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▽レス始

「月と太陽 プロローグ(GS+いろいろ)」

奏 (2007-02-15 04:28)
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  警告!!
 このSSには他の作品や、オリジナルの設定を多少使っているので、それをふまえてお読み下さい。


(・・・・・・・・・・・・・金が無ぇ・・・・・・・・・・・・)
3月中旬。今年の春から高校生になる少年,横島忠夫は,アルバイトを求めて街に繰り出していた。求人情報誌に目を通して,いくつか良さそうなバイトの候補を絞り込んでいく。
 父がナルニアというアフリカ大陸の小国へ海外赴任するにあたって,彼は今月から一人暮らしを始めていた。
 母親の精神的抑圧と,父親の謎の仙術気功闘法と,得体の知れない対仙術・仙術の修業から解放され,有頂天になる横島だったが、大きな落とし穴があった。
 頼みの仕送りが,本当に最低限の生活費だけだったのだ。ちなみに,家賃は既に1年分,両親が支払っている。
(くそ,オフクロめ・・・・・!俺が日本に残るのを嫌がってはいたけど,まさかこういう形でくるとは・・・・・!)
 まあ,母としては、『小遣いくらい自分で稼げ』と言うことなのだろう。
 それでも、彼は貴重な青春をジャングルの奥地(?)なんぞで過ごすのは御免だった。
 そんなことを考えつつ,横島は持っていた求人情報誌から目を外し,候補のバイト先に電話しようと,携帯(料金は横島持ち)を取り出す。

       そんな彼の視界の隅に,亜麻色の髪の美女が映った。

「・・・・・・・・・・ッ!!」
 思わず飛びかかりそうになる体を,必死で抑えつける。
 腰まである亜麻色の髪に,均整の取れた体を包むボディコン服。整った顔立ちはそれこそ『美の女神』と形容するに相応しい。
(す,凄ぇ美人だ・・・・・・!)
 彼自身,これほどレベルの高い美人を見たのは『あの人』以来だ。『セクハラまがいの行為を禁じる』という『あの人』との誓いがぐらついたのも,これが初めてだった。
「あの・・・・・ちょっといいですか?」
気が付くと,横島は女性に声をかけてしまっていた。セクハラ行為は抑えられても,ナンパまでは無理である。
「ん?なによ?」
「あ,えーっと・・・・・・・」
 完全に無意識の行動だったので,話のタネが見つからない。と,彼は,女性がたった今張った広告を見つけた。GS,と書いてあるが,この際関係ない。悪霊なんて怖くないし。
「あ,あの・・・・助手希望なんですけど・・・・」
「今張ったばっかりなのに,ずいぶん気が早いわね」
 そう言うと,美神(広告に書いてあったので,ほぼ間違いない)と言う名前らしいその女性は,横島の顔を至近距離で,様々な角度から見つめ始めた。
(ほ,本当に綺麗な人だ・・・・・・・)
 煩悩さえ忘れて見惚れてしまう,まさに『美神』という名がしっくり来る容姿だった。
「・・・じゃ,あとでこっちから連絡するから」
「・・・ちょ,待っ・・・・連絡先も聞かずに!?あからさまに不採用じゃないですか!」
「あのね・・・・・ウチの事務所は私の美貌と華麗な除霊テクニックが売りなのよ。で,それに見合ったモデル系の美少女か美少年を雇いたいんだから・・・・・当然でしょ?」
 絶句する横島を尻目に,美神はオフィスビルへ戻ろうとする。だが,彼の抑圧された煩悩はそれを見逃せない。
「ちょ,ちょっと待って下さい!俺,体力に自信あります!悪霊も平気です」
「・・・・・そう。じゃ,ちょっと待ってなさい」
 美神はビルに入ると,数分ほどして戻ってきた。
 彼女は手に持っていたメモの切れ端を横島に押しつけると,開口一番,厳しい顔で言った。
「悪霊が平気,なんて言うなら実際に見てきなさい。そのメモに私の先生の住所を書いておいたから・・・・・因みに,時給250円で良かったら雇ってあげるわ」
 今度こそ本当にビルへ戻っていく美神の背中を,横島は呆然と見つめていた。


            ここが,彼の運命の分かれ道だった。

もし横島が『自分は仙術を使える』とでも言っていれば,話は変わっていたはずだから。


「・・・・・あ,そうそう。先生の紹介料1万円ね」
「え!?た,高ッ!!」


 月と太陽


(ん〜・・・・・多分,この辺りだと思うんだが・・・・・・・・)
横島が,メモに書かれた住所(地図なんてモンは描いて無い)を頼りに住宅街をさまようこと数十分。
「・・・・・・これ・・・だよな?」
 彼が辿り着いた番地には,質素なデザインの教会があった。
「本当にGSが住んでるのか・・・・・?」
 GS=金持ちみたいなイメージがあった横島にとって,何というか,ここまで金の匂いが無い場所に,世界屈指のGSが住んでいるとはちょっと思えない。
ついでに言うと,7562円しか所持金が無かった横島の財布は,現在空っぽだったりする。
「失礼しまーす」
 扉を開けると,そこはすぐに礼拝堂になっていた。祭壇では,清貧・・・・・もとい、清廉なオーラを纏った神父らしき格好の男性が、聖書を片手に何かをつぶやき,その傍らで裕福そうな身なりの美人が男性を見守っている。
「あの・・・・・ッ!!」
 突如,祭壇を中心に閃光が走り,直後に壇上から強い力を持った『何か』が飛び出した。 それは,明確な殺意を持って横島めがけて突っ込んでくる。

