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▽レス始

「言尽くしてよ 永く想わば プロローグ(GS)」

金平糖 (2007-03-12 22:19/2007-03-24 13:30)
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 誰だって何か大切なモノがあるんじゃなかろうか?
 まあ無くても生きる分には問題ない。
 無くても呼吸は出来る。飯は食えるし寝られる。

 だけど。

 生きてるだけじゃ満足出来ない、だろ?


「俺は横島忠夫。14歳。GSの卵ね」

「…あたしは美神令子…14歳よ」

 だから。
 出会うべき時に出会うべき人と出会えたなら。

 それは最高の人生の始まりだろう?
 幸せかどうかは別として。


 ☆ ☆ ☆


 横島忠夫は10歳の誕生日を迎えた。
 小学生の頃にミニ四駆の全国大会に優勝した事がある以外は、取り立てて特徴がある人生は送っていない、普通の少年。
 まあその両親は知る人ぞ知る有名人なのだが、それは少年には関係ない。
 だが彼は特異だった。誰にでも本心を語る事が出来、誰であろうと友達として受け入れられる希有な才能の持ち主だった。
 それは目立たぬ、本人にとっては才能ですらない事であっても、それだけが彼の才能だった。

 横島忠夫は11歳の誕生日を迎えた。
 彼は父親の遺伝子を立派に引き継ぎ結構な女好き――の片鱗を見せるようになっていたが、本質的な優しさや素直さの方がまだまだ強く出ていたおかげで誰にでも好かれる少年だった。
 クラスの男子を率いて覗きを敢行したり年を誤魔化して銭湯の女湯に入ろうとしたり、大層悪戯好きではあったが。
 この頃から「変なモノ」が見えるようになった。
 ソレは空を浮かんでいたり地面に座り込んでいたり、人間っぽかったり獣っぽかったりよく分からなかったり色々だが、特に襲われるような事もなかったし、彼は気にしなかった。

 横島忠夫は12歳の誕生日を迎えた。
 三年連続でミニ四駆の全国大会に優勝した以外は取り立ててイベントがあった訳ではないが、夢をよく見るようになっていた。
 そこは平安京と呼ばれる魔の都であり、その中で横島忠夫は陰陽師として日々真面目にちゃらんぽらんに生きていた。
 毎夜毎夜見る夢は連続テレビドラマよろしく、毎日昨晩の続きを夢として見る事が出来た。
 初めは壮絶な飢えとの戦いの日々。
 陰陽師となる前の夢の中の少年、横島は飢えていた。
 どうも両親というものは夢の中の横島には存在しないらしく、夢の初めはいつも孤独で塗りつぶされ、飢餓で埋め尽くされていた。

 次は老いた陰陽師との生活。
 何かの呪術にでも使う気だったんだろうが、夢の中の横島は天才的な才能があったらしい。一日接触しただけの老いた陰陽師から簡単な術を盗み、隙を突いて逃げ出してしまった。
 暫くして老いた陰陽師の式に捕まり、彼の弟子として生きるようになった。
 思い返せばこの時こそ、夢の中の横島にとって平和な日々だったのではないか。
 時折陰陽寮からの使い――西郷と名乗る少年――が来ては喧嘩する夢の中の横島だったが、老いた陰陽師から、捕らえた妖魔を式神に変えて使役する方法を式紙、破魔札、符の作り方を、禁術や符術を、退魔拳法を学んだ。
 飢えもなく、師と共に退魔の仕事をし、師に修行をつけてもらい、師と共に眠る。
 幸せだった。

 次は老いた陰陽師との別れ。
 豪放磊落という言葉の通りに生きた師にして義父は今際の際に口伝で自分の人生を夢の中の横島に告げる。
 彼は貴族であり、陰陽寮のエリートでもあったが、世渡りが下手だった。
 そして彼は家督を夢の中の横島に譲る旨を告げ、必要な書状を渡すと満足そうに事切れた。
 誰かの為に泣いたのはこれが初めてだった。
 この時から彼は高島家当主となった。


 次は西郷と共に陰陽寮の下、都に溢れる餓鬼を初めとした魔物、或いは帝に仇なす貴族などの調伏などを手がける傍ら、夜這いに精を出していた。
 この時代は――夢を見ているだけの横島にはよく分からない事だが――通い婚であり、肉体関係=結婚であり、夜這いさえ成立すれば――勿論女性側にも拒否権はある――それで結婚が成立してしまうので、別に高島は、基本的には悪事を働いてる訳ではない。
 やりすぎだ、という問題点はあるにせよ。
 きっと寂しかったんだろう。どういう経緯であれ本音で語れる相手は西郷一人だった。
 高島の師は西郷にとって尊敬出来る存在だったから、彼の弟子である高島との付き合いは腐れ縁的に続いた。

