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「『神々の迷惑な戦い』第一話(GS+聖闘士星矢)」

あらすじキミヒコ (2008-02-24 16:17)
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 悪魔アシュタロスが滅び、世間の人々は『核ジャック事件』のことなど早くも忘れようとしていた。
 人々は知らなかった。神魔のパワーバランスが崩れた状態と、その影響を……。

『大変なのねー!!』

 その日。
 神族のヒャクメが、美神除霊事務所に駆け込んできた。神さまとは思えぬ慌ただしさだ。

「あら!?
 あんたまた俗界に遊びにきたの!?
 ダメじゃない、ちゃんと仕事してなきゃ……」
「美神さん、神さまにそんなこと言っちゃダメですよ……」
「まったく……
 『神をも恐れぬ』とは、美神さんのための言葉っスね!」

 美神、おキヌ、横島が、それぞれの対応をする。

『これも仕事なのねー!
 美神さんたちに依頼しに……』
「なにっ!? 依頼!?
 今度は何をすればいいの!?」

 美神が、ヒャクメをガバッとつかむ。
 アシュタロスとの戦い以降、仕事が激減して困っていたのだ。しかも、神族からの仕事は、いつも金払いがよかった。また大金がもらえると思って、美神の目の色が変わる。

『……ちょっと複雑だから、
 ちゃんと聞いて欲しいのね』


    第一話 開戦


 場面変わって。
 どこかの海辺の砂浜に、おかしな鎧を着た五人組が立っていた。彼らの目の前には、木の棒で組んだ簡易な墓が四つある。
 さらに、独特の眉をした二人の男……若者と子供が、少し離れたところから五人を眺めていた。

「星矢、紫龍、瞬、氷河。
 以上四名……」

 鎧の一人が何か言い始めた時。

「ちょっと待ったー!!」

 その場に、美神が現れた。

「墓みたいっスね!?」
「私たち、少し遅かったのでは……!?」

 横島とおキヌも一緒である。

「あーあ、殺しちゃったのね?
 横島クン、まだ文珠で蘇生できるかもしれないから、
 急いで墓掘って!!」
「はいっ!!」
「墓荒らし……!?
 うわっ、バチあたりな……」

 美神の言葉にさっそく従う横島と、少し引いてしまうおキヌ。しかし、これに唖然とするのは彼女だけではない。

「おまえたち……!!
 何者だ!? どういうつもりだ!?」

 鎧の五人のうち、女のような顔をした男が代表して問いかけた。
 面倒くさそうな顔で、美神が対応する。

「あんたら、一人の女神にへーこらしてる連中でしょ?
 ……こっちは、何人もの神さまに頼まれてやってんのよ!!」

 そして、美神は、事務所での会話を回想し始めた……。


___________


 アシュタロスが欠けたため、現在、神魔のバランスは大きく傾いている。そして、この機に乗じて、ギリシアの神々が仲間内でケンカを始めるらしい。
 これが、ヒャクメが持ち込んだ情報だった。

「ギリシアの神々がケンカ!?」
『そうなのねー!!
 あのひとたち、昔っから「聖戦」と称して
 ケンカを繰り返してきたんだけど……』

 その『聖戦』をまた開始するらしいのだ。
 これまでは、上層部がやんわりと干渉してきたのだが、今回は事情が違う。神族同士が争って勢力を削りあうことは、パワーバランスの補正にはプラスとなる。そこで、今回の『聖戦』には、神族上層部は介入しないことになった。

「じゃあ、なんであんたがバタバタしてんのよ!?」
『だから私たちは手出しできないから、
 力のある人間に何とかして欲しいのねー!!』
「……いいの?
 人間が神族の争いに割り込んじゃって……!?」

