三界を騒がせた事件のあと。
なぜか消滅するはずが、人間として転生してしまい。力も能力も失ってしまったアシュタロス。
しかし、野望は大きく三界征服だったりした…………。
「と、いうわけで土具羅。さっそくだが第一歩ということで、人間世界の征服に着手したいと思う」
拳を握り雄々しく語る我らのアシュ様。
背景が四畳半のボロアパートでなければさぞかし美しい。
「……しかしですね、現在の我々は全くといっていいほど無力かと」
そんなアシュ様を土具羅は悲しそうに見て言った。
ちなみに彼の周りには、今日中に納品しなければならない内職の造花が、列を作って待っている。
四畳半のぼろアパートとちゃぶ台とやかん。
それが今、アシュ一味の力の全てであった。
「ここの家賃だって下手をすると滞納しがちになりますし……あ、アシュ様そっちのヤツお願いします」
アシュ様の雄々しい発言を聞きながらも、手は忙しく動かし続ける。アシュタロスも座って造花を作りながら言った。
「わかっている。我々には今力が足りないということは」
「……申し訳ありませんアシュ様。わたしがもっと上手くやっていれば」
「何を言う土具羅。私はお前の尽力には常に感謝をしているぞ」
「ア、アシュ様……なんともったいない御言葉」
没落したが、確固たる絆で結ばれている主従。非常に美しい。
内職の手を休めることなくのセリフであるが非常に美しい……よね?
「だがな、土具羅。お前は非常によくやっているが、このままでは何時になったら人界征服ができるのか、とても心もとない」
「そ、それは……」
たしかに、土具羅とてそれは思っていた。
二人で慎ましく暮らして、毎月なんとかやりくりの日々。通帳の残高は常に3桁。
まったくもって世界など程遠い。
しかし、そんな落ち込む土具羅に対して、アシュタロスはニカッと笑った。
「そこで私は考えた。なんといっても力とは財力!財力とは力だと!」
自分の発言にまたしても興奮したのか、立ち上がって拳を握り雄々しく語る我らのアシュ様。
「……ですが、その財を築くための方法が」
そんなことは100も承知ですという土具羅であったが、アシュタロスは拳を握っていないほうの手をもって、彼の発言を制した。
「フッ言ったはずだ土具羅、私は『考えた』と」
「おお、ではアシュ様!」
元々アシュタロスは、その明晰が頭脳をもって逆転号やコスモプロセッサにより三界を震撼させた魔王である。
土具羅は感涙に震えた。たしかに力は失ったかもしれない、だが彼の敬愛すべき主君は尚もって健在であると。
「これを見よ!」
そういってアシュタロスが取り出したのは、しっかりしたつくりの紙。
なにやら文字と模様が印刷してあり、どことなく紙幣に似ている。
「アシュ様、これは?」
「うむ、これは『株券』というものだ」
胸を張るアシュタロス。大いばりである。
「これは、なにやら売り買いすることでお金が増えるという、人間世界の妙な紙だ」
なんとなくオチが見えてきてタラリと汗を流す土具羅。
だいたい『なにやら売り買い』とか『妙な紙』と言っている時点で非常にダメな気配がビンビンである。
「昨今『でいとれーだー』なるものも出てきているとかでな、これだけで数十億やら稼いでいる剛の者もいるらしい」
心配する部下を他所に──まあ見ていろ──と不適に笑う魔王。
そして、ポケットからごそごそと小さなラジオを取り出すと、スイッチを入れた。
アナログなつまみでバンド数を調整すると、こじんまりとしたスピーカーから平坦な声が流れ出す。
ちゃぶ台に乗せて、二人で内職を再開しながら聞いた。
『東証○○ 120円高。16550円70銭……』
「どうだ!土具羅、全体的に値はあがっているぞ、無論私の買ってきたこの株券もドッパドッパと上がりまくっているはずだ」
「だといいのですが……」
出来上がったばかりの造花を振り回すアシュタロスと、苦労性が染み付きまくっている土具羅。
だが、土具羅の心配を他所に、本当に景気はいいらしく軒並み株価は上がり、アシュタロスの買ってきた株の株価も上がりまくっていた。