 次は牢屋の中。
 藤原氏の一族の娘に手を出した事が露見して叩き込まれた。どうも有力な皇族の男子に嫁ぐ筈の娘だったらしい上に今までの所行の悪さが響いて処刑が決定したらしい。
 科無くして死す、と牢屋の壁に刻んでいると、落雷。
 いつもそこで終わった。次に見る時は再び高島が少年の頃からだ。

 ☆ ☆ ☆

 横島忠夫は13歳の誕生日を迎えた。
 両親からのプレゼントは「GSの師」だった。
 この頃から横島は霊障に遭うようになり、明らかに霊能力に目覚めていた。

 夢は毎日毎日続いていた。高島の人生が終わるとまた次の夜、高島の少年時代から夢が始まった。
 おかげで横島は誰よりも高島の人生に詳しくなっていたし、この時代の誰よりも陰陽道に詳しくなっていた。陰陽道や密教の秘儀など、現代から喪われた秘儀――それも過去には「当たり前」だった術や技――などに限定すれば世界一の知識を持っていたと言っても過言ではなかった。

 勿論「知っている」だけでは何の役にも立たない。
 自然、横島の進む道は「ゴーストスイーパー」だった。
 両親は反対したかった。当然だ、GSは実入りも良いが人生の途中でリタイアする輩が多すぎる。それも怪我ならまだ遙かにマシというリタイアの仕方が非常に多い。
 しかし、彼の才能はGS以外を将来の職として選ばせなかった。
 異能は異能というだけで排除されるのが世の常である事を、異能者は異能者の集団に入るのが一番安全な事を彼の両親はよく理解していた。

 横島の両親が選んだ師はGSとしては二流だったが、教師としては一流で人間としても一流だった。
 知識を教え、使い方を教え、鍛え方を教えた。
 だが決して強制はしなかった。強制したのは唯一雑多な浮遊霊や弱い悪霊などから自意識を護り、「自然と見てしまう」状態から「意識する事によって初めて見る」ように霊視を調整する技術の拾得。

 横島は彼を慕った。彼は齢60を越えていたが、なお盛んだった――端的に言えばスケベだった。

 ☆ ☆ ☆

「せい!」

 退魔拳法・咬竜拳の「流」――「型」は固定をイメージさせる為、咬竜拳では「一の流」「二の流」と他流で言うところの「型」をそう呼んでいた。尤もらしく「霞の型」など名付ける意味などない。どの流がどういうモノか身体に覚えさせれば事足りるのだから――を夜ごとに行うのが横島の日課だった。
 師に教えられた事を実践し、更に夢の中で高島が納めていた修行を自らも実践する。
 東京に越して一年と三ヶ月。幸い近くに神社があり、境内は公園も兼ねていてそこそこ広く、公園に設置された街灯も明るい。

「はっ! …しっかし何が悲しゅうてこんな夜中まで頑張らなあかんねん…」

 愚痴りつつも身体は止めない。悪霊に襲われる恐怖はもう既に薄れていたが、それでも初めて襲われた時の混乱と恐怖は忘れられないし、霊能力者でもないくせに颯爽と現れて問答無用に悪霊を殴り倒していた親父の姿も忘れられない。

――護られてるだけじゃ情けないにも程があるよなぁ…

 ただただそれだけで、今の横島は愚直に修行を繰り返していた。

――それに頑張ればエッチな映画館に連れてってもらえるしなっ!!

 彼の師は彼を実によく理解していたのだった。

「せいっ!」

 退魔拳法と言っても、その本質は妖魔を打破する事ではなく、修行者のチャクラを開き霊力を増し霊格を上げる事と、その肉体の増強、更に自らの肉体と霊力との親和性を高める事が第一義だ。
 現代的に言えば霊力&肉体増強トレーニング法と言っていい。

 ちなみに読者諸兄には「竜神族の剣法」と言えばわかりやすいだろうか? 要するに実践向けではないのだ。だからあの竜神様は蛇神様によく負けてしまうのだ、無論実戦経験量の差もあるとしても。スペックは互角っぽいのにバストサイズ以外は

