
 横島は、ただ『凍』文珠を強く握りしめ、それを高々と掲げたのだ。
 天に向かって屹立する彼の手は、妄想の中の何かを象徴していたのかもしれない。
 そして、握り込んだ文珠の光が、横島のコブシ全体を包み込む。

「そうか……!?
 今までは借り物の拳で戦っていたのか。
 ……ようやく本気を出すというのだな!?
 ならば、こちらも最大の技で応じよう!!」

 さきほどまではテストのつもりだったから、アイザックも、必殺拳は使わないようにしていた。
 だが、もはや横島を殺してしまうことも決意した直後なのだ。それに、向こうが大技でくるならば、相応の技で対処しなければテストにもならないだろう。
 だから、アイザックも、渾身の技を発動させた。

「オーロラボレアリス!!」
「男になりますーッ!!」

 両者の技が激突する。
 『オトコになります』という気持ちで投げつけられた、煩悩全開の『凍』文珠。その凍気は、オーロラボレアリスの勢いを完全に包み込み、アイザックを直撃した。

「おまえの必殺技『オトコニナリマス』……
 たしかに見せてもらったぞ……。
 フフフ……熱い思いの『絶対零度』。
 ……おまえの勝ちだ!!」

 アイザックが倒れ込む。
 遠のく意識の中、アイザックは、横島に真実を告げようとするが……。

「ヨコシマ……。
 ポセイドン様を助けてくれ……。
 この戦いを影で操っているのは……
 おまえたちも知っている、あの……」

 と、肝心の名前を言う前に気絶してしまった。


___________


 どこかで柱が崩壊する音がする。
 柱の一つを目指して走っていたタマモは、それを耳にした。
 紛らわしかったが、彼女には分かった。今のは、立て続けに二本崩れた音だ。しかも、その一つは……。
 シロが戦っていた場所から聞こえてきた。

「……やればできるじゃない」

 心の中でシロを褒めたタマモ。
 実は、ジェネラルが二人ほぼ同時に倒されたため、柱破壊用武器運搬役の少年は大変だったようだが、そこまでタマモは知らない。
 そして、彼女は、南氷洋の柱に辿り着いた。

 くんくんっ。

 彼女の鋭敏な嗅覚は、ここで何が行われたのかを推測する。

「何を考えているの……!?
 こんな戦闘の最中に……!?」

 続いて、タマモは、敵が彼女に精神攻撃を仕掛けてきたことを感知した。

「あ! そういうことだったのね……」

 ここの柱を守るジェネラルは、リュムナデスのカーサである。強力な精神感応者であり、幻を見せることで敵を撃破する男だ。母親の幻影を見せて伊達雪之丞を倒し、淫らな幻覚を利用して西条・魔鈴めぐみ・唐巣神父・美智恵をやっつけている。
 ちなみに、カーサ自身が敵を陵辱するようなことは、まだ全くしていない。

「……面白いじゃないの。
 この私……妖狐と化かし合いをしようだなんて!」


___________


「ハアッ、ハアッ……。
 あんた……卑怯ね……」

 一番最初に走り出したはずの美神は、ようやく、目標だった柱に辿り着いていた。
 しかし、すでに走り疲れている。なにしろ、ここまで来るだけで大変だったのだ。
 『シードラゴンが相手する』と招待されたはずなのに、道は複雑。途中の分岐も多かったし、落とし穴や落石などのトラップまであった。そうした罠は、近道できそうな通路にこそ多く、途中からは、常に遠路を選ぶようにしたくらいだ。

「くっくっくっく……。
 そういう反則ワザは、君のお家芸だろう?
 自分がやられた感想はどうだったかね?」
「……!?
 あんた……私のことを知ってるみたいね……」

 美神は有名なGSだ。
 詳しく調査されていても不思議ではない。
 もちろん、個人的に美神を知っている可能性もあるが、美神のほうでは、シードラゴンのカノンに見覚えなんて……。

「あーっ!?
 あんた、十二宮のときのラスボスじゃないの!!」

 美神は、気がついた。カノンは、サンクチュアリで教皇に化けていた男ソックリなのだ。

「えーっと、なんて名前だったっけ……?
 老師のとこで遊んだゲームに、
 似たような名前のものがあったと思うんだけど……。
 ノコギリか何かが最強武器なやつ……」
「サガ……だな?」
「そう! サガ!
 あんた……そのサガの双子ね!?」

 目の前のカノンは『サガ』その者ではない。
 霊能力者特有の勘で、美神は、そう察したのだった。

「……さすが美神令子。
 そこまで一目で見抜くとは……」

 カノンは、手で空間に大きな三角形を描き始める。

(……まずい!
 これは……なんかすごい技が来る!!
 ……防御しなきゃ!!)

