横島が独立してから4年がたった。事務所の経営も軌道にのり、事務所のメンバーも増えて順調である。今は幸せに過ごしている。
「「おはようございます!」」
「おはよう琴音ちゃん、遥香ちゃん」
「おし、全員揃ったな。ミーティングを始めよう」
全員が揃ったのを確認するとミーティングを開始する、これが横島の事務所―正式名称『妖怪仲介所』―の一日の始まりである。
妖怪仲介所・・・妖怪、神族、魔族の関わった事件などを主に受け持つ事務所で無闇に殺したりはせず、説得などで対応する。もちろんどうしようもなくなったら退治するしかないのだが。それだけではなく普通の除霊もやっている最近、期待の事務所だとか。
メンバーは所長の横島を始め、事務員の愛子と小鳩、所員の静琉とタマモ。そして、バイトというか研修の六道女学院に通う遥香と琴音である。
「まずは報告から聞こうか。静琉ちゃん、タマモ。頼む」
「「はい」」
「まず、○○であった妖怪騒ぎの件ですけど、動物に悪霊が取り憑いていただけでしたので除霊しました。結界符を5枚、破魔札を3枚使用しました」
「オカルトGメンからの助っ人だけど、無事に遂行してきたわ。道具は遥香が神通棍と破魔札を使った程度だけど、費用は向こう持ちだから実質0」
独立した後もオカルトGメンとの関係は変わらなく、仕事の依頼や助っ人の依頼がくることがある。前回はタマモと遥香がいったということである。静琉が行ったのは民間からの依頼である企業の土地に住み着いた妖怪を退治してもらいたいとのことだった。もちろん、この事務所は妖怪を殺したりはせずに、妖怪の街に住ませるか、別の場所に移すなどをしている。だが、その依頼は妖怪ではなくただの霊に憑かれた動物だったらしい。それから愛子とこのことだが、始めのころは一緒に現場にいっていたが今では関東圏なら離れていても大丈夫のようになったため、最近では事務所に残って仕事をしてもらっていた。
「そっか、わかった。小鳩ちゃん、今日の予定はどうなってる?」
「はい、静琉さんが六道学園の講師。タマモちゃんにまたオカルトGメンから助っ人要請がきてます」
「え~!また~!?」
「うん、ごめんね・・・それから除霊依頼がきてますね。ランクはA」
「そっか~、ランクAじゃまだ遥香ちゃん達は連れて行けないな・・・んじゃ、遥香ちゃんと琴音ちゃんは静琉ちゃんの助手ってことで学園のほうをお願いね?」
「「はい」」
「除霊は俺が一人でやる」
「わかりました」
「では、仕事を始めますか!」
「「「「「「了解!」」」」」」
こうしてそれぞれが仕事に向かうのだった。4年が経ち魔鈴や厄珍などほとんど変わらない生活のものもいたが、変わっている人も多くいた。神父はその実力、功績を認められGS協会の幹部に、美智恵は引退し夫と次女と共に幸せに暮らしている。西条は美智恵の後を継ぎGメンのトップになった。鬼道は冥子と結婚し婿養子になって六道家を率いている。そして、横島の親友達も大きく変わっていた。
まずは雪之丞。
「今、帰った」
「あ、おかえり。雪之丞」
「パ~パ」
「ああ、ただいま。かおり、雪花」
3年前に弓かおりと結婚、そのまま婿養子になり弓の実家を引き継ぐ。今は一歳10ヶ月の娘と幸せに暮らしている。たまに男達と集まって飲んでいると娘のことばかり。親馬鹿である。そのときは妻も六道時代からの親友達と飲んでいて同じく自分の娘のことばかり話していたりもする。似たもの夫婦だ。
次にタイガー。
「ぬおおおおおおおお!今ですジャー。魔理シャン!」
「おっしゃああああ!これで終わりだ!!」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
なんとタイガーは独立開業していた。相棒はもちろん、妻である一文字魔理である。二人は雪之丞が結婚した年に独立した。最初は苦労したものの今では軌道に乗り始めて順調である。そして、仕事が安定してきたので一年前に結婚したのだった。子供はまだいない。今は二人仲良く協力して仕事に励んでいる。
