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「上を向いて歩いていこう(GS)」

hanlucky (2006-11-23 11:06/2006-11-23 16:55)
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*注意、この物語は、GSのキャラクターが亡くなるお話でもあるので、それらが苦手な方はご遠慮下さい。

本日も晴天なり。
公園では朝の散歩をしている人、玄関から新聞を取りにパジャマ姿の人。

『南部の降水確率――』

テレビから聞こえる、今日のお天気。
台所から包丁が一定のリズムを刻んでいる。

「二人とも〜、そろそろおきなさ〜い。」

リズムが途切れ、代わりとなる、きれいな朝の目覚まし。
そして、その目覚ましの効果が起きる。

「うわ〜!? 寝過ごした!?」
「まったく、たかが、遊園地で興奮しすぎよ。」

いい匂いがするお弁当、今日はピクニック日和。

『――今日の残念さんは、こちらの方で〜す。』
「なんでやねん!?……でも、今日は晴れやしなんとかなるわ!」

今日の占いとやらを見て、一人悔しがる子供。
ラッキーシンボルは晴れ空。
だから大丈夫。

「ほら、さっさとお父さんを起こしてきなさい。」

は〜い、と元気な声と足音が響く。
後ろの雑音は聞こえない。

『――ということと、午後から所々で雨が降るかもしれないから、気をつけてね。それじゃ〜今日も一日、いい一日を。』

今日は、どんな一日になるのだろう?


――上を向いて歩いていこう――


日曜日の朝、それはありきたりの光景。

「父さん、早よ〜、早よ〜してや!!」

息子が、一秒でもおしいと、後ろからゆっくりと歩いてくる父親を急かす。

「あ〜…わかってるから急かすな!」

父親は、せっかくの日曜が家族サービスで潰れたよと、愚痴りながらも車のキーを解除する。
そして、我先にと鍵が開いた車の中に駆け込む息子。

「ふ〜、焦らなくても、遊園地は逃げないわよ。」
「開園時間から30分経つと、もう遅いんや!!」

人気なマシンほど、開園10分で30分待ち、1時間待ちはざらである。
子が開園時間より早く着きたいと思うのは当然だろう。
息子が後部座席へ移動するのより遅れて、母親が車の助手席へと移動する。

「へいへい……それじゃ、いくぞ〜。」
「しゅっぱ〜つ!!」


動き出した今日。

動き出した時間。

それを戻す事は可能か?

もし、来週いっていれば……

もし、遊園地じゃなくて別の場所に行っていれば……

それは所詮、IF。

おこった事をなくす事は出来ない。


『……ぐぅぅぅ、どうする? このままじゃいずれヤラレル。』

その異形は、死期が近い事を悟っていた。
今までなんとか、GSの追跡をかわし続けてきたが、追っ手は増える一方。
今は人が作った建物の中にいるが、それも時間稼ぎ。
向こうが本気になれば、周りの被害を多少はやむなしと向かってくるだろう。

『あの男……追っ手の中でも格が違う。あいつさえ、いなければ……』

最初は大した事がなかったはず。
自分の力を侮ったGS達を返り討ちにし、逆に養分としてやったが、GSの増援として現れた一人の男によって、一気に劣勢に陥った。

『最悪の場合は……』

だが、こちらには切り札がある。
しかしこの切り札は欠陥品だ。
一度発動すれば、こちらも身動きができなくなる。
その間に封印される恐れもあるのだから、そう簡単には使用出来ない。
そして、使用するにも対象が限られてくる。

『!?――GS共が!!』

GS達にはこの異形、一般的には妖怪と呼ばれているモノがどこにいるか探索できる”見鬼くん”がある。
急いで妖怪は、この場を離れる。そしてそれを追うGS。

『チ!! いよいよ、切り札を使うしかネエカ!!』

辺りが騒がしくなる。
当然だ。人とはあいそれない存在がいるのだから。

――化け物。

あぁ、上等だ。
こちとら、下等なニンゲンに比べたら異端なのだから。

「――主よ。邪悪なる存在を消し去る力を我に与えたまえ!!」

黒いインナーに、灰色のジャケットを着た男が聖書を片手に、神聖エネルギーを妖怪に向けて放つ。
妖怪は、それをかわしきれず、大きくはじけ飛ばされる。
妖怪が飛ばされた先の人たちが叫びながら避難する。

『グッ!? こうなったら――見つけたぜ!!』

切り札を使うには条件がいる。
それは対象者が霊力を所持している事。
だが、相手がGSではリスクが高い。
よって狙うは、多く霊力は持つが素人な者。
都合のいい事に二人も同時にいる。

「――!? させるか!?」

男が妖怪の狙いに気づき、急いで阻止をしようとする。
だが、今の一撃でケリをつけられなかったのは失敗だった。
今、妖怪の周りには人、人、人。
男も運が悪い。
男にもっと頼りになる相棒がいれば連携を組んで倒せただろう。
しかし、現段階で妖怪にまともに張り合えるのはこの男だけであった。
男がもっと非情ならば、周りの事を考えずに短期決戦で終わらす事ができただろう。

