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▽レス始

「フリー・フォール 中編(GS)」

森田 渚 (2006-09-25 12:56)
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「代わって貰えないか。」彼は出合い頭にそういった。

私の基地に容易く侵入し、我が野望の核たるものを掠め取ったらしい。その上、私を呼付けた上に自分は遅刻。おまけに少女まで連れて…全く、ふざけた男だ。

「そう警戒するなよ、アシュタロス。これはあんたの望み云々に関わることだからさ。」

警戒するな、とは無茶な言い草だ。これまでの言動から見て、とても味方をしているとは考えられない。「あんたの望み〜」という部分を聞かなければ、直ぐにでも滅してやるつもりだった。


私の望み、『世界の改変、または完全なる消滅』。この男はその両方を知っていた。その理由は簡単だった。この男名を横島といい、逆行者。未来で私の邪魔をしてくれたらしい。


未来の私は予てから計画していた魔体による力押しではなく、魔体の研究の副産物を主に用いていた。
計画は最初から難航。神魔界と人界とのチャンネル封鎖したまでは良かったが、そこから先はその時代の退魔師連中の抵抗に部下の裏切り、危惧し続けていた宇宙意思の介入もあり、私の野望は阻まれた。


尤も私が彼に倒された際、私は犯した罪により、二度と復活することはなかった。消滅を願っていた私にとって、この結末に不満があるわけではない。

しかし、だ。持ち得る知識を総動員し、千年単位で立てた計画。出来ることなら成功して欲しかった。これまでに費やした時間は世界の改変の為であり、消滅する為に計算や研究を繰り返して来た訳では無いのだから。


それにしても、彼の真意が私には分からない。事の顛末を伝えてどうする?仮に計画を無きモノにしたいなら、結晶を破壊すればよい。どれ程重要なものか、彼は人一倍理解している筈だ。

ならば協力者?当初彼は「あんたの望み〜」という発言をしていた。おそらく、この場合の「望み」とは、私の消滅のことだろう。これについても、彼は十分に理解している。


「…そう怖い顔するなよ。代わって、つーか譲って欲しいんだよね。魔神っていう地位をさ。」


魔神の地位、ね。一言で言うならば、私を縛り付けるもの。譲って欲しいなら譲り渡そう。それが可能なことならば。

「ほう、では君が魔神として振舞ってくれるのかい?中々嬉しい申し出だよ、それは。でもね、横島君。簡単になれるとは君だって思っていないだろう。第一に『大丈夫だ』………何?」

「許可なら取ってあるし、俺はあんたの魔力の受け皿がある。最高指導者両名のお墨付きさ。あ、言ってなかったけど、最高指導者両名も逆行してるんだな、これが。」


受け皿について彼は詳しく語ってくれなかったが、言われてみれば確かに私の魔力と似た波動を彼の魂から感じる。未来の私が消滅しているのならば、魂を手に入れるは不可能。信じられないが、最高指導者の力添えでもあったのだろう。

それよりも最高指導者まで逆行というのは流石に面食らってしまった。真偽をはかろうにも、計画実行まで目をつけられるのは困る故、聞きに行くのは憚られる。
だいだい「逆行して来たらしいですが、本当ですか?」とでも聞けというのか。怪しすぎる。仮に事実だったとしても、隠し通すに決まっている。

未来の世界に最高指導者が存在していない、か。何かとてつもない事が起きたのだろうな。


(とてつもないこと、とてつもないこと…心当たりは…一応)


いや、それでは彼が先程語っていた事とズレが生じる。事件の規模の割に、直接的な被害は少なかったと言っていた。島一個吹き飛ばしたのと全世界で死者数万人。この程度、人間同士の争いでも同程度の死者を出せる。


ならばその後に何か起きた?また私の様な………それはないな。
私の一件で神魔界共に警戒を強化しただろうからな。


後は…戦いの余波か。

魔神の一柱が消滅。神魔のパワーバランスは大いに崩れただろうな。

元々魔族排除を掲げる神族は多いと聞く。この一件で押さえが効かなくなってもおかしくない。

チャンネル封鎖の際、世界各地の霊的中枢を破壊した。
たいていそういった場所は地脈が集中している。霊的中枢と一緒に大量の地脈も吹き飛ばしてしまっていれば、世界中の霊的中枢が狂う。

(魔界では経緯は別として魔神が人間に敗れた、という事実が伝わり………魔界全土で『魔族は弱いのか?』という不信感が………ある種の信仰に似たものになり、魔界の勢力が弱体………そこに過激派神族が………)


「一つお願いがある。“その後”何があったのかを教えてくれないか。」


おかしいな。私は世界の改変を望んでいた筈。


私は荒野を更地に変えて、緑を植えて水を与えるのを旨としていたのではないのか。

しかし私は荒野を砂漠に変え、しかも砂漠の侵食を抑えるのを、元々荒野に住んでいた者達に任せてしまった。

原因を作った私は、その時既に故人の為、責を問われることは無かった。


暫くして、砂一粒残らず消えた。


ククッ、これは宇宙意思を出し抜いたと言えるのではないか。
私の反抗の余波が、世界を構成する物質をほぼ『消去』したのだから。


尤もそこから『創造』につながらなければ意味が無い


私は…


(この状況、どう取る?)
(いいと思うぞ。第二関門突破は突破じゃな)

(次はいよいよお前の出番だな)
(…同じように黙って立ってれば良いだけではないか)

(そうとも言うな)
(…ふん)
(拗ねるなよ、これから正念場なんだからさ)


あとがき
ども、二作目です。長編の始まりなのに、前編っておかしかったですね。
直すのもアレなんで前中後(終)編はプロローグ、ということで。

横島君はアシュタロス事件の内容を一部隠しています。ルシオラの事がいい例です。
横島君の魔神化はない………かな。多分。展開しだいですね。全く持って見切り発車ですが、これなでにあまり無い話になってくれる筈です。あ、少女の活躍は暫く無いです。

今回も相変わらず良く分からん内容になっているかと思いますが、本筋が見えると思います。今回のポイントは「揺さぶり」です。横島君の言葉の一つ一つに意味があればいいなと、思っている次第です。

最後に。ご都合主義がふんだんに盛り込まれていますが多めに見て下さい。
ではまた。


レス返しです。

への様
はじめまして、渚です。私としても完結まで書きたいと思っています。ご期待に添えられるように頑張ります。

老い坂様
キャラクターですが、まあ横島君です。意外性も何も無くてすみません。少女の正体は次で分かると思います。

SS様
よさげな雰囲気を感じていただけたのなら幸いです。

ZEROS様
今回も評価し辛いようで、申し訳ないです。

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