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「横島の道、美神の道 その17 (GS)」

小町の国から (2007-02-11 19:29)
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季節も2月になり、進学組でもない横島は学校へ通うこともほとんどなく、毎日のように事務所に顔を出している。

ヒュン、ヒュン

今日もタマモの繰り出す狐火の攻撃をソーサーで受ける訓練をしているのだが、

ヒュボッ!

「ん?」

突然タマモが狐火を消してしまい、不満に満ちた目で横島を見る。

「どうした? タマモ。」

「横島! あんたあたしを馬鹿にしてるわけ?」

「いや、そんなことはないぞ。」

タマモのキツい問い詰めを横島は否定する。
だが、タマモの機嫌は更に悪くなっていく。

「じゃあここ最近の練習状況は何? あんた前よりも下手になっていて狐火を食らう回数が増えているし。更によ! 練習中のあんたのその嫌そうな顔! そんなに嫌ならもう付き合わないわよ。
 じゃあね・・・」

「まっ待ってくれタマモ、誤解だ誤解、俺は全然嫌なんかじゃない。本当に誤解なんだったらー。」

立ち去ろうとするタマモを懸命に呼び止める横島。
キッ! っと鋭い目つきで振り向いたタマモが近づいて来る。

「だったら! 納得の行く説明をしなさい!!」

練習用ではなく、怒りを込めた攻撃用の狐火を右手に乗せたままタマモが問う。

「じ、実は最近、今までと違ったサイキックソーサーの練習をしてたんだ。」

ジリジリと後退しながらも説明する横島。

「それだけじゃ判かんないでしょ! もっと詳しく説明しなさい!」

「分かった分かりました。だからその狐火を消してくれ。」

せっかく出したものをこのまま消すのももったいないかな。などどかなり危い方向に走った考えを納め、タマモは狐火を消した。
何しろぶつけるとすれば目標は横島しかいないのだから。

「じゃあ早く説明して!」

「わかった。・・・それじゃあこれを見てくれ。」

ほっとしながらも横島は右手にソーサーを出す。

「?」

見たところいつものと変らないソーサーにタマモは首をかしげる。

「これが今まで使っていたサイキックソーサーだ。そして・・・・・これが改良したやつだ。」

横島の右手の上にあったソーサーが消え、少しの間を置いてから再びソーサーが現れる。

「・・・・・どこが違うってのよ、これ。」

「んーと、横から見てみれば分かるかな?」

横島はそう言いながら手首をひねる。

「んー・・、少し厚みがあるような気が。」

じーっと見た後のタマモの感想。

「おっ! 気がついたか。そうなんだよ。」

「でも何で? 厚くしたことにどんな意味があるの?」

「これはな、物理的な攻撃に対応するためさ。」

「物理的?」

「つまり、殴ったり蹴られたり、剣や棒なんかで攻撃された時の為さ。」

「ふーん、何でこんなことを考えたの?」

「ああ、正月にさ妙神山って所に新年の挨拶に行ったんだよ。単なる挨拶だけのつもりだったのに、何故か霊力の修行や手合せまですることになっちまって、小竜姫様と仕合ったんだけど、てんで敵わなくてさ。」

小竜姫というあまり聞かない女性の名前にピクリと反応したものの、話を聞くために口ははさまないタマモ。

「最後の手段で、額に出したソーサーで攻撃を受け止めて反撃をしようとしたら・・・」

「したら?」

「剣の攻撃は受け止めることが出来たんだが、威力までは止めることが出来なくて、その勢いでふっ飛ばされた瞬間に意識を失って、そのまま岩にめり込んだ・・・らしい。」

「へっ、へぇー。」

相変らず横島の人間とは思えない経験にタマモは冷たい汗を流ながらも返事をする。
が、横島は気にして(気付いて?)いないようだ。

「まあそれで俺も考えてさ、今までの単に硬いだけだったソーサーを改良することにしたんだ。表は硬く、裏は厚みと弾力をもたせて衝撃を吸収できるようにな。」

「ふーん、そんな事を考えたんだ。」

「ああ・・・・・だがなぁ、これが簡単じゃあないんだわ」

「何で?」

「上手く形をイメージできなくてさ、手のひらや体の前側になら今までよりも少し時間はかかるけど何とか出せるようにはなった。でも、背中側がなぁ・・・上手く出せないだけじゃなくて、改良型ソーサーの表裏が逆になったりと、まあ散々な状況なんだ。」

