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▽レス始

「マウチュ! 天使と悪魔な女の子『1−4』(GS)」

缶コーヒーのボスの手下 (2007-01-13 20:19)
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「ん? ……夢、か……」

ベッドの上で目覚めて直ぐ、呟く。体が汗まみれで気持ちが悪い。
それから、少し荒い息が落ち着くまで三十秒ほど。思えば全然、眠っていた気がしなかった。

「あんな夢見るなんて……これで予知夢とかだったら洒落にならんぞ……。まぁ、夢だったってだけ大いにマシやけど……」

不思議と忠夫は、夢の内容を覚えていた。
七時半にベッドの上で目覚め、着替えた後にマウスが作り置きしていたカレーを食べて、そして家を出た所から始まった夢。
登校途中に事故の発生を目撃し、頭のかち割れた少女の死体に泣きそうなほど恐怖を覚えて、震えながらも警察に見たことを話した夢。
始業時刻ギリギリで学校に着いて、優秀な家庭教師に教わった知識をテストの解答用紙に記し、その日の日程を終えて学校を出た夢。
そして……帰り道、途端に騒ぎ出した周りの奴らから、六道女学院に強力な悪霊が出現し、生徒数名が死に至った話を聞いた。

「七時半……かぁ」

時計の針が指す時刻は、夢の中で目覚めた時と同じ七時半。急に震えだす体が恨めしい。
そのまま怖い偶然を抱えながら、忠夫はマウスの作ったカレーを食する。とても美味しいのだけど、夢の中で食べた味と一緒。
なんとなくでコップに注いだ牛乳も、夢と同じ。有り得ないと思いつつも、忠夫の脳は加速して、一つの案を導き出した。

「(もしもあれが本当に予知夢だったと、そう仮定した上で動いても、別に悪いことにはならんのじゃないやろうか?)」

それは、言葉に出来ない恐怖から抜け出すための名案だった。そう思うことで、恐怖をずっと抑えられる。
思い立った忠夫は、直ぐさま出かける用意を済ませて、家を跳び出した。
せめてあれがただの夢であったのだと、そう確信するまで動き回って見ようと、そんな思惑を胸に抱いて。


夢の中では、事故で女性が降ってきた筈の古ぼけたマンション。そこの、丁度少女が落ちた地点に忠夫は立っている。
腕時計から得られる情報からすれば、もうすぐ事故の起きた時間のはずだ。体がまた震えだす。

「……あの子だ。頭割れてたからようわからんかったけど、結構可愛いなぁ」

マンション三階のベランダに姿を見せたのは、赤みのかかった髪の、三つ編みの素朴な雰囲気を感じる少女。
良く見れば、少女の着ている服は随分と薄汚れている。
次の瞬間、一瞬だけ舞い上がったスカートの中を忠夫は見逃さなかった。
強く、横から吹き付けた風によろけて、ベランダの錆びた柵に掴まる少女。彼女を支えるはずだった柵は、無残にもへし折れる……!

「!」

少女が支えを失ったことに気付くも、手遅れ。頭から足場のない空へと倒れ、絶望を感じさせる地面へと落下する。
近づいてくる少女の顔。その光景が思い起こさせるあの出来事が、忠夫の体に自然と力を吹き込んだ。
重なる視線と視線。掲げた両腕から飛び出す光の手が少女の体を掴み、容赦のない重力の猛攻から少女を解放する。
そのまま、あの時のようなハプニングが起こることもなく、忠夫は少女を地面に降ろして、大きく息を吐く。

「ただの、夢やなかった……」

何が起こったのか、未だ正確に捉えきれず放心状態のまま忠夫を見つめる少女の前で、忠夫はそう呟く。
夢で見たことが現実に。それは彼に、一つの希望をもたらす。

「ホンマに予知夢やった……」
「あ……あのぉ……」

ほぼ完璧な証拠の提示。頭の中で、一度見てきた出来事の全てが重なり、一つの像を形作っていく。
異なるやも知れないが、今この時忠夫は運命、または天命か、そんな形作られているであろう道に、一枚の結界を張った。
しかし、脆い。その程度の結界では無駄だといえる薄い一枚壁だ。素手で殴っても砕けないとはいえ、得物があれば容易く崩すこの出来る壁。

「……だとしたら、このままやったら」

夢の通りに道が続いているのならば、マウスの通う学び舎、六道女学院で悪霊により数人の生徒が死に至る。
その中にマウスが含まれているとは考え難いが、そうでなくとも、忠夫は今、それを防ぐことの出来る立場にあった。