 美神とヒャクメの会話がそこまで進んだ時、突然、小竜姫が転移してきた。

『すいません、美神さん!!
 ヒャクメったら、任務の肝心な部分を
 理解する前に飛び出しちゃって……』
『あれ……!?
 私、なんか間違ってた……!?』

 小竜姫が、補足説明を始めた。
 どうやらギリシアの神々の中には、神魔のバランスが崩れることを予知していた者までいたらしい。知恵と戦いの女神であるアテナは、すでに十年以上昔から『人間』の姿で人界に降臨しており、しかも、いつのまにか、本拠地であるギリシアの『聖域(サンクチュアリ)』から失踪しているのだ。

『それは私も知ってるのねー!
 これから説明しようと思ってたところ……』

 ヒャクメがウッカリしていたのは、『表向きは静観』というポイントだ。つまり、神々同士の戦いに手を出す必要はない。むしろ、放っておくべきなのだ。

「じゃあ、私たちに何をしろっていうの……!?」

 不思議に思うのは、美神だけではない。先ほどから会話を彼女にまかせっきりの横島とおキヌの顔にも、同じ疑問が浮かんでいる。
 小竜姫は、ため息を一つついてから、話を続けた。

『問題は……
 アテナが何十人もの人間を
 私兵として抱えてることなんです。
 それも「聖闘士(セイント)」と称して、
 いかにも特別な人間ですって感じで……』
「はあ!? セイント!?」
『そうなのねー!』

 説明役を小竜姫にとられて黙っていられなくなったヒャクメが、ここで口を挟む。情報を語るのは調査官たる自分の任務だと思っているのだろう。

『アテナは、昔々、「聖衣(クロス)」と
 呼ばれる鎧を大量に作ったのねー。
 もともとは、ポセイドンのところの
 「鱗衣(スケイル)」を真似た発想なんだけど……』
「え? ポセイドン?
 それって、超能力者のしもべの……」

 おかしなことを横島が言い出すが、バッサリ切り捨てられた。

『違うのねー。
 これ以上ややっこしくされたら困るのねー!
 ポセイドンは海皇ポセイドン!!
 海の底に神殿作って引きこもってる神族で……』

 しかし、これも問題発言である。

『ヒャクメ!!
 ……それは言いすぎですよ!』
「ファンが怒りますよ!?」
「そんなツッコミいれちゃダメですよ、横島さん!!」
「ほら!!
 横島クンが変なこと言うから脱線しちゃったじゃないの!!
 ヒャクメでも小竜姫でもいいから、話を戻して!!」

 美神に促されて、二人が説明を続けた。

『クロスもスケイルも、神族が作った特殊な鎧なのね。
 セイントというのは、アテナのもとでクロスを着て戦う人間たち。
 守護星座をイメージすることで、
 体内の霊力を増幅させる特殊な霊能力者なのねー!
 クロスは、その霊力増大を助ける鎧なのねー!』
「……ようするに、そいつらもGSみたいなものなのね?」
『彼らは独自の世界観を作ってますから、GSとは言いません。
 霊能力者ではなく「セイント」、
 霊力ではなく「コスモ」って呼んでるんです』
『しかもポセイドンとかハーデスとか出て来ると、
 「セイント」じゃなくて
 「マリーナ」や「スペクター」になるのねー!』

 こう一度に色々つめこまれては、たまらない。
 それなのに、また横島は余計な口を挟んでしまった。

「ハーデスって……!?
 名前からすると……
 死の世界を牛耳る神さまっスか!?
 なんか話のスケールが……大きすぎる……」
『そうなのねー。
 ハーデスは冥王ハーデス、冥界を司る神族なのね。
 でも彼の『冥界』は本物じゃなくて、
 空間に焼き付けられた魂の残像を集めただけ。
 つまり……箱庭みたいなものなのねー。
 規模は小さいから、安心していいのねー!!」

 やはり、これは、今は必要ない余分な情報だったようだ。

「設定だけで、こんがらがりそうっスね」
「えーっと……。
 ポセイドンさんとハーデスさんのことは
 とりあえず置いておくとして……。
 要するに、セイントさんというのは、
 神族の鎧を着込んだ霊能力者さんなんですね?」
「なんだか……
 そいつらと話しても会話が成り立たない感じね。
 サッサと倒しちゃいましょう。
 ……で、結局、誰をやっつけたらいいの!?」