「まだ制御できていないって訳ね。」

「そういうこと。おかげでタマモとの勝負の負けは込むし、上手く行かなくて渋い顔をしていれば『嫌そうな顔』なんて言われて練習を放棄されそうになるし・・・まあ、言わなかった俺が悪いんだけどな。」

「・・・・・・・」

「そんな訳なんで、これからも練習に付き合ってくれや。」

「分かったわ。それに、もうきつねうどんを賭けた勝負の必要もない。私の意志で協力する。・・・だから!」

タマモがそれまでうつむかせていた顔を上げる。いつになく真剣な表情で。

「だから、私に事情も話さないまま変わったことをしないで。除け者にしないで、お願い!!」

「・・・ああ、分かった。すまなかったタマモ。」

(俺ってやつは、また自分の事だけを考えて仲間達を不安にさせちまった。この間美神さんにも言われたばっかりなのに。)

二人とも下を向いたまま時間が過ぎて行く。

「なあタマモ、今日はこれくらいにしないか?」

「・・・そうね、そうしましょう。」

二人は事務所へと歩き始めた。


「まったく、横島君は・・・」

訓練をしているはずの横島とタマモの霊気が普段と違うのに気付いた令子は、人工幽霊一号に命令して外の様子を見ていた。

「近いうちにはっきりと言い聞かせておかないとだめね。」

そう言いながら椅子に深くもたれる令子。

「もういいわよ、人工ゆ『でもさ、ご褒美なしで本当にいいのか?』うれい・・・」 

『別にいいわよ。今まで勝った分だけでいくらあると思っているの? 82杯分よ。』

『うっっそだろ〜!! マジでそんなに負けてたのか俺。』

『そうよ。だから当分は困らないわ(一緒に出掛ける理由にもね)。』

『うげぇ〜! それって何時になったら返済できるんだよ。』

『じゃあ早速何杯か返済してもらいに行こうか。』

『・・・マジっすか?』

『マジどすえ。』

『いきなり京言葉になるな!』

『だってさ〜、前世の私ってば当時の帝の側に居たんだもん。だからぁ、ネイティブってやつ?』

『んな訳あるかー! さっぱり判からんわ。』

『まあまあ、それはもういいから、一緒に出掛ける件を美神に話してね。』

『えぇ〜! 俺がかよ。一体なんて言えばいいんだぁ〜?』

『自分で考えなさいよ、横島。』

『そうは言っても・・・なあ、タマモからさぁ『ダメよ。除け者気分を味あわされた罰の意味もあるんだから。』・・・ってマジっすか?』

『マジどす・・ってだからそれはもういいってば! はい決定! 決まり!!』

『ううぅ〜。美神さん許可してくれんのかなー?』

『ダメでした、なんて結果は認めないからね。』

『タマモだって理不尽な怒りを纏った時の美神さんの怖さは知っとるだろうが。』

『まあね。あっさり死んじゃわないでね。』

『死ぬの?! 俺って死んじゃうの? それって決定事項なんか?』

『美神の気分しだいね。』

『あー! この世に神は居ないのか〜?・・・・居るけどさ。』


聞いている令子のこめかみがピクピクと痙攣している。

*注 こんなに長い会話をしているのに、何で二人が事務所に辿り着かないのかとのツッコミは勘弁 *

『オーナー、あまり気になさらないほうが良いかと。』

「分ってるわよ、人工幽霊一号。まあ今回はタマモに心配させた横島君が悪いんだから、外食は認めましょう。・・・・・ただし!!
 横島君が外出から戻ったら私の所に来るように言っておいてね。ふ!た!り!だけでじっくりと話したいことがあるからって。」