最後はピート。
「ピート先輩!こちらに応援をお願いします」
「わかった。今いく!」
彼は夢を叶え、オカルトGメンに就職した。横島のとこに助っ人依頼がくるのはピートがいるのも原因の一つであったり。それはともかく、彼はとても充実している。そして、彼の左手薬指には指輪が光っていた。つまり、彼は結婚しているのだ。お相手はもちろん、あの人だ。
「おかえりなさい。ピート」
「ただいまエミさん」
「パパおかえり~」
「ただいま、エミリー」
そう、小笠原エミとである。今は結婚してエミ・ド・ブラドーとなっている。二人には3歳の娘がいた。おや?と思った人もいるだろうが、詳細は秘密だ。最初はかなりパニックになったピートだが、今は幸せに生活しているのだらいいだろう。結婚してからしばらくしてエミは事務所をタイガーに譲り、ピートの家で専業主婦をしている。たまに捜査に行き詰ったピートに協力していたりするが、良き妻として尽くしていた。
横島は仕事に行く前に妖怪の街による。何か問題はあるかと毎日チェックにきていた。結界に守られているからといっても安心はできない。物事に絶対はないのだから。どんなところにも欠点の一つや二つあるものである。よって、毎日のチェックは欠かすことはできないのだ。
「お~っすグーラー」
「あ、ダーリン。おはよ~」
この街にきてからやることはまず、グーラーに会うことだ。この街のことを知り尽くしているグーラーは町長のような立場になっている。そのため、横島との街のチェックは大切なことであった。
「じゃ、いくか」
「うん」
「って、おい!腕をからめるな!」
「いいじゃない。ダーリンだって嬉しいでしょ?」
と毎度おきまりのシーンである。腕に柔らかいふくらみがあたっていっぱいいっぱいの横島をグーラーは面白そうに眺める。
「あ、おはようございます」
「あ、美衣さんおはよう」
見回りの途中で美衣と遭遇した。美衣はこれから仕事で外回りをしてくるらしく挨拶もそこそこに歩いていく。その後ろ姿は今の生活が充実しているのかとても活き活きとしているようだった。息子のケイは妖怪の街に新しくできた学校に通っている。そこは小学校や中学校などの枠がなく街にいる子供たちが全員通っている学校で教師はセイレーンだったり様々である。たまに小竜姫やワルキューレが担当したりする。国語、音楽、算数など一般生活に必要なことは重点的に教えている。
「んじゃ、俺は仕事に行くわ」
「あたしも仕事しなきゃね」
「またな。グーラー」
「またね。ダーリン」
一通り見て回ると二人とも自分の仕事をしに向かう。
除霊の仕事を終え帰宅する途中、一台の車が横島の前で止まる。中から現れたのは見目麗しい女性3人であった。
「あら?奇遇ね横島君」
「こんばんは横島さん」
「先生!こんばんわでござる」
挨拶をしているのは美神除霊事務所の3人、美神令子、氷室キヌ、犬塚シロの3人である。奇遇と言っているが、割と頻繁に仕事帰りに遭遇していたり。何故だか合同除霊で一緒になることが多かったり、何故だか仕事場所が近かったりするのは気のせいである。別に令子が裏で手を回していたり、美智恵が細工していたりとかはない・・・はずだ。
「よかったら途中までのせてってあげるわ」
横島は苦笑しながら助手席に乗る。車の中では何気ない会話でも盛り上がる。前とは違い今ではたまに(という割りには回数は多いが)しか会えないこともあり、会ったときに話すネタには事欠かない。美神は四年前と変わらず、その美貌を維持しているし、おキヌとシロは年相応に成長し今では大人の色気をかもし出している。故に『3人の美女がいる事務所』として有名であり、そのうえ3人ともがフリーであるために、前以上に繁盛しているのだ。ただし、彼女達には思いを寄せる男性がいる。というか、目の前の男なのだが。
「そういえば、今度の依頼はあんたも受けるんでしょ?」
「あれっすか?あれはどうしようか迷ってるんですよ」