 三人がそれなりに理解したようなので、小竜姫たちは、もう少し詳しく現状を語り始めた。

『先ほど述べたように、今、アテナはギリシアにいないんです』

 十年以上前のアテナ降臨直後に、彼女を殺そうという動きがサンクチュアリ内部にあったのだ。アテナは忠実なセイントに助け出されたが、サンクチュアリは、謀殺を試みた側に押さえられてしまった。

『どうやら、アテナの補佐役たる「教皇」が、
 その企てのリーダーだったらしくて……』

 そのため、現在セイントは、教皇派とアテナ派に別れて内乱状態らしい。実は、今でも多くのセイントはアテナに忠誠を誓っているのだが、彼らは、真相を知らぬまま教皇に従っているのだ。
 神族としては、表向きは参加できないものの、たくさんの人間が死ぬことには胸を痛める。セイント同士の殺しあいなんて困るのだ。そこで、力のある人間が介入して、うまく犠牲者を減らして欲しい。
 それが、今回の依頼の主旨であった。

「おかしいわね……!?
 あんたたち、そこまで事情がわかってるなら、
 ギリシアに行って真相暴露してくればいいじゃない!?
 そうすれば、ほとんどはアテナ派になって、
 ……それで終了でしょう?」

 美神の疑問はもっともである。

『そうなんです……。
 それが出来れば簡単なんですが……
 それでは「直接介入」ということになりますから……』
『こうやって美神さんたちのところに頼みに来るのが、
 私たちに許されたギリギリなのねー!!』

 どうやら、難しい話ではなさそうだった。

「じゃあ……その教皇とやらをとっつかまえて、
 『私が悪かったんです』って謝らせたら終わりじゃない!?
 多くのセイントは、だまされて加担してるだけなのよね!?
 ホントはアテナと敵対したくはないんでしょう!?」
『そうです!!
 でも、気をつけて下さいね……。
 教皇のバックには、魔族正規軍がついてるみたいですから!』
「え……!?」

 神族上層部はノータッチと決めたわけだが、魔族上層部は、首をつっこむことにしたらしい。しかし、それが神々の争いを加速する方向であるならば……パワーバランスの補正を助ける方向であるならば、神族としては見逃すしかないのだ。

「大丈夫っスよ!!
 俺たちが同期合体すれば、
 よほどの大物じゃないかぎり、何とかなりますって!!」
「まあ……そうだろうけど……」

 気楽な横島とは対照的に、美神は、嫌な予感がする。

「……で、情報はそれだけ?
 アテナが日本のどこにいるか、わかんないの?
 今の話だと……
 アテナを守る側についたほうが良さそうなんだけど?」
『アテナの正体も居場所もハッキリしてるのねー!』

 美神の言葉に応じて、ヒャクメが一枚の写真を提示した。
 そこに写っているのは……長髪の美少女。気の強そうな感じが写真からも伝わるが、それも彼女の魅力であろう。

「おおっ!!」
「横島さん……!? またですか……」
「ああっ、このコは!!」

 興奮する横島と、その態度に呆れるおキヌ。
 しかし、美神だけは、ことの重大さに気づいていた。

「このコ、城戸沙織じゃないの!」
「知ってるんスか!?」
「お友だちですか……?」
「バッカねー!?
 あんたたち、『グラード財団』も知らないの!?」

 美神としても、個人的な面識があるわけではない。しかし、城戸沙織は、グラード財団という大グループを継いだ娘、大富豪なのである。お金大好きな美神なだけに、城戸沙織の名前は、当然のように耳にしていた。

「あ……!!
 グラード財団!!
 テレビで見ました、
 なんか格闘技大会やってたところですよね!?
 ギャラクシアンなんとかって……」
「ああ、それなら俺も聞いたことあるっスよ!?」
『そうです……!! あれこそ、
 アテナからサンクチュアリへの挑戦状だったんです!』