実に美しい笑顔である。・・・目も笑っていれば。
どうやら今日の横島は自宅まで歩いて帰れそうにないようだ。


そんなこんなの騒ぎがありながらも日々は過ぎて行く。
日々の流れの中で変わって行くのは横島も同じである。
自分の想像以上にチョコレートを貰えたバレンタインデー
浮かれ過ぎてちょっとした折檻を貰ったのもお約束。
小竜姫に教えられた霊力の延ばし方も順調で、少しずつ使える霊力も増えている。
雪之丞との訓練では、あまりの上達ぶりに互いが熱くなり過ぎる時もあるほどだ。
シロとの散歩(?)では、暴走グループとして一時期警察からマークされたこともある。もっとも、美智恵の取りなしで事無きを得ていたが。
交互に責め、躱す訓練も上達している。何よりシロに忍耐力がついたことが大きい。そのため、実際の除霊現場でもシロが暴走する場面が無くなっている。
自分の上達だけでなく、名目上は弟子であるシロの成長は横島にとって嬉しい出来事だった。
また、シロとの訓練によって、体力の低下を霊力で補う方法や、いざという時には体力までも霊力の充填に使えることも身をもって知った。
指弾の練習は、撃ちだす方向のコントロールは上達したものの、強弱のコントロールはまだまだだ。特に弱く(軽く)撃ちだすほうにてこずっている。
改良型サイキックソーサーの訓練も、タマモの協力によって生成に掛かる時間が短縮されてきた。
最近では、何と美神令子までがソーサーの練習に付き合っている。
令子との練習では、主に改良型ソーサーの弾力度や厚みを工夫して、どの程度の衝撃に対応できるのかを調べるためである。
しかし令子としては練習の名のもとに神通棍を振るえるのがお気に入りであるらしい。何せストレス解消になるらしく、時には金属バットを振りかざして来るのだ。
横島としても、自分から令子に頼んで始めた練習なので、止めてくれとも言いづらい。いざとなればシロとの訓練の成果で躱せるとしてもである。
横島にとっては、この練習が一番汗の出る(しかも冷たい)ものらしい。


これだけの訓練を日々行い、それぞれの訓練で成果を上げているのだから、正に驚愕に値する。しかも食事の面ではおキヌや小鳩のサポートが受けられるのだ。
人生は何かのきっかけで一つが上手く行くと、全てが上手く回りだす時があるとは言うが、今の横島が正にそれなのではないだろうか。
これが本当に『GS美神』の横島忠夫なのか?
ちなみに私(作者)が『GS美神』の連載時に、あまりの不敏さに気の毒に思い、せめて少しは良い思いをさせてやろうと、主人公の名前が変えられるエロゲーや美少女ゲーで『横島忠夫』の名前を使っていたのは完全な余談である。(きっと他にも同じ事をした人、いるよね! ねっ!)


そして横島は卒業式の日を迎える。


『あとがき』
本当にお久しぶりです。「小町の国から」です。

「その16」を投稿してから約1年、何もせずに過ごしていました。
気力も体力も『健康』でなければ湧いて来るものではありません。
いい齢になってから気付くんですから、我ながら笑ってしまいます。
そんな中、1年も続きが作られていないのに新たに感想を入れてくれた方までがいました。
かなりあ様、帝様、アンジー様、焔片様どうもありがとうございました。
こんな拙い作品でも待ってくれている人が居るんだと思うと、また気力が湧いてきて、とりあえずそのお礼も兼ねて短くても良いから投稿しようと、一晩で書き上げました。
頑張りますので読んで下さる方々、これからもよろしくお願いします。


それでは「その18」でお会いしましょう。


「小町の国から」でした。

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