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「ちびタマモ(GS)」

テイル (2007-07-13 01:13)
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 たかす様に捧ぐ。
 あの絵を見た時、ぱっと思い浮かんだ話です。


 どんな獣でも、狩りをする時以外は大体ぐーたらしているものだ。日の照らない木陰や、外敵の近づかない巣の中でごろごろと昼寝をする。それは単に怠けているわけではなく、余計な体力の消耗を防ぐという本能の知恵といえるものだ。
 だから妖怪とはいえベースが狐のタマモは、事務所の屋根裏部屋でごろごろとしている自分は間違っていないと思っていた。きつねうどんを食べてお腹はいっぱい。ふかふかのベッドに寝そべって午睡と楽しむのも、誰にも文句は言わせない野生に生きる獣の姿だ。決して自堕落に生きているわけではない。
 実際身体を動かすのは嫌いではない。とはいえシロのように、毎日毎日馬鹿のように走る必要を感じなければ、ことさら進んで身体を動かそうという欲求自体もなかった。ぐーたらしているのが幸せな一時と、そうタマモは感じていたのだ。
 しかし、そんなある日のことにそれは起きた。
「九尾の狐という奴について、拙者よく知らなかったのでござるが、最近調べて少し知ったのでござる」
 散歩帰りのシロが、ごろごろしているタマモに向かって呆れたように声を掛けたのだ。
「傾国の美女といわれていたそうでござるな、タマモの前身は。とても信じられないでござるがなぁ」
 少女漫画の雑誌をごろ寝で眺めていたタマモは、シロのその言葉に眉をひそめた。
「ちょっと……どういう意味よ」
「そのままでござるよ。毎日毎日ぐーたらぐーたら。とても女の魅力など感じないでござるからな。傾国の美女なんていうのも眉唾なものなのでござろうなぁ」
「な!」
「生活はそのままぐーたらなおばさんでござるからなぁ」
 シロはそう言葉を残し、笑いながら屋根裏部屋から去っていったのだ。
 実際の所、シロは別に喧嘩を売るつもりでそんなことを言ったわけではなかった。仕事以外の時はいつもいつもごろごろと寝ているタマモに対する、ある意味発憤を促す言葉だったのだ。たまには仕事以外でも運動するとか、どこかに出かけたりとか、おキヌの手伝いをするとか……そんな結果を求めての言葉だった。
 しかし当然のように、タマモはそのように受け取らなかった。しっかり喧嘩を売られたと受け取った。
「シロ……。本気にさせちゃいけない相手を本気にさせたわね……」
 シロの言葉に憤慨したタマモは、傾国の美女と異名を取った前世の自分に恥じることのないよう、その実力をしっかりと見せてやることに燃えてしまった。男を虜にして思うままに操るその手管を、しっかりと見せつけてやる、と。
 そして当然のように、タマモがターゲットとしたのは横島だった。一番身近な男性であり、かつシロが思いを寄せている相手だ。もし彼を虜にしたなら、どれだけシロが悔しがるか……。まさにこれ以上適当な相手はいない。
 とはいえ誘惑して本気になられても困る相手ではある。なにせ自他共に認めるスケベ大魔神なのだ。今のタマモの姿なら範囲外だから大丈夫だろうが、変化でナイスバディな美女になって誘惑するのは却下だろう。即座に貞操の危機になってしまう。だから、なんとか欲情させずに虜にする必要があった。
 双方を両立させる上手い手はないかと考え込んだタマモは、ふと今さっきまで読んでいた雑誌を思い出した。あれにだいぶ参考になるような内容のものがあったような気がする。
 タマモはベッドの上に放っていた雑誌を手にとると、ぱらぱらとページをめくった。すぐに目的のものを見つけて、再度読み直す。
 やがて読み終えたタマモは、にんまりと笑った。方向性が決まったのだ。
「……これだ。これでいこう。ふふふ、見てないさいよ、シロ。ほえ面かかせてあげる……」
 泣いて悔しがるシロを思い浮かべながら、タマモは楽しそうに作戦を練る。