 閑話休題。

 今は疾うの昔に喪われた技術だけあって、その効果の程は高い。また横島本人もこの拳法が実践向けではない事はよく分かっていた。なんせ夢の中で高島が手を抜いて素手で妖魔を駆逐しようとして、ポカしては「詐欺やぁ!」と叫ぶシーンが結構あったりしたから。
 まあ高島が間抜けなだけとも言えなくもないが、そう断言するのは前世という事もあり悲しくなるので…

 今では夢で見る高島は前世の自分だという事に気付いている横島だが、彼のように強くなりたいと想っても、彼のようになりたいとは想わなかった。
 何しろ女癖が悪すぎる。横島にしてみれば彼は女性を快楽の道具としてしか扱ってないのではとすら想える。それがいくら孤独な少年時代を過ごしていたからとはいえ、余りと言えば余りに非道いのだ。
 まあ時代が違いすぎるという事も考慮すべき一面なのだが、残念な事にまだまだ精神的に未熟な横島にはそういった事を考慮する余裕はない。
 しかし「18禁な映画館」を目標に頑張るのはどうなんだというツッコミは彼には届かない。

「はっ!」

 ダンッ!

 地面を踏みつぶす勢いで体重を乗せる、全身の力を拳一点に集約する――
 高島の師が高島に教えていた事を出来るだけ忠実に再現する。

 ひゅっ!

 と、風を切って缶コーヒーが飛んでくる――ひょいっと首を傾げて躱し、右手を挙げて首の後ろを通過したソレを受け止めた。

「投げつけなくても良いんじゃないっすかー? 美神さん」

「何言ってるのよ、これも修行でしょ」

 そこに現れたのは無造作に切り払われた亜麻色の髪、気の強い瞳を持った美少女――
美神令子だった。
 乗っていた原付のスタンドを立てキーを抜いて、サドルに腰掛けて、自分の分のプルトップを跳ね上げる。

「それはいいんすけどね。公園の中にバイク入れちゃダメでしょーが」

その前に中学生が原付乗るのが交通法違反だ、突っ込む気にもならないが。

「こんな時間に誰が気にするってのよ」

 けたけたと笑いながら応える。

「しっかしあんたも毎晩よくやるわねぇ」

 そういうあんたも毎晩毎晩よく見に来ますねーと心で突っ込む。口に出すと拳が飛んでくるから。

「まー欲しくもない力手に入れちゃったからには、ちったー強くなってみせんとみっともないっすからねー」

「それはあたしに対する当てつけ?」

「滅相もない」

 イイ笑顔で即答する横島。
 ふん…と鼻を鳴らし、缶コーヒーに口をつける美神を見ながら、やっぱり綺麗だなぁとか考えてた。

(すらっと伸びた羚羊のような脚、気の強そうな瞳、亜麻色の髪も将来有望な膨らみかけの胸も抱き心地良さそうな柳腰も意外としっかりしてるお尻も何もかもが一級品じゃぁああ!!!」

 横島の心の声が夜の静寂を打ち破る。
 思い切り半眼で睨みつける美神。

「………もしかして声に出てまし――だぁっ!?」

 顔面に埋まる元は珈琲を満たしていた空き缶。

「ったく…どーして男の子ってのはこうなのかしらね」

「仕方ないんやぁぁ!! 男のサガなんやぁぁぁ!」

 一頻り絶叫してからとぼとぼと空き缶二本をゴミ箱に捨てに行く。
 はぁぁ…と盛大なため息がちくちくと背中に痛い。

「で? 修行は今日は終わり?」

「いやまだっす」

「そ。見ててあげるから続けなさいよ」

「へ〜い」

 だんっ!

 公園の土を踏み抜く音。
 夜の静寂が再び世界を支配し、時折それを破る音。

 丹田に霊力を流し練り上げ、全身の経穴を巡らせチャクラを回し丹田に戻して。

 だんっ!

 練り上げた霊力を拳に、或いは脚に乗せて空を打ち抜く。
 何度も繰り返す。ただただ愚直に。
 人参が目の前にぶら下がっているだけで走れる、というのが彼の最強の才能なのかも知れない。


