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「心の声が いそぢあまりいつつ目(GS)」

寿 (2007-08-21 00:40/2007-08-21 02:28)
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私達が横島君獲得に動き出してからしばらくが過ぎた。

タマモと呼ばれる金毛白面九尾の狐の転生体の退治指令を押さえ込むことで横島君とのつながりを強めるつもりでいたが、横島君の能力とヒャクメ様を警戒してこれといった手を打つことも無くただ時が過ぎた。

幸いにも六道さんもこれといった手を打っていないのが救いではあるが、相変わらず上からの圧力がたいしてかかってこない所を見るとやはりあの人がいまだに抑えていると見たほうがいいだろう。

「先生、今回の横島君達の現状報告です」

「そう・・・」

と言っても令子達の話を聞いてまとめただけのものだが。

その内容を一言で言うと現状維持。

これと言って何も変わらない。この書類はいつもこんなものだ。

正直に認めよう。

初手をしくじった。

このオカルトGメンをより強固にするために、そしてその大切なスタートを切るときには自分は現場に立つことができないと言う現状に多少あせっていたようだ。

だがある意味これでよかったのかもしれない。横島君の現状、金毛白面九尾の狐の危険性、神族との関係などを考えるとじっくり腰をすえてあたったほうがいいだろう。

「先生、よろしいですか?」

「うん? なにかしら?」

「上のほうが多少騒がしいようです」

「上? なにかあったのかしら・・・」

オカルトGメンの立ち上げに関してはこれと言って遅れは無い。金毛白面九尾の狐に関しては六道さんが抑えているから騒ぎようがないはずだが?

「上と言っても金毛白面九尾の狐の退治指令を出した所の下です。つまり実行の指揮を取るレベルの者が動き出しています」

「!! 圧力が仇となったわね・・・」

六道さんが圧力をかけたのがその人物の上司。そしてその人物の指示を受けたのが私達。一向に進まない指令、そして上司から受けるプレッシャーからかついに暴発したか!?

「そのようです。しかも悪いことに金毛白面九尾の狐の転生、所在を知られたようです。先ほどGS協会を通して退治指令が一般GSに出されました」

「最悪ね・・・」

金毛白面九尾の狐はビックネームだ。転生直後のうちに退治して名を上げようとするGSはそれこそはいて捨てるほどいるだろう。

「西条君! 急いで横島君達の居場所を調べて! 自室にいるのならばすぐに妙神山の小竜姫様のところに連絡を取るようにして。他の場所にいるようなら最優先で保護するようにして!!」

「了解しました!」

「私は六道さんのところに向かいます。貸しは作りたくないけど六道さんのところと協力して指令を撤回させます。何かあったら逐一報告するように!」

「はっ!!」

西条君に指示を与えるとすぐに動き出す。

今回の動きは横島君獲得に動き、その初手をしくじった私達の責任だ。なんとしても止めないと・・・


「はぁ! はぁ!」

「タマモ! 大丈夫か!?」

俺は息を切らしているタマモに声をかける。

俺達は今日は予定があるというヒャクメを置いて唐巣神父の教会に向かっていた。

その道すがらタマモが急に何かを感じ取った。

そしてタマモは急に俺の手を取ると走り出した。

そしてしばらく走り人気の無い裏路地に入った所で少し息を整えている。

「はぁ・・・大丈夫」

「そっか。けど急にどうしたんだ?」

「・・・嫌な気配がした。たぶん・・・敵」

タマモは周りを窺うようにしながらもそう答えた。

「敵? 悪霊かなにかをみつけたのか?」

俺はその言葉を聞いて多少緊張しながら聞いた。

「ううん、この気配は多分人間。それも一人じゃない」

「人間!? 何だって俺たちが狙われてるんだ?」

「さぁ? 私が聞きたいわ。大方私を倒して名を上げたいんじゃない?」

その言葉に多少の諦めを感じながら俺はその意味を考えた。

タマモを倒す? 確かにタマモは妖怪だがこんな小さな女の子を倒した所で名前なんて・・・

そこまで考えてハッとなる。タマモは金毛白面九尾の狐だ。ヒャクメに聞いた限りでは前世ではかなり名の知れたものだったようだ。

確かにそれなら名も上がるだろう。だが・・・

気にくわない!!

タマモの前世がどうあれタマモはタマモだ。金毛白面九尾の狐である以前に俺の部屋で暮らすただのタマモだ!

それを退治するだと? そんなことさせてたまるか!!

