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「魔弾の射手 第一章(GS)」

BIND (2006-09-03 23:34)
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 人間っていうのは良く間違いを起こす。
 それは大統領でも、総理大臣でも同じ。
 諺にだって、弘法も筆の誤りってあるぐらいだ。
「だから……俺がシメサバ丸の教訓を生かせず、除霊対象のこの銃を手にしているのも仕方の無いことなんです。美神さん!!」
「このバカたれがぁぁぁぁ!!!!」
 美神さんの神通棍を俺に向かって全力で振り下ろすが、俺の右腕が勝手に動き手にしている西部劇で出てくるような拳銃で受け止める。
「横島のくせにぃ!!」
「俺の意思やないんやぁぁ!!」
 美神さんは一旦距離をとると、神通棍を構えなおし、突きの構えを取る。
『祓われるわけには……いかないの……』
 寂しげな女の人の声が俺の頭の中に響くと、右手に握られている銃が俺を窓へと力いっぱり引っ張り、事務所のガラスを破る。
「どあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 俺はそのまま地面へと落ちていく。
 ああ、何でこんなことに……。


 話は一時間ほど前まで遡る。
 俺はいつものごとく、美神さんの裸を拝むため事務所を訪れた。
「あーチクショウ、昨日の野菜ども力いっぱい俺に突撃してくれやがって!しばらく野菜はみたくねぇなぁ」
 俺は昨日あったことを思い出しながら、事務所のドアを開けた。
「美神さんもさぁ、なれないことやんないで欲しいよなぁ。あんな攻撃的な野菜何でできるかなぁ。これは裸の一つでも拝まんと割りにあわん!!」
 俺はそう決意すると浴室に向かうが、途中で巫女さん幽霊のおキヌちゃんに出会った。
「あ、横島さんいらしたんですか?お風呂を覗こうとしてもダメですからね。今美神さんは出かけてますから」
 おキヌちゃんは箒を持ちながら俺に屈託の無い微笑みかける。
 そんな顔されたら、覗きにいかれへんなぁ。
 おキヌちゃんは
「お掃除もうちょっとで終わりますんで、そしたらお茶入れますね」
 といって掃除を続ける。
 あーええ娘や〜。幽霊じゃなかったら口説くんだがなぁ。
 俺はそんなことを思いながら、事務所のソファーに腰掛けるとテーブルの上に置かれた、三十センチほどのアタッシュケースが目に留まった。
 ケースにはお札が貼られている。
 これはやばいものだな……。
 俺は今まで培った防衛本能がアラームを鳴らす。
「君主危うきに近付かずってね……」
 俺はそう呟いてソファーを離れようとしたそのときだ。
『お願い、ここから出して……』
 女の人の小さな声が俺に聞こえてきた。
 俺はあたりを見回すが、誰もいない。
 あるのはアタッシュケースのみ。
 ……これの中身か?
 俺がアタッシュケースのじっと見つめると、ケースから美しい女の人が現れる。
 金髪のロングへアーで、整った顔立ち、西部劇に出てくる保安官の服を着て、美神さんとタメがはれるくらいの胸をもった女性だ。
「ずっと前から愛していましたぁぁぁぁ!!!」
 俺は伝説のルパン・ダイブで飛び掛るが、女性は俺を横へすっとずれたため、床と口付けをかましてしまう。
「いつもと同じかよ!!」
 俺は床を叩きながら立ち上がる。
『ねぇ、お願い。このケースから出して』
 女性は俺に近付く。
『出してくれたら、あなたのいうことを聞くから……』
 そういって俺の手を握る。
 俺の目に、彼女の大きな胸が入る。
 ケースを開けたら俺のいうことを聞く?それってつまり、目の前にあるコレが俺のものってことかぁぁぁ!!
 だけど、この人は幽霊みたいなもんだろ……。
 でも、目の前の大物は手にしたい……。
 でも、幽霊……。
 でも、あの胸は……。
 散々悩み、俺の出した答えは……
「よっしゃぁ!開けたるでぇ!!」
 俺はそう叫ぶとケースに手をかける。
 そこで、俺ははっとする。
 まてよ、確かずっと前の妖刀とき、俺って乗っ取られなかったっけ?
 そんなことに気付いても、もう手遅れ。
 すでに俺の手はロックを解除し、蓋に手をかけていた。
『早く、あけて……』
 ああ、俺の肩に大きな胸が……。それに、耳に吹きかけられる吐息。
「後悔するなら、ヤってからじゃぁいっ!!」
 俺はそう叫ぶと、ケースの蓋を思いっきり開ける。
 そこには銃身が三十センチ近くある西部劇に出てくるようなリボルバー式の拳銃だった。
『ありがとう。約束どおり、あなたのいうことを聞くわ。でも……』
 そういって彼女は俺の右手を取ると、拳銃を掴ませる。
『少しの間、体を借りるわね!』
 凄く素敵な笑みを浮かべて、凄いことをいってくれましたよ、この女!
「やっぱりそうきたかよ!ドチクショウ!!」
 俺の意思とは関係なく右手が拳銃を握り締めると、彼女はすっと消える。
「あ、美神さん、お帰りなさい。横島さん来てますよ?」
 廊下のほうからおキヌちゃんの声がする。
 ヤバイヤバイヤバイヤバイ……!
「おキヌちゃん、横島君にテーブルの上のケース触らないようにいってくれた?」
「あ、忘れてました!」
「いくら横島君でも、前回のシメサバ丸の件があるから、触らないとは思うけど……」
 美神さんの足音が近付いてくる。
 ど……どどどどどどどないしよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
「横島君!テーブルの上にあるアタッシュケースに触らないで……ね……」
 美神さんがそういいながらドアを開け、そして、こめかみをひくつかせる。
「み、美神さん……今日もご機嫌麗しゅう……」
 美神さんの後では、おキヌちゃんがあきれた表情をしている。
「アホ横島ぁぁぁぁぁ!!!」 
 そんなわけで、冒頭の部分に戻るわけだ。


