◆ Night Talker Road 「361.シロ黒だってイイジャマイカ」の無氏イラストに捧ぐ。
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「先生……」
艶やかな唇から、甘い吐息が漏れた。
シロのために誂えられた部屋の壁一面を飾る鏡は、ふっくらとした女性らしい彼女の白い稜線を描き出し、裸身を飾り付けるブラックダイヤのような革製の首輪の黒い輝きを映し出している。
横島忠夫の飼う雌犬――それが今のシロという少女を表すに相応しい言葉だろう。
父の仇によって負わされた傷を因果とする超回復によって齎されたかつての身体の成長は、心の成長までを促しはしなかった。
しかし、魂を包む肉体の影響が、精神の在り様にまったく影響しないというわけでもない。
実年齢のまま、天真爛漫に横島を慕っていたシロの内で、彼女の内実は静かに少女から女へと確かに成長しようとしていた。
ただ、それでもシロが常のままの彼女であったのならば、その変化は緩慢なものとなり、本来の成長に合わせるように、馴染むように、ゆったりと歩みを進めることになっただろう。
人狼という種族が、発情期という名の本能を具えてさえいなければ……。
だが、季節は巡り、刻は止まる術を持たない。
新たな春の足音が聞こえてくる頃、シロの中で何かが動き出していた。
まるでボタンを掛け違えた服を着ているような奇妙な違和感を感じながら、未だ幼さを残すシロには、その指し示す意味が分からない。
ゆっくりと、ゆっくりと紡ぎ車に巻きとられる糸の如く、意識の表層が心の奥底で育つ本能へと引き込まれていく事実。その意味を識る術を、彼女は持っていなかった。
そして遂に、静かに滴り落ちていた情欲という名の淫らな雫が、シロという名の青き処女杯から溢れ出した。
煌々と中天に輝く満月の光の下で、その魔力に満ち満ちた銀光を全身に浴びながら、彼女は変貌を遂げてしまう。
父や村の男衆が見せたような半獣半人の如き姿ではない。古き神であるアルテミスを降臨させたときのような姿でもない。
シロは少女から女性へと、豊潤な色香を纏った人の女性を前面に押し出した姿へと、思慕を感じる相手の種族に合わせたかのような変貌を遂げたのだった。
その変貌は、もしかすれば、精霊石を使って人身へと長く変じていたせいもあるのかもしれない。
しかし、何れにせよ肝要なのは、シロは想い人である少年の望むであろう姿に変じることに成功したということだろう。
結果として、自らの本能と思慕の命じるがままに、想い人と一つになることができたのだから。
そして、めくるめく官能の日々を過ごすうちに魅惑的な肢体は開発され、横島忠夫の雌犬となっていった。
「先生ぇ……」
元々、恥という概念が刷りこまれていたせいなのだろう。
華開かされる中で、後ろから貫かれながら卑猥な言葉を投げかけられるたびに乱れ、官能の喘ぎを強くするというシロすら知りようもなかった事実が、横島によって暴かれた。
狼でござるという弱々しい抵抗の言葉は次第に薄れ、遂に彼女は自身が雌犬だと認めたのだ。自らが横島忠夫だけの雌犬であると。
だからこそ、今では鏡に映る首輪姿の自分を見るだけで、堪えようのないほどの疼きを下腹部に感じ、交わりの刻を思い出さずにはいられない。
鏡の前で首輪を乱暴に掴まれ、犬と罵られながら貫かれた瞬間に絶頂を迎え、そして、潮を噴き出すほど子宮に感じた熱い精液の感触を。
欲情に狂い、いやらしく身体をくねらせながら歓喜の悦びを狂ったように奏で続ける自分の痴態を。
「く……ふぅ……」
そして、火照り始めた身体を止める術はなかった。
横島に愛される感触を求め、シロは自分を慰めずにはいられなかった。
横島の前に跪き、雄々しくそそり立った肉棒を包みこんだ時の感触を思い出しながら、ゆっくりと自らの乳房を揉みしだいていく。
柔らかながらも形を崩さない量感に溢れた乳房が鏡の中でグニュリと歪み、手の平に感じる突起の感触が硬いものとなる。
「ふぅぅ……ん、んぅ!
ん……くぅ……先生ぇ……」
屹立した桜色の乳首を伸ばすように親指の腹で扱くと、電流にも似た痺れがシロの背筋を震わせながら駆け上がった。
まるで、横島が甘噛みしながら吸い上げるときのそれにも似た快感に、シロの指の動きが速く激しくなっていく。
彼女の瞳は情欲に塗れ、自身を快楽の海へと誘うように、溺れさせるかのように潤んでいる。
「先生……もっと、もっと欲しいんでござる……。
先生ぇ……早く、お帰りくだされ……
拙者のここに早く……お情けを注いでくだされぇ……」
白い肌を撫ぜながら滑り降りた右手の指先は銀色の草原を駆け抜け、秘唇の前で震えていた。
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「むにゃ、せんせぇ……お情けを……」
「ママぁ……お姉ちゃん何を言ってるの?」
大口を開けて涎を垂らしながら、タンクトップから覗く贅肉一つない健康的な脇腹をポリポリと掻くという色気も何もない姿で昼寝し続けるシロの姿。
それを興味深く観察していたイツキ(一姫)の無邪気な質問に、母であるタマモは苦笑を浮かべるしかない。
男と女の理を説くには早すぎる。さりとて、妖孤の在り様を考えると下手に嘘を付くのも気が引けてしまう。
だからこそ、テレビで見たドラマのワンシーンを思い出しながら、タマモは狐らしく韜晦することにしたのだった。
「ねぇ、ママぁ?」
「イツキが大きくなったら分かるわ」
「大きくなったら?」
「そうよ。大きくなったらね」
「そっか、大きくなったらか……」
どうやら娘の疑問は不思議と解決することができたらしい。うんうんと大きく頷きながら呟くイツキの様子に、タマモは目を細めつつ笑みを浮かべた。
とはいえ、安堵の気持ちが広がると、その分、眠り続けるシロの太平楽な寝顔が癇に障るようになってくる。
娘の情操教育上、よろしくないことは百も承知していたが、それでもタマモの唇の端は自然と持ち上がり、慈母の笑みに翳りとも冷たさとも云えるような何かが混ざるのを止められない。
そして、ふわりと若草色のロングスカートを躍らせ、白い足が軽やかに持ち上げられた。心の内で、事務所で幾度ものドタバタ劇をどうせ見せているのだ、と自分を納得させながら。
「さっさと、起きなさい。この、バカ犬!」
「フギャン!
な、何をするでござるか、女狐っ!?」
「あんたが場所も弁えずに、変な夢を見てるからよ!
イツキ達に変な影響があったらどうするのよ、このバカ犬!」
「ぐ……だからといって、いきなり踏むのはなしでござろうが!」
「逆ギレ!?
変な影響があるって認めたんなら、まずは謝りなさいよ」
「くぅぅ、そっちの謝罪が先でござる!」
「何ですってぇ?
大体、ここは私達の愛の家なのよ。
妄想染みた変な夢は、自分の部屋で一人寂しく見てなさいよ!」
「う、うるさいでござる!」
爛々と目を輝かせるイツキの前で、キャンキャンと騒がしい二人は延々と言い合いを続けるのだった。
― Fin ―
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許可を貰えましたので書いてみましたが、如何なものでしょう?
思わず「狐の病」の設定を踏襲してしまいましたけど、はてさて……。
まあ、短いですし、切ってる部分が部分ですので、エロスが足りなさ過ぎますか、皆様方?