          
          世にもおぞましい姿をした亡霊だった。


(不味い・・・・!!)
 不覚だった。突然,宝石のちりばめられたネックレスから悪霊が飛び出したのも,教会に人が入って来たのに気が付かなかったのも。
 何とか依頼主と自分を守ることには成功したが,悪霊は自分と依頼人ではなく,遠くにいた一般人の少年にねらいを定めたようだった。
(間に合え・・・!)
 神父はパチンコ玉サイズの純銀の玉を袖から取り出し,指と指の間に発生させた力場で悪霊目掛けて弾く。可能な限り少年に当たらないように。

 少年の右正拳が悪霊を粉々に打ち砕いたのは,それとほぼ同時だった。

「んな・・・・・・!?」
 少年の姿自体は,悪霊の陰に隠れてはっきり見えなかったが,彼の目は,白金の光を纏った少年の拳が悪霊を打ち貫くのをしっかりと捉えていた。おそらく悪霊は,何が起きたか理解できないままこの世から消え去っただろう。
「だ,大丈夫かい!?」
 慌てて駆け寄る神父に,しかし少年は事も無げに,むしろ笑みさえ浮かべて答えた。
 「・・・・ええ,慣れてますから,こういうの」
たった今,悪霊を屠った右手で,銀の玉を弄びながら。


「申し訳ありません。お恥ずかしい所を・・・・・・」
平謝りする神父に,しかし依頼人の女性は微笑みを浮かべて答える。
「いいえ,お気になさらないで,唐巣神父。それに学生さん,貴方もありがとう。お強いのね」
「いやぁ,大したこと無いですよ」
 美人の前だから格好をつけている訳ではない。本心からの台詞だった。
「じゃあ,お礼は以前と同じで一千万ほどで・・・・・」
「いや,金など結構!神聖な除霊でお金ヴァ!?」
 とんでもない事を言い出しやがった唐巣神父の口を塞ぐと,横島は教会の隅まで彼を引きずっていく。
「な,何をするんだね,君は!」
「何って・・・・・折角の一千万をフイにする気ですか!?」
「神聖な仕事でお金を要求するなど・・・・」
「あんな高そうな宝石まみれのネックレス持ってる人間相手に遠慮することなんてないでしょ!自分が出すって言ってるんだし」
「しかしだね・・・・・」
「だいたい,実際アイツ倒したの俺ですよ!?半分とは言いませんけど,せめて報酬の十分の一くらいは貰わないと!」
 横島にとっては,最後の部分が一番重要だったりする。因みにこの2人,まだお互い自己紹介もしていない。  
 それにしても,パンチ一発で百万もふんだくろうとする横島も,なかなかいい根性をしている。
「あの・・・・お礼がご不満なら,もう一千万ほど」
「いえ,十分です!!」
「では・・・・・」
 女性は小切手を唐巣に手渡すと,悠々と去っていった。
「・・・ところで,君は一体何の用で?」
「えっーと,美神さんの紹介で,除霊見学に来ました。弾みで除霊体験になっちゃっいましたけど」
 唐巣が住所の書かれたメモの裏を見ると,
 『後はよろしく(はぁと)令子』
 と,書かれていた。最初から神父に押しつける気だったようだ。
「それで,君はGS志望なのかな?見たところ・・・・・・・かなりの霊力を持っているようだが」
「いや,俺は小遣い稼ぎにバイトを探してただけです」
「ふむ・・・・・・・」
 間近で霊的視覚を凝らすと,少年が純粋な霊力でも人類屈指の自分すら上回りそうな力を内に秘めているのが見て取れた。どんな理由か知らないが、意図的に抑えているようだ。
「・・・・良かったら,ウチで働いてみないかい?さっきまでならそんな余裕はなかったんだけど・・・・・」
 唐巣がこんな事を言ったのは,この少年の力を知りたいと,成長次第では自分を超えるGSになるかもしれないという思いを抱いたからだ。それだけの実力と潜在能力が,横島にはあると,唐巣は確信を持っていた。
「え・・・・ちなみに,時給は・・・・」
「そうだね・・・・GS資格がないから,基本的に除霊作業はさせられないけど・・・・時給は千円くらいでどうかな?」
 手元に一千万円の小切手がなければ,絶対に提示できない額である。それ以前に,普段の彼では助手を雇うことができるかどうか。
「ああ,美神君のところがいいなら,私が紹介状を書くけど?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いえ,ここで働かせて下さい」
 迷った末の結論だった。今回は、金欲が煩悩に打ち勝ったらしい。あの性格の悪さも大きな要因だろうが。
 幸いと言うかなんとゆーか,このSSの横島は諸事情により,そこまで女日照りではなかったし。
「では,よろしく・・・・・と。お互い,自己紹介がまだだったね。私は唐巣和宏だ」
「横島忠夫です。以後、よろしくお願いします・・・・・あと、さっきは出過ぎた真似してすいませんでした」
互いに気恥ずかしそうに笑いながら、後の師弟は固い握手を交わした。


   これがやがて『世界最強のGS』と謳われる横島忠夫、最初の一歩だった。


   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 多分覚えてる人はいないでしょうが、一昨年の暮れに同じタイトルで投稿しました、奏(かなで)というものです。
 受験も終わったので、新たに練り直した拙作を投稿します。
 最初に書いたように、別作品の『対仙術・仙術』とかまた他の作品の『仙術気功闘法』を流用したり、横島やそれ以外のキャラも設定(主に戦闘能力)をかなり変更してありますので、そういうのが嫌な方は見ない方がいいです。ちなみに、投稿規定には・・・・・引っかかってないですよね?

 下手な上に無駄に長い文章で申し訳ありませんが、今度は最後まで書けるよう努力します。

 では、今回はこの辺りで失礼します。

 

 ・・・・・・反応が怖いなぁ(笑)。

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