*注*これは複数回逆行を繰り返した横島強めな作品です。
こういった作品が苦手な方は避けるようお願いします。
そこは激しい戦いが繰り広げられた戦場のようだった。
辺りにはむせ返るような血の匂いが立ち込め、
目を凝らさずとも最早何も語ることの無い骸達が晒されているのが見える。
この場で未だ息をしているのは二人だけだった。
音に聞こえし神剣の名手にして妙神山の武神『小竜姫』と
人界唯一の文珠使いにして人類の裏切り者『横島忠夫』
しかし息をしているとはいえ、横島忠夫は瀕死であった。
文珠を使おうにも霊力は枯渇し、右手は肘から切り捨てられ腹部には深々と神剣が刺さっている。
小竜姫は血を吐くような声で横島に呼びかける。
「どうしてですか横島さん! 何故アシュタロスなどに味方したのです!!」
瀕死の横島に声こそ届いたものの、横島には最早答えるだけの力は残されていなかった。
もし、声が出せていたら横島はこう答えただろう。
「同病相哀れむってヤツですよ、小竜姫さま」
式神作製師横島! ~プロローグ~
「………あ゛~、シリアスなシーン多くて息詰まるから今回アシュ側はパス決定」
やたらボロっちい四畳半の部屋で横島は目覚めた。
毎度お馴染みの横島宅である。
時間は横島の高校入学前にアパートに引っ越してきて三日目の夜である。
そう、注意書きにあるようにこの『横島忠夫』は複数回の逆行を経験している。
ある時はシリアスにルシオラの死亡を阻止しつつ世界を救ったり、
はたまたハーレムを築こうとしていろんな女の子に刺されたり。
純愛ルートと鬼畜ルートを繰り返したり、
前振りのようにアシュタロスの味方になったりしているのだ。
そして今回のテーマを決めようと横島は……阿弥陀くじを作っていた。
阿弥陀くじで<メイン攻略キャラ>を決めるのが、ここ最近の横島の習慣だった。
美神令子、氷室キヌ、犬塚シロ、タマモ、机の愛子、小笠原エミ、六道冥子、
弓かおり、一文字魔理、猫の美衣、小竜姫、ワルQ、ヒャクメなどの比較的メジャーな相手から
名も無いクラスメイトや六女の生徒まで幅広い攻略を考えるので結構時間がかかる。
ちなみに前回メイン組だったので今回はルシオラ、ベスパ、パピリオとメドーサはお休みとなっている。
そして一時間かけて作成した阿弥陀くじの結果は………六道冥子だった。
「ぬおぉ~~~~!! いつかは攻略しようと思ってたけどいきなりだと覚悟ぐわぁ~~!!」
いきなり挫折しそうな横島だったが、
その身に溢れる煩悩は相変わらずなのでさっさと今回使う武器を考え始める。
何回も繰り返し逆行するのでその能力は多様化、
ある程度絞って修行しないとただの器用貧乏になってしまうのだ。
ちなみに文珠は横島にとってもはや不可分な要素なのでその他に使う武器を考えている。
破魔札、神通棍などの基本的GSの装備やサイキックソーサー、
霊波刀、魔装術、呪い、錬金術や陰陽術に式神なども考慮に入れる。
メドーサやエミの部下として働いて学んだり、
過去への時間移動の際マリア姫を口説こうとして残ったはいいが、
結局口説けず、帰る当ても無いのでカオスから錬金術を習って時間をつぶしたり、
同じく平安京に残り葛の葉(メフィスト)と共に陰陽師として働いたりしたので選択肢は多い。
「冥子ちゃん相手だと、やっぱり俺も式神持ったほうがいいよなぁ」
原作では冥子以外の式神使いとして記憶にあるのは、
鬼道政樹と少年A(呪い好きサンダーロードの彼)くらいしか知らないが、
夜叉丸のような受け継がれた式神は簡単に手に入らないし、
依り代も金がかかるので却下となる。
しかし、この横島には比較的簡単に式神を手に入れる方法があった。
葛の葉と暮らしていた陰陽師時代に妖怪を封じて、
邪気を払い神仏の祝福を経て式神へと転身させる術を横島は開発していたのだ。
はじめは名前すらない適当な術だったが、
術としての格やレベルも上がったので『封魔転身の術』と名づけた。
「そうと決まればまずは吸印札を作らないとな、え~と半紙と墨は確かこの辺に……」
そう言いつつ横島は部屋を漁り始めた。
勉強道具を放っておいた辺りをひっくり返し、
書道(中学時代の国語の一環)で使った和紙の半紙と墨を用意する。
「あとは、湧き水とかが良いけど面倒くさいから水道水を沸かして使えばいいか」
水を入れた薬缶を火を掛け、換気をし、部屋中に溜まったゴミやホコリを掃除する。
沸騰したら火を止めて冷めるまで銭湯に行ってくる。禊の代わりらしい。
帰ってきて、換気も止め、部屋を出来るだけ密閉した状態にし、部屋を霊気で満たす。
横島の、横島による、横島の為のある種の聖域のような空間を生み出す。
筆や半紙、墨や水にも霊力を注ぎ込み、一時的に霊的な格を持たせる。
心を鎮め、一呼吸の間に半紙に封魔のための術式を書き込む。
「……ふぅ、久しぶりだけどまぁまぁいい感じに出来たな!」
自作吸印札の出来に満足がいったのか、笑顔で横島が頷く。
その後も、興が乗ったのか一気に9枚の吸印札を作り、合わせて10枚になった。
「ん~、結構疲れたな。この頃の俺より霊力は有るけど全盛期には程遠いからなぁ」
現在の横島の霊力は70マイト強、原作で言うと『サバイバルの館』編くらいの力しかない。
ちなみに全盛期は強化型ベスパとタイマン張って生き残れるレベルらしい。
この自作吸印札は横島専用なので売ることは出来ないが、
今回作った札は大体10万~20万円クラスの効果がある。
現在の能力でもしっかりとした結界の中でちゃんとした手順と霊具を使えば、
100万クラスのモノも作れるが現状ではコレが限界である。
「あとは、このレベルの吸印札で捕まえられる妖魔でいい感じのヤツは……っと!」
今まで自分で退治したり他のGSが戦った妖魔を思い浮かべ、
その中で今現在の自分でも大丈夫なものを選びだす。
「ん~、今ならまだあんまり強くなってないだろうからアレとアレでいこう!」
夜遅いというのに横島は外出用にいつものGパンGジャン姿に着替え、額にバンダナを巻く。
Gジャンのポケットに吸印札を入れ、風邪を引いたとき用に買っておいたマスクも持って出かける。
何故マスクなどを持っていくかというと……
「下水ってやっぱり臭いんだよなぁ~」
「キィーー! ニンゲン、ジャマ、シネー!!」
「「ウオォォォーーン!」」
「っと、まだ沢山の霊は操れないみたいだな。吸印ッ!」
下水道でネクロマンサーな鼠と戦うための装備だったようだ。
襲い掛かる二匹の動物霊を避けつつ、鼠に接近しいきなり吸印した。
まだ実力が低い状態だったので鼠は簡単に捕らえられ、
操られていた動物霊たちもすぐに消えてしまった。
「ピ○チューげっとだぜ!」
……何か激しく間違っている気がする。
あとがき
どうも、yataと申します。
なんとなく思いついたネタなのですが、いかがでしょう?
一応長編なので、読者の方々の反応にビクビクしながら続きを書いています。
感想お待ちしてます。