「前はすぐに飛びついてたのに天変地異の前触れかしら?」
「あははは・・・別に俺は受けてもいいと思ってるんですけどね」
「そっか、あの子達が納得しないのね?」
「まぁ、美神さんの予想通りです」
話題の依頼というのは今度六道女学院で開かれる霊能バトルのことである。最近話題の事務所である美神、横島両事務所に特別審査員としてきて欲しいとの依頼だ。ただ、六道女学院という名前であるからして女子校であるために依頼を受けることに難色を示す子がいるのだ。誰?とは言わなくてもわかるだろう。
「え~!!断っちゃうんですか?楽しみにしてたんですけど・・・」
「せんせ~・・・」
シロキヌの二人は横島と久しぶりの共同の仕事ができると楽しみにしてたために依頼を受けて欲しかった。そんな二人の期待の視線を裏切れないのだが、それに流されては後が怖い。そのために「努力してみるよ」と答えるのが精一杯だった。
「どっかで食べてく?」
「いえ、家で待っててくれてるんで今日は遠慮させてください」
「そう・・・」
美神達は内心残念に思っていたが、それを表に出さずに横島を降ろした。
「では、また会いましょう」
「ええ。じゃあね」
「おやすみなさい。横島さん」
「先生!おやすみでござる!」
美神達と別れ、横島は我が家に帰って来た。独立して経営が安定するとある事情で少し大きなマンションに引っ越した。横島の家の向かって右に静琉、左に小鳩の家がある。どちらも一人暮らしで毎日、ご飯を共にしている。別なのは寝るときぐらいだ。
「ただいま~」
元気よく家に入っていく横島に、これまた元気よく迎えてくれる声が返ってくる。
「「パパ!おかえりなさ~い」」
「蛍子(けいこ)、蜂子(ほうこ)。いい子にしてたか?」
「「うん!」」
「おかえりなさい、あなた。ご飯できてるよ」
出迎えたのは横島と雪蛍の娘、蛍子と横島とベスパの娘の蜂子、それと妻のベスパである。ベスパは横島が独立して少ししたときに魔軍をやめて横島の元にきた。本来ならアシュタロス事件に関わっていたために問題があるのだが、行き先が横島のところであることで、条件付で許可が出された。その条件とは妖怪の街から出るときは必ず横島と一緒でなければならないということである。ベスパはそれを受け入れ喜々としてやってきたのだ。こうして熾烈な横島争奪戦が繰り広げられた。そしてちょうど、独立して一年が経ち紆余曲折の末横島と雪蛍は結ばれた。しかし、ベスパは諦めず積極的にアピールした結果。見事、妻の座を射止めた・・・とは言ってもそれは雪蛍も同じである。しかし、日本では重婚は許可されていない。では、どうしたかというと横島、雪蛍、ベスパはなんと魔界で結婚式をあげたのだ。魔界ではたくさんの妻を娶るのは結構ざらにあるためにすんなりと二人を妻にすることができた。このせいで、横島を諦めない女性がいることも確かであったりするのだ。
さらに、先に横島と関係を持ったのが雪蛍なのだが、妊娠したのはベスパが先だったりしたのだ。これが、ベスパが横島と結婚できた理由だとされるが詳細は不明である。そして現在に至る。
「ただいま」
「「「「おかえりなさい」」」」
リビングには夕食を並べていた雪蛍、それを手伝っていた小鳩、静琉、愛子、タマモがいた。みんなが席につき「いただきます」といって食べるのが毎日の習慣だ。
「そういえば、雪蛍。会社はどうなんだ?」
「えっとね・・・○○○の土壌調査をしてきたんだけど、駄目だったから。また考えないといけないの」
「そっか、でも候補はまだあるんだろ?」
「うん、それが救いね」
雪蛍は今、GSとして活動はしていない。というのも横島の目標である人間と妖怪の共存の一歩として商売で交流しようとの考えから雪蛍は会社を立ち上げたのだ。それは妖怪にしか作れないものを開発する会社である。今のところ、妖怪の体毛で作った服が主な製品で、これが霊的防御力に優れているということでGSに人気商品なのだ。そして、今雪蛍が取り組んでいるのは対霊用の薬である。取り憑いた悪霊を体から追い払う薬だ。これには邪気の少ない場所で栽培したあずきを小豆荒いという妖怪に洗ってもらい清めたものを薬としようとしている。あずきの栽培場所を特定している最中であった。