 おキヌの言った『ギャラクシアンなんとか』は、正式には『ギャラクシアンウォーズ』という。表向きには、それは……凄い鎧を着た、凄い人たちによる、凄い格闘技大会。金持ちが道楽で企画したシロモノにも見えた。
 しかし、これには裏の意味があったのだ。アテナである沙織が、自分の手元に忠実なセイントがいることを公にしたのである。

『あの大会を見ていてもわかるように、
 現在アテナに従っているのは「青銅聖闘士(ブロンズセイント)」、
 つまり、最下級のセイントばかりです。
 「黄金聖衣(ゴールドクロス)」を持っていることも
 明らかになりましたが、それをまとうべき
 「黄金聖闘士(ゴールドセイント)」はいません』
『ゴールドセイントは最上級のセイントのことなのねー。
 彼らは、サンクチュアリを守ってるのねー』
『中間クラスの「白銀聖闘士(シルバーセイント)」も
 みんな教皇側に属しているようです』

 また新しい用語が出てきて、少し混乱する美神たち。

「えーっと……。
 ようするに、アテナの戦力は弱っちいってことね?」
「ダメじゃないっスか、それじゃ!?
 早く俺たちが行ってあげないと……!!」

 横島が、やる気を出しているようだ。
 すぐにピンときた美神は、ちょっと水を差す。

「横島クン……。
 教えてといてあげるけど、
 沙織ちゃんって、まだ13歳だからね?
 血迷うんじゃないわよ……?」
「ええっ、私より若いんですか!?
 この胸で!? ひどい……」
「ううう……。
 俺はロリじゃない……ロリじゃない……」

 そんなおキヌや横島は放っておいて、小竜姫が話をまとめる。

『……まあゴールドであれシルバーであれ、
 美神さんたちが同期合体すれば、アッサリ倒せるでしょう。
 やっつけちゃって戦線離脱させるのもいいですが……。
 文珠で記憶喪失にしてしまって、
 セイントであること自体忘れさせてくれたら、
 もっと助かります』
「……グラード財団がバックについてたら、
 記憶喪失になっても生活には困らなそうね。
 ……ごめん、でも、それは無理だわ。
 さすがに文珠が足りなくなっちゃう」 

 そして、最後に一つ、小竜姫は注意を付け加えた。

『……ただし、パワーでは圧倒できても、
 スピードではセイントには勝てないかもしれません。
 彼ら、超加速を使えますから』
「ええっ!?」

 超加速は、神魔族でさえ一部の者しか使えない技だ。人間には、とても無理なはずだが……。
 そこまで考えた美神は、一つの可能性に気づいた。

「神族の鎧ね……!?」
『そうです。
 美神さんたちが竜神の装備で超加速が使えたように、
 彼らもクロスを着ると、それっぽいことが出来るんです』

 実は、クロスなしでも、コスモを燃やす……つまり霊力を高めると可能なのだが、小竜姫は、そこまで知らなかった。小竜姫やヒャクメとて、完全に正しい情報を握っているわけではないのだ。これまでの話にも、微妙に間違っている部分があった。

「……それっぽいこと?」

 曖昧な表現が気になり、美神は聞き返す。

「超加速は超加速だと思うんですが……。
 これも彼らは別の言葉を使うんです、
 『音速の動き』とか『光速の動き』とか。
 私自身見たことないんで断定できませんが、
 あれって、結局、超加速の一種のはずです……」


___________


「……というわけよ!! わかった!?」

 多少は省略したものの、美神は、おおよその内容を説明した。

「美神さん……。
 神族の事情まで全部しゃべっちゃいましたけど、
 良かったんですか……!?
 これでは小竜姫さまたちが
 介入しちゃったことになるのでは……!?」
「大丈夫よ、おキヌちゃん!!
 私たち、神々の戦いに割り込むわけじゃないから。
 あくまでもセイントという人間同士の争いを止めるだけよ」