「タマモ、敵はどれくらいだ?」

「わからない。でも少なくても十人以上いることは確実。しかも全員霊能力者ね。ある程度近づいてくればわかるけど向こうも警戒してるからよくわからない。ただ、敵意だけは感じる」

「そう、か・・・」

タマモは人間なんかより優れた感覚器官を持っている。そのタマモでもわからないのでは俺の力なんかじゃ調べようが無い。

しかしどうする?

相手が十人以上いるんじゃタマモを護りきれるかは正直わからない。なので出来れば争いたくは無い。

一番いいのは俺の部屋まで戻り小竜姫様に連絡を取って妙神山に入れてもらうことだが、俺の部屋まで敵に会わずにいけるかは正直賭けだ。

くそ!! 考えろ!! どうする!? どうすればいい!? こんなときヒャクメがいてくれればヒャクメに調べてもらえるのに!!

そこまで考えて頭を何かが過ぎる。

ヒャクメ? ヒャクメの力?

「タマモ・・・」

「? なに?」

「敵は・・・人間なんだな?」

「ええ、そうよ」

タマモは俺の問いかけに簡潔にそう答えた。

そう・・か。人間なら・・・

「タマモ」

俺はタマモを真正面から見つめる。

「どうしたのよ?」

「ごめんな・・・」

俺は一言だけそういうと力を解放する。

出来れば二度と聞きたくは無かった声を聞くために・・・

ヒャクメの力を・・・心の声を聞く力を・・・

「ちょ、どういう意味よ!? 」

タマモがそう問いかけてくるのを無視して俺はタマモの手を取る。

聞こえる・・・明確な・・・そしてあまりにも自身の欲にまみれた・・・敵意が!!