「仕事は忙しいか?」
「忙しいけど、みんなよく働いてくれているから今の人数でも平気よ」
「ならいいな」
当然のことながら、雪蛍の会社は妖怪しかいない。今いるのは雪蛍含めて20人程度である。なので、あまり商品を量産はできないが質のいいものを売っているので高値で取引されていく。
会社には社長の雪蛍の秘書役の美衣、営業に以前知り合った村雲梓糸子がいる。他の社員は全員妖怪の街の住人だ。この会社の取引先はほとんどが六道一族や職業がGSの人達であるが、一般の人達にも交流があり、除々にではあるが妖怪を受け入れてくれる人が増えている。横島は共存への手ごたえを感じていた。
「ふぃ~いい湯だった。子供たちは?」
「もう、寝てしまいましたよ」
答えたのは小鳩である。雪蛍とベスパは子供と一緒にお休みしている。愛子、タマモは自室に静琉は自分の家に帰っている。女性陣はローテーションを組み、子供を寝かしつける役と普通に寝る役、横島と一緒に寝る役を決めていて今日は小鳩が横島と一緒に寝るようである。この話の通り事務所の所員とも関係があったりして妻の人数が増えそうな横島だった。実際、来年には子供が一人増える予定だ。その子供は愛子の中にいた。
「んじゃ、寝ようか?」
「はい」
まだまだ一日は終らない。これから熱い時間になるのだから。
こうして横島の一日が過ぎていく。ようやく幸せを掴んだ横島はこれからも人と妖の共存のためにこれからも頑張っていくことだろう。
~FIN~
あとがき
完結しました!ラッフィンです。
初作から数えて31話目で完結。長いようで短い不思議な感じがします。
私のような半人前の作家を受け入れ、最後まで読んでくださった方々、感想をくれた方々の応援があったからこそ完結までこれました。ありがとうございました。
次回作ですが、ネタはあります。近いうちに皆様と再会ができるかもしれませんね。次回作もみんなみてくれるかな?
では、レス返しです。
アミーゴ様
はじめまして。
私なんてまだまだ未熟者ですよ。それと脱字の指摘ありがとうございました。
趙孤某様
なんかこういう美神さんを書いてみたくなりまして・・・おキヌちゃんは白ですよね~・・・やっぱり理想を反映しているのかもしれませんw
whiteangel様
ナニをしたんでしょうねwああ、ピート・・・ついに捕まってしまったか、幸せならいいじゃまいか!ってことでw
アイク様
はい、親友達の姿も書いてみましたwどうでしょうか?
やっぱり、ピートがアレですかね?
DOM様
合体技はでませんでした。すいません・・・。
すごいことにしたら、今回では完結にできませんでしたよw
天坊様
続編ですか・・・とりあえず、今は思い浮かばないので。
新作のネタは結構あるんですけどねw
蝦蟇口咬平様
元ネタは私にもわかりません。それと第二ボタンをあげた経験もありません(笑)
美神さんは素直になればカワイイと思います。
内海一弘様
ピートはニュータイプに進化したのですw
美神の事務所は全員がカワイイ子なのですよ・・・羨ましいな。横島は・・・
拓哉様
初めまして。
横島が卒業できたのは、愛子&ピートのおかげでございますw
素直になればカワイイ女性だと思うんですけど、天邪鬼と守銭奴という面が見事に邪魔しているんですよね~・・・
太一様
美神さんのバヤイ、そんなイベントなんて参加するわけないでしょ!?みたいなイメージがあって・・・
おキヌにあげることは最初から決めてましたよ~wおキヌスキーですから!愛子スキーと思われているかもしれませんが、いや間違ってませんけどねw
まぁ、作中でも書いた通り。ボタンは内定書みたいなもので、おキヌにはあげられないから第二ボタンを本来の意味であげるってことで・・・。