 美神の背筋を、嫌な予感が駆け抜けた。
 身を守ろうとする彼女の意志に応じて、背負っていた小さなリュックから何かが飛び出す。

「ほう……!?
 似合わぬリュックをしょっていると思ったら、
 そういうことか……」
「うるさいわね!
 言われなくてもわかってんのよ!」

 カノンは、面白そうにつぶやき、手の動きを止めた。
 美神だって、背中のリュックが今のボディコン姿にはコーディネートされていないと承知している。しかし、これが横島から渡された『女性用クロスボックス』だったのだ。
 ファッションを犠牲にしてまで運んできたクロスは、美の女神アフロディーテをイメージした物。金色に輝く小さな美人像であるが、顔は美神を模しているようにも見える。

「我が名は美神! 私の体を覆え! わがクロスよ!!」
「おいおい。それ、悪役のセリフ……」

 カノンのツッコミもものともせず、美の女神のクロスは、微細な丸いパーツに分解して、美神の体にはり付いていく。

 ちゃりーん。ちゃりーん。ちゃりーん……。

「装着音が少し気になるけど……。まあ、いいわ」
「それより……いいのか、それで?」

 カノンが技の発動をキャンセルしてまで美神にクロスをまとわせたのは、何も、正々堂々とした勝負を望んだからではない。新奇なクロスに興味があっただけだ。カノンにとって……いや『カノン』を支配する『悪霊』にとって、クロスとは、コスモつまり霊力を利用した鎧だ。彼は、そうした霊的装備には関心があったのだ。
 しかし、実際に出てきたクロスは、彼を落胆させた。それは、美神の服がある部分のみをカバーしているのだ。もともとボディコンスタイルで露出が多いファッションなのだから、これでは、たいした防御能力もなさそうだ。

「期待はずれだな……」
「……えっ!?」

 つぶやく『カノン』とは対照的に、美神は驚いていた。
 美神の服を100%カバーしたクロスは、衣類の布地と一体化していくのだ。

「ちょっと……何!?
 気持ち悪いじゃないの……!!」
「……!?」

 クロスの内側で起こっていることだけに、『カノン』には、この過程は見えていない。美神だけが、クロスが肌に直接触れる不快感にとらわれていた。

(横島クンのアイデアなの……!?
 でも……なんで!?)

 本当に嫌な感覚なのだ。

(これじゃあ……横島クンに
 セクハラされてるほうがマシだわ!!)

 つい、美神は、横島に体を触れられる感触とくらべてしまった。そして、美神がそれを頭に思い浮かべたことが、クロスの最終変化を引き起こす!

 スーッ。

 何かが消えていくような音とともに……。
 クロスが透明になったのだ!
 すでにクロスは美神の衣類を下着まで吸収した後なので、これでは、美神の裸体が丸見えだ!!

「な、なに考えてんの、あのバカ!!
 私は『裸の王さま』じゃないのよ!?
 これじゃ戦えないじゃないの……!!」

 美神は、両手で自分の体を抱きかかえて、その場に座り込んでしまった。
 もちろん、この機能は、ムウではなく横島のアイデアである。
 美神が横島のセクハラを肯定的に思い描いたら、美神が着ているものが透明になってしまう。つまり、これは『横島のセクハラを受け入れる心理状態になると、美神は裸になる』というシロモノだ。

「……敵を惑わすには効果的っスよ?
 ムウさんだって、目の前で美人のネーチャンが
 いきなりヌードになったら、少しは動揺しますよね!?」

 と、横島はムウを説き伏せ、こんなシステムを加えたのだった。横島としても、冗談半分でつけてもらった機能である。発動条件が厳しいだけに、そう簡単に作動するとは思っていなかった。

「『裸の王さま』……!?
 そういうことか……。
 今、君は裸なのかね?」
「……え?」

 美神の言葉を耳にした『カノン』は、何かを推測する。
 カノンの発言から、美神も、『彼には裸として見えてはいない』と理解した。

「ふむ……。
 高レベルの霊能力者には裸に見える……。
 そういうことかな?
 ならば、このカノン本人の目にも、
 君のナイスバディが見えているのかな?
 ……少しうらやましいな。
 なるほど、横島忠夫……彼らしいアイデアだ!」