「こっちだ!!」

俺はその声が聞こえない方向へとタマモをつれて走り出した。

俺はただ走り続けた。

少しでも声が聞こえたらその隙間を縫う様に道を変え、ただ部屋を目指して走り続けた。

「どうしたってのよ!? あんた顔が真っ青よ!!」

「だ、大丈夫だ」

タマモはそう声を掛けてくるがそう声を返すだけでただ走り続けた。

その最中、俺は空いている手を口に当てる。

気持ち悪い・・・

吐き気を感じる。雑音のように聞こえてくる周囲の心の声の中からも確実に聞き分けることが出来るその声。

あまりに意地汚い心の声。

欲のために平気で他者の命を奪おうとする心の声は今まで感じた事が無いほどの嫌悪感を感じさせた。

絶えず体に汚物を浴びさせられているような感覚が全身を支配する。

「もう少しだ・・・」

「ちょっと! 本当に大丈夫なの!? あんた顔がもう白いわよ!!」

俺は既にその返事をすることもできない状態だった。

それほど俺は心の声を聞いたことによって消耗していた。

自分でも今走っていることが奇跡に感じるが、タマモの俺を心配する心の声が俺を走らせていた。

「つ、ついた・・・」

俺達は部屋へと駆け込むと押入れを開け、小竜姫様に教わった緊急時の連絡方法である言葉を言う。

「開」

その言葉と共に押入れが妙神山へと繋がる。

俺たちが妙神山に入ると小竜姫様が迎えてくれた。

「横島さん、どうしたんですか!?」

俺はその言葉を聞きながら意識を手放した・・・


私が妙神山に戻るとそこには布団に寝かされた横島さんがいた。

その脇でじっと横島さんの顔を見ながらその手を握って動かないタマモちゃん。

「小竜姫、なにがあったのね〜?」

私は小竜姫からことのあらましを聞いた。

タマモちゃん達が襲われそうになったこと。

横島さんがそれをかわしながら妙神山に駆け込んだこと。

そしてそのまま倒れたこと・・・

「タマモさんの話では横島さんは走りながらどんどん辛そうになって言ったそうです」

おそらく横島さんは敵の位置を知るために相手の心の声を聞いたのだろう・・・

タマモちゃんを護るために・・・

私はそのまま現状を調べ上げた。横島さん達を襲おうとした者たち、それを指示した者達、その全てを調べ上げた。

「・・・以上なのね〜」

それを聞くとタマモちゃんが立ち上がろうとした。

「どこに行く気ですか? 」

「・・・お礼に」

そうタマモちゃんはすっと目を細めながらそう言った。

「おやめなさい。今あなたが動けば事を荒立てるだけです。それに相手は複数です。今のあなたでは無事に済むとも思えません」

「だからなに? 私はあなた達神族ほどお人よしじゃないの」

そういいながら今度こそ立ち上がろうとしたタマモちゃんだったがその動きが止まる。

「横島・・・」

タマモちゃんの手は横島さんがぎゅっと握って放さなかった。

「あなたは横島さんのそばにいてあげて下さい。それと・・・一つ訂正させて下さい」

小竜姫は立ち上がると神剣を手に取る。

「私達神族も身内に手を出されてそのまま過ごすほどお人よしではありません」

そう静かに、しかし否定を許さない力強さをもった声でそう告げた。

「ヒャクメ、ここは頼みます」

「わかったのね〜」

小竜姫はそう言い残すと部屋を出て行った。

私は横島さんのそばに近寄るとその頭をそっと撫でる。

「そばにいてあげられなくてごめんなのね〜」

そう小さな声で告げる。

「ねぇ、小竜姫は何しにいったの?」

タマモちゃんはいつもの顔にもどってそう聞いてきた。

「ん〜。『天罰』なのね〜」

その言葉にタマモちゃんは不思議そうな顔をしている。

本当は私も行きたかったけど横島さんを放ってはいけないのね〜


私は六道さんの書斎を訪ねるとすぐに行動を開始した。

「困ったことになったわね〜〜」

「そうですね。ですがなんとか指令の撤回はさせました。後はそれを現在行動中のGS達に伝えれば一応の落ち着きは見れると思います。」

「でも〜〜、それは一時しのぎにしかならないわよね〜〜?」

今回のことで金毛白面九尾の狐のことが知られてしまった。これを退治しようとする動きはいずれ現れてくるだろう。

「そうですね。あまりいい手ではありませんが金毛白面九尾の狐、今はタマモと名乗っているようですが彼女をそれなりの所で正式に保護するしかないでしょう」

「そうね〜〜」

あまり気は進まないがそれが最善ではある。

「その必要はありませんよ?」

その声に私達は身を固め、その声のした方を向く。

「し、小竜姫様・・・」

そこにはいつの間にか小竜姫様が立っていた。

「挨拶も無くお伺いしてすいません。ただあなた達にお伝えしたいことがありまして」

そう小竜姫様は笑顔で言った。

ただ、その言葉は笑っていなかったが・・・

「それは〜〜どういった事でしょうか〜〜?」

「まず一つ。金毛白面九尾の狐の転生体、タマモさんは我々神族が保護しています。今後彼女が人間に危害を加える、もしくは敵対する行動をしない限り彼女への敵対行動、並びに彼女が望まない獲得などの行いは止めていただきます。これを破るものはそれなりの代償は受けていただきます」

有無を言わさない言葉が紡がれていく。

「そ、その代償とは?」

「それは・・・」

ちりりりりん。ちりりりりん・・・

小竜姫様の返事を聞く前に六道さんの机の上の電話がなった。

「どうぞ」

小竜姫様はそう言い、電話に出るよう促した。

「どうしたのかしら〜〜? 」

六道さんは電話に出るとなにか報告を受けたようだ。

「わかったわ〜〜。もう少し情報を集めてみて〜〜」

チン。

六道さんは電話を置くと小竜姫様を見た。

「タマモちゃんの退治指令を出した人と〜〜、退治しようとした人たちが〜〜病院に担ぎ込まれたって〜〜。なんでも〜〜全員狂ったように錯乱してるみたいよ〜〜」

それを聞くと私もあらためて小竜姫様を見る。

「・・・狐憑き」

「正解です。先ほど伝えた言葉をおっしゃったのは神族である空狐様です」

空狐。長い時をへて神となった妖狐。確かに同じ妖狐である金毛白面九尾の狐を護ろうとするのはわかるが・・・

「なぜ空狐様が金毛白面九尾の狐を保護するのですか? 金毛白面九尾の狐は野狐。もとは善狐である空狐様がでるのはおかしいはず・・・」

野狐は人に害を与える妖狐。善狐は幸運をもたらすとされ、稲荷神に使える妖狐のはず。

「確かにそうですが彼女はまだ転生したばかりです。それゆえに野狐にも善狐にもなりえます。まして妖狐は希少。金毛白面九尾の狐が善狐になればどれだけの力になるかは考えるまでも無いでしょう」

確かに。ましては神族が保護していれば善狐になる可能性のほうが高い。

「し、しかし神族が人界にここまで介入してくることは今までなかったことです」

「そうでもありませんよ? 私達神族は確かにあなた方人間や自然を守護する部分もありますが古来よりこのようなこともおこなわれてきました。思い上がった方達に対する罰を与えることを・・・」

「天罰〜〜ですね〜〜」

六道さんの言葉に小竜姫様がうなずく。

神が人に対しておこなう罰。今回のことも確かに人間の裏の考えが原因と考えれば確かに天罰も下ろう。

「わかっていただけましたか? ならば早くそのことを伝えた方がいいでしょう。そうしなければこのような者達が増えるだけですよ? 」

「わ、わかりました〜〜」

六道さんが慌てて動き出す。

それが終わるのを確認すると小竜姫様は再び口を開く。

「さて、今回の騒動を調べさせていただきましたがどうやらお二人も少し関係しているようですね? 」

ビクッ!!

