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!警告!壊れキャラ有り

「娯津郷酒「戯」(GS)」

雨男 (2008-01-14 17:50)
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注意、本作は前編、後編と分かれており、前編は全年齢対象、後編はドエロの為18歳以上対象となります。
その為、18歳未満の方は前編を見ても後編を見ることは出来ませんのでご了承ください。
加えて言うのならば、本作は妄想と思いつきとその場のノリだけでかかれております。
原作に忠実な作品をお求めな方にはお勧めできません。

以上、注意条項をお読みになり、問題無いという方のみお読みください。


「娯津郷酒という神酒のを知っとるか?」

「ふぁん?」

 酒の所為で赤くなった顔で自慢げに語りだしたのは竜神王の一子、天龍童子。
 するめを食べながら馬鹿丸出しの顔で阿呆みたいな声を返したのが新規新鋭のGS、横島忠夫。
 片や天界竜族の王子、片や人界の救世主という傑物達は今、コタツを囲んでぐだぐだ一杯やっていた。


 この状況を説明させてもらえるなら、場の成り立ちは簡単だった。


 時は200X年、元旦
 美神心霊事務所より独立してから数年。
 地道に女性を口説き、ナンパし、余った時間で修行を重ねて開業したGS横島事務所。
 固定客も付き、業界全体でも確かな地位を築きつつある正にサクセスストーリー真只中の横島さん。


 そんな横島さんが久しぶりに取れた元旦休みに何をしようかと考え、思い浮かんだのが初詣。


 うむうむ、悪鬼神霊に関わる身としては悪くない考えだろう。

 ではどこに行こうかな、と横島が思い浮かべたのが妙神山。
 神社仏閣はおろか教会でもない修練場を選ぶのが横島の横島たる所以。
 そして常人が麓で諦め、超人が決死の覚悟で挑む妙神山を散歩感覚で登りきってしまうのが横島クオリティー。


 とはいえ、振袖姿の小竜姫様をアーレーと回転させちゃる。という邪気満載の男に微笑むほど神様は優しく無い。


 小竜姫様は天界で新年の宴に御出席の為に不在、ついでにパピリオもべスパの元に遊びに行っている。

 と、なれば横島が不機嫌となるのも無理の無い話。
 更に言えば引き算で残った面子は動けぬ鬼門×2と引きこもり正月真只中のゲーム猿。
 そして足し算で新年の宴から抜け出してきた天竜童子となれば横島に残された道はヤケ酒しかなかった。