『男と女、どちらも高い霊力を持ってるジャネエか!!!』

運がいい。
逃げ込んだ先が人が多い所で正解だった。
弾き飛ばされた先に、多くの霊力を所持した者がいてよかった。

『おっと、邪魔すんなっよ!!』
「くっそ――!!」

妖怪が、邪悪なエネルギーを建物に放ち、壁が崩れる。
壁が崩れ、辺りの人たちが巻き添えをくう。
男が大きな瓦礫に巻き込まれそうな人たちを救出する。
そして、妖怪はターゲットを補足する寸前――

「忠夫!!」
「――あなた!?」

ターゲットの一人がその息子、忠夫を突き飛ばし、頭上に瓦礫が降り注ぐ。
折角、ターゲットには降り掛からないようにしたのに、と舌を鳴らす。

『……まぁいい! ならば、女、貴様だ!!』
「――百合子!? させるかぁぁぁあああ!!!」

瓦礫の下敷きになったはずの父親が、人間離れしたうたれ強さで、瓦礫から脱出して、妖怪を”殴りつける”。

『ば、ばかなっ!?』
「父さん!!」

父親が二人を守ろうと立ちふさがる。
だが、

『てめえはもう必要ねえネエエエエ!!!』
「づぁ!?」

敵は普通の妖怪ではなかった。
もし敵が亡霊、幽霊ならば、いや普通の妖怪ならばもしかしたら、時間はかせげたかもしれない。
だが、この妖怪、いやこの妖怪は正確には悪魔と呼ばれるものでだった。
悪魔は、父親を殴り飛ばし、そのまま母親、百合子の元へ加速する。
百合子は忠夫を突き飛ばし、身構える。
もし彼女がGSだったならば、さぞ強くなっていただろうというぐらいの悪魔に対しての戦闘態勢。

「大樹の借りを――!?」
『借りがなんだって〜?』

だが、いかんせん凌げて一撃。
十分奇跡だ。

『終わりだ――』
「あ……大樹……ただ……お」

そして、奇跡は彼女を救う。

「――アーメン。」
『ぎゃぁぁぁあああああ!!?』

十字架を首飾りにした男はなんとか間に合ったと横から一撃を決める。
彼女と悪魔の間に入り込み、”寄生”させないようにする。

「――今、汝に聖なる力を。」
『ヤメ…やめ…ロ』


死にたくない。


――もし、ここで黙っていれば


死にたくない。


――だが、おこった事をなくす事はできない


死にたくない。


「…とう…さん……かあ…さん」


――小雨のような声は


『死にたく??なぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!!!!』


――血の雨を降らす


「ただおぉおおおお!!?」
「無駄だ!!」

聖なる力が悪魔を包み込む。
だが悪魔はもう止まらない。
そのまま忠夫のほうに向かう。
このままでは死は確定。
だから最後の悪あがき。

「ふぁぁああ!?? あぁぁぁぁああああ!!?」
「やめてぇぇぇえ!!!」
「なんて霊力だ??いけない!?」

忠夫の中に入っていく悪魔。
それは癌細胞のようなもの。

「ただお、ただお、ただお!」

それを阻止しないわけにはいかない。
男の制止を振り切り、百合子は懸命に忠夫の元に向かう。

「お願い、私の体ならあげるから、ただ……お……?」

忠夫の両肩を押さえた瞬間、崩れ落ちる百合子。
彼女の胸部が赤く染まる。

「おかあさん!? おかあさん!!? おかあさん!!!?」
「ゆ……り………」

違う、自分じゃない。
こちらを見つめながら立ち上がる大樹の目が、怖い。
自分じゃないのに、自分じゃないのに。

「いやだ!! 助けて!! おとうさん!! おかあさん!!」
「た……だ……お……今、たすけて………やる」

大樹がゆっくりと忠夫に近づいていく。
それを男が今度こそ阻止する。

「いけません! これ以上犠牲を増やすわけにはいきません。」

すでに男もギリギリであった。
本来なら下級悪魔といえど、ここまでてこずるはずではなかった。
GS協会から援軍の要請があってから、ほとんど一人で追いつめていったのに、仲間のGSが功を焦り、包囲網から逃げられるだけでなく、逃げられた先が遊園地という、人ごみの中であった。
一般人の避難が間に合うはずは無い。
ここに逃げら込まれる前に、カタをつけて当たり前だったのだから。
挙げ句の果てには仲間のGS達が悪魔に接近を気取られ、この始末だ。

