「これで足りなきゃ、さらに!!」
「煩悩全開ーーッ!!」
オーバーフローを起こし美神令子と入れ替わった横島忠夫は、更に力を増していく。
煩悩に塗れた力を。
それは、いつも通りの横島だった。
「――って、イキナリそれかっ!?」
タイトル:「魂の行く末は」 第一話:「たとえばこんなジャッジメント・デイ!!」
アシュタロス事変も究極の魔体が出現し、既に終盤。
バリアの存在に人数を減らしながらも、ベスパのメッセージにより弱点を攻撃に行こうとした時。
「魔体を倒したら、政府から報奨金が出る事になったらしいでちゅ」
ふと洩らしたパピリオの一言に、一瞬であるが時間が止まったような錯覚があった。
「いくらっ! いくらなのっ!?」
いやな汗を掻きながら魔体へと向かおうとする横島を押し留めるように、その肩で美神がもの凄い形相でパピリオから情報を引き出そうと声を張り上げる。
「確か、十億とか言ってたな」
美神の迫力に言葉を失ったパピリオに代わり、ベスパが言葉を紡ぐ。
「そ、そうでちゅね。たちか、世界中からあちゅまるから、もっと上がるとか言ってたでちゅ」
それを聞いた美神が息を荒げ、震えだす。
「み、美神さん!?」
引き攣りつつ、横島が声を掛ける。
だが、美神は聞こえていないようで、なにやら呟いている。
と、横島の体から凄まじい、霊気が噴出し始めた。
「お・か・ねぇぇぇぇっっ!!」
再びオーバーフローが起こり、横島から美神に入れ替わる。
「倒すっ! 今すぐ倒して手に入れるわよっ! 私のお金をぉぉぉっっ!!」
超加速をも超えるかという速度で魔体へと飛んでいく。
「俺のっ! 俺の見せ場がぁぁぁぁっっ!!」
その後には横島の悲鳴のような絶叫が残されるのみだった。
***
「これで、百億が私の手にぃっ!!」
弱点を突き究極の魔体を倒し、美神美智恵達の下に戻ってきた美神達。
長いアシュタロス事変の所為でお金儲けを出来なかった鬱憤が溜まっていたのか、久々の収入を得られる事に美神は随分と嬉しそうだ。
それを見るベスパ達は随分と複雑そうであったが。
「令子、よくやったわ」
そのままにしておくと、いつまでも感極まってそうな娘に美智恵が声を掛ける。
「そうね、私も一時はどうなる事かと思ったわ」
我に返った美神もバリアの存在が判明したときの事を思い出し、苦笑いをする。
「それはそうと、もう、合体を解いてもいいんじゃない?」
浮かれっぱなしだった美神は、未だに合体したままだったのだ。
「そ、そうだった」
美神は慌てつつ、合体を解く。
だが、そこに現れたのは。
美神令子、唯一人だった。
「「……えっ?」」
目の前の残酷な現実に母娘の声が重なる。
二人の間に沈痛な空気が満ち始める。
それはアシュタロスを倒した歓喜に満ちた周りの空気を寄せ付けないほどだった。
当然、周りの数名がその雰囲気に気が付き始める。
「どうしたんですか? あれ? 横島さんは?」
そんな二人に声を掛けたのは、キヌだった。
だが、美神がいるのに横島がいない事に気が付いて、その事を口にするとさらに母娘の空気が重くなる。
キヌがそんな二人の雰囲気に訳が分からずにいると、周りの小竜姫達も注目しだした。
「……あっ、あははっ」
美神は周りの注目に耐えかね、誰とも視線が合わないようにそっぽを向き、脂汗を流し、空ろな笑いを浮かべる。
「れ、令子。……本当に?」
それは美智恵が無理矢理搾り出した最終確認の声。
そして、その声に応える最悪の答え。
「……横島の事、完全に吸収融合したみたい」
「「「「「えええええぇぇぇっっ〜〜〜〜〜!!!!!?」」」」」
そして一瞬の空白の後に、その言葉を理解した全員の驚きの声が東京湾に響き渡るのだった。
あとがき
初めて投稿させて頂く、麻緋といいます。
昨年に数回、木曾麻緋のHNで感想を書いたことがありますが、今後は麻緋で投稿します。
今後とも、よろしくお願いします。
今回の作品は、本来ここで終わりで短編として考えていたのですが、このままだと「落ちじゃなくて引きだな」と思って続きを考えてみたら、続きを書いてみたくなりました。
ですので、続くと思います。
まあ、不評でしたら終わりになると思いますが。
それと、この後は横島と言う一人の人間が消えた事の影響を書く事になると思うので、少し暗い展開があると思いますがヘイト作品を書くつもりはありません。
それでは感想批評等をお待ちしております。