「酒やー! 酒もってこーい!」

「おお、調度良くこんな所に酒が何々? 『神便鬼毒酒』じゃと?」

「なんでもかまわん! 今夜は飲むぞー!」


 で、一時間後。
 興味本位で舐めてみた天龍童子もすっかり出来上がってしまい、冒頭の言葉が出てきたという訳だ。


「娯津郷酒? 見たことも聞いたことねーぞ。ついでに言うのなら酒もねーぞ」

 「100円やるから買って来い」と、安いチンピラ地味た野次を飛ばす大の大人。

「そーかそうか、そんなにも余の話が聞きたいか。」

 「余はできた家臣を持てて嬉しいぞ」と、コタツの上のみかんに語りかける餓鬼。


「んーーとな、聞いた話によるとじゃな・・・・・・」

 ちびちびと勝手に語りだした天龍童子の話をまとめると、それは竜神達に伝わる一種の伝説らしい。


 天界の辺境、腕自慢の神族が顔を蒼くし、長齢の神族が取り乱す人外魔境ならぬ神外魔凶。
 その奥地にソレはあるという。

 名を『娯津郷酒』

 その酒が持つ効能を得んと幾千の若き男神が挑み、帰ってきたのは一握り。
 故に伝説と成り果てた存在。


「ふーーん」

「何じゃその気の抜けた声はっ!」

「いやー、正直そんな辺鄙に場所にまで行ってまで欲しいもんなど無いからな」

 不老長寿? そんな場所に行った方が寿命が縮みそうだ。
 頑強無比? それを飲むまでの道のりで鍛えられそうだ。

「なんじゃ、『娯津郷酒』の効能はそんなものではないぞ」

「ほほぅ、どんなんだ」

「うむ、ずばり『惚れ薬』じゃ」


 ―――みしりと、空気が固まった。


 が、アセトアルデヒドによって空気読み機能を停止している天龍童子は言葉を止める事は無かった。

「通常、竜神にそういった薬は効かん。・・・・・・だが『娯津郷酒』は別じゃ。
 どんな霊格の高い女竜神もそれを一杯盛られてしまえば・・・・・・」

「しまえば?」

「えーと、なんじゃったかな。確か・・・・・・くらり? ぽろり? いや・・・・・・どろり?
 んん、多分その辺じゃな。兎に角、盛った相手にメロメロかドロドロになってしまうのじゃ」

「・・・・・・」

 横島の脳裏を駆け巡るのは、もちろん良く知った女竜神。

 そのガードの固い彼女が、「くらり」としたり、「ぽろり」しちゃったり、果ては「どろり」としてしまう姿。
 それだけでも悶えると言うのに、委員長属性な彼女が「メロメロ」になったり、「ドロドロ」してしまった日には・・・・・・!

 鼻から零れ落ちそうになる血液を気合で止める横島。
 これから起こるであろう合戦に備えて、一滴たりとも無駄にはできないと無意識のレベルで気付いているのだ。

「で、天龍童子様。そのすんばらしいブツはどこにあるんでございましょうか?」

 ゲヘゲヘと火のでそうな勢いで揉み手を開始する横島、大人の威厳ゼロナッシング。

「えーとな、うーんとな、あれ? どこじゃったかな? うむ、確かに聞いたのじゃが・・・・・・おぉ、ド忘れじゃ」

 がははははっと豪胆な笑いを放つ天龍童子。


 だが、忘れたでは済まされない。
 否、忘れたでは済まそうとしない男が一人。


 がしっ!

「ふぉ、なんじゃ横島っ! なぜ余の頭を鷲掴みする!?
 んっ! も、文殊? なぜそのような物を・・・・・・え?
 ば・・・・・・ばかかお主、そ、そのような事でよ、よ、余がひるるるるむとでも・・・・・・っ!

 るぉっ・・・・・・、ほ、本当にやりおったっ! 鬼かお主はっ!

 ・・・・・・お?

 ・・・・・・おぉ?

 ・・・・・・おおぉぉぉおぉぉぉぉぉおぉぉぉ?

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・。

 まんダむ?」


 少年の無垢なる問いが、蒼穹の空に響いて・・・・・・消えた。


 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


                    娯津郷酒「戯」


 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 じゃり

 踏みしめた砂利が乾いた音を放つ。
 今、横島が立つのは天界の辺境、名も無き「神外魔凶」

 その入り口。


 天龍童子を「根気強く説得」し、脳髄より搾り取った情報を得てから僅か3時間後、横島はその辺境を望む場所にいた。


 ここで少しだけ、見える範囲だけの「神外魔凶」を説明しておこう。

 まず火山が噴火している。
 富士山級の山が、見える範囲だけでも5つは大絶賛噴火中だ。(出血大サービス)

 次、海
 赤い。
 あと、山ぐらいの大きさの怪魚が島ぐらいの怪魚に食われている(現在進行形)

 次、森
 何故かショッキングピンク。
 そしてメルヘンチックな外見では隠し切れない妖しさが漏れ出している。(・・・・・・コッチニオイデヨ)