「あのぉ」
「ん? あぁ……(忘れとったぁ)怪我はない?」

別のことに頭を持っていかれて助けた『美少女』の存在を一時忘れるとは、横島忠夫らしからぬミスだ。

「は、はい。おかげさまで……あれは、あなたが助けて下さったの……ですよね?」
「まぁ、いちよう」

『予知夢』が忠夫自身の能力であるならば、そうなるだろう。そうでなければ、『助けられた』といった表現の方が似合う。
一日の流れを先に見ることが出来たこと、それが忠夫をこの場所に導いた。それがなければ、忠夫は少女が死ぬその瞬間を見ることになっていたのだ。

「あの、ありがとうございました」

少女は深く頭を下げる。思えば、女性に礼を言われたのは久しぶりかもしれない。

「どういたしまして……て、それどころやなかった!」
「へ?」

急に叫ぶ忠夫に、少女の下げられた頭を上げた。キョトンとした表情で忠夫を見ているが、その目には涙がたまっている。
大方、突然の出来事に頭が回っていなかったのだろう。時間がたち、自分の人生が終わろうとしていた事に気付いて、怖くなったのだ。

「本当に……本当に、ありがとうございました……」

少女の形相は次第に恐怖からの解放感に呑まれ、泣きそうな顔でまた頭を下げる。そして、ありがとうの言葉を何度も何度も繰り返す。
忠夫は恥ずかしくなって、頭をかきながら、少女に近づいた。手の届く距離だったからかはわからない。ただ、手を伸ばして頭に置く。

「嬉し涙かもしれんけど、あんまり泣いて欲しくないからさ」

言いながら少女を撫でる忠夫の声が、この上なく優しく、少女の耳に響く。
横島忠夫が生まれて初めて、初対面で完全に相手を落とした瞬間だった。

「それにさ、なんつうか……誰かを助けられたっていうの、結構嬉しんだ。そういう時は、自分に感謝出来るもんな」

キザな哲学を披露する忠夫。一体何に影響されたのかは知らない。

「だから、胸張って今日も生きててくれると嬉しいかなぁ……なんて。なんか滅茶苦茶だけど」

まさかこの男からこのような台詞が飛び出すことなど神も予想し得なかったであろう。
伏せられたままの少女の顔のなんと可憐なことか。三つ編みにされた赤髪が小さく震える。

「じゃ、俺ちょっと用があるからこれで」

そう言って忠夫は、振り返らずにその場を後にした。キザな台詞も含めて恥ずかしかった。
彼が向かうのは美神除霊事務所。六道女学院救済のために、自分の上司に力を借りるつもりだった。


      新!? GS美神 極楽大作戦 マウチュ! 天使と悪魔な女の子
              Act.機櫚検 礎凸補充〜


テーブルに置いたマグカップを手に取り、中身のコーヒーをすする。寒いと感じるほどでないとはいえ、あったまるのは気分がいい。
次第に乱れていた呼吸も戻り、マウスは一度大きく深呼吸した。

(……落ち着いたかの?)

周りの何処からでもない、自分の体の中から響いてくる声に、マウスは頷く。

(さて……話を始めるとするかの。どこまで覚えておるのじゃ?)

(意識が残っていたところまでは覚えてまちゅ。水に吸われて、目が開かなくなるまで)

友達のおかげで湧いてきた底力を振り絞り、水に飛び込もうとしていた冥子を押し戻したところまで。
悲しませないように、一度強く手を握ってから押したのも、マウスは覚えている。

(それなら……マウスが気を失ってからのことを話すとするかの。あまり気乗りはしないが)

(お願いちまちゅ……)

マウスは今、二度目の今日を生きている。しかし、何故そんな事になったのかがわからない。
カオスから話を聞いたとしても、それが解明されるとは思えないが、それ以外にも何かが起こったらしく、まずはそちらを片付けることにしたのだ。

(あの後、力を吸いきった水はマウスを解放し、その後あの教師によって直ぐ、馬鹿でかい保健室に運ばれた)

六道女学院の保健室はとても大きい。国を守るために絶対必要となる人材の育成に、六道が金を惜しまなかったからだ。
人員も一人だけでなく、数人いる。小さな病院よりずっと、設備も整っていた。

(衰弱しとるマウスに出来る限りの処置を施してくれていたが、怪我や病気とは違うからの、後は神頼みじゃ)

自らマウスの生命力を奪い返すことなど不可能なため、自然回復以外には道がない。
人間相手ならば、医者を呼ぶことでそれ以上の処置も出来ただろう。が……マウスは魔族。魔族を診たことのある医者など、誰も聞いた事がなかった。

(マウスがベッドに寝かせられて、そのまま時間が過ぎていった。あの冥子という女子がイスに座って見ておったのぅ)

冥子は、マウスの傍にいると言って聞かなかった。強引に、ただベッドの上で眠りに付く少女の目覚めを待つだけ。
ショウトラによるヒーリングも、外傷のないマウスには意味がない。だから、待つことしか出来ない。

(……事が起きたのは昼過ぎじゃ)

マウスはゴクリと唾を飲み、その後の言葉を待つ。

(いきなり天井が崩れ、それまでは気配すら感じんかった悪霊が現れおった)

(それで、どうなったんでちゅか?)