 月が幾らか傾いた頃、手を合わせて大きく息を吐く横島。
 練武終了の挨拶の型だ。

「今日はお終い?」

 決して短くはないその修行を一心に見ていた美神が声をかける。

「んにゃ。今度は霊力の収束の訓練っすね」

「…なにそれ?」

「昨日、お師さんに教わったんすよ。どうも俺は霊力の収束・圧縮・具現化に才能があるみたいなんで、その方向で修行しようって事に」

「具現化?」

「最終的には霊力でガ○ダムのビ○ムサーベルみたいなのを作れるようになるらしいっす」

「…ガ○ダム?」

「…スターウ○ーズのライトセ○バーみたいなのっす」

「ああ、アレね…へぇ…そんなの作れるようになるんだ? 横島君」

「いやぁ、どうっすかねぇ…まあ出来たら漢の浪漫全開なんで是非とも成し遂げようとは思ってるんすけどね」

 苦笑しながら拝むように合わせた両手に意識を集中し始める横島。その顔が徐々に真剣味を帯びてくるにつれて、少しずつ両の手の間が開き、その間に光り輝く霊力が顔を現す。

 視界の端で美神が驚いているのを確かめて、小さく笑う――喜びで。

 よく分からない人だ。少なくとも横島にとってはそうだ。
 最初、低級霊に襲われていた――命の危険はなさそうだったが非常に鬱陶しそうだった――のを助けたのが縁だった。
 禁術の一言で散るような霊でも、素人にはなかなか厄介ごとなのだ。尤も、母親からもらった、身につけている精霊石の一つでもぶっ放せば片付いただろうが、金銭感覚がまともで霊に対する知識が少しでもあれば、低級霊如きに精霊石を使う馬鹿はいない。

 美神は横島の未熟な霊視で見ても才能溢れる少女だ。磨けば100%一廉の霊能力者となれる人物だ。まして血統が物言う霊能力、彼女の母は一流と言っていい霊能力者なのだ。
 それなのに美神が霊能力を鍛えようともしないのは不思議で仕方がない。一応、精霊石や簡単な破魔札などで霊的防御はしているようだが、横島が体験した通り低級霊すら祓えない程、技量と言うモノがない。
 まあ才能の有る無しと本人の意向は別だ。親が霊能力者だろうが公務員だろうが、子が同じ職に就かねばならぬという法はない。

(ならなんで知り合ってからこっち、毎晩毎晩修行を見に来るんでしょーかねー?)

 真面目に不真面目な事を考える。
 余計な事を考えながらも両手の間の霊力は六角形に形を成し、両の手の間をクルクルと回っていた。勿論横島が回しているのだが。

 疑問に思った事は訊いてくるが取り立てて邪魔するでもなく、毎晩決して短くない時間を自分の修行を見る為に公園に出現する彼女は、横島にとっては不思議そのものだ。
 まあ喜ばしい事なのだが。今日みたいに、気が向いたら差し入れもくれる。

 腕を伸ばし、片手を前方に突き出す。突き出した右掌に合わせて前方に移動する六角形の霊力の塊。


「それが霊力を固めたモノ?」

「うっす。サイキックソーサーと名付けました――なんすかその微妙そうな顔」

 未だ慣れぬ技術を使ってる為表情は固いが、視線を余所へ移す程度には余裕がある。

「…まあいいけどね。名前なんて」

「いやいや名前は大事っすよ。この世で原始にして最強の呪いが「名付ける」事ですからね。思いこみや愛着や執着は霊能力にとっては鍵でありアンプでもあるし」

「どういう事?」

「人間に限らず、知能がある存在は「思いこむ」事で「存在」してるんすよ。
 こぎと・える・ごすむでしたっけ? 要はアレです。
 「思いこむ」事で「存在」している以上、「強烈な思いこみ」の方が強くなるってのは理屈ですよね?」