 そして今俺は拳銃に引っ張られるように移動している。
「おいおいおい!どこにいくんだよ!!」
 俺は拳銃に問いかける。
 すると、拳銃の上に手のひらサイズになったさっきの女性が現れる。
『失礼しました。私はこの拳銃、コルトバントラインスペシャルの……え〜と日本で言うところの九十九神?という者です』
 そういうと、彼女は俺に敬礼をする。
「で、そいつが俺にとり憑いて何しようとしてるんだよ!!」
『……私には一対一の決闘を約束した者がいるんですが、その者とは今から百年前に別れてしまい、決闘できずにいたのです。ですが、今度私を引き取る人が、その者を所有していると聞きあの時の約束を果たそうと思いまして……』
「決闘に俺を巻き込むなよ!」
『本当であれば、私が自分の本体を操って戦うべきなのですが、あのケースに封じられている間に力を吸い取られてしまいまして、先ほどの体を維持するだけで精一杯だったのです。だから、あなたの体を借りようと思いまして。大丈夫です!命だけは守りますから!!あ、ついでに今のこの体は省エネルギーモードです』 
 彼女はすまなそうに説明してくれる。
「もう、どうにでもしてくれ……。しかし、百年前だろ?九十九神ってことは、ものが九十九年経ったら変化するんだろ?その時はまだ……」
『はい、もちろんただの銃です。ですが、元の持ち主の意思が強く込められ、それが影響しているのです』
「じゃ、その姿も!!」
『はい、私の前の持ち主は女性保安官でした』
 チクショウ!あと百十七年早く生まれていれば!!
 俺は涙を流しながら、自由に動く左手を握り締めた。
『あ、あの〜、話続けてもいいですか?』
 彼女が額に大きな汗を浮かべて、俺を見る。
「どうぞどうぞ」
『それでですね、私の持ち主は当時周辺を荒らしまわっていた盗賊と何度か戦いまして、そのうちにお互い引かれあうというか……』
 てことは……
「いい男か?その盗賊!!」
『は、はいっ!盗賊ではありましたが、銃の腕前は素晴らしく、その辺のガンマンなど足元には及びませんでした!そして、何より彼は悪党からしかものを盗まない、いわゆる義賊でした!持ち主は彼のそんなところに惹かれまして……』
 頬に手をあて、顔を赤らめながら答える銃の九十九神……。
 所有者の影響をもろにうけとるな、こいつ……。
 俺があきれていることにも気付かず話は続く。
『ですが、ある時ついに彼と対峙する時がきたんですが、悪徳市長が雇ったチンピラどもが邪魔に入り、決闘は流れてしまいました……。本当はそのときに、二人で遠くまで逃げる予定だったんですが、持ち主は盗賊を逃がしたあとに心臓を撃ち抜かれまして……』
 そこまで言って彼女は寂しい表情をする。
 死に別れたのか……。
 そして、彼女の思いを核にして九十九神になったわけだ。
「でもよ、よしんば会えたとしても、相手も九十九神になっているとは限らないんだぞ?」
『それでも……私は彼に、彼の使っていた銃に会いたいんです……』
 彼女は目に涙をためながら、俺を見る。
 ……やれやれ女の涙をみちまったら、断るわけにはいかねぇじゃねぇかよ!!
 俺はそう決意すると、銃を握る手に力を込める。
「OK!お付き合いしましょ!ただし、死ぬのはかんべんね!!」
 俺はそういって、彼女に笑いかける。
『ありがとうございます!あ、見えてきました!あそこです!私を引き取る予定なのは!!』
 彼女はそういって、立派な門構えがある屋敷を指差す。
 そこには看板が掲げられ、
『地獄組』
 の文字が……。
「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!よりによってヤクザかよぉ!!」
『え?ヤクザ……。ヤクザってことはジャパニーズマフィア?マフィアってことは犯罪者!犯罪者=Dead Or Alive!!KILL KILL KILL!!!!!』
「殺す気まんまんかよぉぉぉぉ!!!」
 手のひらサイズの拳銃の九十九神さんは、すっっっっごく素敵な笑顔で俺の体を操って門をぶち破りました。
「なんじゃ!どこの組のかちこみじゃぁぁぁぁいっ!!」
 一気にわらわらと飛び出してくる地獄組の皆さん。
 手にはそれぞれ得意な獲物が。
「誰かと思ったら、美神の姉さんとこのボウズじゃねぇか」
 ヤクザ一号が俺のことを覚えていたらしく、近寄ってくる。
「すんませんけど、逃げてください!今の俺に近寄ったら……!!」
 俺の右手がすぅっと動き、そいつに狙いを定める。
「おお!ボウズ、コルトのバントラインスペシャルやないけ!ええもんもっとるのぉ!!」
 そういってヤクザ一号が、俺の持つ銃を見つめる。
 そして、銃からぴょこりと出る九十九神。
『キィィィルッ!!』
 邪悪な笑みを浮かべて、俺の体を操り、引き金を引く。
 ガォォォォン!!
「ぬぉっ!」
 発射された銃弾を、思いっきり上体をそらせて避けるヤクザ一号。
 もうそれはマ○リックのごとく。
「おんどりゃぁ何さらすんじゃい!こっちが下手にでりゃぁ!!……全員でなますにしたれやぁぁぁぁ!!」
 あーやっぱそう来るよね……。
『大丈夫ですよ、こんな連中、私の手にかかれば』
「凄くイイ笑顔なんだけど、お願いだから殺さないで」
 努力します、とか抜かして銃を連射する九十九神。
 引き金を引いたままで、撃鉄のみ動かして弾丸を連射し、全員の獲物を弾き飛ばす。
『弾切れね、悪いけど霊力を少しもらうわ』
 そういうと、俺の右手がぼうっと輝き、少しだるくなる。
「何なんだ?」
『私は霊力を弾丸にして撃ち出すんです。そのために、あなたの霊力を少しいただきました』
 そういうと、彼女は俺の体を操り、また襲い掛かるヤクザの獲物を素早く撃ち落す。
 それだけではなく、跳弾でさらに倍の数の獲物を弾き飛ばす。
「なんの騒ぎじゃいっ!」
 怒鳴り声とともにでてくる地獄組組長。
 それと同時に、額に押し付けられる拳銃。
『あなたのコレクションの中に、古い銃があるでしょう?それを見せていただけないからしら?』
「すんません組長……。俺の体、今こいつに操られているんでどうしようもないんです……」
「は、はい!ご案内いたします!!」
 組長は背筋をぴんと伸ばして、俺たちを奥へと案内する。