予想はついている。しかし、明確な答えがなければ予想というものはひどく脆い。特に悪い予想というものは、心を疲れさせるのみ。
だからこそ求めた答えだが、その内容は決して少女を裏切らず、絶望させた。

(不意打ちじゃった。あの教師を含めて三人が、あっという間にバラバラじゃ)

保険医とはいえ、ある程度の戦闘技術は心得ている女性のはずだった。
敗因は、準備も出来ないまま攻撃されたこと。何故ならば、もともと悪霊は人間より強い。

(吹き飛んだ瓦礫であの冥子も、他の者も殺された)

頭の中が悔しさで一杯になり、震えるマグカップから液体が数滴飛び出す。
それと一緒に沸いてくるのは、現実が自分を襲ったであろう恐怖。

(マウチュは……どうなったんでちゅか?)

聞かずともわかる答え。今この場所で生きている自分を否定するそれが、カオスの口から吐かれるのを、恐怖に耐えながらじっと待つ。


(……殺された)

結果は出た。マウスは、殺されて尚生きている。その一日が繰り返される、神をも恐れぬ出来事によって。


『それ……私のせいよね』

話を聞いて、ひどく気を落としたタマモが言った。

「違いまちゅよ。一度でもあの結果を生んでちまった理由は、たくさんあるんでちゅ」

数多くの条件が満たされたことが、最悪の結果を生み出した原因である。

「ちょれよりも、もっと普通の話をちたいでちゅ。今はそういう気分でちゅから」

日々は優しくなんてない。何故なら確率というものが、どんな結末さえ選んでしまうからだ。

「今日の朝はそんな感じでちゅ」
『……ふぅん』

いつものように、森で語り合う二人。話の内容は今日の登校時の出来事だ。
そう、朝カオスと話して事実を知り、震えながら学校へ行った朝の出来事。

『それで、試験の方はどうだったの? うまくいった?』
「はいでちゅ! これからお話ちまちゅね」


☆後書きコーナー    byマウス&タマモ


『ねぇ』

「何でちゅか?」

『確か前回に実力考査編まで書くつもりだったけど、区切りがいいから区切ったとか言ってたわよね?』

「……はいでちゅ」

『じゃあ、何で今回もそこまで進んでないの?』

「……馬鹿作者ちゃん曰く、タマちゃんとの会話シーンは区切りに入れるのが一番効果的らちくて、ちょのために一度区切らないといけなかったからだちょうでちゅ」

『まぁ確かに、あの会話を入れようと思ったら、実力考査が始まる前に区切るしかないわね』

「はいでちゅ。間にループを挟むことで、会話の印象度がずっと強くなるんでちゅ」

『それで今に至ると……。してやったりな顔してる作者が安易に想像できるわね』

「それ以前に、この会話を書いてるのも作者ちゃんでちゅ」

『それ言ったらお終い。それに、小説は登場人物の心情を描く読み物なんだから、書かれているとはいえ私たちはある程度自然に存在してるわ』

「……後書きコーナーが文学哲学コーナーになっちゃいまちゅ」

『小説自体ほとんどが哲学の塊よ』

「そうでちゅか」

『そうなのよ』

「わかりまちた」

『うんうん。その通り』

「はいでちゅ!」

『(……この言い回し後何回使うつもりかしら?)』


☆ご返答コーナー


戦国ランスちゃま

「作者ちゃんには原作に登場する、ちゅまり現実に存在ちない単語を間違える癖があるちょうでちゅ」

『またやっちゃったってわけね』

「はいでちゅ」


ZEROSちゃま

「前回は少し突然な感じでちたけど、今回はわりと綺麗に状況を描けたちょうでちゅ」

『ループによる心情の変化を利用した感じ。ただ弾薬補充のサブタイトル通り話全体が安定しすぎてて、少し暇だったかも』

「ちょれをカバーするために、ヨコチマが役立ってくれていると幸いでちゅ」

『不安ね』

「ちょれで虎ちゃんの出番でちゅけど、考えている上では原作で虎ちゃんの出番があるシーンを大幅改造ちて作るちょうでちゅ」

『震えるほど格好いい台詞を用意するよう頑張りますって作者が』

「特にGS試験編の虎ちゃんは必見だちょうでちゅ」