 あそこはヤヴァイ。絶対に近づいてはならない。行けば正気を保てる保障は無いと無意識が警告する。
 まさに「神外魔凶」の名にふさわしい異端。


 そして、その光景を眼下に見下ろした横島は・・・・・・・・・。


 ・・・・・・ふっと、笑った。


 まるでそうでなければ面白くないとばかりに、不敵に。
 まるで夢を追い求める狩人のように男らしく。
 まるで10年来の友を見るように、優しく。

 常人ならば地獄としか形容出来ないような光景を前にして、男は感無量とばかりに笑った。
 その背中の雄雄しさは間違いなく英雄、その貌の勇ましさは正しく勇者。


 ただ、その目的こそが致命的なまでに間違っている事は誰の目にも明らかだった。


 『来』『々』

 瞬時に物質化した文殊を共鳴させ、遥か遠く、人界から援軍を呼び寄せる。
 自分だけの力では踏破が不可能と判断すれば直ぐに別の力を足す、恐ろしいまでの冷静さと冷徹さ。


 召喚せしめるは2名、横島が最も信頼し、共に研鑚を積む最高の友にして生涯の宿敵。


「雪之丞っ!」
「ふぉっ! おま、(お前は)ここっ!(ここはどこだ)かお・・・・・・いや!(かおりは、いやなんでもねぇ!) 」

 何故か上半身裸でベルトの辺りをカチャカチャやってる三白眼の男と


「ピ、ピートっ!」
「ひぉぉっ!ふむっ、ぐむ、ふぉっ、ふぉぉぉおぉぉぉぉおおぉぉぉっ!(訳不可能)」

 何故か裸身に荒縄を巻かれ、猿轡をかまされた金髪のダンピールが虚空より出現した。


「良く来たな者共!」

 一息ついて、五分後。
 横島は何事も無かったかのように二人を出迎えた。


「てめぇ、せっかく振袖姿のかおりを口説き落としてさぁこれからって時にぃっ!」
「横島さんっ! たすっ、助かりましたっ! ミサに紛れたエミさんに拉致られて、も、もう駄目かとっ!」