 おキヌにしてみれば、それでも神族のことは内密にすべきではないかと心配なのだが、

(……いざとなったら、
 横島さんの文珠で『忘』れてもらいましょう)

 と考えて、自分を納得させてしまった。横島の仲間たちは、つい文珠に頼ってしまうのだ。
 一方、鎧の五人組……シルバーセイントたちは、美神の話を容易には信じられなかった。

「教皇がアテナを殺そうとしている……!?
 たわけた話だ……!!」
「ブロンズの小僧どものところに
 本物のアテナがいるだと……!?」
「他の神さまとかバックに悪魔とか……。
 たいしたホラ話だな!!」

 しかし、彼らの中に、一人、奇特な者がいた。

「いや……真偽はともかく……。
 この女自身が今の話を信じていることは確かだ!
 ……それに、後ろの女も!!」

 猟犬星座(ハウンド)のアステリオン。彼はサトリの法を会得しており、相手の心を読むことが出来たのだ。

「……頭のおかしい二人ってことだな」
「この二人だけじゃない! あいつも同じだ!」

 アステリオンが指さしたのは、横島である。
 横島は、すでに四人の墓を暴き、文珠で治療や蘇生を試みていた。

「美神さん、すいません!!
 ……三人は無理でしたっス。
 一人は、傷が浅かったから回復しましたけど……」

 横島の肩を借りているのは、天馬星座(ペガサス)の星矢(せいや)である。

「……すまん。
 もっと早くに心を読むべきだった。
 あの女が長話をしたのも、このためだったんだ!
 ……時間稼ぎだったんだ!」

 アステリオンが謝るが、シルバーセイントにとっては、もっと大きな問題が二つあった。
 一つは、三人の死体が、想定とは違っていたこと。それは三人のブロンズセイントのはずだったのに、いつのまにか、別人のものになっていたのだ。
 そして、もう一つは、星矢の傷が浅かったということ。星矢は、彼の師匠でもある鷲星座(イーグル)の魔鈴(まりん)がトドメをさしたはずだったのだ。
 前者も放置できないが、後者はそれ以上だ。五人の一人である魔鈴の裏切りを意味するからだ。
 アステリオンと他三人のシルバーセイント……蜥蜴星座(リザド)のミスティ、サントール星座のバベル、白鯨星座(カイトス)のモーゼスが、厳しい視線を魔鈴に向ける。
 しかし、この時、

「ちょっと待ったー!!」

 再び、美神が大声で叫んだ。

「そっちの集団はサンクチュアリから来たセイント。
 教皇の命令でやってきた。
 でも、その仮面の女セイントだけは裏切り者らしい。
 ……ここまではOK!?」

 美神の気迫に押されて、シルバーセイントたちがウンウンと頷いた。
 続いて、彼女は、星矢に首を向ける。

「で……あんたは、アテナの側ね!?」
「沙織さんがアテナだなんて信じらんねーが……。
 その話がホントだとしたら、そういうことになるな……」

 星矢は、途中から話を聞いていて、一応の理解はしていた。心の中では、

(なんだか沙織さんみたいなタカビーな女だな!?)

 と美神のことを評していたが、敢えて口にはしない。
 最後に、美神は、少し離れた二人にも質問した。

「あんたたちは……どっち!?」
「二極論で語るのはやめてください。
 私たちは……ただのクロス修理屋ですよ」

 髪の長い男……ムウが答える。
 彼の表情から、何かウラがあると感じた美神だが、今は追求しないことにした。

「そういうことなら……。
 横島クン!!
 誰が敵であって誰が敵でないか、
 ちゃんと理解したわね!?」
「はいっ!!
 いくでェーッ!!
 合体ッ!!」

 文珠で同期合体する二人。それを見たセイントたちは驚愕した。

「な、なんだー!?」
「クロスも着てないのに……!!」
「このコスモは……!?
 私たちシルバーをも遥かに上回るぞ!?」
「ゴールド……いや神のレベルだ!!」


___________


「……ま、こんなもんね」

 美神がつぶやく。
 四人のシルバーセイントは、霊力(彼らにとってはコスモ)の差に圧倒されながらも、それでも立ち向かったのだった。
 しかし、セイントにとっては、コスモが全て。とてもかなうはずがなかった。四人とも、すでに地に倒れていた。その中でかろうじて意識があるのも、アステリオンだけである。

