商店街を抜け、高くそびえる煙突を目指して朗らかに進んでいく。
ご近所の社交場『銭湯』である。
その名を、
『斗羅婆湯(とらばーゆ)』
カオスの入浴したい気持ちと、金銭面での苦悩とが混ざり。 経営上の苦労とが化学反応を起こし、カオス・マリア入浴無料を条件に怪しげな炉で湯を沸かす銭湯であった。
おかげで軒並み値上げを踏み切った銭湯が続く中、此処だけは料金据え置きである。
「いらっしゃい。 おや、ひのめちゃん、ひさしぶりだねぇ ひゃっひゃっひゃっ」
「おばあちゃんこんばんは、おひさしぶりです。」
「小鳩ちゃんもいらっしゃい。 忠夫ちゃんもいらっしゃい」
「おせわになります」
「いいけどさぁ、俺が先に入ったのに一番最後かよ」
「にゃににゃに、お父さんは黙って一番最後なんだよぉ ひゃっひゃっひゃっ」
文句を言う横島だが顔は笑っている、挨拶代わりの馴れ合い。
小鳩の顔がほんのり染まっているのは、毎度の事なのでスルーされている。
「おばあちゃん、ひのめはおにいちゃんのおくさんになるのよ。 まちがえてはだめなの」
ひのめも敏い子供だ、横島が『父』なら自分は『子供』と見られているのを確りと自覚している。 だが、子供でも譲れないものはある、某情報源から抜け道は一杯あることを知っている。 小鳩は横島が好き、自分も小鳩が好き。 なら、抜け道を使うのだ、自分の幸せと夢のために。
壮大な計画である…
「ゆっくりと、浸かんなっしゃ」
「は~~~~い♪」
わっしゃわっしゃわっしゃと動く毛の塊がそこにある。 体育会系のマッチョな兄貴がポージングをしている。 中世ヨーロッパの甲冑を着た人物が湯船に浸かっている。
「あっ、ごうだのおにいちゃんこんばんは。 おぐらのおじちゃんこんばんは。 おおやさんこんばんは」
「おや? 優さん、またアレですか?」
『久しぶりですね横島君。 アレなんだよ、又大宴会で風呂釜が壊れてね』
横島が喋っているのは、横島のアパートからさほど遠くない所に建っている、GS界では有名な矢荷成荘の若大家 大家優である。 この姿のままで寸鯉銀行で働いて、義父も同じような作りの甲冑を着て支店長をしている。
ちなみにポージングしているマッチョな兄貴は、少女漫画家 小倉杏 この姿からは考えられない煌びやかな少女漫画を描く。 売れっ子でもある。
妖怪 毛羽毛現みたいな人物は、中学浪人生 剛田業 一流大学を目指す為、まずは一流中学校からと入学試験を受け続けている苦労人。 だが、机に10分以上勉強しながら座っていると大爆発をする危険人物でもある。
以上、矢荷成荘 若大家と御一行様なのであった。
今回はこれだけ m(_ _)m>時間が無い…
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