 もちろん五分ぐらいでは落ち着けない二人。


「ええぃ! うろたえるなこの恋愛新兵共がっ!」

 ビリビリと大気に響く大音声で、慌てふためく援軍に喝を入れる横島軍曹。

「片腹痛いぞ二等兵共がっ! 好いた好かれたしておれば据え膳、拉致、洗脳など日常茶飯事だっ!」

「そ、それは横島さんぐらいのものではないかと・・・・・・」

 こくこくと相槌を打つ三白眼。

「えぇい、余計な茶々を入れおって。そんな甘い猥談を聞くために貴様らを呼んだのでは無い!」


 にやりと笑う横島に、混乱から立ち直った二人の瞳に光が宿る。


「おまえが、俺と・・・・・・この変態を呼ぶからにはそれなりのヤマなんだな」

 猛獣のように笑う雪之丞。


「横島さん程の人が僕を・・・・・・あと、ついでにこの野人を呼ぶからには恐るべき神の敵が相手なんですね」

 全裸になっても、それだけは手放さなかったロザリオを手に祈りを捧げるピート。


 ぴしっ
 瞬間、雪之丞とピートに挟まれた空間に罅が入る。


 しかし、何時もならばうろたえているであろうリーダー横島は、断固たる意志で二人をまとめる。


「いい勘しているな、貴様ら。
 俺の後ろを見てみろ」


 もちろん横島の後ろに広がるのは『神外魔凶』


「ほぉ」

「へぇ」

 おもいおもいの感想を端的に述べる二人の戦士。


「雪之丞」

「おう」

「あそこに強い敵がいる(多分)、以上だ」

 ギラリと、雪之上の瞳が鈍い光を放つ。


「ピート」

「はい」

「あの果てに神の愛(惚れ薬)がある、以上だ」

 キランと、ピートの瞳から涙が零れた。


「最早説明は不要だろう。
 今、角笛が、ギャラルホンが鳴り響いている
 俺達に必要な物はなんだ? 野郎共?」


「敵だ」

「信仰です」


「では友よ、俺達はあそこで何をすると思う?」


「喧嘩」

「聖戦」


「ならば兄弟! 戦いの果てに俺達が得る物は何だっ!?」

「「勝利」」


 二人の宣誓に満足げに笑い、横島は振り返った。
 視線を合わせた三人の前にあるのはもちろん「神外魔凶」

 神をもって異境と言われる地に男達は踏み出した。

 最初はゆっくりと、次第に速度を上げ、そして最後は雄叫びを上げつつ全力疾走。


「「「うらぁらぁぁぁあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」」」


 そして男達は、異境への侵攻を開始した。
 悪鬼のように、悪餓鬼のように、笑いながら・・・・・・!