「こちらです!!」
 ドアを開けると、そこには色んなものが並べられていた。
 わけのわからん壷から仏像、はたまた日本の鎧武者……。
 多趣味っていうのか、悪趣味って言うのか……。
 きょろきょろと見て回るうちに、ガラスケースに収められた一丁の拳銃が目に入る。
 それは銀色に輝き、俺が握っているバントラインスペシャルの半分の長さのバレルを持ち、象牙製のグリップが美しい拳銃だった。
 一目見て、丁寧に扱われていることがわかる。
『……あの時と同じまま……良かった……』
 彼女は嬉しそうな笑みを浮かべ、涙を流した。


 地獄組を後にした俺たちは、美神さんの怒りが怖かったので川原に来ていた。
『ごめんなさい。私のわがままにつき合わせてしまって。……私の願いはかなったわ。さ、あなたのいうことを聞きましょう』
 彼女は手のひらサイズのままでそういってきた。
 そういや、そんな約束だったなぁ……。
 どうすっかなぁ……。
「なぁ、お前はどうしたいんだ?」
 俺は彼女に聞いてみた。
 俺の女になれ!!っていってもいいけど、愛がないのは嫌だもんなぁ。
 とりあえず、彼女の意思も尊重しないと。
『私は……誰かの役に立ちたい。できれば、銃として生まれたのだから、誰かを守るための力になりたい……』
 誰かを守る力……ねぇ……。
 そうだ!
「なぁ、俺のモノにならないか?」
 俺の言葉に、彼女は顔を真っ赤にする。
『そ、それはつまり、あなたの女になれと?』
「……ごめんなさい、言葉が足りませんでした」
 俺は謝ると、話を続けた。
「俺さ、ゴーストスイーパーの元で働いてるんだけど、情けないことに霊能力がないんだわ。だからさ、俺と組んで悪霊とか相手に戦ってみないか?」
 彼女は少し考えて
『……わかりました、あなたの力になりましょう』
 と微笑みながらいってきた。
「おう、よろしくな!」
『こちらこそ』
 俺と彼女はがっちりと握手をした。


あとがき

 ついに連載することを決意いたしました。
 これから週一で連載していこうかと思いますので、生暖かい目で見守っていてください。
 バントラインスペシャルの名前は次回ご紹介いたしますのでご容赦を……。
 誤字脱字、表現等おかしい部分がありましたら、ご指摘をお願いいたします。

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