 その日、横島はタマモと川を訪れていた。清涼で透き通った水が流れる山奥の川で、東京からはかなり離れた場所にある。誘われてのこのこと付いて来た結果がこれだった。シロとの散歩よりも、もしかしたら遠い場所かもしれない。
 ことの起こりは先日、事務所で二人きりになった時だった。不意にタマモが、思いついたかのように横島を誘ったのだ。面倒だった横島は最初断ろうとしたのだが、シロを引き合いにされた為に断り切れず、結果、横島はタマモと二人きりでこの川を訪れることになった。
「あはっ。結構楽しい〜」
 川に着くなり、タマモはざばざばと水の中に入っていった。……服のままで。当然身につけている紫色のワンピースは、水に濡れてきわどく透けていく。無邪気に見ずと戯れる美少女の姿は、激しい程の可愛さがあった。
 横島は半ば固まったかのようにタマモを凝視していた。
「どうしたのよ横島。一緒に遊ぼう? ほら」
 タマモが水をすくってまき散らした。きらきらとしぶきが陽の光に輝く。その輝きに彩られるように、タマモの表情も輝いている。そして当然、まき散らしたしぶきがタマモのワンピースを濡らし、さらにきわどさが増していく。
 固まっていた横島は、なんとか口を開いた。
「タ、タマモ……」
「何?」
 にっこりと笑みを浮かべるタマモに、横島は何を言おうか迷った。何故自分をここへ誘ったのか、どうして服のまま川にはいるのか、はたまたいつもの斜に構えた態度はどこに行ったのか等々、疑問はいくつもある。
 しかし横島は、とにかく一番気になっていることを訊ねることにした。
「……なんでちっちゃくなってるんだお前?」
「えへ。可愛くない?」
 横島の言葉にタマモは上目遣いで応えた。その仕草に横島の頭はぐらりと揺れる。心の奥底から湧きあがる欲求に、一瞬頭が真っ白になる。
 横島は慌ててタマモから目をそらすと、近くに立つ木に自らの額を押しつけつつ呟いた。
「ロリじゃない。俺はロリじゃない。ドキッとなんかしとらん。断じてしとらん!」
 言い聞かすように何度も呟き、やがて大きく深呼吸してから横島は改めてタマモを振り向いた。
 ……そして再度固まる。
 横島の目に飛び込んできたのは、肩ひもがずれて透ける云々という意味以上にきわどい姿のタマモだった。さらに前屈みでワンピースの裾を絞っており、当然のように下着が丸見えだった。
 横島はぎこちない動きで先ほどの木に向き直った。今度は額を大きくぶつけながら叫ぶ。
「俺はロリやないロリやないドキドキなんてしとらあああぁぁんっ!」
 繰り返し頭を木に打ち付け、一心不乱に叫ぶ横島。
 その姿を見たタマモは大いに満足した。狙い通りだった。
「思った以上に上手くいったわね」
 奇行を続ける横島を見ながら、タマモは楽しそうに笑う。
 タマモが利用したのは女の官能による誘惑ではなく、雑誌に載っていた萌というやつだった。性的欲求を生じさせず、しかし心を乱すには十分すぎる技。
 破壊力抜群のこの技法を生み出した現世の人間、恐るべし。しかしそれを簡単に会得して利用できる自分は、やっぱり傾国といわれる妖怪の化身なのだ。心乱された横島の姿こそがその証拠。満足だった。
「さて。そろそろお開きにしようかな」
 横島を自分の魅力の虜にするという当初の目的を果たしたタマモがそう呟いた時、不意に横島がぐるりと振り向いた。
 何事かと様子を窺ったタマモは、その鋭敏な耳に横島の呟きを捉える。
 横島は、こう呟いていた。
「そうだよな。俺はロリじゃない。その証拠にタマモを抱きたいとか、いたずらしたいとか全然思わんし」
 横島はゆらりとした動きでタマモに近づいてくる。俯いたその顔には影が差しており、表情が読みとれない。
「横島?」
「そう、俺はロリじゃない。……でも認めよう。タマモは可愛いと!」
「ちょっ」
 いきなりはっきりとした言葉を耳にして、タマモの顔が桃色に染まる。絶世の美女ならぬ美少女が頬を染める様子は凶悪的なまでに可愛い。
 その顔を目にしたのか、俯いたままの横島の頭がぐらりと揺れた。
「……俺は、ロリじゃない。タマモに官能的な魅力は感じない。しかし、しかしだ!」
 横島は自らの胸を押さえつつ呟いた。その息は段々と荒くなっている。
 ざぶざぶと川の中に足を踏み入れ、横島はタマモの目の前に立った。今のタマモの背は横島の腰ほどで、目線の高さを合わせるように横島はかがむ。しかしその視線は川面に向いており、タマモの目を見てはいない。
「よ、横島……?」
 戸惑うかのようなタマモの呟きには応えず、横島は俯いたまま呟く。
「今俺の中に荒れ狂うこの欲求! それは! タマモを愛でたいという抗いがたい欲求!」
 がばっと横島は顔を上げた。そしてタマモが逃げる間もなく、その小さな身体を抱きしめる。
「わぁあ!」
 いきなりのことに驚きの声を上げるタマモに頓着せず、横島は抱きしめたタマモに頬ずりしながら叫んだ。
「可愛ゆい! ああ可愛ゆい! 可愛いぞこんちくしょーっ」
「よ、よこよこしままま」
 逞しい胸に抱きしめられ、全力で頬ずりされ、可愛いを連呼され……タマモは何も出来ずにされるがまま。
「あああああ。食べちゃいたいというのはこんな感情だったのかあああああっ」
 横島の体温と匂いと心臓の音。
 それらを感じながら、タマモは横島が正気に戻るまで、何も抵抗できずに愛でられ続けたのだった。


 夜。
 事務所に戻ってきたシロは、ベッドで横になっているタマモに恨みがましい視線を向けた。
「タマモ……。今日先生と遠出をしてきたそうでござるな。拙者何も聞いていなくて、先生のアパートまで散歩の誘いに行ってしまったでござるよ」
 答えず毛布をかぶっているタマモに向かって、さらにシロは言う。
「まったく。一体どこに行っていたでござるか。先生は口ごもって話してくれないし、お主が話すでござるよ」
 タマモはやっぱり応えない。
 無視されたシロは唇を尖らせると、タマモがかぶっていた毛布を引っぺがした。
「こらタマモ! 応えるでござるよって……」
 そしてそこに現れたタマモの顔を見て、シロはきょとんとした表情を浮かべる。
「……タマモ、どうしたんでござるか? 顔が真っ赤でござるぞ?」
「う、うるさいっ」
 タマモはそう言い返すと、シロからひったくるようにして毛布を奪い取った。
 そしてトマトのように赤い顔を隠すかのように、毛布を深々とかぶる。
「〜〜〜〜っ!」
 毛布の中からタマモの言葉にならない叫びを聞いたような気がして、シロは不思議そうに首をかしげたのだった。


あとがき
 本来ならばもっと早くに書くべきものでした。ネタ自体は即座に出来たものの、形にするにのどれだけかかっているのか。
 たかす様が投稿された絵はすでに2ページ目に移動済み。
 遅筆な自分にしょぼんとします。

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