 以下、熱く、暑く、暑苦しい展開が一万行ほど続きますのでダイジェストで送らせて頂きます。


「聴こえる、聴こえるぞっ! 精霊達の声が、内なる小宇宙の鼓動がっ!」

「はっ、あの変態。・・・・・・虹を背負ってやがる」

 その姿は正しく―――御使い。


「これは・・・・・・?」

「ま、まさか・・・・・・今まで横島さんの霊門は閉じていたなんてっ」

 桁外れの“力”が烈風を巻き起こした。


「人の姿を捨てたからって、人の心まで捨てた覚えはねぇぇぇぇええええぇ!」

「だから言ったろう・・・・・・その野人に常識は通じないってね」

 絶叫と共に放たれた獣の拳が悪神の中心を穿った。


「もし、主に信仰と友を選べと言われたのなら・・・・・・僕は友を選ぶ!」

「いいぞ変態、今度酒の味を教えてやる!」

 彼は折れなかった、何度見失おうとも、幾度傷つこうとも、彼の心は折れなかった。


「兄貴! 兄貴なのか!?」

「おい、誰なんだ雪之丞。・・・・・・あいつは、あの悪魔は?」

 漆黒の翼に身を包んだ悪魔の顔は、どこか雪之丞に似ていた。


「ぐっ、ぐぅぅぅぅぅうぅうぅうううううウウゥゥゥゥ。・・・・・・ミ・・・・・・ン・・・ナ・・・・・・ゴ、ロ、ズ!」

「横島さんの魔族因子が・・・・・・っ! あの光の仕業か」

 メキメキと音を立てて横島の肉体が黒く変色していく。


「君に神の祝福を。すべてを忘れ、赤子のよう・・・・・・眠りなさい」

「ピート? おい・・・・・・待てよ。・・・・・・ピート?」

 ピートの身体が、影と共に光に消えていく。


「兄貴ぃぃぃぃぃぃいっ!」

「泣くな弟よ。お前は俺に泣き顔を心に刻んで逝けと言うのか?」

 涙に濡れたぐしゃぐしゃの顔で、雪之上は笑った。


「おまえは・・・・・・ピート? お前、死んだんじゃ・・・・・・」

「誰だそれは、我が名はピーポー。国家権力に使える未確認生物だ」

 確かに、ピートそっくりのそいつの頭にはアト○の髪のような青ヘルメットが・・・・・・


「あれは・・・・・・、『冒険野郎マグガイバー』!?」

「知っているのか、雪之丞!」

 起動する巨大ゴーレムを三対の目が捉えた。


「俺、故郷に帰ったら結婚するんだ」

「そうか、・・・・・・なら生き残らなきゃな」

 夕焼けの下、男達は誓い合った。


「戦闘力75のクズだ。暇つぶしにもならん」

「避けろぉ! ピートっ!」

 ショットガンが彼の胸を貫いた。


「まったく、最後の最後で野人と一緒とはな」

「そういうんじゃねえよ変態。最後の華だ盛大に咲かせてやろうぜ」

「華と散る、か。お前にしては美しい表現だ」

「男の花道だ、美しくて当たり前だ」

「ふん」「くくっ」

「じゃあ行くか」「ああ」

「「相棒っ!」」


「頼みの綱の文殊は封じた。
 だというのに・・・・・・何故立ち上がる、人間」

「地面に何も落ちてないからだよ」

「何故諦めない、人間」

「諦め方を知らねぇからだよ」

「何故「うるせぇ!」」

「何故も糞もあるかっ!
 100回倒れても100回立ち上がってやる。
 1000回やって駄目なら1001回目に賭けてやる。

 あいつらが信じた俺は、こんな所で止まれねぇ!
 あいつらから託された未来は、そんなに軽くねぇ!
 あいつらから受け継いだ意志が、テメェ如きに負ける筈がねぇぇぇえええぇぇぇっっ!!!」

 瞬間、中身の無い筈の二つ文殊に光が宿る。


 『体』 極限まで鍛え上げられた窮極の肉体、自己の可能性を信じた魂の文殊

 『技』 相反するものを調律する至高の技術、魔であって人心を識る魂の文殊


「・・・・・・・・・はっ、おせっかい共が」

 そうだ、中身が無いなら入れればいい。
 只、それだけの事だ。

 横島は何のためらいも無く己の魂を文殊に込めた。

 『心』

 あの、馬鹿で馬鹿な彼らが信じた自分を貫く為に・・・・・・。


 『心』『技』『体』


 極彩色の輝きを放つ三種の文殊が組み合わさり、巴紋を描く。

 それは三位一体。完全なる調和を果たした至高の文殊が、魂の失せた横島に換える。


 “巴”文殊と横島の肉体が触れ合った瞬間、世界は光に包まれた。


 とぽとぽとぽ・・・・・・

 神岩より滲み出る小さな滝を、即席の水筒である瓢箪に注ぐ横島。
 神岩の脇にある樹にはこう彫られていた・・・・・・「之、娯津郷酒也」と

 そう、今横島は神にして難攻不落と言わしめた異境を制し、悲願を達成したのだった。


 ・・・・・・淡々と、酒を注ぎ込む横島の胸に去来する物は何か?

 達成の喜びか後悔の悲しみか、その横顔からは窺い知る事はできない。


「・・・・・・」

 やがて瓢箪を酒で満たした横島はきつく、瓢箪の栓を閉めると顔を上げ満天の星空を見上げて呟いた。


「……まぁ、今週はおもいっきりギャグパートだったし、来週は何事も無かったかのように復活してるだろ」


 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・経験者はかく語りき。


(しょぉぉおおりゅぅきぃぃいいいさまぁぁぁぁぁああああああああああああっ!)

 妙神山に辿り着いた瞬間、小竜姫様のにほいを感じ取った横島は疾風となって屋敷を走り抜けた。
 もちろん、小竜姫様を油断させる為に極限まで気配を消しながら、である。
 併せてボロボロになった服装を元に『戻』しておく。


「横島が妙神山まで来たが、小竜姫が居なかったので「上等な酒を持ってまた来る」と言い残して下山していった」

 記憶を消した天龍童子には、そう小竜姫に伝えるように脳に直接『刻』んである。


 そして微妙に空間を歪んでいる妙神山の母屋を翔ける事、数分。
 横島は普通の家で居間に類する部屋の襖の前に立った。


 くんくんと鼻を使えば甘い匂いをさせた小竜姫様の香り。
 横島はここに小竜姫様がいる事に確信を持った。


 すーはーすーはー、と呼吸を整える事数秒。
 そっと襖越しに声をかける。

「小竜姫様」

 横島のやさし「そう」で落ち着いている「様に聴こえる」声に対して、小竜姫の返答は・・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・」

 無言。


 つーー、と横島の背に冷たい汗が流れる。

「しょ、小竜姫様?」

「・・・・・・ん・・・・・・ふぇ?・・・・・・あ。はっ、はい、どちら様ですか?」

「いや、横島ですけど・・・・・・入ってもいいですか?」

「えぇ、構いませんが・・・・・・え? よっ、横島さん!? 」

 なにやら混乱している小竜姫は無視してとりあえず襖を開けてみる横島。


 そこで横島が見た光景を端的に表現すると。

 (小竜姫様 + どてら)in こたつ。


 印象としては、正月における委員長の実態。
 加えて言うのなら、小竜姫様の頬には大きめなコタツに広げられたコミック本の痕がくっきりとついていた。

(寝とったんかいっ!)

