「いたぞ!!撃て!!」
「予定の地点に追い込め!!」
警察犬を連れた、自衛隊員が何物かを追い込んでいく。
なんで私が…。
なんで人間に追われる?
私は何もしていない…。
気が付けばここにいた。
私は生きたい。……幸せに暮らしたい。
ただ、それだけなのに…。
何かが追われている森のそば。陸上自衛隊のテントの中から、声が聞こえる。
「金毛白面九尾の妖孤。通称、九尾の狐。
かつて中国インドを壊滅的な混乱に陥れ、平安時代に日本に流れてきた妖怪だ…!
奴は、クーデターや大量虐殺を発生させる傾国の怪物だ!日本政府は全力でこれを排除する!!」
いかにも御偉いさん!といった、感じの悪い男が話を、今まで黙って聞いていたオカルトGメンの美神美智恵が反論する。
「お言葉ですが、官房長官!我々の調査では、その伝説は迷信である可能性が高いのです。
たしかに九尾の狐は強力な妖怪です。しかし、だからといって邪悪と決めつけるのは…」
美智恵の言葉を、スーツにヘルメット姿の官房長官が遮る。
「放っておくわけにはいかん!九尾の狐の出現は、国家保安上の一大事だ!」
まさに分からず屋!っといわんばかりに美智恵は、官房長官に食いつく。
「反対です!これでは妖孤に『人間は敵』という印象を与え、むしろ危険を増大させるだけです!」
「もういい!オカルトGメンの協力など必要ない!
我々は独自に民間GSを雇って置いた!」
進展のない話し合いが嫌になったのか、官房長官がテントを出ながら吐き捨てた。
「「民間GS? ま…まさか……。」」
官房長官の言葉を聞いた美智恵と、台詞も無く美智恵の横に佇んでいた西条の言葉が重なる。
テントを出た美智恵と西条が見たのは…。
白馬に乗り、「まいどー!」っと現れ、なぜか顔に汗をかいてる美神令子その人だった。
「何をしてるの、あんたはっ!?」
令子に詰め寄り怒鳴る美智恵。
あまり怒るとシワが増えますよ?
「いや~~、そんな事情とはつゆ知らず…もう契約しちゃったから……今さらあとにはひけないのよッ!!
ごめん、ママ!!」
ぱからっ、ぱからっ、と馬の足音を残し、素敵なバックショットで森に消えていく。
そんな令子に「こらーーーっ!!」っと美智恵の叫びが辺りに響く。
「だめだこりゃ…」
「あんの…バカ娘…!!」
令子が去った後には、肩を落とし、首を振る西条と、やっぱり教育を間違えた。と、心の中で呟く美智恵が残された。
「うーん……。金に目がくらんで引き受けちゃったけど、まさか九尾の狐の子供とは…!
契約書に妙に違約時の罰則事項が多いと思ったのよ!!
私も自分の身を守んなきゃなんないし…。」
美智恵達から逃げ出し、そんな事を呟きながら馬を走らせ、いつの間にか取り出していたトランシーバーに指示をだす。
『横島クン!?そろそろ出番よ!妖孤が追われてそこへ出てくるわ!
結界に捕らえたらトドメをさすのよ!私もすぐ行くわ!!』
それを聞いた横島は、「了解!」と答え、通信を終える。
「『妖孤』っていいましたね。」
横島とともに通信を聞いていたおキヌ。いつもの巫女さんルックで横島に話す。
「どーも相手は狐の化け物らしいな…。」
何やら無い頭で考えながら横島が続ける。
「自衛隊が出てきたり、敵の正体が不明だったり、この仕事、なんか胡散臭いんだよな……。だいたい、政府の仕事ならGメンが……。」
そこまで横島が喋ったところで「ガサッ」っと茂みから音がする。
『ギャインッ!!』
草むらから飛び出した妖孤は「バシィッ」という音とともに結界に閉じ込められる。
「こいつかッ!!結界に捕まってる間に…トドメを!」
妖孤に破魔札を掲げて…そこで横島の動きが止まる。
『キューッ!!キューッ!!……!!キュ…!!』
ぷるぷると震えながら横島を見つめる妖孤。
「!!九尾の狐……!」
「しかしこりゃ…まだほんの子狐!?」
横島とおキヌは子供の九尾の狐に驚く。
(助けて!…許して!…)
『キューッ!キューン!!』と声を出しながら、そんな事を思う妖孤。
「こ、これも仕事だ!トドメを…!」
横島はぎこちない動きで破魔札を妖孤に近づける。
(あ……、私は…お前を知っている?…赤い…バンダナ?)
『…………。』
なおも横島を見つめながらぷるぷると震える妖孤は、横島が身につけるバンダナに、何かを思い出す。
「…………。」
またしても動きが止まる横島。顔には大量の汗が…。
「で、仕留めたのね?」
遅れて到着した美神が横島達に聞く。周りには自衛隊の姿もある。
「お、お札に吸引してあそこに…。」
横島の答えに美神は「よくやったわ。」と素っ気なく反す。
「でも…その話からすると、別に退治しなくてもよかったんじゃ…?」
今にも泣きそうな顔で美神に聞くおキヌ。
そんなおキヌに美神は、政局がややこしいだの、政府が神経過敏になってるだの、あれだけいじめたら自分達は妖孤敵だとか色々と言っている。
さらに横島がトドメをさしたから私は悪くないってことで。とか言ってます。
いや、おキヌちゃんを慰めるには逆効果だから。
とことんテンパる美神だった。が、妖孤は横島が背負うリュック中に隠されていた。
そのことがバレないか、それが心配な二人だった為、美神の話を全く聞いてなかったりする。
(私を助けてくれた。前にもそんな事があった…。
私はダレ?九尾の狐?
私が持ってる九尾の狐としての記憶。…それ以外の記憶…。私は……。)
暗く、狭いリュックの中で色々考えていた妖孤だが、怪我と妖力の消耗で深い眠りに落ちていった。
後書き
短いみたいなので、長くしてみました。
と、言っても、壱話と弐話を足しただけですが。
オリジナル要素も入れてみました。
次の話で!と思ったのですが、長さ的に次で終わりそうなので。
りがすりおと様》
ポン太様》
有難うございます。