「まさか、あんな方法でサトリの法を破るとは……」 

 力の差があっても、心を読めば有利に戦えるはずだった。
 しかし、横島は煩悩で霊力を高める男。彼の心の中は『女』でいっぱいだった。一方、戦闘でテンションが上がった美神の心は、『お金』で占められていた。意図したものではなかったが、偶然、アステリオンのサトリをかわしてしまったのだ。
 そして、とうとうアステリオンもガクッと気絶してしまった。

「じゃあ、おキヌちゃん。
 この場はまかせたから!!
 私たちは、こいつらを送り返してくるわ!!」 

 まだ横島と合体したままの美神が、意識のない四人をひとくくりに縛り上げて、飛び立った。
 残された者たちは、少しの間、ポカンとしていたが……。

「……えーっと。
 よかったら……アテナさんのところに
 連れていってもらえますか!?」
「……あ、ああ」

 おキヌは、星矢に対して、努めてフレンドリーに話しかけている。
 魔鈴は、黙ってその場をあとにしようとしていた。
 そんな彼らを眺めながら、ムウの傍らの子供が、師匠に質問する。

「ムウ様……
 おいらたちは、どうしましょう?」
「これは……私も本来の場所に
 戻るべきときが来たようですね……!」


___________


「……このへんでいいかしら?」

 サンクチュアリに着いた美神たちは、闘技場らしき広場に、気絶したシルバーセイント四人を放り出した。
 長時間続けられるものでもないので、ここで同期合体を解く。
 これから、教皇に会いに行くつもりなのだ。どうせ力づくで説得することになるから、そこでもう一度合体するつもりだった。

「……遠いんスか!?
 その教皇とやらのいるところは!?」
「……さあ!?
 ここに書いてあるはずだけど……」

 美神は、ヒャクメ特製『サンクチュアリまっぷ』を貰ってきていた。
 さっそく開けてみる二人。


  教皇の間:
  アテナ不在時のボス『教皇』がいるところ。

  教皇の間への行き方:
  十二宮を順番に進んで下さい。
  特殊な結界がはられているので、
  宮を越えて瞬間移動することも、
  空から飛び越えて行くことも出来ません。
  十二宮には、それぞれ、
  守護するゴールドセイントが……。


「……」
「……役立たず!!
 こんなもん、地図じゃないじゃないの!!」

 美神は、思わず地面に叩き付けてしまった。


___________


 一方、その教皇の間は、騒然となっていた。
 サンクチュアリの多くの者が、合体美神の霊力を感じ取り、恐るべきコスモの持ち主が訪れたことを認識していたのだ。
 二人がサッサと合体を解除したので、尋常ではないコスモが感じられたのは、ほんの一時的だったのだが……。

「誰が来たのだ……!?」

 最も焦っているのは、教皇だった。そして、

「髪の長い、胸の大きい、態度もでかい女です!!
 一人の少年を従えています……!」

 伝令兵の報告は、教皇の焦燥を増加させる。

(アテナだ……!! 城戸沙織が、
 ブロンズの小僧を連れて乗り込んで来たのだ!!)

 美神の描写が、教皇の聞いていた沙織の特徴と合致してしまったのだ。これでは、勘違いするのも無理はない。
 しかし、彼は、こういう事態も想定していた。予想よりも早かったのは確かだが、備えあれば憂い無しである。

(バカめ……!
 こちらには神を殺せるアイテムがあるのだぞ……!)