 表情に変化は見せずに心の中でのみツッコミを入れておく横島。

「あけましておめでとうございます。小竜姫様」

「は、はい。あけましておめでとうございます。横島さん。
 ・・・・・・すみません。鬼門達から連絡があれば門まで迎えにいけたのですが・・・・・・?」

 まったく鬼門たちは何をしていたのでしょう? と思考する小竜姫様に慌てた横島が弁解を入れておく。

「い、いやー。新しい隠遁術を思いつきまして・・・・・・試しに鬼門達に使ってみた所こうして気付かれずに入れたというわけです」

(あぶね〜〜。鬼門たちのこと忘れとった・・・・・・。)

「そうなんですか。新年であろうとも自己の研鑚を怠らない姿には師の一人として大変嬉しく思います」

 朗らかに笑う小竜姫様。
 ・・・・・・もっとも「鬼門達は後でお仕置きですね」と、こっそり底冷えのする声色で呟いていたが・・・・・・。

「はっはっはっ(すまん鬼門達よ)、おかげで新年早々小竜姫様の愛らしい姿を見ることができましたよ」

「なっ」

 横島の言葉にどてら姿の自分に気付いたのか、小竜姫の頬が若干朱に染まる。

「こっ、これは失礼しました・・・・・・。着替えてきますので少々修練場でお待ちいただけますか?」

「何言ってるんですか、突然お邪魔したのはこちらの都合、失礼ならこっちが先ですよ。
 加えて言うのなら今回は修行じゃなくて初詣、つまり小竜姫様のご尊顔を拝する為に妙神山まで来たんですよ」

 ここでお預けというのも殺生な話でしょう? と丸め込む横島に小竜姫ははて? と首をかしげた。

「・・・・・・妙神山に初詣ですか?」

「おかしいですか?」

「・・・・・・そうですね。この地に修行場を開いて随分と立ちますが初詣にこられた方は初めてですね」

 顎に人差し指を添えて考え込む小竜姫。

「なはははは、それは小竜姫様の神秘的なまでの美しさを知らんからでしょう。
 知っていれば妙神山は麓まで参拝客で一杯になりますよ」

「もう、横島さんたら///」

 神様に神秘的な美しさと言う日本語的に微妙な表現がこうをそうしたのか、
 明らかに上機嫌な小竜姫様に手応えを感じた横島は早速話を切り出す。


「と、いうわけで部屋に入れていただけますか?」


 軽い冗談で盛り上げてから、いつも通りの調子で聞いたその一声。
 小竜姫にもう少し、男性との付き合いがあればそれは感じ取れたのかもしれない。

 横島の声色が7匹の子ヤギに向かって「家に入れてくれ」、と頼む狼の声色だと言う事に…・・・。


 無論、そんな経験など皆無に等しい小竜姫様は……。


「あ、気が利かずに申し訳ありません。
 どうぞ中に入ってください。」

 鴨ネギという訳だ。

「はい、失礼します。(副音声:はい、いただきます。)」


 同じコタツを囲んでおよそ30分。
 当り障りの無い話題から入り、最近の仕事事情等々、話のネタは尽きなかった。
 直ぐに仕掛けない辺りに横島の今回にかける意気込みが伝わるだろう。


 しかしその団欒とした空気は横島の一手に脆くも突き崩された。


「あ、そうだ。
 せっかくお土産を持ってきていたのにすっかり忘れていました」


 そう言って懐より取り出されたのは中身の詰まった瓢箪。

 中身の液体の名は『娯津郷酒』
 曰く、その効能は名のある女竜神ですら、「くらり」「ぽろり」「どろり」となり、
 終いには「メロメロ」とか「ドロドロ」になってしまうという所謂『惚れ薬』だ。