体が強張る。六道さんも動けないようだ。

「ご心配なく。お二人とも目的はどうあれタマモちゃんを護ろうとしてくれたようですし、空狐様もお二人には天罰を加えてはいないでしょう? 」

そういえばそうだ。私達に特に異常は無い。

「ただし、私達は違います。横島さんを勧誘するのは結構。横島さんは確かに私の弟子ですがその将来まで縛ろうとは思いませんし、どのような道を選ぶかは彼に任せるつもりです」

そこで言葉を区切る。すでに顔も笑ってはいない。

「ですが己の利を求めるあまりその将来を縛ろうとするならば黙っているつもりはありません! 」

そう言ってこちらを睨みつける。

う、動けない・・・ただ睨みつけられているだけなのに体が言うことをきかない。

「あなた方は権力をもっているようですがその力を間違った方に使わないことを祈ります。今回のことは眼をつぶりますが、仏の顔も三度まで、と言いますが身内に手を出されて三度も機会が与えられるとは考えないで下さいね? 」

コクコク。

私達は頷くことしか出来なかった。つまり次は無い。と言われたようなものだ。

「結構。それでは今日はもうおいとましますね。それでは」

そう言って小竜姫様は姿を消した。

「「ふ〜〜」」

私達はそれと同時に息を吐きその場にへたり込む。

「あ、嵐が去りましたね・・・」

「そ、そうね〜〜。それで〜〜美智恵ちゃんはどうするの〜〜? 」

「どうする、とは? 」

「横島君のことよ〜〜。あきらめるの〜〜? 」

こ、この人は・・・

「いいえ。今度はじっくり腰をすえて正攻法で行こうと思います」

今回のことは反省するべき事だがあれほど小竜姫様が入れ込んでいる横島君に対する興味が増したのも事実だ。

「そう〜〜。ならライバルね〜〜」

私の返事に六道さんはいつものようにニコニコしながら言った。

つまりあなたもあきらめないんですね?

ふふ、良いでしょう。いくら師匠に当たるあなたでも手加減はしませんよ?

でも、その前にこの事件にかたをつけてしまおう。

そして横島君に謝りに行こう。

攻められるかもしれない。非難されてもそれだけのことをしてしまったのだからしょうがない。

それでも彼に謝りにいこう。

全てはそれからだから・・・


あとがき
今回は少し綺麗事っぽく終わらせました。今回書いた空狐はすこし妖狐について調べた時に知りました。これ以上うんちくをたれるとしつこいかなと思いましたがどんなもんでしょうか? ちなみに次でこの話は終わりです。がんばります〜。

レス返し
はじめにご意見、ご感想を寄せていただいた皆様に感謝を・・・

稟様
GMお二人にどのような対応をするかは次で。正直まだ考え中です。シリアスにするかそれとも・・・と言った所で悩んでます。

内海一弘様
タマモは今回ヒロイン扱いです。ヒャクメの影が薄い。いつものことのような本来あるべき姿のような気がするのは私だけでしょうか?

への様
今回は多少シリアス風味でしたが次はどうなるかまだ考えてません。多少強引に収めたのでどうするか悩み中です。いつもこんなんで情けない限りです。

百目守様
それもありな様な気がします。というか正しいヒャクメのあり方のような気がします。しかしケン・シ○ラとはまた渋いですな〜。

チョーやん様
あんまり六道家は動かしませんでした。この人は裏も表も必要あらば使う人と考えたのと、あまりあせらず事を構えていたからです。まあ私にそれを書き表す力が無かったせいでもありますが・・・ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!

Tシロー様
次は少し旦那の話を使おうかと考えてますのでお待ちください。ある意味旦那のことを知っているから手を出しかねたみたいなことを今回入れてもよかったかなとか考えてしまいました。反省。

アイク様
ある意味今回私が一番書きたかった風景を気にいっていただけたようで大変ありがたいです。しかしこれの次をどうするかまだ白紙だったりします。情けない!!

February様
もう一人のヒロイン候補のおキヌちゃんの出番が無いのが個人的には不満だったりします。今回はタマモヒロインなんでしょうがない気がしますが、おキヌスキーなので・・・

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