「分かったような分からないような理屈ね…」

「名付けるってーのは「そうあれかし」と思いこませる最初の行為ですし」

「……自分で理解してて言ってる? それ」

「いやあんまり。前世の俺もあんまよー分かってなかったみたいだけど都で5本の指に入れたみたいっすから、あんま分かってなくても大丈夫なんじゃ?」

 前世の事については既に話している。美神は驚くやら呆れるやらと言った風情だったが。

「で、ずっとそのポーズで何してるの?」

「霊力を収束・圧縮した上でそれの維持っすね。ちなみにコレ、放り投げて着弾すると爆発しますし、鉄砲の弾位なら平気で防げます。弾丸が目で追えれば、ですけど」

 別にポーズはどうでもいいんすけど、と呟いて右掌を上に向けて自分の胸の前まで持ってくる。

「…使えるんだか使えないんだか」

 サイキックソーサーは、技術としては基本中の基本だ。
 現代のGS主流の基本は「道具に霊力を篭める」→「篭めた道具がそれぞれの特性に応じて効果を発揮する」だ。
 その道具が聖書だったり神通棍だったり霊体ボウガンだったり、或いは式神だったりする訳だが、「道具に霊力を篭める」という前段階が「霊力を一点に集中する」なのだが、「霊力を一点に集中させ過ぎる」と横島のように「体外に霊力が収束・圧縮される」状態になる。
 技術としては基本であり容易とも言えるが、これを実戦Lvで使いこなすとなると途端に難しくなる。
 まず「霊力が一点に集中し過ぎる」と当然「普段身体を覆っている微弱な霊力」すら「一点に集まってしまう」為に「その一点以外の霊的防御力」が0になってしまう。これは霊力の量が増え、かつ技量が上がれば調節可能ではある。
 そもそも防御に使える程霊力を収束させられるなら、その分を道具に篭めるなりした方が手っ取り早いとも言える。なにより防御に使える程霊力を収束・圧縮させるのはなかなかに集中力がいる為、霊力の収束・圧縮に対する突出した才能がないと戦闘で用いるのは無理と言っていい。
 基本の割に実用が難しく、一見安上がりに見えて対費用効果はそれほどでもないという何とも微妙な位置づけなのだ。「サイキックソーサー」をそのまま武器として使うなら。

 余談だが魔装術使いにはこの才能が必須な気がするのは筆者だけではあるまい。

「ねぇ、爆発させてみせてよ」

「ダメっす。こんな夜中にンーな事したら二度とここで修行出来ないっすよ」

「見せてよ」

「ダメっす」

「………」

「…………………」

「……………………………」

「……………………………………」

「……明日結界張る道具持ってくるんで、明日なら」

「そ。じゃあ今日は帰るわ」

 勝利に微笑の報酬を。そんなタイトルが付きそうな程の微笑を浮かべて颯爽と原付に跨り、夜の公園から美神の姿が小さくなって行くのを、涙目で見送るしか出来ない横島だった。

 ☆ ☆ ☆

 その少女は独りだった。
 彼女は他人を信じる事が出来ず、自分すら信じる事が出来なかった。
 彼女は霊能力者だ。他人は異能を恐れる。それが例えGSとして世界に確立された能力だとしても。

 彼女の母は世界最高のGSの一人だ。父と逢った事のない少女にとって母は憧れで精神的支柱で何より越えなければならない壁で、しかし越えられない壁だった。

 それでも強くならなければならない。美神家の女なのだから。
 だけどどうしたら良いのか分からない。
 母以外の誰かに師事するなんてプライドが許さない。
 母は世界中を飛び回って活躍しているGSでいつも側にいてくれる訳ではない。

 詰まるところ少女は独りだった。
 名を美神令子という。
 焦り中で怠惰に過ごす自分。
 しなければならない事をしない自分に対する嫌悪。
 彼女の心は今、出口のない迷路を彷徨い続けていた。

 否。

 漸く彼女はその闇の中から燭光を見いだしていた。


後書き
こんばんは、金平糖と申します。
以前の投稿では管理人様他、ご迷惑をおかけしました。
不快に思われた方々にもお詫び申し上げます。

同じネタで「最初から」書けば良いとのも意見もありましたが…
それもなんだか、という訳で新作です。
感想くださった方々、レス返せなくて申し訳ありません。ログ取る前に管理人様に削除されてしまいましたので…本当に申し訳ないです。

さて新作ですが。
横島君と美神さんが同い年で15歳以前(美智恵が死んだふりする以前)から付き合いがあったらどうだろう?
更に横島に前世の記憶があったら?
というのが基本理念です。前世の記憶っても肝心要の部分がない辺りがキモですね。
出会い時期が時期ですので、性格は両者とも原作とは随分変わる予定です。

恐らくネタが100%かぶってる作品はないと思います、少なくとも僕が読んだGSの二次創作の中では、ですが。
もしかぶってる作品をご存じの方がいましたらこっそり教えてくださいませ。

陰陽寮とかサイキックソーサーとか色々細かい設定はその場のノリですので…明らかにおかしいという点は遠慮なく指摘してくださると嬉しいです。

一応連載ものとするつもりですが何分筆が遅いのが欠点なので、もし気に入ってくださった方がいましたら気長に付き合ってくださいませ。

あ、横島を最強にするつもりはありませんが、原作よりは強くなると思います。
陰陽術(含式神)+原作の横島位でしょうか?
…むちゃくちゃ強いですね(´Д`;) そこら辺は調整します…最悪文珠使えなくすればいいんでしょうけどねぇ…

ではでは、次はいつになるか正直分かりませんが、期待してる方がいる限り頑張ろうと思います。失礼しました

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