___________


「なんか……めんどくさいわねえ……」

 ヒャクメの地図を見た美神は、やる気をなくしていた。
 ボスである教皇を叩いてしまえば一気にカタがつくと思っていたのだ。だが、教皇の居場所へ行くのは、簡単ではなさそうだった。

「やっぱり帰りましょうか?
 もう俺たちの力は見せつけたし……」
「そうねえ……
 シルバー何とかを、コレだけザコ扱いしたんだもんね。
 今日のところは引きあげて……」

 いったん帰って計画を立て直そうと思った美神だったが、突然、二人を無数の矢が襲った!

「なによっ……!?」
「えっ……!?」

 美神は神通棍で、横島は霊波刀で。
 それぞれ矢を叩き落とすつもりだったが、素通りしてしまう。幻影だったのだ!
 しかし……。

「ミスったわね……」

 幻の矢の中に、一本だけ、本物の黄金の矢が混じっていた。それは、今、美神の胸に深々と刺さっている。

「美神さん……!? しっかり……!!」

 意識を失い、倒れ込む美神。
 横島は、文珠に『治』や『抜』と刻んで発動させるが、効果はなかった。

「……何をしようとしてるのか知らんが、
 その矢は神をも傷つける武器!!
 抜く方法は一つしかないぞ……」

 それは、教皇しか抜くことが出来ない特別な矢。しかも、ジワジワと胸にめり込んでいくのだ。理屈はわからないが、そのスピードは、十二時間がリミットとなるように調節されているのだった。
 悪役らしく事情を説明しながら現れた男は、シルバーセイント、矢座(サジッタ)のトレミー。
 彼は、向こうにある『十二時間』用の火時計を示しながら語った後、横島にもセイントとしての名乗りを求めた。

「いっ……!?」

 もちろん、セイントなんかではない横島。彼は一瞬ためらったが、

(ここは美神さんゆずりのハッタリで……!!)

 と、その場の雰囲気に合わせてしまう。

「俺は……煩悩星座の横島だ!」
「煩悩星座……!?
 聞いたこともないな……。
 やはりニセモノか……。
 見たところ、クロスもないようだな?」

 しかし、この言葉は、横島に一つの策を与えてしまった。

(……!!
 クロスとやらを着ると、霊力上がるんだっけ?
 しかもクロスって、漢字表記できたはず……。
 えーっと……『聖なる衣』だったよな!?)

 両手に一つずつ文珠を握りしめ、『聖衣』とイメージしてみる。

「これが……煩悩星座のクロスだあ!!」

 文珠によって作られたクロスが、横島の身をまとった。彼の霊力が急激にアップする。

「なにー!
 このコスモは……!?」
「この野郎!!
 よくも美神さんを……!!」

 横島が、特に技も何も使うことなく……。
 一撃でトレミーは倒された。
 もはや意識を失って、目を回している。

「……あれ?
 こいつシルバーとか言ってたよな?
 ……ということは、こいつでも中級クラス!?
 同期合体しなくても、
 俺一人でも……結構いけるじゃねーか!!」

 横島は、弱さこそトレミーというキャラの魅力だったことを知らない。だから、彼は決意した。

「ここで待ってて下さい!!
 美神さん……!!」

 十二時間では、仲間のGSを呼んでも間に合わないだろう。一人でやるしかないのだ。
 文珠で結界をはり、その中に美神を横たえて……。
 横島は、今、十二宮へ向かって走りだした!!


(第二話に続く)


______________________
______________________


 はじめまして。
 『神魔のバランス補正』というテーマで、こんな話を書き始めました。ギリシアの神々のケンカを利用しようと思いたち、クロスオーバーになりましたが、これが使い古されたアイデアでないことを祈ります。
 今回はプロローグ的なものということで、また、同期合体が強すぎるために、バトルは簡略化しました。しかし、次回からは『十二宮編』(しかも同期合体も使えない)ということで、戦闘メインになるはずです。
 なお、文珠で作ったクロスが十二時間保つのか疑問に思われるかもしれませんが、それについては、次回です。
 では、よろしくお願いします。
 

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