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「浮世漫遊 第一話(GS)」

INSTANT:LE (2006-09-27 21:36/2006-09-27 21:44)
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あ、ども。横島忠夫といいます、以後よしなに。

私立高校一年の16歳、両親は二人とも海外に居るので一人暮らしをしています。

苦学生、とかそんなじゃないです。学費と家賃は親が払ってくれてますし、バイトをしているので食うに困るようなことはありません。

以前はホントにひもじい思いをしてたんですけどね。

自給255円でめっさこき使われてました。いや、マジなんだよなこれが。

最近、長いことお勤めご苦労ってな訳で自給1500円になったんですけど、なし崩し的に辞める破目になっちゃいました。


いやー、時を遡るとは思いませんでした。せっかく自給上がったのに何逆行してんだよ俺。


人類と魔族との殲滅戦。次々と人が虫けらのように殺されていく中、俺は最前線で魔族との戦闘に臨んでいた。

舞うが如く腕を振るわせ薙ぎ払い、体を撓らせ身を翻し敵をかわして突きを一発。時折蹴りや裏拳を繰り出して、正に身一つで敵を圧倒していた。

敵も決して弱い訳ではない、殆どが中級魔族で中には上級魔族も少なからずいた。横島忠夫が強すぎたのだ。

しかし出る杭は打たれるのが世の習い。早々に敵の総大将に目を付けられてしまったのだ。

目立ちすぎたと舌打ちしつつ、大将と拳を交える。互いに全力を発揮した、所謂死力を尽くした戦いを繰り広げた。

持てる技術に知りうる知識、秘めた力と不屈の精神。これらを総動員した結果、横島が相手を押し始めた。


最終的に立っていたのは横島だったが霊力は枯渇、体力は空っぽ。出血も酷かった為、勝利して間もなく地に伏し──────今に至る。


これは逆行の二日前に愛弟子と熱く語り合った「戦士の格好いい散り様」最有力候補だった。ちょっと記憶違い♪


…愛弟子か。いや、浸ってる場合じゃないし、うん。


じゃあ逆行したらしき日について、記憶を引き出して見るか。


あの日俺は友人の伊達雪之丞と居酒屋で愚痴を言い合った。苦労しているだけあって話は盛り上がったが、段々と暗い方に流れていった。

お互い半端に酒に強いのと、話の内容が内容なだけに思いのほか酒が進み、飲むペースはいつもより早くなっていた。

暫くして、彼は自分が飲んだ量で負けている事に気付いた。酔って僻みっぽくなっていた彼は「酒の飲みっぷりまでコイツに負けてたまるかよ」などと考えてしまった。

暗に、様々な面で劣っている事をさらっと認めた事はとりあえず放置。

彼の奥底に眠る、もとい常に全身から発しているバトルマニア魂(通称バマコン)、が激しく燃え盛り、とうとう戦いを挑んできた。

居酒屋で野郎二人行うバトル。そう、飲み比べだ。

『酒を飲む・相手をチラ見・おかわり』このローテーションをベースに、『吐き気をもよおす』や『トイレに立つ』、『ぶっちゃけリバース』等のイレギュラーな要素も織り交ぜつつ、決戦は白熱の一途を辿る。

確か、其処で何かをする為に文殊を発動した途端、視界が暗転。

そしてこうなりました。唯一の救いは、目覚めた際に二日酔いになっていなかった事ぐらいです。

実は『居酒屋で局地的な時空震が発生』とか………違うか。


どうせならもっといい時期ならなぁとか考えたりもしたな。

例えば、事務所に行ったら小竜姫様がいてGS試験受けろとか言われてそんでもって額にキッス。

昔ならともかく今の実力なら首席合格などして当然。メドーサとそのついで何かも退けて皆に見直されて…そんでもって

「素晴らしいです横島さん!素質があるとは思っていましたがまさかこれ程とは…」

「ええ、本当にありがとうございます小竜姫様。全て小竜姫様のお陰ですよ。」

「ふふっ、私はきっかけを与えたに過ぎません。もっと誇ってもいいんですよ?」

「でも小竜姫様が俺の事認めてくれたから頑張れたんです。俺ってあんまり人に認められた事なかったんで。」

「いえ、そんな…」

「マジで嬉しかったんすよ。だから絶対期待に応えるんだって思い続けた結果、こうなったんです。いくら感謝してもし足りないですよ。」

「横島さん…(じーん)」

「小竜姫様…」

「横島さん…」

今度は唇に熱き思いの丈を乗せ、気高き竜神は自ら人間の男に顔を寄せた。否、そこに居たのは竜神の女神ではなく一人の女。神という縛りを捨て去った彼女はやがて………何て展開もあったかもしれないのに。ちょっと戻りすぎたみたい。

ただこの時に………


『成る程、それで心眼の存在を思い出したのか。』

そう、俺を導いてくれた最初の霊能の師である心眼。

妄想のお陰で現状を話せる奴の事を思い出した。

ありがとうな、妄想。独り戦い続ける私の孤独を、おまえという存在がやわらげてくれる。

それはさておき、バンダナに霊力込めた接吻かまして二週間。現状を受け入れて新しいバイトも見つけた。頑張るぞって時にやっと目覚めてくれました。

「お前はこれからどうするべきだと思う?」

戻るなんて無理っぽいから、戻るにはどうしたらとか聞く気は無い。

『さあな。折角気楽な学生時代に戻ったのだから、適当に楽しめば良いのではないか。』

「…なんか変わったなお前。」

『断っておくが我は以前心眼と呼ばれていたものとは別物だからな。主が持っている心眼の記憶が基になっているだけのものだ。』

「ふーん、まあそれはいいけどさ。ならお前の事なんて呼べばいい?」

『名前か?うーむそうだな、では心眼から取って………いや、紗緒(シャオ)だ。我の事は紗緒と呼んでくれ。』

「シャオ?別にいいけど女みたいな名前だな。」

『当然だろう。女なのだから。』

そっかそりゃ当たり前か…ってマジかよ!?じゃ心眼も女だったのか?なら俺は二回も………

『案ずるな。我は主の盾となって死ぬとか、そんな勿体無い事するはずないからな。』

慰めて(?)くれるのはいいけどさ、言い方もっと他にあるだろ?紗緒ちゃんよ。

『それよりそろそろバイトの時間ではないのか。早く行かないと遅刻だぞ。』

後20分か、急がないと確かにヤバいな。バイト先にはまだ一回も遅刻していない。クビになるなどあってはならぬこと故。


所謂普通のアルバイトなんかしたことなかったから、色々新鮮なんだよな。GSが天職なのかもしれないけど、今はこうして紗緒の言うとおり適当に楽しませてもらう。

この時代のGS試験まで4ヶ月弱。受けるかどうかはその時になったら考えりゃいっか。


あとがき


文に勢いが無い作家、名をINSTANT:LEと申します。
ちょっと変わったSSを書く。との誓いの下、確かにちょっと変なものが出来上がったかなと思います。逆行〜パートナー誕生まで書きましたが、如何だったでしょうか。


横島の口調が一定でなく違和感ありまくるかと思いますが、あまり気にしないで下さい。

あと紗緒って女性っぽい名前ですよね。少なくとも私はそう思っています。
横島の強さは今のところあんまり関係無いですが、結構強いと思います。
それでは。


さんきゅー&ぐっばい

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