「あぁ、殿下の仰っていた物ですね。わざわざすみません」

「と、お渡ししたいとこなのですが……ちょっといいですか?」

 そう言って瓢箪を受け取ろうとする小竜姫様に横島は待ったをかけた。
 そう、ここで酒を渡して「後で飲まさせていただきます」では、横島の苦労は報われない。

 ここで、このご都合よく小竜姫と二人っきりの状況で飲ませなければ意味は無いのだ。

「この酒は幻中の幻といわれる名も無き一品でして……、正直自分も飲んだ事が無いお酒なのです。
 恥ずかしい話なんですが、ここで一緒に飲まさせてもらっては駄目ですか?」

 すまなそうな表情を作り、手を合わせて頼み込む横島。

「そんなにも貴重なお酒なのですか……、それは手に入れるまでさぞ苦労なさったんでしょうね」


 えぇ、死ぬほど苦労しました。
 とは言えず、必死に頼み込む横島。


「それならば横島さんが謝る必要はありません。
 昼間からというのが少々気を咎めますが、ここで少しだけ頂いてしまうとしましょう」

「ありがとうございますっ!」

 コタツの天板に頭を擦りつけて感謝の意を表す横島。
 その横島の姿に、「本当に珍しいお酒なんだな」と確信を持つ小竜姫。


 早速とばかりにコタツの上に置いてあった湯飲みを使い、自分と小竜姫の分を瓢箪から酒を注いでいく横島。
 小竜姫としては宴の場で以外飲む事の無いお酒に罪悪感半分、好奇心半分といったご様子だ。


「さ、どうぞどうぞ」

「はい、いただきます」

 差し出された湯飲みを丁寧に受け取る小竜姫
 その視線が無色透明のお酒へと集中する。

「あれ? このお酒……?」

「ハイ、ドウカシマシタカ?」

「いえ、どうやらお神酒のようですね。強い霊力を含んでいます。
 このようなお酒、どこで手に入れたのですか?」

「ハハハ、いえソレは小竜姫様といえどもお教えするわけには……申し訳ないです」

「あぁ、いえ、こちらこそ浅慮な事を聞いてしまいました。
 聞けば幻中の幻とのお話、簡単に漏らせる筈がありませんね」

 申し訳なさそうに微笑む小竜姫。
 対して、冷や汗を堪える事のできない横島。

 この男としても酒を勧めた時点で退路は絶たれていると言っていいだろう。

「ま、まぁ、そんな話はいいじゃないですか。
 乾杯しましょう乾杯、僭越ながら音頭はこの自分が取らさせていただきますので……」

「そうですね、ではお願いします。」

 そっと、小竜姫の湯のみが掲げられる。

「では、今年一年がいい年でありますように、そして美しき小竜姫様に……乾杯っ!」

「ええと、……その、乾杯」

 やはり自分の事を誉めて乾杯と言う部分に照れてしまったのか、乾杯の声は酷く小さい。


 ……もっとも、この場において重要なはそんな所では無い。
 最も重要なのは、


 小竜姫が『娯津郷酒』を口に含んだ。
 その一点だろう。


 こくり、と小竜姫の口内から嚥下されたその『毒』は細い喉を抜け、臓腑に達した。
 各種臓器に瞬く間に吸収された『毒』は幾秒もせぬうち血管を通して広がり、彼女の全身を犯した。


 その瞬間、小竜姫のささやかな胸の奥で

 ―――ドクン

 と、一際大きく心の臓が跳ねた。


 後編に続く。


亞斗餓鬼

 エロです。エロなんです。小竜姫様でエロなんです。
 後編は7・・・・・・いえ、10日以内には何とか提出したいです、先生。
 それでは薄いあとがきですが・・・・・・、再見。

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