「フフフ見たか土具羅。この調子ならば、数億の軍資金が出来るのもそう遠い話ではないぞ」
「まことに!流石はアシュ様。この土具羅感服いたしました」
「はははははっ、うむ今日は気分が良い、土具羅、とっておきのサバ缶を出せ」
「御意でございます。私も今日は秘蔵品の北朝○水で一杯やらせていただきますよ」
「うむ!くるしゅうない!」
「「わははははは」」
こうしてアシュ家の夜は深けていった。
──次の日
昨夜は夜遅くまでドンちゃん騒ぎをしていた二人。
そのため早起きである土具羅さえも朝寝を決め込んでいた。
そんな彼らの部屋をノックする音が聞こえる。
ノロノロと起きだすアシュタロス。戸口を開けると、いつも世話になっている内職業者の人がいた。
「まったく、まだ寝てたのか。今日の分は出来ているか?」
あーちょっと待ってくれ──といって作った造花を取りに戻るアシュタロス。
だが、そこで彼の明晰な頭脳は気づいてしまった。
1本足りない…………と
はたして、数百本からなる造花の山を見て『1本足りない』などということが分かるのかどうか果てしなく謎なのだが、とにかくアシュ様は無駄に鋭く気づいてしまった。
彼は完璧を愛した。そして不完全を憎んだ。
寝ぼけた目でちゃぶ台を見ると、なんともいい具合の紙があるではないか。
紙幣っぽい模様やらが気になったが、裏面はまあシンプルなのでなんとかなるだろう。
折り織り、ぺたぺた…………うむ、いい出来だ。
アシュタロスは自ら作り上げた造花の出来栄えに満足すると、それをもって戸口に出た。
「まったく、なにをぐずぐずしているのやら」
「すまんな、ちと慌てたのだが。もう安心だ」
まあいいですけどね……それじゃあ。と業者はアシュ達が作り上げた造花の束をもって去っていく。
「うむ、まったく忙しい人だ。しかしまあ、もうすぐ大金持ちとなるのだから、最後の奉公だと思えば苦にもならんか。……さて、もう一眠りするとしよう」
そして、アシュタロスは戸口を閉めて部屋に入っていった。
本日の戦果
入:内職代
出:株券購入費
株券
おしまい
後書きのようなもの
え~と、こんばんわキツネそばです。
突発的アシュ様モノです、みっ短い^^;
不定期に思いつきで書けたらな~的なネタですので、次話のプロットは
まったくありませんm(_ _)m
前話との間が少なかったので、ここでレス返しをば
>ぬーくりあさん
まずは、規定の報告ありがとうございました。
笑っていただけたようで幸いです^^
ラビットはいいですよねぇw
>夢識さん
ばれてましたかw
そばは元ネタの本事態は昔に読んだものなので、思い出しながらの執筆でした^^
Unlimited 馬場 works いろんな匂いがするはずです^^;
>アミーゴさん
バカ話で申し訳ありません^^;
誤字脱字はもはや持病ですね(ノ_<。) 頑張ります
>猫スキーさん
風呂釜洗浄のあれは、何を隠そうジャイア○トが流した汗を濃縮したものなのですよ。
今は採取できなくなったため、ラ○ットのものが使われています(大嘘)
ジェネレーションギャップかぁ;
>いりあすさん
美智恵さん……たしかに怪しいかもですねw
地球侵略を企む某帝国の人──むぅわかんない
これがジェネレーションギャップかw
>Yu-sanさん
むずかしいですねえ。理屈でいえば晩年は体力が衰えているはずなのですが、相手選手が自動追尾して当たってくれるとかのオーラを纏いましたしねぇ^^
ま、新統一単位的には 全て1ジャバなのですけど^^;
>ロスさん
じつはカトリックとプロテスタントの争いの元が「猪○×馬○」抗争であったことは隠された事実です。
いあ、千年の争いは恐ろしい(ぇ
>HEY2さん
馬鹿賛辞ありがとうございます^^
もちろん関西DNAをもつ横島は馬場のキックをよけるなんてことは出来るはずもありませんw
まったく最強ですね^^
>スケベビッチ・オンナスキーさん
キツネそば製品は突っ込みどころでしか構成されていないので、衛宮五郎ごときではどうにもならなかったようです^^;
風呂釜洗いは気をつけてください。気を抜くと小さな馬場さんにチョップされてしまいます。