「ごめんなさい、ごめんなさい!!」

忠夫の霊力が暴走している。
このままでは忠夫自身も危ないと判断した男は、すぐに結界の準備に取りかかる。

「少年の周囲に結界を貼ります。ですから――」
「――俺は父親だ。」

大樹は止まらない。
結界の展開を開始した男に止めるすべは無い。
男はこうなったら少しでも早く忠夫を抑える結界の完成を急ぐ。

「お父さん!! おれ…おれ!!」
「分かってる、分かってる。」

子が悪さをしたなら、しかるのが親のつとめ。
子が助けを求めているのなら、無償で助けてやるのが親。

「――!? 遅い!! 私に合わせろ!!」

男はあまりにも到着の遅い仲間達にすぐに指示をする。
どうせ、連携がどうやら、上の指示がどうやらと自分の判断で動けない連中だ。
百合子が倒れた責任も多分、自分にくるだろうと予想している。

「いいか、忠夫……よ〜く聞け……泣くな〜男のくせによ〜。」

大樹が百合子の抱きしめ、笑いながら忠夫に話しかける。
忠夫は、謝っているが鼻水まじりの声でよく聞こえない。

「すまんかったな〜俺様が一発で沈めときゃ〜こんな事にならなかったのによ〜」
「ぢがう……おれ、おれ。」

大樹は忠夫の頭をワシワシと撫でながら、あやすように言う。

「――!? は、離れて!?」

だが、忠夫に潜んだ悪魔が先ほどの借りだと暴れだす。
それを止める術を横島は知らない。
横島の霊力は大樹を貫き、百合子と同じように体が赤く滲む。

「あ…あぁ……」

だが、大樹は横島を離さない。
たった二つ、己の命よりも大切なモノの一つは先ほど失った。

だから、


「……二度といわんからな。」


だから、


「絶対、幸せになれ。」


だから、最後の一つは守り通す。


「………生まれてきて、ありがとう。」


GS達の結界が完成する。
忠夫の霊力が急速に暴走を止め、体内へと戻っていく。
気を失い崩れ落ちた忠夫を大樹が支え、男が近寄る。

「すぐに手当を、救護班を寄越すんだ!!」

頭では分かっている。
それでも足掻かせてほしい。

「……なぁ……アンタ名前は?」
「喋らないで……唐巣、唐巣和弘と言います。」

ヒーリングが追いつかない。
だが、千が一、万が一でも助かる可能性があるなら……

「唐巣さん、忠夫は…どうなるだ?」

自分の事なんか二の次だ。
悪魔に取り付かれた忠夫がこの先どうなるか、それだけが気がかりであった。

「チューブラー・ベルと呼ばれているあの悪魔は、人間に寄生し人間の霊力を糧に成長していきます。普通の人ならば霊力が足りず、寄生されても一般生活に問題はありませんでしたが……あなた達のお子さんは、潜在的な霊能力が高かったのか、このままではいずれ……お子さんは魔物になってしまいます。」

唐巣は、包み隠さず真実を述べた。
それは大樹に対する礼儀であったから。

「安心してください。霊力を封印して悪魔の成長を抑えれば、お子さんは普通の生活を送れます。」
「ありがとう――けど…」

身体面では大丈夫かもしれない。
だが、問題はそんな事じゃない。
忠夫がこれから背負う重荷は重すぎる。

「……それじゃ、ダメなんだろうな。」

普通の生活はできるだろう。
しかし、できるまでどれだけの月日が必要だろうか。
だから大樹は忠夫に生きる目標を作るべきじゃないのかと考える。
始めは血なまぐさい目標だけだが、生きていれば必ず何かを得るのだから。

「……あの子に生きるすべを教えてあげてください」

唐巣は大樹の言いたい事を理解した。
唐巣は、昔、忠夫と同じような境遇の女性にあった事があった。
その彼女は、最後まで逃げ出さず、最後は唐巣達の力を借り、チューブラー・ベルを倒す事に成功する。

忠夫にも、その才はある。
百合子と大樹の素質を受け継いだのだから当然と言えば当然なのかもしれない。
だが、この悪魔を倒す事が出来たのは唐巣達だけであった。
はっきりいえば、忠夫にそれが出来るかと言えばまず無理であろう。
それでも、忠夫が己の中にいる悪魔と立ち向かうという事は、生きる力になる。
なりより大樹は自分の息子を信じている。

「百合子……すまんかったな……忠夫…負けんなよ……」


物語は動き出す

其の身に宿すは、悪魔の癌

おこった事はなくせない

故に、それを超えていこう

今日は、運命の日


??上を向いて歩いていこう 完??


初めての人は初めまして。
覚えている方が、いらっしゃれば、お久しぶりです。

なんか、頭に浮かんだ設定を我武者らに書いたので、変な所があればどんどん言ってください。勢いで勝負が信条ですので、どしどし言ってください。(最後の大樹が多少無理矢理か?)
時間が不定期で空くので、いつ投稿できるのかは謎ですが、出来る限り頑張りますので、またよろしくお願いします、
次回は、、あまり何も考えてません(汗)

前回、折角皆様からありがたい感想を頂いたのに返さなくて申し訳ございませんでした。この場を借りて、お詫びと感謝を申し訳あげます。

管理人の米田様、またスペースを借りる事を、また宜しくお願いします。

文字化け修正しました。(汗)
macは苦手っす

すみませんでした、注釈と前文で注意事項として書き加えました。

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