『まだ考案の段階だけど』

「ちなみに、その後からは消えていく気がちないでもないでちゅ」

『運命と書いて定めね」


DOMちゃま

「今回のヨコチマはちゃんと活躍ちてくれまちたね」

『まさかあの男にあんなこと言えるなんて……』

「そうでもないでちゅよ。ヨコチマは、煩悩モードにちゃえ入ってなければわりとキザな台詞をいいまちゅ」

『あれはあれで一つのモードってわけね』

「はいでちゅ。ちなみに次回もヨコチマの出番があるんでちゅよ」

『どのくらい?』

「一番美味しい役にはまってくれまちゅ」

『……(ちょっと羨ましい)』

「作者ちゃんお勧めの素敵な場面なので、お楽ちみにでちゅ」


somosomoちゃま

「読者を引き込む力の強い場面は、より効果的に写るよう細工ちてるみたいでちゅ」

『特に今回はそんな感じね。うざいくらいに罠が張り巡らされてるわ』

「だから弾薬補充なんでちゅよ。次のクライマックスを盛り上げるために、細かい仕掛けに気を使ったちょうでちゅ」

『次がAct.気虜埜紊覆痢』

「予定ではそうみたいでちゅ。学力考査から、Act.汽┘鵐妊ングまでを描くかなりのボリュームでちゅ」

『確かに長そうね。またどこかで区切らなければいいけど……』

「作者ちゃん曰く、ボリュームがないとラストを盛り上げ難いから、結局長くちないと駄目だちょうでちゅ」

『長い文章で引き込んで、バトルシーンに火をつける手法よ』

「はいでちゅ。お楽しみにでちゅ」


ハーリンちゃま

「虎ちゃんの活躍場面についてはZEROSちゃまへの返答でも書いてまちゅが、ちょれだけにちてちまうと書くネタがないので引っ張ることにちまちゅ」

『返答コーナーで話すネタがシナリオ設定を絡みやすい理由ね』

「はいでちゅ。ネタが浮かばなかったらレスに書いてある内容の中から強引に引っ張りまちゅ」

『いつか重要な付箋をばらしそうで怖いわね。ていうか、今の会話も結果的には話を長引かせるためよね。寄り道させて悪かったわ』

「大丈夫でちゅ。ちょれで虎ちゃんの出番についてパート兇任舛紊、GS試験編で、一試合だけ、虎ちゃんの試合を最初から最後まで書くちょうでちゅ」

『一試合って……けっこう長くない?』

「はいでちゅ。原作で出番がなかった分、作者ちゃんはこの一試合で一区切り分使い切るつもりだちょうでちゅ」

『あいつが出るっていうことは、横島もやっぱりGS試験に出るのよね?』

「はいでちゅ。マウチュと冥ちゃん、他にも原作通りピーちゃんや白竜会の三人も参戦ちまちゅから、GS試験編はとても長い話になるちょうでちゅ」


尾村イスちゃま

『マウスの作ったカレーが話しに出てきてるけど、マウス、あの男の御飯作ったりするの?』

「はいでちゅ。最近はヨコチマもマウチュの家に良く泊まりまちゅから、それを踏まえればよく作ってると思いまちゅ」

『止まりに来るの?』

「はいでちゅ。でも二階は男子禁制になってまちゅからヨコチマは一階でちゅ。ちゃんと上ってこれないためのシステムも完備でちゅ」

『……ねぇ、マウス』

「何でちゅか?」

『マウスって……もしかして、あの男のこと……』

「ちょれは次回をお楽しみにでちゅ。でも、別にどうだったとちてもそんなに驚くことじゃないでちゅけどね」

『あ……そういえばマウス、男女問わず惚れるタイプなのよね』

「はいでちゅ。タマちゃんも大好きでちゅ」

『……(かなり嬉しい)』


☆次回予告コーナー


「次回は、遂にAct.鬼扱詈圓任舛紂」

『今までがわりとおとなしかった分、一気に弾けるそうよ』

「そして最後にはちょっといい話のエンディングでちゅ」

『更にエピローグもあるそうね』

「はいでちゅ。Act.兇原作のストーリーを追った話になりまちゅから、それへの繋ぎでちゅ」

『それじゃあ、Acr.機櫚后 船侫襯好蹈奪肇襦繊

「お楽しみにでちゅ!」

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