 『カノン』は、このクロスの能力を正しく推理してみせた。
 そして、美神も悟った。目の前の『カノン』が、カノン本人ではないことを。

「……あんた……誰!?」


___________


「冗談じゃねーぞ……!!」

 横島は、北大西洋の柱を目指して走っていた。
 全力で疾走しながらも、頭の中で、聞いたばかりの話を思い返す。

 アイザックを撃破し、北氷洋の柱も折った彼は、アイザックを文珠で治療した。最後の言葉が気になったからだ。
 そして、この戦いの背後にいる存在……カノンに取り憑いた『悪霊』の名前を聞いて愕然とする。

「あいつが……黒幕かよ……!!」

 しかも、アイザックは、本来のカノンの強さまで語ったのだ。
 兄サガと同様、強力な技の数々を使えるカノン。オリジナル技だけではない。ジェミニのセイントとして戦う日のために、兄サガの技は全てマスターしていたという。ギャラクシアンエクスプロージョン、アナザーディメンション、幻朧魔皇拳……。
 横島は、十二宮の戦いにおいて、チューブラー・ベルに憑依されたサガと戦ったことがある。実際には、恐るべき乱入者 が現れたため、彼とは直接拳を交わしてはいない。しかし、チューブラー・ベルの話で、サガが強力な精神感応能力をもつことは知っていた。
 だから……。

「あいつが……精神感応技を使えるってことだろう!?
 で、今この瞬間、美神さんと戦ってる……!!」

 アイザックも不思議がっていた。カノンが、なぜチンケな『悪霊』に取り憑かれてしまったのか。その『悪霊』が、なぜ、カノンを完全に支配できるのか。
 もしかすると、さらに背後に別の黒幕がいるのかもしれない。
 アイザックは、そこまで想像していた。
 しかし、そうしたウラ事情は、現在の横島にとっては、どうでもいいのだ。
 おそらく、この戦いが終わるまでには、全貌も明らかになるだろう。
 今、大事なのは……。

「あいつは、俺たち三人を恨んでるに違いない。
 俺たちのせいで死んじまったって思ってるんだ。
 ちくしょう……!!
 おキヌちゃんの水責めだって……
 きっと……おキヌちゃんを虐め殺すつもりなんだ!!」

 だが、今は美神のことが心配だ。たとえ、この戦い終了後おキヌとヤるとしても、それでも、美神が大切な仲間であることに変わりはないからだ。
 おキヌも助けねばならないが、このままでは、美神もピンチなのだ。
 こうなったらもう反則ワザの同期合体でも何でも使って、サッサと倒すしかない!

「まにあってくれ……!!
 美神さん……!!」


番外編3 or 第九話に続く)

# 18歳以上で、かつ、18禁に抵抗のない方々は、『番外編3』へ進んでください。#
# 18歳未満、あるいは、18禁に抵抗のある方々は、『番外編3』を省略して『第九話』へ進んでください。#


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 こんにちは。
 この第八話だけ読むと、『聖闘士星矢』の世界の中でGSメンバーが戦っているように見えるかもしれませんが、これは『GS美神』の世界です(詳しくは、第一話及び第六話を御参照ください)。
 今回は、クリシュナ戦とアイザック戦をメインに書いてみました。特に『星矢』原作でもバトルそのものが重視されていたクリシュナ戦は、『GS美神』天狗のエピソードを絡めた形でバトル重視で描きました(痛々しい描写もあるので『バイオレンス』を付けました)。なお、『GS』『星矢』とも二十世紀の作品ですから、ここでも二十世紀という扱いです(世紀末ネタを入れてしまいました)。
 また、美神のクロス御披露目まで入れたかったので、カノンまで出してしまいました。もはやポセイドン編もクライマックスかもしれません。しかし、狐とリュムナデスの化かし合いは、18禁で書こうと思いますので、ポセイドン編の本編完結の前に、いったん番外編です。番外編も本編も、よろしくお願いします。
(なお、レス返しは、同じページ内のほうが分かりやすいかと思い、それぞれのページに記しています)
 
3/28付記;
一部修正しました。物語そのものではなく、後書きなど予告に相当する内容の、部分的削除です。いただいた感想から色々考えた結果、今後の展開を変更することになったからです。
しかし、(i) 物語本文ではないとはいえ一度発表したものであり、また、(ii) その部分に関する感想もいただいているのでバッサリ削ってしまうと意味が通じなくなりますから、(オリジナルも分かるように)消し線で削除することにしました。
修正すれば更新情報となってしまうので躊躇しましたが、嘘予告になってしまうのは読者の皆様に不誠実と思い、このように対処しました。申しわけありません。
今後もよろしくお願いします。

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